かしこく過ごすマタニティーライフ

○妊娠高血圧症候群について

1)妊娠高血圧症候群とは

2)赤ちゃんに与える影響は?

3)母体に与える影響は?

4)妊娠高血圧症候群の治療と予防

1)妊娠高血圧症候群とは

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  妊娠高血圧症候群は、妊娠することによって発病し、また、妊娠が終わると急激によくなる病気です。
 以前は、妊娠中毒症という病名でしたが、世界基準に合わせて、日本でも妊娠高血圧症候群の病名に変更になりました。

 妊娠高血圧症候群がなぜ起こるかは、いまだに解明されていませんが、妊娠したことで母体の腎臓に負担がかかり、その負担に耐え切れなくなると妊娠高血圧症候群が発症すると考えられています。
 妊娠高血圧症候群の症状とされる、高血圧、蛋白尿、浮腫は、腎臓病の症状と同じです。

  60年以上前(ほとんどの人が自宅分娩でした)は、妊娠高血圧症候群で亡くなる母親は年間2000人にのぼりました。
 現在ではその数は年間20人くらいに減少しましたが、油断できない病気です。


2)赤ちゃんに与える影響は?

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 母親が妊娠高血圧症候群になってしまうと、赤ちゃんにはどんな影響があるのでしょうか。 

 症状のひとつである蛋白尿がひどくなると、毎日5~10gの蛋白が母親の体内から失われ、母親は低蛋白血症となり、胎児へ移行する栄養が減少します。

 また、妊娠高血圧症候群が悪化すると、胎盤の状態が悪くなり、臍帯(へそのお)を通じて移行する酸素や栄養物がうまく胎児に届かなくなります。
 この症状が続くと、胎児の発育が悪くなり、やせてきます(子宮内胎児発育遅延)。
 また、臍帯の血流が時々止まったり、逆流するようになります。

 こうなると、胎児死亡を起こしたり、胎児が危険な状態になるため、未熟な状態でも帝王切開で赤ちゃんを出産せざるをえなくなります。
 赤ちゃんは体重も少ない上に弱った状態で生まれますので、後遺症を残すこともあります。

  妊娠高血圧症候群は予防できる病気です。赤ちゃんのために努力しましょう。


3)母体に与える影響は?

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 妊娠高血圧症候群は、妊娠することにより、蛋白尿、高血圧が出現する病気ですが、母体にはどんな影響があるのでしょうか。

 高血圧と浮腫がひどくなると、子癇(しかん)とよばれる痙攣を引き起こすことがあります。痙攣が続くと、ショック状態になり、胎児はもちろん、母親も重篤な状態になります。

 また妊娠高血圧症候群が悪化すると、胎盤の状態が悪くなり、常位胎盤早期剥離(赤ちゃんを分娩する前に、胎盤が先に剥離する)を起こすこともあります。
 早期剥離が起こると、胎児死亡を起こしたり、出血が止まりにくい状態になり大出血が続き、止血のために子宮を切除したり、母親が不幸にも亡くなる場合もあります。

 また、出産後も、高血圧や腎臓病の後遺症で苦しむ方もいます。

 妊娠高血圧症候群は予防できる病気です。母親自身のため、赤ちゃんのためにも努力しましょう。
 

4)妊娠高血圧症候群の治療と予防

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 妊娠高血圧症候群の治療はどのようにすればよいでしょうか。

 一番大事な治療は、安静と食事療法です。
 
 食事療法は、塩分制限(1日7g/dl以下)と、カロリー制限(軽症では1日2,000kcal以下)です。
 私の経験でも、1回目の妊娠で重症の妊娠高血圧症候群だった人が、安静と食事療法だけで2回目は正常だった例を数多く経験しています。

 血圧が、収縮期で160㎜Hg以上、拡張期で110㎜Hg以上、蛋白尿が2g/日以上、全身に浮腫が広がるなどの症状が1つでもある場合は入院が必要で、降圧剤を使う場合もあります。

 さらに悪化して、子癇(しかん)とよばれる痙攣を起こしたり、常位胎盤早期剥離(赤ちゃんを分娩する前に、胎盤が先に剥離する)を起こした場合は、緊急の帝王切開をします。

 妊娠高血圧症候群は、予防できる病気です。
 妊娠初期から、肥満にならないよう注意し、塩分は控えめにしましょう。
  

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