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2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール情報

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~2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選~

2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選~有力候補・日本人出場者の紹介

<<お知らせ>>

このページは予備予選関連で更新は既に終了しています。 10月3日から第1次予選が開始されます。
現在は第1次予選レビューを更新中です。 引き続きよろしくお願い致します。

管理人からのご挨拶

当サイト「ショピニストへの道」・ショパンコンクールコーナーをご覧いただきありがとうございます。

更新がすっかり滞り、既に「過去のサイト」となりつつあった当サイト、久々の更新となります。 何と言っても、今年は待ちに待ったショパンコンクールが開催されます。 しかも今回は日本人出場者がバラエティーに富んでいて個性的な経歴の方々(特に男性陣)が多く、 我々日本人にとって、これほど楽しみなショパンコンクールはかつてなかったと言えます。

そんなショパンコンクールをさらに楽しめるものにするために、「ショピニストへの道」管理人が ここで微力ながら、ささやかなお手伝いができればと考え、前回に引き続き、今回もショパンコンクールを盛り上げていこうと考え、 このページを設けました。

このページではショパンコンクールの予備予選から、日本人出場者だけでなく全出場者について語っていきます。

ショパン国際ピアノコンクールの延期は歴史上2度目の出来事

1955年以降、ショパン国際ピアノコンクールは西暦の下1桁が0と5の年に、5年毎に開催されてきました。 第18回ショパン国際ピアノコンクールは、2020年に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で 予定通りに開催できず、1年延期となりました。今年2021年4月に開催される予定であった予備予選も延期となり、開催が危ぶまれましたが、 無事、今年7月に予備予選が開催され、10月からの1次予選出場者が決定しました。

ところでショパンコンクールの歴史を紐解くと、コンクールが予定通りに開催されなかった例は過去に1度しかありません。 1937年第3回ショパン国際ピアノコンクールまでは5年毎に開催されていましたが、1939年にドイツ軍がポーランドに侵攻し、 第2次世界大戦に突入してしまいました。そしてワルシャワフィルハーモニーホールが爆撃・破壊され、 ポーランド国土全体が壊滅的な被害を受け、ショパンコンクールも中断を余儀なくされました。 1945年に終戦、そして復興、ワルシャワフィルハーモニーホールも再建され、1949年に無事第4回ショパン国際ピアノコンクールが 開催されたという経緯です。その後はキリよく、1955年以降は例外なく、西暦の下一桁が0と5の年に開催されてきました。 第3次世界大戦でも起こらない限り、この状況は半永久的に続くと思われ、平和ボケしつつあるこの状況の中で、 再びショパンコンクールの中断がこのような形で起こることは誰にも想像できなかったと思います。 しかしこうして無事に開催できることがほぼ決定したことは、ショパン愛好家の1人として嬉しく思います。

しかし新型コロナウイルス感染症の世界的流行はまだまだ続いており、今年の我が国での浜松国際ピアノコンクールは 中止となってしまいました。

このような状況の中、ショパン国際ピアノコンクールが開催されることに反対意見を唱える人もいるのではないかとも 想像できるのですが、皆さんはどのようにお考えでしょうか。

2021年第18回ショパン国際ピアノコンクール・予備予選開催(7月12日~23日)

ところでショパン国際ピアノコンクールでは2005年第15回から予備予選が導入されています。 予備予選が免除される特例もあり、ショパン国際コンクールが指定した国際ピアノコンクール またはそれに準じるコンクールで第2位以内に入賞歴のあるピアニストは予備予選免除となり、今回は全参加者のうち9名が 予備予選免除となっています。 それ以外の参加者は書類審査を経て、全世界から153名となっていました。 10月から始まる本番の第1次予選の参加者は約80名と規定されているため、単純計算では80-9=71名が通過する、 逆に言うと半数以上がこの予備予選で敗退することになります。

今回、この153名が、2021年7月12日から23日までの12日間に渡って、本番の第1次予選進出を目指して予備予選で それぞれの演奏を繰り広げました。

この演奏の模様はChopin InstituteのYouTube公式チャンネルでもリアルタイムかつノーカットでライブ配信され、 寝る時間を惜しんで聴き続けた愛好者も多かったのではないかと思います。僕は仕事の都合でその一部しか聴けませんでしたが、 今回の予備予選の全ての演奏はそのまま動画として残っていて、いつでも聴くことができるため、今、少しずつ聴き進めているところです。 最終的には予備予選通過者は78名で規定より7名オーバーとなりました。

日本人参加者は31人でそのうち13名が予備予選を見事通過しました。 国別に見ると、中国からの参加者が最も多く21名、日本はそれに次ぐ参加者人数を誇っています。 通過率で見ると日本人の戦績は決して良いとはいえませんが・・・

もうそろそろ具体的な話(つまり今回は誰が有望か、日本人の有力候補はいるのか、など)を、 と期待している皆さんもいらっしゃるでしょうか。 ちなみにインターネット上で今回のショパンコンクールの有力候補に関する個人的な意見を語っているサイトを探したのですが、 見つかりませんでした。しかしそのような情報を待ち望んでいるファンの方々もいらっしゃるでしょうから、 これは僕自身が第1号となって持論を披露しなければ、と思い始めたところです。

前回、2015年第17回ショパンコンクールでは、第1次予選のほぼ全ての演奏を聴き終えた段階で、 「今回注目すべきピアニストは、チョ・ソンジン、シャルル・リシャール・アムラン、エリック・ルーの3人」と言い切ったことは その当時の過去記事にある通りですが、その時点では「そんなに自信満々に言い切って大丈夫なのか。大外れだったら 笑い飛ばしてやろう」と思われた方も中にはいたかもしれません。 しかし最終的にはこの3人は本選まで勝ち残って、それぞれ1位、2位、4位を獲得しました。 ここに至って、「ああ、この人(僕のことですが)の言うことは間違っていなかった。1次予選しか聴いていないのに ここまで先を見通せてしまうなんて、この人はなんてすごい人なのだ」、「ここの管理人は神か?」と驚愕した人も多数いらっしゃったようでした。

ショパンの作品を聴くための専門的な耳を持っていない人たちからすれば、このような僕の能力は超能力に等しいように感じられるようですが、 実は僕は1次予選を終えた段階でこの3人が入賞するであろうと、ある程度の確信を持って言える状況でした。

これにより、僕は今後、ショパンコンクールの予想屋(?)として密かな注目を集める存在となったと自負していますが、 それをブランド力と呼ぶかどうかはともかく、今回のショパンコンクール出場者の中に突出した逸材がいるのか、 いるとすれば誰なのか、日本人の有望株はいるのか、いるとすれば誰なのか、日本人優勝者が誕生する見込みはあるのかどうか、 といったことに関して、僕自身の率直な意見を聞きたいと、待ち望んでいる方がもしかしたらいらっしゃるかもしれません。 (もしいらっしゃれば、ホームページのメールなどで個人的に送っていただけると大変励みになります)。

一部の演奏を聴いたところ、予備予選とはいえ、論外・問題外という参加者はごく少数で、 ほとんどの参加者が技術的に一定レベル以上に達していました。これだけ実力が拮抗している中で 落選者を決めなければならないのは過酷ですが、例えば、音量が小さすぎるとか、音色の魅力に乏しいとか、 個性や主張に乏しい演奏をしたピアニストは、たとえ音楽的に間違ったことをせず技術的にはほぼ問題なく弾けていても 落ちてしまう例も多いようでした。音色が個性的とか、音楽の作り方が個性的とか、テクニックが抜群である、 見た目や雰囲気にスター性があるなど、他と異なる特徴を持ったピアニストの方が通過するのに有利という傾向があると思いました。

ざっと聴いたところ、これはという逸材は確かに発見できましたし、日本人の参加者の中で期待できる人もいます。 それが誰なのかは、予備予選通過者全員の演奏を聴いた上で、改めてこのサイトでまとめて公表したいと思いますので、 今しばらくお待ち下さい。


予備予選通過者の全員の全演奏を聴き終えて
~中国パワー・韓国パワー、恐るべし!

去る7月に12日間に渡って行われた予備予選の演奏のうち、通過した全78人の全ての演奏を8月5日に聴き終えました。 ノクターン1曲、エチュード2曲、マズルカ2曲、バラード・舟歌・幻想曲から1曲というプログラムで、 1人当たり演奏時間が30分にも及び、しかも同じような曲を繰り返し聴き続けると、耳や感覚が麻痺してきそうで、 正直すごく疲れましたが、その甲斐あってか、これはという逸材は発掘できました。

今回、各演奏者に対して、技術、音色、音楽性それぞれに評価点を付け、総合評価を付けたところ、 評価Aとなったピアニストは78人中、12人となりました。 予備予選免除者の9人については未知の部分が多く、もしかしたら、彼らを圧倒的に上回る天才が この中にいる可能性もあり、今の段階では何とも言えませんが、少なくとも予備予選の通過者の中で僕の中で評価A となったピアニストはそれぞれに違った良さがあり、順位付けをするのは正直難しいです。 それはつまり、僕の中で手放しで絶賛できる、これはという突出した逸材がいなかったということでもあります。 もしかしたら、今回の予備予選では不調で本来の実力が発揮できていないだけで、桁違いの才能の人が埋もれている可能性もあります。

ちなみにこの上位12人の国籍の内訳を見ると、中国・中国系が5人、韓国人が2人、日本人は1人です。 「管理人さんは日本人に厳しいのではないか」と言われそうですが、決してそんなことはありません。 僕は日本人なので当然のことながら日本人にひいき目で聴いています。それでもどうしても中国、韓国勢には負けを認めざるを得ない状況です。 何故日本はここまで遅れを取ってしまっているのか、それについては僕自身の中ではっきりと語れる理由があるのですが、 話し出すと長くなるため、別の機会に譲りたいと思います。

いずれにしても、この上位12人の演奏をもう一度よく聴いて、自分なりに評価が定まったところで、改めて発表したいと思います。

また日本人ピアニストには頑張ってもらいたいという思いがあり、日本人ピアニストについては別コーナーで、 それぞれのピアニストの演奏の特徴、魅力を特集する予定です。

今回ショパンコンクールに出場するピアニストの中には、音大卒ではなく、東大卒・大学院修士課程卒、 名古屋大学医学部医学科の学生という異色の高学歴 ピアニストがいて、大いに期待しています。実はかくいう僕も東大卒かつ某国立大学の医学科卒というダブル学歴を持っていますので、 彼らに対しては 勝手に親近感を抱いています(彼らにとっては、ピアノについては下位互換の僕なんかに親近感を抱かれるのは、甚だ迷惑かもしれませんが・・・(苦笑))。

とにかく、今回ショパンコンクールに出場する日本人ピアニストは個性的な面々が多く、日本人にとっては前回よりもはるかに楽しめることは 間違いなしです。10月からの本番が本当に楽しみですね。

予備予選の演奏、日本人の出場者について語り合いたいという方は、管理人宛てに気軽にメールを送っていただければと思います。 仕事をしながらのため、即日の返信は難しい場合もあると思いますが、可能な限り返信したいと思います。

2021/08/05


2021年第18回ショパンコンクールの注目すべき逸材・天才

予備予選通過者の全演奏を聴いて「評価A」を付けた全12人の演奏を改めて聴いた結果、実際には評価Aに未達の演奏だったピアニストが 数人いました。やはり、同じような曲の演奏をずっと聴き続けていると疲れてきて、集中力や判断力が落ちてくるため、 判定に狂いが生じるのだと思います。もう一度、聴き返すことにより、その判定の狂いを修正することができました。 こうして「評価A」のまま最終的に残った参加者は、全78人中8人となりました。

この8人は多かれ少なかれ異なる魅力、異なる弱点があり、全てが完璧に揃ったツィマーマンやブレハッチのような 超スーパーピアニストは残念ながらこの中にはいませんでした。 しかしそこには確かに優劣もありますので、そこでさらにふるいにかけて、ここで上位4名を、今回、最も注目すべき逸材として 挙げたいと思います。

予備予選通過者は、アルファベット順に1から順に番号を付けて発表されていますが、 僕が判定した上位4名を、そのまま発表します。

4.Kai-Min Chang, Chinese Taipei

21.Yifan Hou, China

46.Jinhyung Park, South Korea

62.Shun Shun Tie, China

台湾を含めて中国人3人、韓国人1人という結果です。 これは僕自身の耳と感覚に正直に選んだ結果で、誰が弾いているか分からないように目隠しされて 演奏を聴かされても、全く同様の結果になったと思います。

「そんな・・・ショパンコンクールの上位を中国人、韓国人が独占してしまうのか・・・そんなはずはないだろう」 とショックを受けた皆さんの顔が目に浮かぶようで、何とも複雑な思いです。 実は正直に言うと、僕自身もこの結果には大きなショックを受けていて、 「長い歴史と伝統を誇る、ピアノコンクールの最高峰、ピアニストの登竜門のショパン国際ピアノコンクールが、 中国・韓国に乗っ取られて(言葉は悪いですが)しまうのか」と心の中で嘆いていたりします。 かつてはポーランド、旧ソ連で上位陣の大半を占める状況だったのですが、それが今や中国・韓国を中心とする 東洋人のためのコンクールに変貌してしまっているわけです。これは今に始まったことではなく、 以前から時間をかけて徐々に変化してきたことで、時代の流れの結果とも言えます。 この辺りのことは、故・中村紘子氏の名著「コンクールでお会いしましょう~名演に飽きた時代の原点」でも 深く議論されており、興味がある方は一読されることをお勧めします。

また中国、韓国は我が国・日本にとって対外的に歴史的に様々な確執があり、 決して友好国とは言えないばかりか、文化面・経済面では 日本に追いつき追い越せの勢いで、急成長しており、その台頭はとどまるところを知りません。 ショパンコンクールの予備予選を聴いたところ、日本勢は中国勢・韓国勢の勢いに押されており、 中国勢・韓国勢の演奏には、日本勢にはあまりない「勢い」が感じられます。 今回、僕の中での(あくまで僕の中で、という保留付きですが)上位陣を必然的に中国勢、韓国勢が独占してしまったのは、 その必然的な結果とも言えそうです。 日本人として、この結果には複雑な思いがありますが、こと芸術に関しては出身国・国籍・人種によらず「良いものは良い」と 素直に認めなければならないと思います。

是非、この人たちの演奏を聴いてみて下さい。他を圧倒する素晴らしい演奏をしていますから・・・

そしてこの4人には及ばないものの、なかなか魅力的な演奏をしていた「評価A」の残る4人を発表します。

43.Arsenii Mun, Russia

51.Hao Rao, China

57.Kyohei Sorita, Japan

71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China

ここにも中国人が2人います。しかし、繰り返しますが、「良いものは良い」と素直に認めなければなりません。

但し予備予選の演奏では、各出場者の調子は様々で普段の実力を出し切れなかったピアニストも多かったでしょうし、 また予備予選免除者の中に、彼らに匹敵する、あるいは上回る演奏を するピアニストがいるかもしれませんので、予備予選の演奏内容だけで、優勝者がこの中から生まれるか、ということや、 上位入賞するピアニストは誰か、といったことを論じるのは、まだ早すぎると思います。

僕はショパンのピアノ曲を聴く耳と感覚と良し悪しを判断する能力にはかなりの自信を持っていますが、 これがそのまま最終結果になってしまうという現実はどうにも受け入れたくない、今回ばかりは僕の間違いであってほしい、 と願う気持ちもあり、複雑な思いです。

日本人出場者について

日本人は予備予選に31人が出場し、13人が通過しました。 姓のアルファベット順に、古海行子さん、原沙綾さん、五十嵐薫子さん、今井理子さん、伊藤順一さん、 岩井亜咲さん、小林愛実さん、京増修史さん、沢田蒼梧さん、進藤実優さん、反田恭平さん、角野隼斗さん、竹田理琴乃さん の13人です。 予備予選通過者の演奏を聴いた限り、日本人出場者の中で最も良いと思われる演奏をしていたのは、 反田恭平さんでした。自分の音楽を大胆に打ち出していて、しかもそれが説得力を持って迫ってくる圧巻の演奏でした。 また話題の角野隼斗さんは、予備予選ではかなり緊張していたようで普段の実力が発揮できていなかったようでしたが、 それでも予備予選を通過するということは、それだけポテンシャルが高いことの裏返しでもあります。 角野さんがYouTubeで公開しているショパンのエチュードOp.25-11は、僕の中では、ザ・ベスト・オブ・木枯らし、です。 木枯らしのエチュードの本当の魅力という点では、僕の中ではポリーニやアシュケナージなどの往年の名演奏を上回っているほどで、 彼本来の実力を発揮できれば、あるいは今回のショパンコンクールでは何かをやってくれるかもしれない、と大いに期待しているところです。

その他、ミスが少なく美しく端正な演奏をしていた京増修史さん、見た目通り真面目で実直で味わい深い、 まさに年の功とも言える演奏をしていた伊藤順一さん、極上の気品のノクターンで印象付けた名古屋大学医学部医学科5年生の沢田蒼梧さんの 3人の男性陣にも期待したいと思います。

女性陣の中では、やはりというべきか、小林愛実さんが筆頭だと思います。表現のスケールは男性陣にはかないませんが、 自分のできる範囲内で最大限、思い切りよく表現しており、また演奏技巧の精度も高く、今回も本選まで進出して、 ショパンコンクール2回連続本選進出という日本人記録を打ち立ててくれることを大いに期待しています。

ピアノ演奏の男女差について

話題は変わりますが、僕が選んだ8人の上位のピアニストは驚くべきか否か、全員男性です。 これは必然と言ってよいです。男性をひいきしているわけではなく、自分の耳や感覚に正直に好きな演奏を選ぶとそうなってしまうわけで、 目隠しされていても、僕が選ぶ上位ピアニストは全く変わらないだろうと思います。 何故ここまで偏ってしまうのか、これはピアノから引き出す音色の魅力と表現力やダイナミズムに圧倒的な性差があるからです。

今日は疲れてしまったので、ピアノの音色や表現力の性差と、僕が選んだ8人のピアニストの演奏の特徴については、 明日以降、詳しく説明していきたいと思います。

ちなみに、このページのアクセス数もカウントしているのですが、それによると1日5~6人しか読まれていないようで、 しかも今のところ反響が全くありません。こういう情報はあまり需要がないのでしょうか。 しかし需要がほとんどないとしても、たった1人でもこのような情報を求めている人、楽しみにしている人がいるのであれば、 十分にモチベーションになりますし、何より僕自身の自己満足的な欲求を満たすことにもなりますので、 これからも更新を続けていきます。

2021/08/06(2021/08/07 一部加筆修正)


今回のショパンコンクールの上位陣について

前回は、僕の中で当初、評価Aであった12人のピアニストのうち、4人を削り、残った8人を上位4人、下位4人に分けて紹介しましたが、 その後、その8人及び今回当初評価Aだった残る4人、およびその周辺(評価A~B)のピアニストの演奏をもう一度聴いてみたところ、 当初の印象とかなり変わったピアニストもいて、また上位4人と下位4人の順位も大きく入れ替わったりして混沌としてきました。 しかしその中で一貫して当初の印象が変わらなかったのは、21.Yifan Hou, Chinaで、結論から先に言えば、 管理人の中での暫定トップはこの人ですが、僅差です。

以下、僕がランクAを付けた9人のピアニストを紹介しますが、それぞれに違った良さがあり、現段階では そこに優劣をつけることは困難です。 さらに、予備予選免除者の中にこの人たちを圧倒的に上回るすごい逸材が隠れている可能性もあることを考慮すると、 これ以上、この議論に深入りすることは時間と労力の無駄と考えました。

いずれにしても、前回、僕が挙げた上位8人はいずれも素晴らしいピアニストであることは間違いないと思います。 そして前回、Aランクから脱落させてしまったピアニスト(ポーランド人)を1人加え、9人を改めて順位付けなしで、 番号順に紹介したいと思います。

4.Kai-Min Chang, Chinese Taipei 予備予選演奏

21.Yifan Hou, China 予備予選演奏

33. Jakub Kuszlik, Poland 予備予選演奏

43.Arsenii Mun, Russia 予備予選演奏

46.Jinhyung Park, South Korea 予備予選演奏

51.Hao Rao, China 予備予選演奏

57.Kyohei Sorita, Japan 予備予選演奏

62.Shun Shun Tie, China 予備予選演奏

71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China 予備予選演奏

今回、追加したピアニストは、Jakub Kuszlikというポーランド人男性で、ソフトで暖色系の音色で優しく控えめな演奏をする人です。 一方、エチュードOp.25-11などはポリーニの名演奏を彷彿とさせる、今回のショパンコンクールのコンテスタント随一の安定感抜群の 演奏を聴かせてくれました。幻想曲Op.49も必要にして十分なテンポルバートでダイナミックで完成度の高い演奏をしていました。 上手い人が多い中、このような演奏は「上手いけど面白みがない」として排除したくなるのですが、それでもこれだけの技術的完成度と 安定感を持つピアニストはコンテスタントの中にあまりいない上、よく聴くと控えめながらもショパンの音楽の理解に根差した 適切なルバートとデュナーミクを慎重に取り入れているのが分かり、この人を外すわけにはいかないと考え直した次第です。

それともう1つ、日本人ひいきの僕は日本人を誰か1人はここに入れないと、と余計なことを考え、最も興味深い演奏をした反田恭平さんを ランクAに押し込んだのですが、再度聴いてみると、もう少しショパンらしい繊細さと音色の特徴が欲しいという気もして、 ここにランクした他のピアニストと比べると聴き劣りしてしまう、というのが正直な感想でした。 しかし僕は当然日本人ですし、日本人を応援したいという気持ちから、その筆頭とも言える反田恭平さんを残すことにしました。

順番が前後しましたが、これから、今回の予備予選における上記の9人のピアニストの演奏の特徴と魅力について、述べていきたいと思います。

4.Kai-Min Chang, Chinese Taipei、20歳男性 予備予選演奏

長い顔をした真面目そうなメガネ台湾人男性です。ノクターンOp.48-1から始まったのですが、「何なんだ、この音は!」と体に電気が走るような 感動に震えました。クリアで悲しげで澄んだ極上の音色・・・少し強い音でもピアノが共鳴し箱鳴りする・・・他のコンテスタントとの 音色の圧倒的な違い・・・これぞピアノの音、これぞ僕が求めていた音だ、と思いました。マズルカOp.59-2は落ち着いた出だしでしたが、 徐々に加速していくなど緩急自在の演奏でした。マズルカOp.59-3は感興豊かで哀愁に満ちた感動的な名演でした。エチュードOp.10-4は 速いテンポで粗さがありますが、概ね良い演奏でした。エチュードOp.10-7は右手の外声と内声のバランスが悪く音の均質さに欠けていて、 もったいない演奏でした。バラードOp.23は速いパッセージの1音1音が光り輝いていて、その中に「詩」を感じる素晴らしい演奏でした。 技術的にやや弱さがあるため、今後、どこまで勝ち残れるかどうかは分かりませんが、僕にとって、この人の音色は予備予選通過者78人の 中でナンバーワンでした。こういう音は神に選ばれた人にしか出せないもので、ピアノの音を出すことにかけては恐るべき天才です。

21.Yifan Hou, China、17歳男性 予備予選演奏

目の覚めるようなシャープで冴えた音色、低音は深く厚みがあり、素晴らしい音色の持ち主です。 ノクターンOp.27-1は深い音色で深い情感を湛えながら、ピアノを歌わせていて美しい演奏でした。 エチュードOp.10-8はテンポが速すぎ、と思いましたが、ほとんど隙がなく完璧に近い演奏でした。 エチュードOp.10-10は外声部がはっきりと出ていて内声部とのバランスが完璧で、デュナーミク、アゴーギクともに 今回の予備予選通過者の中でこの曲を選んだピアニストの演奏の中で、この作品の本来あるべき姿に最も近い演奏だと思いました。 この曲に関しては、46.Jinhyung Park, South Korea、62.Shun Shun Tie, Chinaを上回っていると思いました。 マズルカOp.59-1は最初のテーマの後に、中間部に入る直前の和音を弾いてしまいましたが、 全く動じることなく立て直しました。出だしは硬かったのですが、弾き進めるに従い、実に緩急自在で、 作り物ではない本当の才能を感じる見事な演奏でした。,マズルカOp.59-2も美しい音色で表現力が豊かで惹きこまれる演奏でした。 最後のバラードOp.23も素晴らしかったですが、やや元気が良すぎでしょうか。 しかし全体を通して技術的にも音楽的にも極上に近いレベルを保っていて、バランス感覚も完璧、隙がない、しかもこの年齢! 恐るべき天才少年現る!と驚愕しました。既にかなり完成されたピアニストで、 この人が10月からの本番でどこかの予選で敗退するイメージが全くできないほどです。 今回のコンテスタント中、最も優勝に近い位置にあると言っても過言ではないように感じました。

33. Jakub Kuszlik, Poland、24歳男性 予備予選演奏

貫禄のある体格の髭メガネポーランド人男性。最近のポーランド人のコンテスタントは技術的に今一つな人が多いので、 期待していませんでしたが、この人は違いました。 音色はソフトで暖色系の優しい音色です。ノクターンOp.62-2を選んだのは、この音色が良い方向に出る曲を、という意図があったのだと思います。 落ち着いた優しく癒される演奏・・・電気が走る感動というのとは違って、やや地味で、良さが分かるのに時間がかかりますが (前者がイケメン男性、後者が性格の良い優しい男性と例えると分かりやすいでしょうか)、なかなか懐が深い感じの演奏です。 エチュードOp.25-4は左手のバスの音が3か所ほど抜けていましたが、それを除けばほぼ完璧。 指が短くて太いので、この人が本当にエチュードOp.25-11?どうせ大したことはないだろう?と期待していませんでしたが、 良い意味で期待を裏切ってくれました。テンポは安定し粒が揃い、そして迫力十分。僕の頭の中にはポリーニの演奏が刷り込まれていますが、 そのポリーニの弾くOp.25-11の音像にかなり近い演奏でした。 マズルカOp.30-3, Op.30-4は選曲する人が多いマズルカですが、この人はテンポを必要以上に動かさず、抑制と均整の取れた美しさと 懐の深さ、フレージングの息の長さを感じる良い演奏でした。最後の幻想曲Op.49は長いフレージングを落ち着いて歌い上げる、 しかも技術的には他の追随を許さない完成度の高さでした。抜群の安定感と技術レベルの高さ。当初はそれを買ってランクAにしましたが、 もう一度聴いて、「こういう演奏は面白みがない」と言われるのかな、と考え、他の人を「忖度」して一度、ランクAから外しましたが、 もう一度聴いて、やはりこの人を外すわけにはいかないと考え、残すことに決めました。 この人は10月からの本番で、どのような演奏を聴かせてくれるでしょうか。分かるようで分からない部分が多く、楽しみです。

43.Arsenii Mun, Russia、22歳男性 予備予選演奏

ロシア国籍とありますが、見た目はアジア系が入っていそうな、イケメン男性。 ノクターンはOp.48-2という渋い選曲ですが、クリアで清潔感漂う素晴らしい音色で、フレーズや音の1つ1つに細かい芸を施し、 それが決して木を見て森を見ずにならず、全体としての流れが素晴らしい、本当に表現力に富む得難いノクターンでした。 僕もこの曲はその都度、弾いてきて十分に知り尽くしているはずの曲なのですが、こんなに良い曲だったっけ? と改めて思い直させてくれる素晴らしい演奏でした。 エチュードOp.10-8は音の輝きと粒立ちと質感が尋常ではなく、何とも粋で軽妙で洒脱で、ああ、この曲はこういう音で弾かなければ いけないんだな、と思い直させてくれる演奏でした。エチュードOp.25-6は最難曲の1つで、怪しい部分はありましたが概ね良い演奏でした。 マズルカはOp.17-2, Op.17-4という比較的音の少ないシンプルな曲を選曲。 1つ1つの音が真珠ような輝きを放っており、作品の原型を大切にしながらテンポは比較的自由に動かしてデフォルメし、 音と音の「間」、戯れが何とも粋に感じられる新鮮な演奏でした。 この人の良さが最もよく出る曲を選曲していたと感じられました。 バラードOp.23は情熱的で素晴らしい演奏でしたが、もう少し穏やかでもよかったかも、と思いました。 しかしこの人の出すピアノの音のお洒落度、真珠ような質感は、他のピアニストからは得られない貴重なもので、 もっとこの人の演奏が聴きたい、他の曲はどのように弾くのだろう、と興味は尽きることがないです。 個人的にはお気に入りのコンテスタントですが、テンポや間の取り方が個性的であるため、 この人が審査員達からどの程度評価されるのかは、全く未知数です。

46.Jinhyung Park, South Korea、25歳男性 予備予選演奏

輝かしい冴えた音色とダイナミズムが持ち味の韓国人です。 ノクターンはOp.48-1を選択。この曲は冴えた音色が最も映える曲で、この曲を選択したのはそのような意図があったと思います。 単音の旋律が映えて冴えた寒い夜空を見上げているような感覚、そして後半のダイナミズムは圧巻でした。 エチュードOp.10-10は右手の分散6度の音型の1指、2指、5指の音量のバランスがほぼ完璧(と言っても、21.Yifan Hou, Chinaにはかないませんが)で、 強弱、テンポルバートともこの曲の本来あるべき姿に非常に近い演奏で感動しました。 エチュードOp.25-11は「木枯らし」、「冬の風」を感じさせる軽やかな演奏が好みですが、この人の演奏はダイナミックでした。 ミスもありますし完璧な演奏ではありませんが、良い演奏だと思いました。 マズルカOp.56-1は緩急自在で音楽的で最後の盛り上げ方も決まっていました。それに対してOp.56-2はやや重かったようにも感じられました。 最後のバラードOp.23は技術的に非常に完成度が高く、最後のコーダも迫力があり圧巻の演奏でした。この人はこのバラードOp.23が 非常に得意なように見受けられました。総合的には高いレベルですが、手放しで絶賛できるわけではなく、 弱点も抱えているため、今後、どの程度まで勝ち残っていけるかどうかは全く分かりません。
※後で知りましたが、前回のショパンコンクールの過去記事を読んでいたら、この人の名前があって驚きました。 前回は2次予選で敗退しているんですね。全く印象に残っておらず覚えていませんでしたが、6年間でかなり成長したということでしょうか。 韓国人ですが、今回の再挑戦で良い結果になることを期待しています。

51.Hao Rao, China、17歳男性 予備予選演奏

ソフトで優しい音色が基調ですが、局面によって音色が変化しているのが聴き取れました。 ノクターンOp.27-2は息の長い旋律を巧みなフレージングで歌い上げていて、 しかもそれがストレートに心に届いてくるスマートで気品が漂う素晴らしい演奏でした。 エチュードOp.10-8は美しく整った素晴らしい演奏。エチュードOp.25-6もミスが少なく完成度の高い演奏で、 この人の基礎技術の高さがよく分かる演奏でした。 マズルカOp.33-1は1つ1つの音に心を込めて丁寧に演奏していて、感興豊か、 マズルカOp.33-3はリズミカルで緩急自在、作品を完全に自分のものにしていると感じられる素晴らしい演奏でした。 舟歌Op.60は優しいソフトな音色を基調としながら、作り物ではない自然な音楽の発露と感じられる感興の豊かさと起伏があって、 しかも全体としてのバランスが素晴らしい名演奏でした。 天才少年現る!と思いました。しかも、この人も21.Yifan Hou, Chinaと同じ17歳の中国人男性。 21.Yifan Hou, Chinaほどのキラキラとした輝きはないですが、異なる魅力を持つ天才少年です。

57.Kyohei Sorita, Japan、27歳男性 予備予選演奏

冴えた音色というよりも練り上げられた深い音色という印象。 ノクターンOp.62-1は細かいフレーズの1つ1つに細かい芸が施されていて、それが自然な流れの中に納まっていると感じられる美しい演奏。 心に響くというよりは、「う~ん、よく考えられた表現だな~」と感服するような演奏でしたが、ただ弾いているだけの演奏とは一線を画する 興味深い演奏でした。エチュードOp.10-8は輝かしい音色で速めのテンポで弾き進めていく演奏で、やや力みがあったかもしれませんが 良い演奏だと思いました。エチュードOp.25-5は主部の外声と内声のバランスが良く、中間部の美しい旋律とハーモニーも魅力的に聴かせていて、 良い演奏だと思いました。マズルカOp.56-1は夢想的な出だしから引き込まれ、緩急自在の演奏でした。マズルカOp.56-2はリズミカルで 斬新な演奏。バラードOp.38は静と動のコントラストを際立たせ、特にコン・フォーコの部分の熱さと大胆な迫力が圧巻でした。 やや粗さはありましたが、これは緊張と重圧による力みもあったのかもしれません。 勢いがあまりない日本人コンテスタントが多い中、この人は自分の音楽というものを持っていて、それを思い切って前面に 打ち出してくれるので、分かりやすく「好感度」が最も高いです。 10月からの本番では、日本人代表として頑張ってほしいです。心より応援しています。

62.Shun Shun Tie, China、21歳男性 予備予選演奏

ノクターンOp.62-1は芯のしっかりしたシャープで輝かしい音色で、まばゆいばかりの美しさ。冴えた音色のトリルが光り輝いていました。 エチュードOp.10-8は音の1粒1粒が光り輝く素晴らしい演奏でした。エチュードOp.10-10は 右手の外声部をもっと際立たせてほしかったのですが、響きは十分に美しく、デュナーミク、アゴーギクともに完璧でバランスの取れた 素晴らしい演奏でした。マズルカOp.56-1は凛としていながらも夢想的な雰囲気も十分、例の8分音符の連続は ブレハッチの超名演が刷り込まれていますが、この人の演奏もそれに近く、真珠のように光り輝く粒立ちの良い音で感動しました。 最後は珍しくソフトランディング。 マズルカOp.56-2は全ての音があるべき場所にあると感じさせる優れた演奏でした。 ここまではほぼ完璧、この人はすごいと思っていたのですが、最後のバラードOp.23は集中力が切れてしまったのか、 何でもないマイナーミスタッチが多すぎて、全体のパフォーマンスの割に最後に冴えない印象を残してしまったかもしれないと思いました。 そこが何とも惜しまれますが、この人は光り輝く冴えた音色、音の粒立ちの良さ、 卓越したテクニック、自然な音楽性、 ピアノから美しいフォルティッシモを出す才能にも恵まれていて、総合力が高いピアニストだと個人的には思っています。

71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China、20歳男性 予備予選演奏

芯がしっかりしたシャープで冴えた音色でありながら、響きは豊かでとても深い。 ノクターンOp.62-1はこの音色が夢想的な雰囲気を出していて、深くロマンティックで気品に満ちた素晴らしい演奏でした。 マズルカOp.59-2はやや癖のあるリズムですが、ロマンティックかつダイナミックな演奏でした。 マズルカOp.33-4も同様にリズムが少し聴きなれない感じでしたが、音色が美しくダイナミックで聴かせる演奏でした。 エチュードOp.10-8はクリアな音色で粒立ちがよく輝かしい演奏でした。エチュードOp.25-5は美しく気品さえ漂う見事な演奏でした。 バラードOp.52は音色も美しくロマンティックで迫力もあり圧巻の演奏でした。 ただこの人の演奏は緩徐部で音価が微妙に不安定になる傾向があり、それは本人が意図したものか、単なる癖なのかは 現時点では判断が付きません。緩徐部の節回しが恣意的に感じられたり、スマートさに欠けるように感じるのはそのためだと思います。 しかしいずれにしてもこの人の出すピアノの音色は得難いものがあり、なおかつこのコンクールのコンテスタントの中で 最も人気のある2つのエチュード(Op.10-8とOp.25-5)で非常に良い演奏をしていたため、上位に残すことにしました。

管理人の中での暫定トップは、21.Yifan Hou, China

以上、僕の中でランクAとなった9人のコンテスタントを紹介しました。 各コンテスタントとも好不調があったでしょうから、今回の予備予選の演奏内容だけでは最終的な判断はできないと思いますが、 少なくとも予備予選の演奏内容に限って言えば、僕の中では、21.Yifan Hou, Chinaの演奏が総合的に最も高いレベルだと感じました。 輝かしく冴えた音色、心にストレートに入ってくる純粋な音楽性、抜群のテクニック、ミスタッチの少なさ(安定度)、 作品全体を見通す優れたバランス感覚など、とても17歳の少年とは思えないほど完成されています。 それに比べると、他のコンテスタントは、音色、音楽性など部分的にはこの人よりも優れた部分はあっても、それぞれ弱点があり、 総合点でこの人を超えるピアニストは皆無ではないかと思えてきました。

但しこれはあくまで僕自身の好みで選んだ結果であって、特定の演奏に対する感じ方も評価基準も人それぞれでしょうから、 異論はあると思います。あくまで個人的な意見ということでご理解いただければと思います。

皆さんは、この中に、あるいはこの他にお気に入りのコンテスタントはいるでしょうか?

僕が今回、惜しくもランクAではなく、ランクA~Bにしたピアニストを以下に挙げておきます。

8. Hyounglok Choi, South Korea 予備予選演奏
15. Eva Gevorgyan, Russia/Armenia 予備予選演奏
34. Shushi Kyomasu, Japan 京増修史 予備予選演奏
35. Hyuk Lee, South Korea 予備予選演奏
53. Sohgo Sawada, Japan 沢田蒼梧 予備予選演奏
69. Victoria Wong, Canada 予備予選演奏
73. Yuanfan Yang, United Kingdom 予備予選演奏
74. Anastasia Yasko, Russia 予備予選演奏

おお、日本人が2人もいるじゃん!という皆さんの声が聞こえてくるようです。 34. Shushi Kyomasu, Japan 京増修史さんは、音色も美しくミスタッチも少なく非常に端正な演奏で、おそらくこの予備予選はかなり高い点数で 通過しているのではないかと思っています。特に最後の舟歌Op.60は比類のない美しさで感動しました。 53. Sohgo Sawada, Japan 沢田蒼梧さんは、出だしのマズルカOp.50-1, Op.50-3はやや固いかな、という気もしましたが、 ノクターンOp.27-2がとにかく自然で高貴で美しく絶品でした。エチュードOp.10-5も粒立ちの良い音で歯切れの良い演奏をしていました。 エチュードOp.25-10やバラードOp.23はやや迫力不足の感がありましたが、日本人で最もショパンらしい演奏をしていたのは、 この人ではないか、とも思いました。

このグループには女性ピアニストが3人(15. Eva Gevorgyan, Russia/Armenia, 69. Victoria Wong, Canada, 74. Anastasia Yasko, Russia)入っていますが、残念ながら僕にとって魅力的な音色を出すピアニストはいないですし、 ダイナミクスにも欠けており、この2点が加わっていれば、この3人は間違いなくランクAでした。 これは女性としてのハンデだと思いますし、仕方のないこととはいえ、 技術的にも音楽的にも天才級の人たちであるだけに、何とも気の毒であり残念です。

再挑戦のコンテスタントたち

実は今回のショパンコンクールでも前回、前々回から再挑戦するピアニストがかなりいます。 このページで既に登場したピアニストの中にも再挑戦組がかなりいますが (例えば、予備予選を通過した日本人では、小林愛実さん、古海行子さん、竹田理琴乃さんなどがいます。 また予備予選で惜しくも敗退した日本人の中にも再挑戦の人が数人いました)、その中には前回あるいは前々回のショパンコンクールで 注目され、それなりに知名度を獲得したピアニストもいます。 彼らの名前がこれまで一度も登場しておらず、ランクA、ランクA~Bの中にも登場しないので、「管理人さん、あの人を忘れていませんか?」 という皆さんの声が聞こえてきそうです。しかし決して忘れているわけではなく、僕の耳と感覚で聴いて、どうしてもランクA~B以上に達して いないため、これまで名前を出す機会がなかっただけで、決して忘れているわけではありません。 しかし「彼らは今回、期待できないだろう」とひとまとめに片づけてしまうのでは、やはし寂しい気もしますので、 皆さんが気にしていると思われるピアニストについて、一言ずつ、コメントしたいと思います。

前々回、2010年第16回ショパンコンクールで本選に進出した当時天才少年と謳われていた29. Nikolay Khozyainov, Russia予備予選演奏)は、 滴るような瑞々しい美音は相変わらずですが、音に締まりがない感じで(これは好みの問題かもしれませんが)、 ノクターンOp.27-1の主部はルバートが少なすぎて棒弾きに近く、マズルカOp.59-1, Op.59-2はともに速いテンポで 一本調子で面白みに欠ける演奏でした。エチュードOp.10-7, Op.10-12はともに切れ味が今一つで好みの演奏ではありませんでした。 僕の中では技術点B~C、総合評価Bで、他のピアニストのレベルの高さを考えると、 1次予選をぎりぎり通過できるかどうか、というのが妥当な線だと思います。

前回2015年第17回ショパンコンクールで本選に進出した45. Georgijs Osokins, Latvia予備予選演奏)は、前回も僕は最低に近い評価を付け続け、 何故、本選まで勝ち進めたのか、大きな謎が残りましたが、今回も独特の演奏で、僕の耳や感覚ではどうしても受け付けない演奏でした。 しかし会場からの拍手はひときわ大きく、「何でだろう・・・」と全く訳が分かりませんでした。 僕は自分の音楽的志向が極めて保守的なのは認めますが、この人の演奏はどう逆立ちしても体質的に受け付けないものでした。 食べ物の好き嫌いと同様、僕にとっては理屈抜きに受け入れられない体質なのだと感じました。この「好き嫌い」は おそらく一生克服できないと思いますし、そこが何とも残念です。

前回2015年第17回ショパンコンクールにも出場したポーランドの新鋭、68. Andrzej Wierciński, Poland予備予選演奏)も、 今回再挑戦し予備予選を通過していますが、その時の演奏を聴く限り、エチュードOp.10-7で(この曲、難しいですよね)、 右手のメロディーラインが埋もれていて、しかも全体的に恣意的な音楽づくりが耳について、自然に心に響いてこない演奏で、 この人も総合評価Bでした。

予備予選免除者の中にシモン・ネーリングというポーランド人がいますが、この人は前回、ファイナル(本選)まで進出しています。 未完の大器の片鱗はありながら、演奏技術に癖があり、それがどうしても僕には受け入れられず、 この人の演奏の印象はかなり悪かった記憶がありますが、それを克服し、ショパンらしい筋の良い演奏技術が身に付いているのかどうか、 今回は期待したいと思います。

以上は前回あるいは前々回のショパンコンクールである程度の知名度を獲得したピアニストですが、その他にも僕が把握している限りでは 以下のコンテスタントは再挑戦組です。
3.Michelle Candotti, Italy, 28.Jooyeon Ka, South Korea, 30.Su Yeon Kim, South Korea, 50.Zuzanna Pietrzak, Poland, 64.Chao Wang, China, 70.Yuchong Wu, China, 72.Zi Xu, China

再挑戦では期待したような結果にならない場合が多い印象ですが、例外もあります。 例えば、ケヴィン・ケナーは、1980年第10回ショパンコンクール第3次予選敗退、1990年第12回ショパンコンクール再挑戦で 見事最高位(1位なしの単独2位)、今回審査員を務めるフィリップ・ジュジアノは、1990年第12回ショパンコンクールで第3次予選敗退、 1995年第13回ショパンコンクールで1位なしで2位をアレクセイ・スルタノフと分け合うという成功を収めました。 他にも再挑戦成功例はあるかと思いますが、このように成功する場合もありますし、今回、再挑戦するピアニストたちには 是非、頑張って納得のいく結果をつかんでほしいと願っています。

再挑戦ではないですが、注目されているコンテスタントとして忘れてはいけないのは、2015年第9回浜松国際ピアノコンクールの覇者、13. Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia予備予選演奏)です。 しかし予備予選の演奏を聴く限り、ショパンに限っては僕の好みの演奏ではありませんでした。 エチュードOp.25-7(ノクターンの代わりに選曲)やバラードOp.52など、粘っこい節回しが耳につく感じで、 またエチュードOp.25-11は弾けていない部分、ミスタッチも多く、僕の中で評価B~Cでした。かなり不調のようで気の毒ですが、 10月からの本番では、浜松の覇者の底力を見せつけてほしいと思います。

あともう1人、絶対に忘れてはいけない人がいます。予備予選免除で出場する日本人、牛田智大さんです。 2018年浜松国際ピアノコンクールで第2位という素晴らしい実績があり、今回出場する日本人で一番期待できるのは この人ではないか、という気もします。

今回は予備予選の演奏内容から、注目すべきコンテスタントについて、書き連ねてきました。 他の人たちがホームページやブログなどで同様の試みをしていないかどうか、改めて探してみましたが、 やはり見つかりませんでした。 僕が第1号となって、議論の呼び水的な役割を果たすことができれば、と思います。

もちろん今回の予備予選の演奏内容だけでは何とも言い難い部分が多く、10月から始まる予選、本選の演奏内容次第では、僕の見立てとは 全く違う展開になる可能性も十分あると思います。

10月からの本番が今から待ち遠しくなってきましたね。

今回のレビューの感想、応援メッセージなど何でも構いません。 「管理人へのメール」フォームから気軽に送っていただけると嬉しいです。

2021/08/09(2021/8/10~8/14 一部加筆修正)


10月の本番まで3週間を切りました

予備予選が終了してから、予備予選通過者全員の演奏をアーカイブで聴いて、コンテスタント1人1人に評価点を付けて、 という作業を続けて、特にお気に入りの上位陣について、ここでコメント付きで紹介してから、 このページのアクセス数は徐々に増えて、現在、1日150ページビューに届こうかという勢いです。 このように最近、静かな注目が集まりつつあるのを感じていますが、メールなどでの反響がほとんどないので、 どのような感想を持ちながら読まれているのか(そう思う、という意見なのか、いや違うな~、素人が偉そうなこと言うな、という意見なのか、 頬杖でもつきながら、「ふ~ん」と言いながら眺めているだけなのか、それは人それぞれでしょうが)、 訪問者の顔や表情が全く見えず、不思議な感覚です。

皆さんは、予備予選での各コンテスタントの演奏を聴いて、これはという逸材、お気に入りのピアニストは見つかったでしょうか。 コアなファンの方々や関係者からは、どのコンテスタントが有力視されているのか、全く情報が入ってこない状況で、 やや寂しさを感じますが、情報を探し回る時間は非常に限られていて、しかも僕はショパンの演奏に対する自分の感じ方に関しては、 他の人の意見には全く影響されない人間ですので、10月の本番が始まるのを楽しみに待つのみです。 今回の予備予選の演奏を含めて、各コンテスタントの演奏について、自分自身の率直な感想を ホームページやブログで披露してくれるファンの方が増えてくれると、僕たちファンにとって、より楽しいコンクールとなるだろうに、 とは思うのですが・・・

予備予選が終わってから、10月のショパンコンクールの本番までこのような微妙な期間があると、待ち遠しくなりますが、 僕自身にとって、このようなことは前回2015年の時にはなかったことでした。 というのも前回は予備予選通過者全員の演奏を聴いて、ランク付けするということはせず、いきなり10月の第1次予選から聴き始めたからです。 今回は予備予選免除者を除く全コンテスタントの演奏を一度は聴いた状態で、10月からの第1次予選を迎えることになるわけで、 全コンテスタントの演奏を、初めから「無」の状態で聴くことはできない、つまり大なり小なり先入観が入ってしまうことになります。 予備予選では突出した印象を与えるピアニストには巡り合えませんでしたが、各コンテスタントともに好不調もあったと思いますし、 中には逸材の片鱗を垣間見せてくれたピアニストもいましたので、10月からの本選で大化けしてくれること、 そして予備予選免除者の中に、ものすごい逸材が隠れていることを期待したいと思います。

ショパンコンクールの第1次予選は、10月3日(日)の日本時間午後5時から開始されます。 今回は各予選、本選ステージ毎にページを分けて更新していく予定です。 仕事との兼ね合いもあるため、全ての演奏をリアルタイムで聴いてコメントを付けることは不可能ですが、 時間と体力の許す限り、前回と同じくらいのクオリティを目指したいと思います。

2021/09/12


審査方法について

今回の予備予選はハイレベルだったと思います。 僕は予備予選で敗退したコンテスタントの演奏をあまり聴いていないのですが、中には良い演奏をしていながら結果的には通過できずに涙を飲んだ コンテスタントも多かったのではないかと思われます。 敗退した日本人の演奏も数名聴いてみましたが、日本人の敗退者に関しては通過してもよかったと思える人がそれなりにいたのも事実です。 何故、このような結果になってしまうのか、その原因は審査方法にあるかもしれません。

そこで、ここでは今回のショパンコンクールの予備予選、10月からの予選、本選の審査方法について、 ショパンコンクールの公式サイトに掲載されている資料から引用して説明したいと思います。

審査のポイント

①審査員の生徒には点数を入れることができない(記入欄に'S'の文字が予め記されている)。
②次のステージに進ませたいかどうかを、YES / NOで記入する。
③予備予選、第1次予選、第2次予選、第3次予選では、1点を最低点、25点を最高点として25段階評価(整数で記入)。
④上記でYESを入れた場合、予備予選、第1次予選は18点以上、第2次予選は19点以上、第3次予選は20点以上を入れる。
⑤各ステージ終了後、各コンテスタントの平均点が算出され、その平均から乖離した得点を入れた審査員の点数は修正された上で再度平均点が算出されて順位付けされる。
⑥各審査員にはコンテスタントの名前が明かされずに次のステージへの通過者が決定される。
⑦但し、第3次予選終了後、本選進出者を決定する段階で、得点順で9位から12位のコンテスタントの名前について、審査員の過半数が知りたいと答えた場合、名前が明かされる。

何だか難しいように感じるかもしれませんが、要するになるべくコンテスタントに有利・不利が生じないように、努めて公平な審査になるように、 とコンクール運営側が慎重に配慮しようとした結果だと思います。

それでは上記のそれぞれのポイントについて追加説明をしていきたいと思います。

①審査員の生徒には点数を入れることができない(記入欄に'S'の文字が予め記されている)。
自分の生徒には当然ひいきしたくなるものなので、そのようなことが起こらないようにとコンクール運営側が配慮しています。

②次のステージに進ませたいかどうかを、YES / NOで記入する。
これが最も重要なポイントです。この人の演奏をもっと聴きたいと審査員に思わせられるかどうかが結果に最も直結しそうです。 ミスが少なく技術的にそつなく弾けていても、何か他の人にはない特徴や魅力がない人は、積極的に評価するものがないとして、NOを付けられてしまう可能性が高いということです。 逆にややキズがある演奏でも、得難い魅力のある演奏をした人は、次のステージでも聴いてみたいということで、YESの数が増えそうです。

③予備予選、第1次予選、第2次予選、第3次予選では、1点を最低点、25点を最高点として25段階評価(整数で記入)。
④上記でYESを入れた場合、予備予選、第1次予選は18点以上、第2次予選は19点以上、第3次予選は20点以上を入れる。
25点満点で点数を付けるのは、多くのコンクールで採用されている一般的な審査方法です。

⑤各ステージ終了後、各コンテスタントの平均点が算出され、その平均から乖離した得点を入れた審査員の点数は修正された上で再度平均点が算出されて順位付けされる。
これは極端な点数を補正するためのものです。 分かりにくいと思いますので、これも公式サイトでの説明をもとに解説したいと思います。 各予選終了後に審査結果をもとに各コンテスタントの平均点が算出されますが、 例えば、第1次予選での、あるコンテスタントXの平均点が14.35だったとします。 ある審査員AがこのコンテスタントXに23点を入れていたとします。そうするとこの審査員Aの平均点との乖離は、23-14.35で8.65点となります。 第1次予選の場合、この乖離(この場合、8.65点)が、3点以上の場合、3点に修正されます。 つまり、この場合、この審査員AがコンテスタントXに入れた点数は、14.35 + 3で17.35点に修正されることになります。 逆に審査員BがコンテスタントXに7点という低い点数を入れていたとしても、同様に修正され、14.35 - 3で11.35点となります。 こうして修正された点数をもとに、再度平均点が算出されて、その平均点をもとに通過/敗退が決定されます。 第2次予選、第3次予選の場合、平均点との乖離が2点以上の場合、同様に2点に修正されます。

何故このようなことをするかというと、癖のある審査員の極端な点数を修正するためです。 過去のコンクールでも、例えば前回の第17回ショパンコンクールで結果的に優勝したチョ・ソンジンにNOと最低点を付け続けたフィリップ・アントルモンの場合がありますし (もっとも、これは何らかの裏事情があったのかもしれませんが)、 他にも大昔の例ですが、初回の1958年第1回チャイコフスキーコンクールで、ヴァン・クライバーンに最高点、他のピアニストに0点を付けたと言われるスヴャトスラフ・リヒテルの例、 あるいは1972年のエリザベートコンクールで、シプリアン・カツァリスを不当に低く評価した審査員長エミール・ギレリスの例など、 極端な審査結果が後に発覚する例があり(クライバーンの場合は明らかな圧勝であったため、リヒテルの審査結果は大勢に影響はなかったとも言えますが)、 このような極端な審査員の点数が特定のコンテスタントに与えるダメージの大きさを考慮してのことと思います。

⑦第3次予選終了後、本選進出者を決定する段階で、得点順で9位から12位のコンテスタントの名前について、審査員の過半数が知りたいと答えた場合、名前が明かされる。
これは10人の本選進出者を決める段階で、機械的に上から10人を決めてよいかどうかを審査員たちに確認するプロセスです。 当落線上では誤差範囲内の点数でほぼ同列に並ぶことも多いですし、コンテスタントの名前が分かれば、 数字だけではない、その人のカリスマ性、スター性、将来性などを加味した総合判断が可能となるわけで、これは良い制度だと思います。 公平性が担保されず、作為の入り込む余地をあえて作ってしまうという批判はあるかもしれませんが、 ショパンコンクールが、スターピアニスト発掘の場としての意義を持つことも考慮すると、致し方ないとも言えると思います。

以上、今回のショパンコンクールの審査方法について概観してきましたが、コンテスタント側から見た戦略として最も重要なのが、 いかに多くの審査員から'YES'を集められるか、つまり「次のステージでも聴いたみたい」と思わせられるか、と言ってよいと思います。

そこで、以下では、YESを集めるためにはどのようなものが求められるのかを僕なりに考察したいと思います。 よく言われるように演奏技術(テクニック)、音楽性、音色、スター性(カリスマ性)が考慮されると思います。それぞれについて見ていきます。

最近のコンテスタントの技術的レベルは非常に高く、テクニックで圧倒するにはよほどの超絶技巧または完全無欠のマシンであることが必要となります。 過去の例で言えば、1960年のマウリツィオ・ポリーニ(マシン的な技巧)、1990年の横山幸雄さん(マシン的な技巧)、1995年のアレクセイ・スルタノフ(アグレッシブな超絶技巧) などがありますが、並み居る腕達者のコンテスタントがひしめく中、このような印象を与えるには、よほどの目立った演奏技巧が必要になり、これはこれで非常にハードルが高いです。 今回の予備予選で技術的に目立っていると思ったのは、 21.Yifan Hou, China, 33. Jakub Kuszlik, Polandあたりです。

その他の評価ポイントとして音楽性がよく引き合いに出されますが、テンポルバートやアゴーギクの法則についても、多くのコンテスタントは当然のごとく習得済という印象です。 このようにショパンの作品へのアプローチは一定レベル以上に達しているコンテスタントがほとんどで、そこにその人ならではの音楽的魅力を 打ち出すといっても、それはある聴き手には「刺さる」ものであっても、そうでない聴き手もいたりして、決め手に欠けてしまう場合がほとんどと言えそうです。 テンポルバートも控えめから濃厚まで幅が広く、好みも人それぞれだと思いますし、僕にとって「センスの良いルバート」と思えても、 「物足りない」と感じる人もいたりして、これも好みによって評価は変わってくると思います。

そのような中、最も分かりやすいのは「音色」と「音の質感」です。これが目立っていると、演奏開始から一瞬で聴く人の心を奪います。 僕が予備予選の演奏を聴いてランクAにした人は、特に際立って音色の冴えたピアニストが多いです。 4.Kai-Min Chang, Chinese Taipei, 21.Yifan Hou, China, 43.Arsenii Mun, Russia, 46.Jinhyung Park, South Korea, 62.Shun Shun Tie, China, 71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China が、僕が聴いた限り、魅力的な音色を出す上位6人でした(自宅のオーディオとの相性もあると思いますが)。 音色が魅力的なピアニストは、特にノクターンが映えます。4.Kai-Min Chang, Chinese TaipeiのノクターンOp.48-1は出だしから本当に魂を奪われましたし、 21.Yifan Hou, ChinaのノクターンOp.27-1も、はっとするほど美しい音色でスマートで清純な演奏でした。 加えて、この人はエチュードOp.10-10の出来が上限を突き抜けている印象があり、無限の可能性を感じました。この曲をこんなに上手く弾ける人はプロにもなかなかいないですからね。 43.Arsenii Mun, Russiaは一味違っていて、真珠のような美音を持つ人で、このような音で他の曲を弾いたら、どんなに映えるだろうか、 という無限の期待を抱かせてくれます。最後のコンチェルトまで、というのが僕の希望ですが、いかがでしょうか。 46.Jinhyung Park, South Koreaもシャープで冴えた音色を持つ人で、今回は期待できそうです。 62.Shun Shun Tie, ChinaのノクターンOp.62-1は光り輝く美音で神々しいばかりの美しさ、71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/ChinaのノクターンOp.62-1は 耽美的で深いロマンティシズムの漂う極上の演奏でした。 「ああ、やっぱりショパンは音がきれいでなければ」、「音が美しいというのは一番の強みだ」ということを改めて感じさせてくれます。

カリスマ性、スター性については、予備予選だけでは分からない部分が多く、10月からの本番で徐々にその人ならではの雰囲気が分かってくると思います。 これと関連することですが、見た目の感じよさといったものが意外に重要だったりします。 (見た目の感じが良ければ「あばたもえくぼ」になる一方、見た目の印象が悪ければ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となりますし、 「ショパン的ではない」という問答無用の最終兵器的な切り札で一蹴される危険さえあります。日本人でこのような人が出ないことを切に願います。 日本人のコンテスタントは柔らかく感じの良い笑顔を!)。 演奏中に表情を極端に変えたり顔をしかめたり、といった、いわゆる「顔芸」は加点ポイントにならないばかりか、 むしろ悪印象を与えるリスクが高いと思いますので、最小限にとどめてほしい、というのが僕の個人的な希望です。

ショパンコンクールの第1次予選出場者と演奏順は9月30日に発表されます。 前回同様、数名の棄権者が出る可能性がありますが、期待しているピアニストも多いですし、なるべく棄権者が出ないことを祈ります。 また演奏順に関しては、ファミリーネームのアルファベット順ですが、その先頭の文字は抽選により決定されます。 前回、第17回ショパンコンクールでは'B'でしたが、今回はどうでしょうか。 トップバッターになってしまうと圧倒的に不利で、どんなに素晴らしい演奏をしても、たとえ世紀の名演奏をしたとしても、「とりあえず保留」という判定になってしまうのは 以前からよく言われていることです。コンテスタントたちは、「どうか最初の方にはなりませんように」と祈りながら待っていると思います。 今回の予備予選通過者(予備予選免除者も含めて)が全員、第1次予選に出場すると仮定した場合、 既にトップバッターになることが絶対にないと保証されている人も多いです。 ファミリーネームの頭文字が同じアルファベットの人が複数いる場合、その先頭の人以外は、トップバッターになる可能性はないということです。 それだけでも安心できる材料にはなると思います。 この辺りはやや不公平という気もしますが、コンクールに100%の公平を担保することは、どうやっても不可能です。 トップバッターになったピアニストは、「誰も弾かれていない万全の状態のピアノが弾ける」くらいに考えて、気負わずに演奏してほしいと思います。

管理人の評価方法について

前回のショパンコンクールでは、評価点は付けず、上から順に、A:非常に素晴らしい・通過確実、B:まあ通過するのではないか、C:当落線上ギリギリ、D:予選落ちか、E:予選落ち確実、 ?:演奏を聴いていない、という基準でランク付けしました。今回も同様に、A,B,C,D,E,?方式でランク付けしようと思います。 僕は素人ですし、審査員気どりして、YES/NO、25点満点で審査するなど、おこがましいと思うからです。 「それでも管理人さんの中での25点満点での点数とYES/NOが見たい」という方はいらっしゃるでしょうか?

予備予選についての当ページでの更新はこれで終わりにしたいと思います。

次の更新は、第1次予選レビューで行いたいと思います。

2021/09/20


ショパンコンクールの日程について

このページの更新はこれで終了、と言っておきながら、大事な情報が抜け落ちていました。 10月からの予選、本選の日程です。 ショパンコンクールを待ちわびている皆さんにとっては、既知の情報だと思いますが、 当ページでは網羅性(つまり、このページを読めば、ショパンコンクールに関する可能な限りの情報が入手できる、 という状態)も重視しているため、一応、掲載しておきたいと思います。

10月からのショパンコンクールの日程は下記の通りです。

10月3日(日)~7日(木):第1次予選
10月9日(土)~12日(火):第2次予選
10月14日(木)~16日(土):第3次予選
10月18日(月)~10月20日(水):本選
10月21日(木)朝:最終結果発表
10月21日(木)~23日(土):入賞者ガラコンサート

第1次予選は5日間で約80人、第2次予選は4日間で約40人、第3次予選は3日間で約20人、本選は3日間で約10人となります。 第1次予選、第2次予選、第3次予選は1日を途中3時間の休憩を挟んで前半(約4時間)、後半(約4時間)に分けて行われます。 前半はポーランド現地時間午前10時~午後2時(日本時間午後5時~午後9時)、後半はポーランド現地時間午後5時~午後9時(日本時間翌日午前0時~午前4時) です。ポーランド・ワルシャワと日本の時差は7時間で、日本が7時間進んでいるので、ポーランドの午前が日本の夕方~夜に相当します。 日中は仕事や学校で忙しい人も帰宅してから、前半の途中から聴けるという人も多いと思いますし、日本在住の人にとっては この時差がむしろありがたいのではないかと思います。

予選の後半は日本時間午前0時から4時と深夜から未明にかけての時間帯で結構厳しいと思いますが、 筋金入りのショパンファンの皆さんの中には、根性で起き続けるか、 上下まぶたをマッチ棒で支えて目が閉じないようにして聴き続けるか(もちろん冗談ですよ)、 とにかく少しでも聴き逃さないように、と頑張る人もいらっしゃるのではないかと思います。 あるいはショパンコンクール期間中はライフスタイルを変えて、予選前半が午後9時に終了したら、風呂に入って歯磨きをして仮眠をとって、 午前0時からの後半に備える、そして、後半が終了したら、2度寝するということを本気で考えている人もいるかもしれませんね。 皆さんはどうでしょうか?

いずれにしても僕の場合は、仕事の関係上、どう頑張っても全ての演奏を聴くことは不可能で、 しかも前回2015年と比べると、聴く時間、更新する時間がさらに限られる可能性が高いです。 僕は現在、とある地方のクリニックの勤務医をしていますが、夜間コールがかかり緊急対応が必要となる可能性は常にあります。 その場合は、突然、更新が中断する可能性があります。 「あれ、更新が急にストップした。管理人さん、どうしたのかな」と思ったら、そういう状況だと思って下さい。 全員の演奏をリアルタイムで聴けないのは残念ですが、時間と体力の許す限り、1人でも多くのコンテスタントの演奏を聴いて、 リアルタイムでコメントを付けたいと思います(こういうコンテンツは、何よりもリアルタイム性が重要だと思いますから・・・)。

最近のこのページのアクセス数は1日300人前後と徐々に増えています。 訪問者の顔が見えず声も聞こえない状況で、アクセス数ばかり増えるというのは何とも不思議な状況です。 ブログやYouTubeであれば、訪問者の皆さんから気軽にコメントがもらえると思うのですが、 当サイトのようにホームページの場合、訪問者からの反応を確認する手段はアクセス数それ自体とメールのみです。 メールの内容はメール送信者と受信者(管理人)しか見ることができず、管理人にあえてメールを送る勇気が出ないという方も多いと思いますし、 そこがブログやYouTubeのコメント欄との大きな違いだと思います。 時代遅れとは思いますが、ショパンコンクール期間中だけ、掲示板(ショピニストへの道・掲示板)を臨時で復活させようか と考えたりもしましたが、荒らされたトラウマがあり、また管理に時間も神経も削られることを考えると、 割に合わないかな、と考えています。

とにかく当ページのアクセス数が急上昇しているということは、それだけ注目されているということだと前向きに考えるようにします。 ショパンコンクールの今回の予備予選の演奏評について、時々検索することがありますが、 やはり同様の試みをしているサイトやブログを見つけることはできず、このページで行っている試みは、 それなりの希少性があるのだと認識しています。 本当は僕のコメントなどに左右されず、皆さん自身が自分の耳や感覚に自信を持って1人1人のコンテスタントの演奏を 楽しんでくれることを僕は望んでいるのですが、 やはりそのコンテスタントが他の人からどのように評価されるのかは皆が皆、気にすることではないかと思います。 僕自身はショパンの作品の演奏に関しては、他人の意見やコメントには全く左右されないタイプですが、 それでもその演奏に対して他の人がどう感じるのかは大いに気になるところです。 それは皆さんもきっと同じではないかと思います。 この機会に、ショパンコンクールの各コンテスタントの演奏に対する感想をリアルタイムに発信する、 という僕と同じような試みを始める人が他に1人でも現れることを、ファンの1人として期待しています。

それでは、10月からのショパンコンクール第1次予選の開始を楽しみに待ちましょう!

2021/09/23


第1次予選出場者と演奏順が決定
ファミリーネームのアルファベット'M'からスタート


参考リンク:Press conference of the 18th International Fryderyk Chopin Piano Competition

ショパンコンクールの予選の演奏順は、出場者のファミリーネームのアルファベット順ですが、 その先頭のアルファベットは毎回抽選で決定されます。 本日9月30日に抽選会が行われ、そのアルファベットはMとなりました。

というわけでトップバッターは、Xuanyi Mao, Chinaとなります。 トップバッターは圧倒的に不利であるため、無条件に応援したくなりますし、 僕の中では一定の「下駄」を履かせるのが暗黙のルールになっています。

この演奏順が、各コンテスタントの評価にどのような影響を与えるのか、気になります。 このページの更新は本当の本当にこれで最後です。

次は、第1次予選レビュー のページでお会いしましょう!

2021/09/30


以下は10月以降更新予定

第18回ショパン国際ピアノコンクール・第1次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第2次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第3次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・本選レビュー


2021年第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選の演奏

7月12日から7月23日まで開催された予備予選のセッション毎のリンクと出場者名一覧を作成しました。 早見表としても活用できると思います。演奏者の通過/非通過の情報、年齢、性別、僕自身の独自のランク付け、コメントなどを付加していく予定です。
※○は予備予選通過者

2021.07.12 session 1
○ LEONORA ARMELLINI (Włochy / Italy)
  ŁUKASZ BYRDY (Polska / Poland)
○ ERIC GUO (Kanada / Canada)
○ ANDRZEJ WIERCIŃSKI (Polska / Poland)
  LUIGI CARROCCIA (Włochy / Italy)
○ KAI-MIN CHANG (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
2021.07.12 session 2
  HAN CHEN (Chi?skie Tajpej / Chinese Taipei)
○ JUNHUI CHEN (Chiny / China)
○ ZIXI CHEN (Chiny / China)
○ HYOUNGLOK CHOI (Korea Południowa / South Korea)
  DIANA COOPER (Francja / France)
○ FEDERICO GAD CREMA (Włochy / Italy)
2021.07.13 session 1
○ ALEKSANDRA HORTENSJA DĄBEK (Polska / Poland)
  STEPHANIE DRAUGHON (Stany Zjednoczone / United States)
  HSIN-YU DUAN (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
  MATEUSZ DUDA (Polska / Poland)
  MARTINA CONSONNI (Włochy / Italy)
2021.07.13 session 2
○ YASUKO FURUMI (Japonia / Japan)
○ ALEXANDER GADJIEV (Włochy, Słowenia / Italy, Slovenia)
○ MARTÍN GARCÍA GARCÍA (Hiszpania / Spain)
○ EVA GEVORGYAN (Rosja, Armenia / Russia, Armenia)
○ JORGE GONZÁLEZ BUAJASAN (Kuba / Cuba)
2021.07.14 session 1
○ JOANNA GORANKO (Polska / Poland)
○ CHELSEA GUO (Stany Zjednoczone / United States)
○ MIYU SHINDO (Japonia / Japan)
  XU GUO (Chiny / China)
  KATHARINA HACK (Niemcy / Germany)
○ SAAYA HARA (Japonia / Japan)
  YUKINO HAYASHI (Japonia / Japan)
2021.07.14 session 2
  WATARU HISASUE (Japonia / Japan)
○ YIFAN HOU (Chiny / China)
○ WEI-TING HSIEH (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
  YUN CHIH HSU (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
○ KAORUKO IGARASHI (Japonia / Japan)
  HANA IGAWA (Japonia / Japan)
  GRIGORIS IOANNOU (Grecja / Greece)
2021.07.15 session 1
  SEIKA ISHIDA (Japonia / Japan)
○ JUNICHI ITO (Japonia / Japan)
  ANDREI IVANOU (Białoruś / Belarus)
○ ASAKI IWAI (Japonia / Japan)
○ SAN JITTAKARN (Tajlandia / Thailand)
  CHI HO HAN (Korea Południowa / South Korea)
○ JOO-YEON KA (Korea Południowa / South Korea)
2021.07.15 session 2
  YUKINO KAIHARA (Japonia / Japan)
  HYELEE KANG (Korea Południowa [Daegu] / South Korea [Daegu])
  HYELEE KANG (Korea Południowa [Junsu] / South Korea [Junsu])
  ELIZABETH KARAULOVA (Rosja / Russia)
  AIRI KATADA (Japonia / Japan)
  EYLAM KESHET (Izrael / Israel)
  KONSTANTIN KHACHIKYAN (Rosja / Russia)
2021.07.16 session 1
○ NIKOLAY KHOZYAINOV (Rosja / Russia)
  HYELIM KIM (Korea Południowa / South Korea)
  JUN HO KIM (Korea Południowa / South Korea)
○ SU YEON KIM (Korea Południowa / South Korea)
  YURIKA KIMURA (Japonia / Japan)
○ AIMI KOBAYASHI (Japonia / Japan)
  QI KONG (Chiny / China)
2021.07.16 session 2
  PAVLE KRSTIC (Bułgaria / Bulgaria)
○ MATEUSZ KRZYŻOWSKI (Polska / Poland)
  YUKINE KUROKI (Japonia / Japan)
○ JAKUB KUSZLIK (Polska / Poland)
○ SHUSHI KYOMASU (Japonia / Japan)
○ HYUK LEE (Korea Południowa / South Korea)
2021.07.17 session 1
○ JAEYOON LEE (Korea Południowa / South Korea)
  NING YUEN LI (Chiny, Hongkong / China, Hong Kong)
○ XIAOXUAN LI (Chiny / China)
  XINJIE LI (Chiny / China)
  HAO WEI LIN (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
○ BRUCE (XIAOYU) LIU (Kanada / Canada)
2021.07.17 session 2
  ZIYU LIU (Chiny / China)
○ JULIA ŁOZOWSKA (Polska / Poland)
  VITALY STARIKOV (Rosja / Russia)
○ TOMASZ MARUT (Polska / Poland)
○ YUPENG MEI (Chiny / China)
2021.07.18 session 1
  ASAKA MIYOSHI (Japonia / Japan)
  MOMOKO MIZUTANI (Japonia / Japan)
○ ARSENII MUN (Rosja / Russia)
  MAYAKA NAKAGAWA (Japonia / Japan)
  YUI NAKAMURA (Japonia / Japan)
○ VIỆT TRUNG NGUYỄN (Wietnam, Polska / Vietnam, Poland)
  MARIKO NOGAMI (Japonia / Japan)
2021.07.18 session 2
  ARISA ONODA (Japonia / Japan)
  ANFISA BOBYLOVA (Ukraina / Ukraine)
  ANKE PAN (Niemcy / Germany)
  ERYK PARCHAŃSKI (Polska / Poland)
○ JINHYUNG PARK (Korea Południowa / South Korea)
○ YEONMIN PARK (Korea Południowa / South Korea)
○ JIANA PENG (Chiny / China)
2021.07.19 session 1
○ ZUZANNA PIETRZAK (Polska / Poland)
  AGNĖ RADZEVIČIŨTĖ (Kanada, Litwa / Canada, Lihuania)
○ HAO RAO (Chiny / China)
○ YANGYANG RUAN (Chiny / China)
  KAZUYA SAITO (Japonia / Japan)
○ XUANYI MAO (Chiny / China)
2021.07.19 session 2
○ ARISTO SHAM (Chiny, Hongkong / China, Hong Kong)
  MENG-SHENG SHEN (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
  KOTARO SHIGEMORI (Japonia / Japan)
  MANA SHOJI (Japonia / Japan)
○ TALON SMITH (Stany Zjednoczone / United States)
○ KYOHEI SORITA (Japonia / Japan)
2021.07.20 session 1
○ ALBERTO FERRO (Włochy / Italy)
○ GEORGIJS OSOKINS (Łotwa / Latvia)
○ SZU-YU SU (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
○ HAYATO SUMINO (Japonia / Japan)
○ ALEKSANDRA ŚWIGUT (Polska / Poland)
  MARCEL TADOKORO (Francja / France)
○ RIKONO TAKEDA (Japonia / Japan)
2021.07.20 session 2
○ SHUNSHUN TIE (Chiny / China)
  MATEUSZ TOMICA (Polska / Poland)
○ SARAH TUAN (Stany Zjednoczone / United States)
  PARKER VAN OSTRAND (Stany Zjednoczone / United States)
  MÓNIKA RUTH VIDA (Węgry / Hungary)
  BOCHENG WANG (Wielka Brytania / United Kingdom)
  CHANEL WANG (Stany Zjednoczone / United States)
2021.07.21 session 1
○ CHAO WANG (Chiny / China)
  LIYA WANG (Chiny / China)
  YIJIA WANG (Chiny / China)
○ ZITONG WANG (Chiny / China)
○ ZIJIAN WEI (Chiny / China)
  JACEK WENDLER (Polska / Poland)
○ MARCIN WIECZOREK (Polska / Poland)
2021.07.21 session 2
○ RIKO IMAI (Japonia / Japan)
  SZE YUEN WONG (Chiny, Hongkong / China, Hong Kong)
○ VICTORIA WONG (Kanada / Canada)
  MACIEJ WOTA (Polska / Poland)
  MAIQI WU (Chiny / China)
○ YUCHONG WU (Chiny / China)
2021.07.22 session 1
○ LINGFEI (STEPHAN) XIE (Kanada, Chiny / Canada, China)
  BIGUO XING (Chiny / China)
○ ZI XU (Chiny / China)
○ YUANFAN YANG (Wielka Brytania / United Kingdom)
○ ANASTASIA YASKO (Rosja / Russia)
  SUAH YE (Korea Południowa / South Korea)
  MIKI YAMAGATA (Japonia / Japan)
2021.07.22 session 2
○ Boao Zhang (Chiny / China)
  Shih Hsien Yeh (Chińskie Tajpej / Chinese Taipei)
  YI YI (Chiny / China)
  HAO ZI YOH (Malezja / Malaysia)
  JESSICA YUMA (Kanada / Canada)
○ LEONARDO PIERDOMENICO (Włochy / Italy)
2021.07.23 session 1
○ JJ JUN LI BUI (Kanada / Canada)
○ MICHELLE CANDOTTI (Włochy / Italy)
○ XUEHONG CHEN (Chiny / China)
○ SOHGO SAWADA (Japonia / Japan)
○ ANDREY ZENIN (Rosja / Russia)
  CRISTIAN SANDRIN (Rumunia / Romania)
  SE-HYEONG YOO (Korea Południowa / South Korea)
2021.07.23 session 2
  KAIWEN ZHAO (China)
○ YILAN ZHAO (China)
○ ZIJI ZOÉ ZHAO (China)
  TIAN-YU ZHOU (Canada)

以下に今回の予備予選通過者と予備予選免除者一覧を掲載します。 引用元は下記サイトです。

ⅩⅧ KONKURS 18TH CHOPIN COMPETITON WARSAW

予備予選通過者一覧

1.Leonora Armellini, Italy
2.J J Jun Li Bui, Canada
3.Michelle Candotti, Italy
4.Kai-Min Chang, Chinese Taipei
5.Junhui Chen, China
6.Xuehong Chen, China
7.Zixi Chen, China
8.Hyounglok Choi, South Korea
9.Federico Gad Crema, Italy
10.Aleksandra H. Dąbek, Poland
11.Alberto Ferro, Italy
12.Yasuko Furumi, Japan
13.Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia
14.Martin Garcia Garcia, Spain
15.Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
16.Jorge Gonzalez Buajasan, Cuba
17.Joanna Goranko, Poland
18.Chelsea Guo, U.S.A.
19.Eric Guo, Canada
20.Saaya Hara, Japan
21.Yifan Hou, China
22.Wei-Ting Hsieh, Chinese Taipei
23.Kaoruko Igarashi, Japan
24.Riko Imai, Japan
25.Junichi Ito, Japan
26.Asaki Iwai, Japan
27.San Jittakarn, Thailand
28.Jooyeon Ka, South Korea
29.Nikolay Khozyainov, Russia
30.Su Yeon Kim, South Korea
31.Aimi Kobayashi, Japan
32.Mateusz Krzyżowski, Poland
33.Jakub Kuszlik, Poland
34.Shushi Kyomasu, Japan
35.Hyuk Lee, South Korea
36.Jaeyoon Lee, South Korea
37.Xiaoxuan Li, China
38.Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
39.Julia Łozowska, Poland
40.Xuanyi Mao, China
41.Tomasz Marut, Poland
42.Yupeng Mei, China
43.Arsenii Mun, Russia
44.Viet Trung Nguyen, Vietnam/Poland
45.Georgijs Osokins, Latvia
46.Jinhyung Park, South Korea
47.Yeon-Min Park, South Korea
48.Jiana Peng, China
49.Leonardo Pierdomenico, Italy
50.Zuzanna Pietrzak, Poland
51.Hao Rao, China
52.Yangyang Ruan, China
53.Sohgo Sawada, Japan
54.Aristo Sham, China, Hong Kong
55.Miyu Shindo, Japan
56.Talon Smith, U.S.A.
57.Kyohei Sorita, Japan
58.Szuyu Su, Chinese Taipei
59.Hayato Sumino, Japan
60.Aleksandra Świgut, Poland
61.Rikono Takeda, Japan
62.Shun Shun Tie, China
63.Sarah Tuan, U.S.A.
64.Chao Wang, China
65.Zitong Wang, China
66.Zijian Wei, China
67.Marcin Wieczorek, Poland
68.Andrzej Wierciński, Poland
69.Victoria Wong, Canada
70.Yuchong Wu, China
71.Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China
72.Zi Xu, China
73.Yuanfan Yang, United Kingdom
74.Anastasia Yasko, Russia
75.Andrey Zenin, Russia
76.Boao Zhang, China
77.Yilan Zhao, China
78.Ziji Zhao, China

予備予選免除者一覧

1.Piotr Alexewicz, Poland (1st Prize, All Polish Piano Competition 2020, Warsaw)
2.Avery Gagliano, U.S.A. (1st Prize, Miami 2020)
3.Adam Kałduński, Poland (1st Prize, Beijing 2019 and 2nd Prize All Polish Piano Competition 2020, Warsaw)
4.Szymon Nehring, Poland (1st Prize, Tel-Aviv, 2017)
5.Evren Ozel, U.S.A. (2nd Prize, Miami 2020)
6.Kamil Pacholec, Poland (2nd Prize, Bydgoszcz, 2019)
7.Piotr Pawlak, Poland (1st Prize, Darmstadt 2017 and 2nd Prize, All Polish Competition, Warsaw 2020)
8.Yutong Sun, China (2nd Prize, Santander 2018)
9.Tomoharu Ushida, Japan (2nd Prize, Hamamatsu 2018)


予備予選審査員

審査委員長
カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン(ピアニスト、指導者、ラファウ・ブレハッチの先生として有名)
審査員(肩書)
ドミトリー・アレクセーエフ(ピアニスト)
マルタ・アルゲリッチ(1965年第7回ショパンコンクール第1位)
サ・チェン(2000年第14回ショパンコンクール第4位)
ダン・タイ・ソン(1980年第10回ショパンコンクール第1位)
海老彰子(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
フィリップ・ジュジアノ(1995年第13回ショパンコンクール第2位(1位なし))
ネルソン・ゲルナー(1990年ジュネーブ国際音楽コンクール・ピアノ部門第1位)
アダム・ハラシェヴィッチ(1955年第5回ショパンコンクール第1位)
クシシトフ・ヤブウォンスキ(1985年第11回ショパンコンクール第3位)
ケヴィン・ケナー(1990年第12回ショパンコンクール第2位(1位なし))
ヤヌシュ・オレイニチャク(1970年第8回ショパンコンクール第6位)
ピョートル・パレチニ(1970年第8回ショパンコンクール第3位)
エヴァ・ポブウォツカ(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
ジョン・リンク(音楽学者、ショパン研究家、大学教授)
ヴォイチェフ・シヴィタワ(ピアニスト・1990年第12回ショパンコンクール・セミファイナリスト(棄権))
ディーナ・ヨッフェ(1975年第9回ショパンコンクール第2位)


予備予選課題曲

①以下の作品の中から1曲
エチュード ハ長調 Op.10-1
エチュード 嬰ハ短調 Op.10-4
エチュード 変ト長調 Op.10-5
エチュード ヘ長調 Op.10-8
エチュード ハ短調 Op.10-12
エチュード イ短調 Op.25-11

②以下の作品の中から1曲
エチュード イ短調 Op.10-2
エチュード ハ長調 Op.10-7
エチュード 変イ長調 Op.10-10
エチュード 変ホ長調 Op.10-11
エチュード イ短調 Op.25-4
エチュード ホ短調 Op.25-5
エチュード 嬰ト短調 Op.25-6
エチュード ロ短調 Op.25-10

③以下の作品の中から1曲
ノクターン ロ長調 Op.9-3
ノクターン 嬰ハ短調 Op.27-1
ノクターン 変ニ長調 Op.27-2
ノクターン ト長調 Op.37-2
ノクターン ハ短調 Op.48-1
ノクターン 嬰ヘ短調 Op.48-2
ノクターン 変ホ長調 Op.55-2
ノクターン ロ長調 Op.62-1
ノクターン ホ長調 Op.62-2
エチュード ホ長調 Op.10-3
エチュード 変ホ短調 Op.10-6
エチュード 嬰ハ短調 Op.25-7

④⑤以下の作品の中から2曲
4つのマズルカ Op.17 : 変ロ長調 Op.17-1、ホ短調 Op.17-2、変イ長調 Op.17-3、イ短調 Op.17-4
4つのマズルカ Op.24 : ト短調 Op.24-1、ハ長調 Op.24-2、変イ長調 Op.24-3、変ロ短調 Op.24-4
4つのマズルカ Op.30 : ハ短調 Op.30-1、ロ短調 Op.30-2、変ニ長調 Op.30-3、嬰ハ短調 Op.30-4
4つのマズルカ Op.33 : 嬰ト短調 Op.33-1、ハ長調 Op.33-2、ニ長調 Op.33-3、ロ短調 Op.33-4
4つのマズルカ Op.41 : ホ短調 Op.41-1、ロ長調 Op.41-2、変イ長調 Op.41-3、嬰ハ短調 Op.41-4
3つのマズルカ Op.50 : ト長調 Op.50-1、変イ長調 Op.50-2、嬰ハ短調 Op.50-3
3つのマズルカ Op.56 : ロ長調 Op.56-1、ハ長調 Op.56-2、ハ短調 Op.56-3
3つのマズルカ Op.59 : イ短調 Op.59-1、変イ長調 Op.59-2、嬰ヘ短調 Op.59-3
※上記の曲順はエキエル編・ナショナルエディションによるもの
(特にOp.33の4曲とOp.41の4曲は従来のパデレフスキ版・他、 多くの版の曲順とは異なるため、注意が必要)。

⑥以下の作品の中から1曲
バラード 第1番 ト短調 Op.23
バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
バラード 第3番 変イ長調 Op.47
バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
幻想曲 ヘ短調 Op.49

以上6つの作品を演奏。曲順は任意。

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