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2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール本選レビュー

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~2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール本選レビュー~

参考リンク
Chopin InstituteのYouTube公式チャンネル
ⅩⅧ KONKURS 18TH CHOPIN COMPETITON WARSAW

各予選・本選の記事
第18回ショパン国際ピアノコンクール・予備予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第1次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第2次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第3次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・本選レビュー

ショパンコンクール日程
第1次予選:10月3日~7日
第2次予選:10月9日~12日
第3次予選:10月14日~16日
本選:10月18日~20日


2021年第18回ショパン国際ピアノコンクール・本選
ショパンコンクール本選は、10月19日午前1時(ポーランド現地時間10月18日午後6時)から開始されます。

実況中継リンク
本選:10月18日
本選:10月19日
本選:10月20日 ← 今ここです

または下の埋め込み動画も直接見ることができます。

実況中継のアドレスはその都度、変更されます。ホームページの更新が追い付かない場合もあると思いますが、 その場合には、下のリンクをクリックしてChopin InstituteのYou Tube公式チャンネルに行ってみてください。

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本選出場者一覧

10月18日前半午後6時~9時(日本時間:10月19日(月)午前1時~4時)
1. Mr Kamil Pacholec, Poland
2. Mr Hao Rao, China
3. Mr Kyohei Sorita, Japan
4. Ms Leonora Armellini, Italy
10月19日前半午後6時~9時(日本時間:10月20日(火)午前1時~4時)
5. Mr J J Jun Li Bui, Canada
6. Mr Alexander Gadjiev , Italy/Slovenia
7. Mr Martin Garcia Garcia, Spain
8. Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
10月20日前半午後6時~9時(日本時間:10月21日(水)午前1時~4時)
9. Ms Aimi Kobayashi, Japan
10. Mr Jakub Kuszlik, Poland
11. Mr Hyuk Lee, South Korea
12. Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada


管理人的ランク・各コンテスタントの演奏に対する感想・コメント

各コンテスタントの演奏を、管理人的な好みに合うかどうか、好みに合わなくてもレベルが高いかどうかで、A,B,C,D,E,?でランク付けしました。
A:非常に素晴らしい・感動した
B:好ましい演奏だと思う
C:どちらとも言えない
D:やや不満
E:大いに不満
?:演奏を聴いていない

1次予選、2次予選、3次予選いずれも管理人から見て一握りの上位層が謎の敗退を喫し、 残ったコンテスタントで競われる本選となりました。 この流れからは、今回のショパンコンクールは優勝なしが妥当ではないかと考えていますが、 そんな僕の思いを吹き飛ばす超名演が誕生することに一縷の望みを託します。

10月18日前半午後6時~9時(日本時間:10月19日(月)午前1時~4時)
C~D 1. Mr Kamil Pacholec, Poland
スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 前回2015年から指揮者が変わり、管弦楽の入り方のテンポが標準的であることに安心しました(前回はかなり遅かったので)。 ピアノの出だしでいきなりミスタッチがあり、印象が悪くなってしまいましたが、 第1主題の歌い方はロマンティックで良いと思いました。技術的には粗い部分が多く、ところどころで 音がくっついたりかすったりしていました。やや慎重すぎて硬く、テンポも抑え気味、ダイナミクスもあまりなく、 華やかさが今一つの印象で、印象に残りにくいタイプの演奏だと思いました。 第2楽章は、フレージングはあっさり目。テンポは標準的。可もなく不可もなく・・・この楽章も ややインパクトに欠ける印象でした。 第3楽章は、やはり慎重路線で躍動感やダイナミクスに欠けていて一本調子のように聴こえました。 難所は弾けていないところがありました。 全体としてミスタッチや事故を恐れている演奏のように聴こえました。 インパクトに欠ける演奏で、こうした演奏は本選では埋もれてしまう可能性が高いと思います。 その意味でこの人は皆が注目するトップバッターであることが、プラスに働いているとも思いました。

管理人コメント
前回2015年の本選トップバッターはチョ・ソンジンでしたよね。あのときはいきなり超えられない高いハードルを 目の前に立てられてしまったような感じでしたが、今回は2番手以降のコンテスタントはある意味、一安心 できたのではないかと思います。

B~C 2. Mr Hao Rao, China
スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章は、遅めのテンポで1つ1つの音、フレーズに細かいニュアンスを付けるという この人らしい演奏でしたが、そのために音の粒が不揃いになったり抜けたりするというこの人の悪いところが、 どうしても耳についてしまいました。やや流れが停滞しているのと華やかさが足りない印象でした。 全体としての構成、統一感が希薄で散漫な印象が残ってしまうのは、その辺りに原因がありそうです。 第2楽章は、フレーズに細かいニュアンスをつけて歌わせるというこの人の持ち味が自然に出ていて良い演奏だと 思いました。 第3楽章は、適度に華やかで技術的にも良い演奏だと思いました。 一部、中ほどの右手の速いパッセージの外声部のC音に#が付いていて(ミスタッチではなく2回とも) 違和感を感じたのですが、そのような版があるのでしょうか。
全体としては、「言いたいこと」、「主張」がある演奏で好感が持てましたが、 この人が入賞できるかどうかは、この後に登場するコンテスタントの演奏次第だと思いました。

A~B 3. Mr Kyohei Sorita, Japan
スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章:ダイナミックで美しい出だし。旋律の節回しも自然で美しいですし、 ところどころで自分の主張も出し表現の工夫も見られ、バランス感覚が良いと思います。 技術的にも安定しており、オーケストラとのアンサンブルまで配慮が行き届いていました。 第2楽章は、旋律美を十分に活かしていると思いますが、ややもったいつけたような節回し (「反田節」とでも名付けたいような)が耳につきました。 僕自身はもっとスマートであっさりした演奏が好みです。 第3楽章は、軽快で切れ味がよくリズム感のよい演奏でした。 (Hao Raoさんの「音違い」と思われた音は、この人も同じように弾いていましたので、 エキエル版によるものと思われます。初めて聴く音でしたのでコメントしましたが、僕自身の勉強不足でした。)
この人がこの作品をここまで準備していたことに驚きました。 「勝ち」を意識した、「勝ちに行った」演奏と思いました。 これまでのところ、この人が暫定トップと思います。 僕自身の理想の演奏とは違いますが、これまでの予選で僕の中での最上位層が次々に謎の敗退を喫し、 残ったコンテスタントの顔ぶれを見ると、十分に上位入賞が狙えると思いました。

今日はここまでにします。

C~D 4. Ms Leonora Armellini, Italy
(リアルタイムで聴けず翌日視聴・記載) ファツィオリを使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章は提示部の第1主題は詩情豊か、第2主題は濃厚な味つけ。提示部終結部の難所や展開部後半の難所、 コーダなどは技術的な粗がかなり目立ちました。また技術的に余裕がないためか、テンポの不自然な揺れがあり、 オーケストラとのアンサンブルが乱れていたのが気になりました。 第2楽章は、普通の演奏で可もなく不可もなく・・・装飾的パッセージや6度の連続部でミスタッチの連鎖があり、 印象を悪くしてしまいました。最後のゆっくりした両手の動きで音価に不自然なばらつきがあり、 聴いていて疲れました。 第3楽章は、テンポが遅くやや重い演奏。速いパッセージで音量が下がり 音の粒が粗くなりテンポが乱れるのが気になりました。 全体として何とか大きな事故なく弾き通せていましたが、技術的課題が残っていて、 このような傷の多い演奏はどう好意的に聴いても好きになれないです。

コンチェルトを技術的にバリっとスカッと完璧に弾けそうなコンテスタントが、 コンクール開始時点ではたくさんいたと思うのですが、彼らはいずこへ・・・(泣)

10月19日前半午後6時~9時(日本時間:10月20日(火)午前1時~4時)
B~C 5. Mr J J Jun Li Bui, Canada
(リアルタイムで聴けず翌日視聴・記載) シゲル・カワイを使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章は、ピアノの出だしは完璧。第1主題、第2主題ともにフレージングはごくオーソドックスで 音色、音量ともにコントロールが効いていて、自然ですっきりとしていて癖がなく美しい。 技術的にも高度ですが、ところどころ大事なところで大きなミスタッチがあり、印象を悪くしてしまいました。 第2楽章は、癖のない自然な節回しでありながら十分に表情豊かで美しい演奏でした。 第3楽章は、無理に速いテンポで弾いているのが伝わってきました。 勢いで弾き飛ばしている部分が多く、速いパッセージが崩れていたりテンポが乱れたりしていて、 う~ん、若いなあ、とため息をついてしまいました。 もっと落ち着いたテンポで弾いても十分華やかな楽章なので、ちょっともったいないと思いました。 ただ全体としては悪くないと思います。今回の低レベルな本選の中では上位に来る可能性は十分あると思います。

C~D 6. Mr Alexander Gadjiev , Italy/Slovenia
(リアルタイムで聴けず翌日視聴・記載) シゲル・カワイを使用。 ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21: 第1楽章は管弦楽の提示部は遅めのテンポでした。ピアノの入り方から癖が強い表現でした。 第1主題、第2主題ともに、かなり「こぶし」を利かせた節回しで違和感を感じました。 この作品は若きショパンの初々しい詩情を品よく節度をもって表現した演奏が個人的には好みなのですが、 その僕の好みとは真逆の演奏でした。展開部など技術的にも華やかに弾いてほしいところでも、 この人は粘り気の強いアクセントを付けていて、違和感を感じました。 第2楽章は、変イ長調の主題のルバートはこの人にしては「アク」が強くなく自然でよいと思いました。 しかしところどころトリルや速い装飾的パッセージで引っかけるのがどうしても気になりました。 1指・2指で押さえての3指(または4指)・5指でのトリル(舟歌にも登場するような)は弾けていませんでした。 第3楽章は、技術的な制約からかテンポが不自然なところが多いのがどうしても気になりました。 音の不揃いや音抜けが多く、技術的に粗が多い演奏でした。 この人は何故ここまで審査員に評価されているのか、僕にはどうしても分からないのですが、 個人的にはこの人はショパン向きではないのではないかというのが正直な感想です。

B~C 7. Mr Martin Garcia Garcia, Spain
(リアルタイムで聴けず翌日視聴・記載) ファツィオリを使用。 ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21: 第1楽章は、遅めのテンポで比較的オーソドックス。 1つ1つの音を丁寧に扱い、歌うべきところは十分に歌わせているが、品と節度がありとても美しい。 展開部もテンポは抑えめですが、流れは安定しており、安心して聴いていられる演奏でした。 第2楽章も遅めのテンポで1つ1つの音を丁寧に扱い、センス良く旋律美を引き立たせていて惹かれる演奏でした。 トリルや装飾的パッセージも粒が揃っていてとても美しく響いていました。 第3楽章も遅めのテンポで軽めのタッチで品の良い演奏でした。もう少し華やかさとダイナミクスが欲しい気がしましたが、 これはこれで十分良い演奏だと思いました。惜しいミスタッチや音抜けがありましたが、 この人はそれを帳消しにしたい「何か」を持っています。不思議な人ですね。
ピアノ協奏曲2番が2人続きましたが、個人的にはこちらの方が数段しっくり来る演奏でした。 この人はステージが進むにつれて演奏が徐々に良くなってきている印象です。

B~C 8. Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
(リアルタイムで聴けず翌日視聴・記載) スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章の出だしはやや硬いと思いました。音色は硬めでフレージングはオーソドックス路線ですが、 ところどころ不自然なテンポの揺れがありました。技術的にも良いと思いますが、難所でテンポが安定せず、 決め手に欠ける印象でした。 第2楽章は抑揚が自然で良い演奏だと思いました。大きなミスタッチがありましたが・・・ 第3楽章は軽快でバランスも良いと思いますが、技術的に余裕がなくそのためにテンポが不自然になる箇所が 目立ちました。 全体として決め手に欠ける印象でした。 この人はまだ17歳と若いですし、今後に期待したいと思います。

※今日はJ J Jun Li Buiさんの演奏途中(第1楽章再現部の入り口辺り)で緊急コールが入り、対応していたため、 残念ながら演奏はほとんど聴けませんでした。明日帰宅後にアーカイブを聴いて追いつきます。 (明日はコンチェルト8人聴きということになりますね。明日は当番ではないですし、明後日は休みですので、 明日から本選結果発表までは何とか頑張りたいと思います)。

管理人コメント

予想していたことでしたが、今回の本選は近年稀に見るレベルの低さだと思います。 個人的な感想ですが、目下のところ優勝に値する演奏は皆無という印象です。

今日の出場者の中では、4番目に弾くBruce (Xiaoyu) Liuさんが注目ですが、 今日も目ぼしい演奏がなかった場合、やはり1位なしが妥当ではないかと思います。 というより、今回の本選進出コンテスタントたちを明らかに上回り優勝の可能性があるコンテスタントは 既に1次予選、2次予選、3次予選で敗退してしまいましたので、 今回の本選進出者の中のトップに第1位を与えるのは、そもそも道理が合わないことになります。

また逆に、今回の本選進出者の中から1位を出した場合、これまでの流れからは、 その優勝が出来レースであったことを結果的に私たち視聴者にみすみす暴露することに なってしまうわけですから、理屈から言えば1位なしに落ち着かざるを得ないことになります。

逆に言えば、今回のショパンコンクール、1次予選の時点ではあれだけポテンシャルのある 楽しみな才能が輝かしい演奏を繰り広げていたのに、彼らをあえて敗退させていった結果、 こんなにレベルの低い本選になり果てたわけですから、そもそも今回のショパンコンクールは 演奏の優劣を競うという本来の目的からは明らかに逸脱したものであり、 ピアニストのショー、オンパレードと考えた方がよいと思いました。

10月20日前半午後6時~9時(日本時間:10月21日(水)午前1時~4時)
C 9. Ms Aimi Kobayashi, Japan
スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章はテンポは遅く。1音1音に心を込めて切々と弾き進めていく。 弱音を基調とした内省的な演奏で、華やかさよりも弱音美を強く意識しているのが分かりました。 ただこの作品は若き日のショパンの作品ですし、もっと華やかさと輝かしさ、勢いが欲しい気がしますし、 それがこの作品・楽章の最大の魅力だと思うのですが・・・一般的な聴き手の求める音楽とは 方向性がやや違う気がしました。 第2楽章も遅いテンポで切々と語るような演奏ですが、音量が小さくこちらの心に響くものが 少し足りないように感じました。鍵盤を叩く弾き方は良くないですけど、もっとダイナミクスの幅を 付けた方が聴く人の耳に届くと思います(特に審査員はご高齢の先生方が多いので余計に・・・) 第3楽章は、普通のテンポですが、やはり音量が小さく華やかさや勢いがないのが惜しいです。 途中小事故(暗譜飛びによるミスタッチの連鎖)があり印象が悪くなってしまいました。 音量が小さく地味だったので積極的な加点はあまり望めなさそうな印象です。 慎重路線ではなく、もっと思い切り弾いてほしかったです。

B~C 10. Mr Jakub Kuszlik, Poland
スタインウエイ479を使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章の提示部は標準のテンポで流れに淀みがなく、テンポルバートも自然。テンポの軸もぶれない。 ところどころ細かいミスタッチはありますが、技術的には余裕があり安定感は抜群。 しかし展開部の左手の音型で大きなミスタッチの連鎖がありました。 展開部は華やかさがあまりなく地味な印象。やや準備不足でしょうか。 毎回同じことを言ってしまいますが、この作品は若きショパンの野心に満ちた作品のはずです。 もっと華やかさ、煌びやかな音色、勢いが欲しいと思います。 ただこういう、テンポの軸がぶれず安定した演奏はありそうでなかなかないので、それだけでも貴重でしょうか。 但しその基本が最低限出来ていて、なおかつ華やかでこの作品に相応しい演奏ができそうなコンテスタントは 既に本選には残っておらず敗退してしまっています。そこが何とも残念です。 第2楽章は、オーソドックスであっさりした表現でした。 第3楽章は、速めのテンポで爽快に弾いていますが、テンポを上げてもリズムが崩れることはなく 音の粒も揃っており、余裕がありそうに聴こえました。ただところどころ惜しいミスタッチがあるのと、 音色が地味のため、意外に華やかさに欠ける演奏でした。
※辛口を言うようで申し訳ないのですが、この演奏で最高位はあり得ないと思います。 予備予選の演奏を聴いて、この人を注目の1人とするかどうか最後の最後まで悩みましたが、 「上手いけど面白みがない」という直感の方が正しかったということがようやく分かりました。

C 11. Mr Hyuk Lee, South Korea
シゲル・カワイを使用。 ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21: 硬質の音色は相変わらずですが、少なくとも前奏者よりは音色は魅力的です。 第1楽章は、オーソドックスなテンポで全体としては悪くはないのですが、各フレーズの処理に丁寧さや注意力が足りないようで、 雑に響くのが気になりました。この人の癖というか、リズム、テンポのブレがどうしても気になりました。 この作品・楽章は甘美でロマンティックな魅力が欲しいのですが、この人の演奏は硬派でした。 第2楽章は、基本的にはトリルや3度進行などきれいに弾けていますが、ところどころ「あれ?」というような 大きなミスタッチがあり、ヒヤッとさせられました。 もっと自然で高貴な美しさが欲しいのですが、やや力みがあるようで不自然なテンポの揺れや音価の不均一さが 気になりました。 第3楽章は、芯のしっかりしたシャープな音色が活きて、華やかさもあり良い演奏だと思いました。 全体としては適度に華やかで良い演奏だと思います。

B~C 12. Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
ファツィオリを使用。 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11: 第1楽章は冒頭のピアノのオクターブで引っかけてしまいました。 第1主題の歌い方は早めのテンポでルバートは少なめであっさりしていました。 速いパッセージは軽妙なタッチで軽快に飛ばしていて良いと思いましたが、 ところどころ恣意的なテンポの揺れがあるのが、逆に「やりすぎ」のようで(これは好みの問題かもしれませんが)、 何とも惜しいと思いました。 もっと自然に弾いてほしいのに、と思うのですが、これがこの人の個性なのでしょうか。 再現部の第2主題の最後の方で左手の音型で事故が、そしてコーダでも低音のバスで大きなミスタッチがありました。 最終的にこれで印象がだいぶ悪くなってしまいました。 第2楽章は、オーソドックスなテンポで弾いていますが、節回しにやや作為が感じられるのと、 ところどころ楽譜にない音を弾いており、やや準備不足の感が否めない印象でした。 第3楽章は、軽快なテンポで音の粒も揃っていました。 ところどころ不自然なアクセントやアーティキュレーションがあり、興味深い解釈ですが、 好みが分かれると思いました。 しかし第3楽章をこれだけの完成度でキレキレの演奏ができるとは、この人はすごい超絶技巧ですね。 基本的にショパン向きではないと思いますし、個人的には好きなタイプではないのですが・・・

管理人コメント

12人全員の演奏を聴いた感想ですが、やはり優勝に値する演奏はないと思いました。

そもそもコンチェルトで優勝に値する演奏ができるコンテスタントは敗退組の中に眠っていることは間違いないと思います。 その意味で今回はこの12人はいずれも全出場者のトップにはなり得ないわけで(暫定トップは敗退者の中にいることは 間違いないと思われます)、その意味でも、今回は1位なしとならざるを得ないと思います。

また先程も述べたように、今回1位を出せば、その1位を脅かすコンテスタントを1次予選、2次予選、3次予選で 次々に敗退させた理由について、我々が納得できる説明が求められます。 これはかなり苦しいのではないでしょうか。その説明ができない場合、1位を出すことはできないということになります。

その点からも必然的に1位なしという結果にならざるを得ないと思います。

結局、どちらから議論を展開しても、今回のショパンコンクールの1位は該当なしにならざるを得ないというのが 僕自身の見解です。

敗退組の最上位層を集めて、本選をやり直したら、一体誰が優勝していたのでしょうか? 「幻の優勝者」を頭の中でシミュレーションしてみるのも面白そうですね。 いや本当はここで彼らのコンチェルトが聴きたかったのですが・・・(泣)

最終結果

日本時間10月21日午前9時過ぎ(ポーランド現地時間10月21日午前2時過ぎ)に、本選の最終結果が発表されました。 僕の記憶が確かならば、遠くさかのぼること31年前、史上初の1位なしとなった1990年も同じくらいの時間だったと 思います。2000年以降は必ず1位を出すという規定に変わったと言われていますが、それでも今回の本選の レベルの低さで本当に1位を出してよいのかどうかという議論があったのではないかと勝手に想像しています。

最終結果は以下の通りとなりました。

1位:Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
2位:Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia, Mr Kyohei Sorita, Japan
3位:Mr Martin Garcia Garcia, Spain
4位:Ms Aimi Kobayashi, Japan, Mr Jakub Kuszlik, Poland
5位:Ms Leonora Armellini, Italy
6位:Mr J J Jun Li Bui, Canada

コンチェルト賞:Mr Martin Garcia Garcia, Spain
マズルカ賞:Mr Jakub Kuszlik, Poland
ソナタ賞:Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia

本選出場者の中には、個人的に応援しているピアニストは1人もいませんでしたので、 僕の興味は、①今回1位が出るのかどうか(審査員は1位を出さないだろうと予想したのは前述した通りです)、 ②1位を出すとしたら誰なのか、③日本の反田恭平さんは何位に入賞するだろうか、の3点に 集約されると言ってよい状況でした。

結論から先に言えば、1位はカナダのBruce (Xiaoyu) Liuさん、日本の反田恭平さんは2位 (Alexander Gadjievさんと同率)となりました。

実はBruce (Xiaoyu) Liuさんは1次予選でほぼノーミスかつキレキレの会心の演奏をしていて、 その時から不気味な存在だとは思って、密かに注目していたのは、各予選レビューに記載した通りです。 「不気味」という言葉は本来ネガティブな意味で使いますが、 ここでは「正統派ではないながらも、並み居る強力な正統派の上に立てるような底力がありそうな」 というくらいの意味と考えて下さい。技巧派ではありますが、かなりの個性派なので、 本来このようなタイプはショパンコンクールでは日の目を見ることがないことが多いことは、ショパンコンクールの 過去の歴史を振り返っても明らかです(例えば、イーヴォ・ポゴレリチ、ケマル・ゲキチ、 アレクセイ・スルタノフなど超絶技巧の持ち主)。 しかしそれはあくまでも相対的な評価に立脚したもので、上に挙げたピアニストたちが出場したショパンコンクール では優秀な正統派が評価され、勝ち残っていく過程で、その路線から逸脱した個性派として評価されず 脱落していくという運命をたどりました(スルタノフは例外的に最高位となりましたが)。 しかし今回はそれとはむしろ逆で、優秀な正統派が冷遇され脱落していったために、 このような個性派(この人だけではありませんが)が勝ち残ることとなりました。

Bruce Liuさんの演奏は個性的で本来のショパンらしさとは異なるため、賛否両論あると思いますが、 凄みがあるユニークな演奏であることは確かです。他にこの人の存在を脅かす強力なコンテスタントが 脱落して既にかなり少なくなった状態では(今回の本選がまさにそのような状態です)、 このようなタイプは非常に目立つ存在となります。 そして、この本選のレビューで僕がたびたび述べたように、技術的に今一つのコンテスタントによる もたついたコンチェルトが続きましたが、そのような演奏を聴き続けてストレスがたまった聴き手(審査員、会場の聴衆、そして僕たち 外野のネット視聴者も含めて)に新鮮な驚きを与える切れ味抜群の演奏ができる底知れぬ能力を この人が持っていることは確かでした。 僕が、最終日、この人に注目していると言ったのはそのように考えてのことでした。

しかし昨日というか今朝方、本選のラストでこの人のピアノ協奏曲1番を聴いて、切れ味はあるものの、 節回しは恣意的でミスタッチも多く、さすがにこれでは優勝はないとがっかりしていたところ、 会場の聴衆の受けはよく、そしてまさかの優勝に輝いたという次第です。

この流れからは、僕を含めて、この人の優勝に納得できた人は少ないのではないかと想像するのですが、 いかがでしょうか。本選のコンチェルトは節回しはショパンらしいとは言い難い恣意的なもので、 第3楽章は技術的には切れ味がよく素晴らしいのですが、弾き飛ばしすぎの感があり、 特定の音にアクセントや個性的なアーティキュレーションを施すなど、作為を感じさせる表現に対して、 僕自身は「これはショパンではないだろう」と頭を抱えていたくらいでした。 当然、手放しで絶賛できる演奏ではなく、あとは他のコンテスタントの演奏との相対比較となるわけですが、 そうなると、他のコンテスタントのコンチェルトの演奏に目ぼしいものがないという状況の中で、 この人の演奏は相対的に浮上せざるを得ないわけです。 加えて、この人は予選でも切れ味抜群の超絶技巧的な演奏で目立っていましたので、その点が評価されたのだと 考えられます。

つまり、Bruce Liuさんが第1位となったのは、他に1位受賞に相応しいコンテスタントが 本選の中に残っていなかったから、という消極的な理由によるものと考えられます。 何故、優秀な正統派を敗退させたのかは、この流れから想像することしかできません (僕があえて説明しなくても想像はつくと思いますが)。

また日本の反田恭平さんが見事第2位に輝きました。日本人の上位入賞は1970年の内田光子さん の第2位、1990年の横山幸雄さんの第3位に続き、日本人として3人目の快挙です。 内田光子さんに並ぶ日本人のタイ記録で、まさに快挙です。本当におめでとうございます。

また小林愛実さんも第4位入賞となりました。6年前にファイナリストになりながらも惜しくも入賞ならず、 今回のショパンコンクールにかける執念が伝わってきましたが、その思いがようやくこうして実を結びました。 日本人4位入賞は、1965年の中村紘子さん、1985年の小山実稚恵さん、2005年の山本貴志さん関本昌平さんに次く快挙となります。本当におめでとうございます。

とりあえず本選速報として本記事をアップします。 今回のショパンコンクールについて思うことは、またこの後、このページで綴っていきたいと思いますので、 よろしくお願いします。

追記:

連日、たくさんの方からメールで応援メッセージをいただいています。 いただいたメールは全て1字残らず目を通していますが、全てに返信することはできず申し訳なく思っています。 今回のショパンコンクールの感想、当サイトの感想など何でも構いませんので、お気軽に送っていただけると 大変嬉しいです。

総括・今回のショパンコンクールを振り返って

当サイトでは、前回2015年第17回ショパンコンクールから、予選・本選の各コンテスタントの演奏に対する 個人的感想とランク付けを行い、通過予想をするという試みを新たに始めました。 これが当初の僕自身の予想をはるかに上回る好評で、ショパンコンクール3次予選・本選では、 1日1,000PV(ページビュー・閲覧数)という当サイト始まって以来のアクセス数を記録したほどでした。

そのときに次回も同様の企画を、という声が上がっていましたが、今回は仕事との両立は不可能ではないかと 当初は諦めていました。しかし今回のショパンコンクールの予備予選の期間中(7月中旬頃)に、 複数の訪問者の方から、今回もショパンコンクールの視聴記を楽しみにしているというメールをいただき、 改めて検討し直したという次第です。

普段の僕は気が向いたときに好きなピアニスト(例えばツィメルマン、ブレハッチ、ブーニン、ポリーニなど)の演奏をYou Tubeで聴くだけで、多くの無名なピアニストの演奏を 聴く機会はほとんどないのですが、今回、7月に行われた予備予選の全通過者78人の全演奏を聴いて、 新たな才能を発掘する楽しみを久しぶりに味わい、その才能が今回の10月のショパンコンクールで 高く評価され、世界に羽ばたくのをリアルタイムで追いかけてみたいという気持ちが沸々と沸き上がり、 今回も万難を排して、2度目のショパンコンクール視聴記を敢行するに至った次第です。

それと今回は日本人コンテスタント、特に男性のコンテスタントが経歴的にも個性的で興味深く、 特に角野隼斗さん(東大卒)沢田蒼梧さん(医学生)は、僕自身の経歴とも共通するところがあり、 東大卒ピアノ愛好者、現役医師ピアノ愛好者(医学部は東大ではありません、念のため)として 彼らを応援することとしました。 また既にプロのピアニストとしてキャリアを築いている反田恭平さんと 前回ショパンコンクールファイナリストで再挑戦の小林愛実さんは実力派として 日本人入賞を期待していました。その他にも日本人コンテスタントが多数挑戦しており、 浜松国際ピアノコンクール第2位の実績で予備予選免除となった牛田智大さんにも期待していました。

前回は予備予選の演奏は日本人通過者のみ聴いて、本格的なレビューを始めたのは1次予選からでしたが、 今回は予備予選から始めました。リアルタイムで聴けたのはほんの数人だけで、予備予選に関しては、 終了後、通過したコンテスタント78人に絞って、その全演奏を7月下旬から8月上旬にかけて、 集中的に聴き込んで個人的な演奏評とランク付けを行い、その最上位層についてはその全演奏を2~3回、 繰り返し聴いた上で確認して、最終結果として特に僕が注目したコンテスタントとして9人紹介しました。

結論から先に言えば、予備予選の演奏を聴いて僕が抽出した9人のうち、入賞したのは、 ポーランドのJakub Kuszlikさんただ1人で、正直なことを言えば、 この人も注目すべきコンテスタントの1人に含めるかどうか、最後の最後まで悩みました (このことは予備予選レビューに記載した通りです)。 特に注目すべき4人として挙げたピアニストのうち、3人は1次予選敗退、残る1人は2次予選敗退という 惨憺たる結果となってしまいました。「そんなに僕の耳はおかしいのか」と納得できない気持ちで、 再度予備予選の演奏を聴いたのですが、僕が挙げた4人のコンテスタントは、それ以外の コンテスタントの演奏をはるかに上回っていることは間違いないという確信を強めるだけでした。

今回の予備予選の演奏で僕が特に注目したのは、いずれも中国人で、17歳のYifan Houさんと 21歳のShun Shun Tieさんの2人でした。特にYifan Houさんはものすごい超絶技巧の持ち主で、 ショパンのエチュードOp.10-8を信じられないアップテンポで全く破綻せずにテンポの軸もぶれずに ものすごい粒立ちの音で最後まで完璧に弾き切ってしまいましたし、エチュードOp.10-10では、あのポリーニもかくやと思わせるような 音色・音量の精密なコントロールで、この作品のあるべき理想の姿を、何の苦もなく再現してしまっており、 これはまさに驚愕の名演、世紀の名演と言って少しも大袈裟ではありませんでした。 一方、ノクターンOp.27-1では、この作品の旋律美を鉄壁のコントロールで再現していて見事でした。 若きポリーニの再来かと思わせるものがあり、 この時、僕は「末恐ろしい天才が現れた」と驚愕し、この人は今回のショパンコンクールの最注目の1人になり、 おそらくは優勝するに違いないという確信に至りました。 そのことは予備予選レビューに記載した通りです(予備予選レビューでは「どこかの予選で敗退することがイメージできない。 今回の全コンテスタント中、最も優勝に近い位置にあると思う」という控えめな書き方でしたが、 僕の中では「確信」と言ってよいほどでした)。 同じ中国人17歳のHao Raoさんも注目すべき1人として予備予選レビューで紹介し、 最終的には中国人でただ1人、3次予選・本選進出を果たしましたが、 この人の存在が霞んでしまうほど、Yifan Houさんの演奏は強烈なインパクトを与えるものでした。

しかし1次予選では、Yifan Houさんと僕が注目していたもう1人の中国人Shun Shun Tieさんと、 2人揃って敗退となりました。Yifan Houさんは1次予選では予備予選でのエチュードOp.10-10のような 「超」付きの名演は出ませんでしたが、圧倒的な技巧とパワーで若さ溢れる演奏をしていましたし、 Shun Shun Tieさんは予備予選の時に感じられたスタミナ不足を感じさせない集中力で、 極上の輝かしい音色で非の打ちどころのない完成度の高い演奏を披露していて、この演奏を聴いて、 3次予選進出までは間違いないと思ったものでした。 この2人の演奏は、少なくともここで敗退するレベルのものではなかったことは間違いありません。 同じような感想を抱いた経験豊富な方々からのメールも多数いただきました。 一方で、「この人は予備予選で敗退させるべき人だった」と思われる、僕にとって問題外の演奏をしたコンテスタントが 大勢1次予選を通過してしまいました。「審査員の先生たちは、何を聴いているのだろう」と 非常に歯がゆい思いをしたのは言うまでもありません。 これは1次予選レビューに記載した通りです。

2次予選でも、優秀な演奏をした中国人コンテスタントと、2人の日本人牛田智大さん京増修史さん が敗退しました。特に牛田さんは1次予選では心に迫る圧巻の演奏をしていましたし、2次予選では より柔軟性を意識した演奏で、この人の表現力の「引き出しの多さ」と多彩さ、そして卓越したテクニックを 印象付けるものでした。今回の日本人コンテスタントの上位層にはこのような正統派が少なかったため、 特にこの人には期待していたのですが、結果的には敗退してしまいました。 その一方で、この2次予選でも「この人は絶対に通過しないだろう(通過させてはいけない)」と僕が思った コンテスタントが大勢通過していました。 この結果を知ったときは、まさに雷に打たれたようなショックで言葉が出ませんでしたし、 このときも「審査員の先生たちは何を聴いているんだろう」と歯がゆさを通り越して、怒りの感情が 沸々と沸き上がってきました。これも2次予選レビューに記載した通りです。

3次予選まで来ると、僕が注目していたコンテスタントは大勢敗退した後で、興味が半減してしまっていましたが、 その中で正統派として注目していたのが、韓国のSu Yeon Kimさんでした。 僕は女性ピアニストの演奏はあまり好きではないというのはここで再三述べている通りですが、 ここまで正統派が少なくなってくると、この人の清純で穢れがないただひたすら美しく完成度が高い演奏は、 非常に希少な存在となって際立ってくるのを感じました。 この3次予選では、1次予選、2次予選と比べるとミスタッチがやや多く、精彩を欠いている部分はありましたが、 それでも僕が聴いた3次予選、全23人のうちで、僕の中では間違いなくトップでした。 一方、予備予選の演奏ではそれほど惹かれなかったものの、1次予選のスケルツォ4番で切れ味鋭い完璧な演奏を したカナダのBruce Liuさんを密かに注目し始めていました。スケルツォ4番は技術的にかなりの難曲で、 この曲の超名演はなかなか聴けませんが、Bruce Liuさんの演奏は、ショパンコンクールが生んだこの曲の名演としては、 1985年のブーニン、2005年のブレハッチの名演に匹敵すると思います。 その一方で、この3次予選でも「どうしてこの人がここまで残っているのだろう」と不思議に思うコンテスタントが 大勢残っていました。 このように僕から見て近年稀にみるレベルの低い3次予選であったにもかかわらず、そのトップと思えた Su Yeon Kimさんが敗退してしまいました。その他の敗退者は概ね異論がありませんが、 何故その中に、こんな宝石が混じってしまうのか、と信じられない気持ちでした。 そして、Su Yeon Kimさん以外の落ちるべくして落ちたコンテスタントは、 ここで落とすのではなく、もっと早い段階で見抜けたでしょう、その代わりに敗退させずにもっと聴いておきたい ピアニストはたくさんいたでしょう、審査員の先生たちは何を聴いているのだろう、 とここでも歯がゆい思いをしたのは言うまでもありません。

こうして本選に残ったメンバーを見ると、「なんでこうなっちゃったかな・・・」とため息しか出ませんでした。 少なくとも予備予選の段階では、あれだけ測り知れないポテンシャルを秘めた将来が楽しみな天才たちが数人以上はいたのに、と思うと、 失望を通り越して絶望と言ってよいほどでした。 このことは、こちらのレビューでもその都度、述べてきたことですが、 それに対して「審査員の先生たちの判断の方が正しいのだから、素人があれこれ言うことではない」、 「会場での音の聴こえ方と配信音の違いによるものではないか」、「審査員の先生たちは、そもそも別の次元の 音楽を聴いているのだろう」という意見もいただきました。 確かに僕は素人ですが、逆に言えばその素人でさえ分かるような技術的に粗が多くテンポの軸がぶれるような 不安定な演奏をするコンテスタントを、プロの審査員が何故、3次予選、本選まで進めてしまったのでしょうか。 テクニックよりも音楽性・個性の方が大切だ、プロの審査員はその音楽性や個性を尊重したのだ、という 反論もあるのでしょうが、本来、ピアノ演奏に限らず芸術における個性・表現力というのは、 しっかりとした基礎技術が大前提で、その上に立脚するものでなければならないというのは、異論の余地がないと思います。 過去のショパンコンクールで最高位となったアルゲリッチ、ブーニン、スルタノフなどは個性派ですが、 この人たちは今回の本選進出者のような、テンポの軸がブレるというような不安定な演奏をする人たちではなく、 偶発的なミスタッチはあるにせよ、その土台となる基礎技術は今回の入賞者の平均レベルとは 比較にならないほど卓越しています。 そのものすごい基礎技術に立脚したものであるからこそ、彼らの個性溢れる演奏は僕たちを魅了するのです。 それに比べて、今回の本選進出者の演奏は、素人の僕が聴いても、ミスタッチ以前に弾けていない演奏が多く、 とてもショパンコンクール本選の演奏とは思えないほどで失望しました。 その中では、Bruce Liuさん反田恭平さんは、技術的にはまともな演奏をしていたと思います。 僕が注目していたYifan HouさんShun Shun Tieさん牛田智大さんが 今回の本選まで残っていたら、どんなに素晴らしいコンチェルトを聴かせてくれただろうか、と思うと、 ただただ残念で仕方ありませんでした。

話は横道にそれますが、 2000年第14回ショパンコンクールで中国人初の優勝に輝いたユンディ・リが買春の容疑で 北京の警察当局に拘束されるという報道が10月22日にあり、衝撃を受けました。 このことと、今回のショパンコンクールでの中国人大粛清との関連は不明ですが、 ショパンコンクール終了直後というタイミングを考えると、関連がありそうに思えてしまいます。 ユンディ・リの犯罪をきっかけに、中国当局が西洋文化の代表であるクラシック音楽とそれに携わる 演奏家の扱いを厳しく取り締まる動きに出た可能性があるのかもしれないと思い始めています (もしあるとすれば文化大革命の現代版とでも言うべきものですね)。 あるいは、ショパンコンクールの権威と名誉を傷つけるユンディ・リの軽率な行為に対して、 ショパンコンクール側が見せしめ的にこのような中国人大粛清に踏み切ったという可能性も 考えましたが、そうなると同じ中国人というただそれだけの理由で、 今回出場した中国人コンテスタントが不当な扱いを受けることになるわけで、 こちらの可能性は考えにくいと思いました。

今回のショパンコンクールの入賞者は基礎技術に難がある個性的なピアニストが多いですが、 これが今回の審査員に選ばれた最上位層、今後のショパン演奏の担い手として期待されるメンバーということに なります。皆さんも前回2015年の入賞者の本選の演奏と聴き比べてみて下さい。 あまりのレベルの違いに愕然とすると思います。 これが同じような顔ぶれの審査員によって選ばれた入賞者だとは思えないくらい、 演奏の技術的完成度やその演奏の特徴や方向性が違います。

今回のショパンコンクールからは、その表現の礎となる基礎技術よりも、ユニークさや多様性を尊重する方向に 急激に舵を切ったということでしょうか。そしてショパンの心の襞に分け入っていくような陰影に富んだ繊細な表現に 重きを置く伝統的で保守的な表現スタイルを好む僕たちショパン愛好者の求める真のショパン演奏は 正当に評価されず、そのような演奏は徐々に廃れていってしまうのではないかという強い危惧があります。 僕はツィメルマンやブレハッチのような演奏スタイルこそ、真のショパン弾きだと思っているのですが、 今回のショパンコンクールの審査結果を見る限り、明らかにそれとは真逆の方向に向かっています。 審査がその方向に向かっているのに、まだ伝統に固執している僕の方が、時代に乗り遅れているのでしょうか。 審査員の先生方の経歴を見る限り、とても素晴らしい耳をお持ちで繊細なショパン演奏を重んじる 伝統的で保守的な方が多そうなのですが・・・今回の審査結果がそのイメージと大きくかけ離れていることに 大きな違和感を感じてしまうのは僕だけでしょうか。

今回のショパンコンクールでは1次予選、2次予選、3次予選と、音色が魅力的で技術的にも筋が良くて 素晴らしい繊細なショパン演奏をした、僕から見て最上位と思われるコンテスタントが次々に敗退してしまったのは 各予選レビューで述べた通りです。 審査員の先生方が各コンテスタントの演奏内容だけを評価基準としていたならば、絶対に敗退などするはずがない と思われる最上位のコンテスタントが次々と敗退していったのは何故でしょうか。 そしてその代わりにテクニックがおぼつかない、またはショパンらしさからは程遠いコンテスタントが 多く通過したのは何故でしょうか。 今回のショパンコンクールはあまりにも謎が多すぎます。 これは、これまでいただいた大勢の方からのメールでも同様の疑問の声や怒り、失望の声が聴かれたため、 僕だけの感想ではないと思います。 今回は各予選で最上位層が敗退してしまったために、近年稀に見る低レベルな3次予選、本選となったことが、 何より今回の審査の「おかしさ」を浮き彫りにしていると思います。 最上位層が敗退したのは偶然ではなく何らかの意図によるものとしか思えませんし (偶然にしては優秀な敗退者が多すぎますし、凡庸な通過者もまた多すぎます)、 それは他のあるコンテスタントを相対的に浮上させるための裏工作であったと思われても仕方のないものでした。 僕のこの記事の内容が巡り巡って、今回の審査員の先生方、 関係者の方々の耳に入り、心を痛めて、次回以降、気持ちを入れ替えて正しく公平に評価しようと襟を正して いただければ、このレビューの目的は果たされたと考えます。

僕はただ単に、才能があり将来性がある真のショパン弾きが正当に評価されるという、 ごく当たり前のことをショパンコンクールに求めているだけです。その最低限の役目さえ失っているように思えた 今回のショパンコンクールの審査結果に一言、異議を申し立てたかっただけで、 次回以降、このようなことが二度と起こらないことを願っている、ただそれだけです。

しかし今回のショパンコンクールでは素晴らしい才能を発見できました。 残念ながら、その人たちは全員予選で敗退してしまいましたが、それでも注目の才能を発見するという 僕なりの目的は果たせましたので、それでよしとしたいと思います。

今回のショパンコンクールは新型コロナウイルス感染症の流行のために、開催が1年遅れましたが、 次回は通常通り、2025年、つまり4年後に開催されるそうです。 そのとき僕はどのような状況となっているか全く分かりませんが、 可能であれば、また同様の企画をしたいと思います。

今回は予選・本選レビューのページがたった1ページだけで連日、15,000PV(ページビュー、閲覧数)にも達し、 本当に驚きました。まさに「バズった」のは、当サイト始まって以来でしたし、 これだけたくさんの方に読まれていると思うと、更新のモチベーションも急上昇しました。 その中にはこのショパンコンクールをきっかけに当サイトの存在を知ったという方も多数いらっしゃるようでした。

ショパンコンクールが終わり、今後しばらくはまた更新も落ち着くと思いますが、 ショパンに関して僕自身が持っているネタは無尽蔵ですし、この機会に更新のモチベーションが上がりましたので、 また時々更新を続けていきたいと思います。

ショパンコンクール期間中、こちらのレビューをご覧いただいた皆様、ありがとうございました。 また4年後、2025年第19回ショパンコンクールでお会いしましょう!(あれ?この言葉、どこかで聞いたことがありますね)。

追記:審査結果の分析について(2021/10/25)
まだこちらをご覧くださる方々が多いので、今回のショパンコンクールについて、当サイトに何かを期待している方が 多いのではないかと想像しています。

前回は1次予選から本選までの各審査員の採点結果が公表され、そのうち本選だけ掲載して、僕なりの分析を 試みました(前回のレビューによれば、既に10月23日には公表されていました。 そして、極端な採点をした審査員がいたことも判明しました)。 ショパンコンクール側は、前回同様、今回も採点結果を公表すると事前にアナウンスしていましたので、 遅かれ早かれ公表されると思います。今回のショパンコンクールの審査には疑問点が多いので、 公表されるとしても、その結果にどこまで信憑性が期待できるかは判断が難しい問題ですが、 その結果をもとに可能な範囲内でこちらで分析を試みたいと思います。

またショパンコンクール側が当初の予定を覆し、審査結果の詳細を公表しないことになった場合、 今回の審査で何らかの不正や裏工作があったことを隠蔽したと確信する人たちが続出するのは間違いないため、 ショパンコンクール側は、審査結果を公表しないという選択肢はないと考えています。

今回の審査結果が公表されるのを待ちたいと思います。

採点結果が公表されました

11月4日にショパンコンクール公式サイトで1次予選、2次予選、3次予選の採点結果が開示されました。 しかし本選の結果が開示されていないことや、予選の採点結果の開示までにこれだけの時間を要したことからは、 何らかの点数操作(改ざんと呼ぶかどうかはともかくとして)が加わったと考えるのが自然だと思います。 というのも、点数操作が必要なければ、採点結果開示までに時間を置くのは「怪しまれる」という デメリットしかないため、今回の採点結果開示までの時間は、ショパンコンクール側においては 何らかの工作を行うためには絶対に必要な時間であったと考えられるわけです。

今回のショパンコンクールの審査結果、最終結果にはどうも納得できず、怒り、落胆、失望を感じて いらっしゃる方を中心に審査・採点結果の分析を心待ちにしている方からのメールもいただいていますし、 僕自身もこのまま引き下がるわけにはいきませんので、ショパンコンクールは終わったとは言っても、 ここからがもう一仕事、いや、一仕事ではなく、これまでの視聴記と同じか、それ以上の仕事というか大きな課題が 残されたという認識です。

結果については、ざっと見たところ、疑問点ばかりの結果でした。 しかし「正統派がこれだけ評価されないのはおかしい」という主観的コメントだけでは、反論の隙がありすぎますし、 例の「会場での生の音と配信音の違い」や音楽の主観的好みを引き合いに出されて、煙に巻かれてしまいそうですので、 そのような主観だけでなく、数値的な統計学的手法を駆使した解析を用いて、 今回の審査での「闇」を可能な限り客観的に示すことを目指します。

現在、各予選の審査結果を全てEXCELシートに打ち込んで、各審査員の音楽的志向・通過/敗退的中率などを含め、 各コンテスタントの予選通過順位を割り出しています。 これによると、今回優勝者のBruce Liuさんは、1次予選、2次予選、3次予選ともに単独首位で 通過していることが分かりました。しかもこの人は全ての予選を通して、ただ1人の審査員からも'NO'を付けられず、 YES獲得率100%で通過していることが分かりました。 これは前回2015年優勝のチョ・ソンジンでさえ達成できなかったことで、ここまで圧倒的にぶっちぎりの優勝を飾ったのは、 近年ではラファウ・ブレハッチくらいではないかと思います。 しかし僕たちネット配信視聴者の感想として、Bruce Liuさんが、ここまで圧勝しているという 実感を持てた人が果たしてどれだけいたでしょうか。 この辺りからして、既に点数操作や裏工作の匂いが漂ってきますが、それをどうやって反論の隙を作らずに 客観的に示せるか、です。

とりあえず、現在、各予選データ解析中で、あらゆる角度から採点結果の矛盾点や闇を暴き出そうと試みている ところです。忙しい仕事の合間の時間を使っての解析であるため、時間がかかりそうですが、 時間はかかっても、閲覧者の皆さんに納得していただけるような解析結果をお示ししたいと思いますので、 今しばらくお待ちください。

各予選のYES獲得率順(同率の場合は点数順)に降順に並べ替えたEXCELシートのPDFファイルを独自に作成して、 公開しますので、各自ご自由にお使い下さい。

1次予選通過順
2次予選通過順
3次予選通過順

このデータは初歩的なもので、もう少し詳しいデータを作成して解析していますが、 もうしばらくお待ちください。

2021/11/06

採点結果から気づいた点について

今回の採点結果の矛盾点を数値的に客観的に示すという方針で取り組んでいますが、 特に今回はまさに僕のように予想が全然当たらない審査員が結構いたりして、 前回と比較して、審査員の的中率(yをつけて通過したコンテスタントとnをつけて敗退したコンテスタントの総数 の全コンテスタントに占める割合)の平均がかなり低く出ているのではないかと予想して、 これもEXCELシートで算出してみました。

その結果、審査員の通過/敗退的中率は、前回2015年の1次予選:0.74, 2次予選:0.70、3次予選:0.76)と比較して、 今回は1次予選:0.73、2次予選:0.75、3次予選:0.72と、 統計学的には明らかな有意差はなさそうな印象でした(計算するまでもなさそうです)。

ここで有意差が出れば、それだけで「今回の採点結果はおかしい」と断言する有力な根拠となったはずで、 そこが何とも残念ですが、有意差が出なかったからと言って、当然のことながら、おかしさや矛盾点が 否定された、突っ込みどころがない、というわけではありません。

例えば、ある特定の審査員が、特定のコンテスタントにYと高得点を付けたとしても、 点数操作の結果、得点が差し引かれ、判定Nと変えられ、その結果、そのコンテスタントが敗退した場合、 この審査員の審査結果は「的中した」と判定されるわけですから・・・

やはり数字をやみくもにいじるだけでは真実を暴くことは困難と考え、ある程度の主観から出発せざるを得ないと、 方針を転換することとしました。 例えば数学の定理でも、難しいものは最初は「こうなりそう」という予想が初めにあって、 その予想の正しさが示されて、初めて「定理」として確立する、という歴史を繰り返して、 理論体系が確立されてきたのは、 皆さんもご存じの通りです。今回の数字は高等数学を持ち出すほど大袈裟なものではありませんが、 考え方としては、まずこれらの採点結果をつらつらと眺めて気づいた点から出発し、 その矛盾点をあぶり出していく、という流れで進めていきたいと思います。

管理人の好まない演奏スタイルが一致~ヤブウォンスキ氏の採点結果に着目

今回の審査員の17人の点数の付け方はそれぞれ特徴がありますが、僕自身に一番近い採点をしているのは、 ポーランドのクシシトフ・ヤブウォンスキ氏で、その次がケヴィン・ケナー氏でした (一部大きな例外があり、そこにこそ、今回の審査の最大の問題点が潜んでいる可能性が高いと考えました)。 各審査員の採点の仕方が自分に似ているかどうかを見極める上で重要なのは、 各予選の上位通過のコンテスタントに、'NO'をつけるパターンに着目することです。 これにより、各審査員がどのような演奏を嫌うのかがあぶり出されてきます。

今回の審査では最優秀の正統派のコンテスタントが次々に謎の敗退をしていることが 問題となっているのは再三指摘している通りで、彼らを敗退させるためには、点数の下方修正が 必要になるわけで、下方修正の結果、優秀なコンテスタントに'N'が付いてしまう、という現象が 想定されているわけですが、上位通過のコンテスタントは、そもそも上位通過させようという 審査員の合意があるわけですから、上位通過者に下方修正が適用されることはないと考えられます。 だから、上位通過者に対する審査員の'NO'はそれに該当する審査員の不本意な下方修正によるものではなく、 その審査員の真の判定と考えて間違いないと思います。

ところで演奏の好みと採点の傾向についてですが、 僕自身は、技術的に高度で安定した演奏、音色が美しく洗練された陰影に富む繊細な正統派の演奏に 高い点を付け、それとは逆に、技術的にレベルが低くて粗が多く、個性的な演奏スタイルには低い点を 付ける傾向があります。 ヤブウォンスキ氏が嫌う演奏もまさにこのような傾向があることが読み取れました。 例えば、ヤブウォンスキ氏は、1次予選でLeonora Armelliniさん(Y獲得率0.88)、 Yutong Sunさん(Y獲得率0.80)、Georgijs Osokinsさん(Y獲得率0.75)、 Nikolay Khozyainovさん(Y獲得率0.75)、Michelle Candottiさん(Y獲得率0.73)、 Mateusz Krzyżowskiさん(Y獲得率0.69)に、'N'を付けています。 僕自身のレビューを見ていただければ分かると思いますが、概ね一致しています。 そのうち、Yutong Sunさんについては2次予選を聴いて、認識を改めましたが、 それ以外のコンテスタントについては、概ね好みからは大きく外れていました。

またヤブウォンスキ氏は2次予選では、Alexander Gadjievさん(8位通過、Y獲得率0.76)、 Nikolay Khozyainovさん(11位通過、Y獲得率0.76)、Eva Gevorgyanさん(12位通過、Y獲得率0.76)、 Leonora Armelliniさん(13位通過、Y獲得率0.71)に、'N'を付けています。 これも当サイトのレビューを読んでいただければ、一致しているのが分かると思います。 逆に正統派Su Yeon Kimさんは 結果的には23位ギリギリ通過で、ヤブウォンスキ氏はこの人には'N'を付けていますが、 この判定に関してはヤブウォンスキ氏の本意ではないと思われます(後述)。

ところで、ヤブウォンスキ氏は、3次予選には審査を欠席しましたが、その理由については 様々な憶測を呼んでいます。審査結果に納得できず怒ってしまった、 急用ができた、体調を崩した、などなど・・・。 僕の感覚では、少なくとも前回までのショパンコンクールであれば、 上記の2次予選上位通過者で、ヤブウォンスキ氏があえて'N'を付けたコンテスタントは、 絶対に通過しないレベルですし、通過させてはならない人のはずです。 この人たちが通過してしまうことに、ヤブウォンスキ氏はどうしても納得できなかったのではないか、 そして審査結果に激怒してしまったのではないか、というのが僕自身の見立てです。 少なくとも僕も同じ見解を持つ人間として、今回の審査結果に腹を立てているわけですから、 その点、ヤブウォンスキ氏とは同じ感情を深い部分で共有していると考えています。 ショパンコンクール公式サイトでも、審査員達が集まって挙手している中で、 ヤブウォンスキ氏が唯一挙手していないシーンの写真が公開されていますが、 その理由が、まさにこれではないかと考えられるわけです。

なお、予備予選から僕が特に激賞している2人の中国人、Yifan Houさん、Shun Shun Tieさんに対して、 ヤブウォンスキ氏の採点結果は、いずれも'N'となっていますが、 ヤブウォンスキ氏の上位陣に対する採点の指向性から考えると、この2人に対して本当に'N'を付けるとは どうしても考えにくく、この結果は点数操作が加わったものの可能性が強く疑われます。 2次予選のSu Yeon Kimさんについても点数操作の疑いが濃厚ではないかと個人的には考えています。 これについては日を改めて議論したいと思います。

ところで、ヤブウォンスキ氏は、1985年ショパンコンクールでブーニン、ラフォレに続いて第3位入賞に輝いた ポーランドの名ピアニストで、アンジェイ・ヤシンスキ氏(ツィメルマンの師匠)に師事、つまり ツィメルマンの弟弟子にあたります。 今回のショパンコンクール前の貴重な審査員インタビューがありますので、リンクを下記に貼っておきます。

参考リンク
ヤブウォンスキが審査員としての胸中を語る~ショパンの音楽をリスペクトして

上記のページでのヤブウォンスキ氏のコメント全てが非常に興味深く含蓄に富む素晴らしいものですが、 その中で特に印象に残った部分を引用、掲載します。 「ショパンの演奏については多くの記述が残っていますが、もっとも頻繁に使われている表現は、 並外れた美を持っていた、ということ。繊細で詩的で、絶対に騒々しくならない。 劇的だったり叫んだりする場面でも、野蛮さを感じさせてはいけない。 彼は、心の中で苦しんでいても、静かに、美しさのうちにそれを表現したのです。」 これほどショパンの美の特徴を的確に表した表現はないとも思えるほどです。

そして、明らかに間違ったフレージングや不適切にダイナミックで過度に華やかな演奏で 聴衆を熱狂させる演奏に出会うことがあるが、そういうにせもの演奏の探知能力には ものすごく長けています、という内容の頼もしいコメントをしているのが印象的でした。

今回のショパンコンクールで、ヤブウォンスキ氏が「にせもの演奏」に'N'を付けながらも 次々に予選を通過していき、その一方で、本物のショパン演奏をした優秀な正統派コンテスタントが 次々に敗退していくのを、一体どのような思いで耐え忍んできたのか、と思うと、 氏の悲嘆と憤慨はいかばかりかと推察せざるを得ません。 今回のショパンコンクールの審査の闇について告発してくれる人が現れるとしたら、 きっとこの人に違いないと思わせてくれました。

ヤブウォンスキ氏に直接インタビューできる機会に恵まれたとしたら(夢のような話ですが)、 真っ先にこの点について質問したいと思いました。

話は戻りますが、ヤブウォンスキ氏が3次予選の審査を欠席した理由は、 審査結果のあまりのひどさに腹を立てたということと、 これと関係しますが、自分の審査結果が歪められて公開されることに、これ以上耐えられなかったからではないか、 と考えています。 もし僕が審査員だったとしたら、「このピアニストにこんな点数を付けるなんてひどい審査員だ」 と言われ続ける、もしくはずっとそのことを引きずって生き続けるのは正直非常につらいです。 上記リンクのヤブウォンスキ氏へのインタビューでも、 「あとでつけた点数が公開される状況では、この人にこんな点を入れるなんてひどいやつだと 嫌われるかもしれませんから、本当に大変な作業です(笑)。審査をするより、 コンテスタントとして参加するほうが気が楽なくらいですよ。」というコメントがあり、 ヤブウォンスキ氏の審査員としての真摯な態度が伺えますし、 ましてや今回の明らかにおかしなヤブウォンスキ氏の審査結果が自らの過ちが原因ではなく、 不本意ながら点数操作で歪められた結果であったとしたら、なおさらです。

こう考えると、この状況にこれ以上耐えられないと判断し、3次予選の審査を欠席したと考えるのが 妥当だろうと思います。 しかし、ヤブウォンスキ氏は本選の審査には復帰しました。何故か? もう腹を括ったからではないかと僕は考えています。 この状況からは「この際、本選の採点で思い切り自己主張しよう、 ひと暴れしてやろう」と思ったとしても不思議はありません。 本選の採点結果が未だ開示できずにいるのは、そのヤブウォンスキ氏の採点結果が 物議を醸しそうで厄介だから、というのが理由にあるのかもしれない、 あるいはそのためにその後の点数操作、辻褄合わせが不可能となったからかもしれないとも考えました (全く的外れな想像かもしれませんが)。

今回は特定の審査員ヤブウォンスキ氏に焦点を当て、そこから抽出される真実について見てきました。

次回は他の審査員の採点の傾向と、審査結果表から抽出されるポイントについて見ていきたいと思います。 また審査員に師事するコンテスタントと師事していないコンテスタントの採点結果に、どれだけ有意差が 生じているかどうかについても、統計的に分析する予定です。

2021/11/07

3次予選進出者の得点まとめファイルを作成しました

各予選において各コンテスタントが、どの審査員からどのような評価を受けたのか、 これはパラメータとして「予選」が3つ、「コンテスタント」が数十人、「審査員」が17人と、 その得点がy/nと1~25点と、パラメーターが多すぎて、 これらを俯瞰して比較するのは僕たち人間の情報処理能力をはるかに超えています (少なくとも僕はそこまでの頭脳は持ち合わせていません)。

そこで、それが一覧できるようなものが作れないか、と数日前から考えていたのですが、 3次予選進出コンテスタントに限定して、各審査員が各ステージでどのような評価を付けたのかが 一目で分かるようなファイルを作りました。 評価'Y'には黄色を付け、得点は21点以上に、青系の色に濃淡を付けて、視覚的にも分かりやすくなるように 工夫してみました。 文字が小さいのが難点ですが、何よりも一目で結果が視覚的に俯瞰できることに重点を置いた結果ですので、 これ以上、簡単にはならないことはご容赦下さい。

このようにまとめると、特定の審査員が特定のコンテスタントを不自然にひいきしていることや、 上位コンテスタントが不当に特別扱い(ひいき)されているのが分かりますし、 審査の不自然さが際立ってくるのが分かります。 我ながら、Good Job!です。

この表から分かることは色々ありますが、それは明日以降、書き進めていきたいと思います。 皆さんもダウンロードして、ご自由にお使い下さい。

3次予選進出者の得点まとめ(PDF)

2021/11/08


過大評価と過小評価に関する主観を交えて

前回アップした3次予選進出者得点まとめを見ると、Bruce Liuさん、Alexander Gadjievさん、Eva Gevorgyanさん、 反田恭平さん、Leonora Armelliniさん、Hyuk Leeさんなどが、本来の演奏レベルをはるかに超えた、 不当に高い評価を受けているのが分かりました。ここで言う「本来の演奏レベル」は僕自身の主観によるもので、 何の理論的根拠もありませんが、客観的議論を展開していく前に、まず自らの「主観」から出発せざるを得ないのは 前回も述べた通りです。

僕自身の主観では、今回のショパンコンクールの3次予選のトップは、韓国のSu Yeon Kimさんだと思っているのは 前述した通りですが、この人のY獲得率や点数は非常に低く、どうしても不自然さを感じてしまいます (この人も予備予選の段階では、特に注目する人ではないと思っていましたが、1次予選、2次予選と 優秀な正統派コンテスタントが次々に敗退してしまった後では、 消去法的に、この人が最後に残る有望な正統派でした)。

しかし当然のことながら、各コンテスタントへの評価は各審査員毎に異なっており、 一部、非常に不自然な高評価・低評価になっていると僕自身が感じるところも多く、 ここも僕自身の主観になってしまいますが、前回アップした得点まとめにその部分についてチェックを入れてみました。 赤い〇を付けたところは、僕自身が過大評価と感じている部分、青い〇を付けたところは逆に過小評価 (Su Yeon Kimさんに集中しています)と感じた部分です。

3次予選進出者の得点まとめ2(PDF)

これを見て、各審査員の評価傾向について感じたことを、以下、箇条書きで述べます。

1. Bruce (Xiaoyu) Liuさんさんは全ての審査員からほぼ満場一致で高評価。
2. 審査員ドミトリー・アレクセーエフ氏は23点以上を付けず比較的狭い範囲で点数を付けている。 慎重な評価姿勢を感じるが、実は好みの演奏がなかったとも解釈できる。
3. 審査員サ・チェン氏の的中率は0.91で全審査員中トップで、上位陣への評価が非常に高い。
4. 審査員ダン・タイ・ソン氏は、全体的に評価が辛い。特にJakub Kuszlikさんへの評価が、 他の審査員よりも相対的に低いのが特徴。
5. 審査員海老彰子さんは、1次予選から3次予選まで、Alexander Gadjievさんに25点満点を付け続けている。 またMartin Garcia Garciaさんの評価が高いのも大きな特徴。また何故かPiotr Alexewiczさん、 Andrzej Wiercińskiさん(いずれもポーランド人)への評価が非常に高いのが目立っている。
6. 審査員フィリップ・ジュジアーノ氏は、上位陣への評価が非常に高い他、 Michelle Candottiさんへの評価が高い。
7. 審査員ネルソン・ゲルネル氏は上位陣に際立った高得点を入れている。 また敗退者の中では、Piotr Alexewiczさん、Szymon Nehringさん(いずれもポーランド人)に非常に高い点数を付けている。
8. 審査員アダム・ハラシェヴィッチ氏は、上位陣には比較的冷静に評価しているが、 Kamil Pacholecさん、Szymon Nehringさんなどのポーランド勢に高得点を付けている。
9. 審査員クシシトフ・ヤブウォンスキ氏は上位陣に高得点を入れていない。 その中で、反田恭平さん、Hyuk Leeさん、特にHyuk Leeさんに非常に高い点数を入れているのが 際立っている。
10. 審査員ケヴィン・ケナー氏は、上位陣への評価は比較的冷静。 反田恭平さん、J J Jun Li Buiさん、Leonora Armelliniさんに高い点数を入れている。
11. 審査員アルトゥール・モレイラ・リマ氏は、YES率がそもそも高い(甘い評価)。 Bruce (Xiaoyu) Liuさんに1次予選から3次予選まで全て25点満点を付けている。 その他、反田恭平さん、Leonora Armelliniさんにかなりの高得点を付けている。
12. 審査員ヤヌシュ・オレイニチャク氏は、Bruce (Xiaoyu) Liuさんに際立った高評価。 Eva Gevorgyanさんへの評価が特に高い。それ以外に対しては冷静。
13. 審査員ピオトル・パレチニ氏は、Bruce (Xiaoyu) Liuさんに際立った高評価。 Jakub Kuszlikさん、Eva Gevorgyanさん、Leonora Armelliniさんを特に高評価。
14. 審査員エヴァ・ポブウォツカ氏は、Bruce (Xiaoyu) Liuさんに際立った高評価。 Alexander Gadjievさん、J J Jun Li Buiさんへの高評価が目立つ。
15. 審査員長カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン氏は、他の審査員と比較して、Bruce (Xiaoyu) Liuさん への点数が比較的低い。その他、上位陣への評価は比較的冷静。 その中で、J J Jun Li Buiさんを特に高く評価。Hao Raoさんにも好意的。
16. 審査員ジョン・リンク氏は、上位陣をまんべんなく高評価。
17. 審査員ヴォイチェフ・シフィタワ氏は、Bruce (Xiaoyu) Liuさんに際立った高評価。 その他、上位陣をまんべんなく高評価。
18. 審査員ディーナ・ヨッフェ氏は、Bruce (Xiaoyu) Liuさんへの評価は比較的冷静。 一方で、反田恭平さんに1次予選から3次予選まで25点満点を付け続けている。 Alexander Gadjievさん、小林愛実さんも満点に近い高評価。 Leonora Armelliniさんや敗退者の中では角野隼斗さんにも非常に高い評価を付けており、 この人は日本人が好きなのか、と思わせられる結果。

各審査員の主だった門下生(3次予選進出者)
審査員の門下生への優遇が明らかに見て取れるため、ここで審査員の門下生をまとめておきます。

審査員長カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン氏・・・Jakub Kuszlikさん、Szymon Nehringさん
審査員ダン・タイ・ソン氏・・・Bruce (Xiaoyu) Liuさん、J J Jun Li Buiさん
審査員ドミトリー・アレクセーエフ氏・・・Michelle Candottiさん
審査員ピオトル・パレチニ氏・・・反田恭平さん、Hyuk Leeさん、古海行子さん
審査員エヴァ・ポブウォツカ氏・・・Kamil Pacholecさん
審査員ヴォイチェフ・シフィタワ氏・・・Kamil Pacholecさん、Andrzej Wiercińskiさん

気づいた点
Bruce (Xiaoyu) Liuさんがダントツトップ
こうして採点結果を表にまとめてみると、Bruce (Xiaoyu) Liuさんの得点は他を圧倒しています。 1次から3次まで誰一人から'n'を付けられることなく、1次予選平均23.00点、2次予選平均22.88点、3次予選平均23.13点、 予選総合得点69.01点と、2位のJ J Jun Li Buiさんの予選総合得点65.61点を大きく引き離しています。 少なくとも点数だけを見る限り、まさに3次予選までで勝負あり、とも言える結果でした。 ただ僕自身はこの人の演奏はショパンらしさという点では大きな違和感があり、優勝には相応しくないとは 思いましたが、他の本選進出者に特段、好きなピアニストがいない中で、 この人は予選で、スケルツォ4番やラ・チ・ダレム・ラ・マーノの主題による変奏曲では、 まさに規格外とも言える素晴らしい演奏を披露しており、本選進出者の中ではトップに位置する人であろうとは 思っていました。しかし本選のコンチェルトは準備不足の感が否めず、またショパンらしさからは程遠い演奏という 印象でしたので、よくて1位なしの2位が相応しいと思いました。 この人に対抗できると思われる優秀な正統派コンテスタントは数人いましたが、 いずれも予選で敗退してしまいました。それが仕組まれたものでなく、ただの偶然であることを祈るのみです。 ただ彼らが揃いも揃って全員敗退することが偶然起きるのかどうか・・・

審査員の門下生の方が高評価を受けやすい
本選進出者12人のうち、Bruce (Xiaoyu) Liuさん、Jakub Kuszlikさん、反田恭平さん、J J Jun Li Buiさん、 Kamil Pacholecさん、Hyuk Leeさんの6人は審査員の門下生です。 各予選における通過者、敗退者の審査員門下生の割合は、1次予選通過:40%、1次予選敗退:19%、 2次予選通過:43%、2次予選敗退:33%、3次予選通過:50%、3次予選敗退36%と、 いずれも通過者の門下生率が有意に上回っています。 今回の17人の審査員から指導を受ける方が、それ以外の指導者から指導を受けるのと比べて、 ショパンコンクールにおいて純粋に高い評価を受けやすい演奏になるという側面が強いのか、 それとも単なるコネによる優遇なのか、少なくとも数字からは判断できませんが、 後者の要素が強いのであれば、これは残念な結果です。

審査員の門下生以外でも高評価を受けているコンテスタントたち
審査員の門下生が優遇されるという傾向はありそうですが、それ以外でも、 例えば、Alexander Gadjievさん、Eva Gevorgyanさん、小林愛実さん、Martin Garcia Garciaさん、 Leonora Armelliniさん、Hao Raoさんは本選に進出しています。 少なくとも表向きには審査員の門下生ではないものの、何らかのコネがあるのか、それとも実力なのか。 小林愛実さんとHao Raoさん以外は、実力だけでの本選進出は難しそうなのですが・・・ 非公開レッスンやマスタークラスなどは生徒扱いにはならないのでしょうが、 そのような形で審査員とコンテスタントに何らかの個人的な接点があるとすると、 採点は甘くなるのが人情でしょうね。

審査員長カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン氏とダン・タイ・ソン氏が対立?
上記の項目4と項目15の内容から抜粋すると、審査員長カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン氏は、 ダン・タイ・ソン氏の門下生のBruce (Xiaoyu) Liuさんに比較的低い点数を付け、 一方、ダン・タイ・ソン氏は、審査員長カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン氏の門下生の Jakub Kuszlikさんに低い点数を付け、3次予選では'n'を付けています。 お互いの門下生の中で最優秀と目されるコンテスタントを、それとは分かりにくいような巧妙なやり方で 引きずり降ろそうという意図が見え隠れしている ような気もしないでもないです。ただの偶然や思い過ごしであればよいのですが・・・

管理人の感覚と最も一致する審査員はクシシトフ・ヤブウォンスキだが大きな例外あり
以前から再三述べているように、残念ながら今回のショパンコンクール入賞者の中に、 僕の好みのピアニストは1人もいませんでした。その意味で前回、作成して示した採点結果まとめで、 上位のコンテスタントに比較的低い点やところどころ'n'を付けている審査員が、 僕の感覚と最も近いことになりますが、そういう目で見ていくと、やはりクシシトフ・ヤブウォンスキ氏のみが それに該当します。 ただ大きな例外があり、ヤブウォンスキ氏は韓国のHyuk Leeさんに1次で23点、 2次で24点と非常に高い点数を入れていますが、僕は逆にこの人の演奏は音が硬く詰まっているのと 荒削りで力でねじ伏せるような弾き方がどうしても好みに合いませんでした。 一方、ヤブウォンスキ氏は同じ韓国のSu Yeon Kimさんに、1次で21点で'y'を付けているものの、 2次では18点で'n'を付けていますが、僕は逆にこの人の極めて清純で「並外れた美」を感じる超付きの正統派の 演奏はストライクゾーンでした(ここで「並外れた美」という表現は、ヤブウォンスキ氏の 事前の審査員インタビューの日本語訳より借用しました)。 もし、この2人の採点結果をそっくりそのまま入れ替えれば、この人のコメントの中にあった「並外れた美」や 「劇的だったり叫んだりする場面でも、野蛮さを感じさせてはいけない。 彼は、心の中で苦しんでいても、静かに、美しさのうちにそれを表現したのです」 という言葉と非常に整合性が取れるのですが・・・ それとヤブウォンスキ氏が、ポーランドのPiotr Alexewiczさん、Andrzej Wiercińskiさんを 比較的評価しているところが僕の感覚と多少ずれています。


点数操作や改ざんの明らかな痕跡は見当たらず

今回の採点結果まとめを通して、点数の機械的な下方修正や改ざんの痕跡を目を凝らして探しましたが、 少なくとも僕自身の目では発見できませんでした。ヤブウォンスキ氏のHyuk Leeさんへの採点結果と Su Yeon Kimさんへの採点結果は入れ替えの疑いがあるといくら言ったところで、これも主観や想像の域を 出ないわけで、ヤブウォンスキ氏自身が告発でもしてくれない限り、それを立証するのは不可能です。

僕は今回のショパンコンクールでは各予選で最上位層が敗退しているという認識だと再三述べていますが、 当初はそれが機械的な点数操作により行われていると考えていました。 例えば、平均点20点以上を獲得したコンテスタントに限定して、ある審査員Xが付けた点数に、 自動的に7点ないし8点を加えて、25点をゴールにしたすごろくのように折り返して戻すというようなやり方を 一例として考えていました。 例えば23点を獲得したとしたら、仮にそこに8点を加えて25点から折り返すと19点となります。 こうして高得点者を機械的に排除していると思ったのですが、そうなるとBruce Liuさんが 一様に高評価を得ていることが説明できません。

今回の採点結果の開示までに謎の時間を要していることから、何らかの事後操作を行ったことを疑うものの、 もし本当に事後操作を行ったのだとしたら、それが絶対に見破られないようにかなり慎重かつ周到に 行うのは当然のことです。こうなると、もはや暗号解読のようで、暗号をかける側と解読する側の 難易度の非対称性(暗号は「解読する側」よりも「かける側」の方が圧倒的に有利という意味です)を思うと、 頭が痛くなりますし、単なる一個人の限界を感じます。

当初は「点数の機械的な操作があったことを前提として、それを数値的に客観的に示す」と鼻息荒く大風呂敷を広げてしまいましたが、 そのようなわけで残念ながら実現できずに一旦終了することとしました。 期待して下さった皆さんも多かったと思いますが、ご期待に応えられず、誠に申し訳ありませんでした。

ただ終了とは言っても、引き続き採点表を見ながら数値的に新たな発見があれば、こちらで不定期に コメントを載せようと思いますので、よろしくお願いします。

以下、今回のショパンコンクールに関する全く個人的な見解を、徒然なるままに書き綴っていきたいと思います。


以下、不定期に更新予定~

管理人が考える「幻の優勝者」

その1.牛田智大さん~管理人にとって日本人の最高位~超正統派の系譜

その2. Su Yeon Kimさん~「並外れた美」を表現した魂の再挑戦者

その3. Yifan Houさん~幻の超名演・ポリーニの不滅のエチュードを超えられる唯一のピアニスト

次回以降ショパンコンクールに入賞するには

審査員への弟子入りは必要か?

審査員の既得権益とカネとコネ

コンテスタントはどのような演奏を目指すべきか?

ショパンコンクールの権威と信用の失墜、衰退を憂う

次回の2021年第19回ショパンコンクールに向けて、当サイトの方針


審査員

審査員長
カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン(ピアニスト、指導者、ラファウ・ブレハッチの先生として有名)
審査員(肩書)
ドミトリー・アレクセーエフ(ピアニスト)
サ・チェン(2000年第14回ショパンコンクール第4位)
ダン・タイ・ソン(1980年第10回ショパンコンクール第1位)
海老彰子(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
フィリップ・ジュジアノ(1995年第13回ショパンコンクール第2位(1位なし))
ネルソン・ゲルナー(1990年ジュネーブ国際音楽コンクール・ピアノ部門第1位)
アダム・ハラシェヴィッチ(1955年第5回ショパンコンクール第1位)
クシシトフ・ヤブウォンスキ(1985年第11回ショパンコンクール第3位)
ケヴィン・ケナー(1990年第12回ショパンコンクール第2位(1位なし))
アルトゥール・モレイラ・リマ(1965年第7回ショパンコンクール第2位)
ヤヌシュ・オレイニチャク(1970年第8回ショパンコンクール第6位)
ピョートル・パレチニ(1970年第8回ショパンコンクール第3位)
エヴァ・ポブウォツカ(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
ジョン・リンク(音楽学者、ショパン研究家、大学教授)
ヴォイチェフ・シフィタワ(ピアニスト・1990年第12回ショパンコンクール・セミファイナリスト(棄権))
ディーナ・ヨッフェ(1975年第9回ショパンコンクール第2位)


本選課題曲

以下の作品より1曲
ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団

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