2020年・夏のおはなし 「UMBRELLA」
私が「UMBRELLA」という店を始めて、どれくらい月日が経ったでしょうか・・・
駅のすぐ横にあるせいか、雨の日でもお客様はけっこう来てくれる。
昼間は喫茶店、夜間はスナックで、私は朝から夜遅くまで働いている。
どうして「UMBRELLA」っていう名前にしたかと言うと・・・
傘を持たずにここに来てくれたお客様に、傘を提供したいと思ったからなんです。
何年か経った頃、この店の傘を利用した傘が縁で、色々なハッピーストーリーが生まれていたのです。
傘が縁で結ばれた相手を連れて、またこの店に来てくれる。
子供が生まれたって、子供と一緒にまたこの店に来てくれる。
そうやって、幸いなことにお客様が途切れることはない。
返ってきた傘の手入れをしながら、私は傘にいつも声をかけている。
「いつもご苦労様です。大切なお客様を守ってくれてありがとう。」
傘ですから壊れることもあります。
私は、お客様には「もし傘が壊れたら当店で処分いたしますので返却してください」と、伝えます。
お客様は、傘の処分に困らなくて済む。私は最後まで働いてくれた傘に、お礼の言葉をかけることができる。
お客様にとっても、私にとってもウィンウイン！
特に雨が多い時期には、傘は大活躍です。
人と人をつなぐ傘「UMBRELLA」
UMBRELLAというこの店で、大好きな料理を作って色々な人に食べてもらえる。
人と人をつないでいけるこの仕事と、傘に感謝の気持ちでいっぱいだ。
おしまい
──おはなし──
ここでは未発表の作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。
「ゆきだるまくんのひみつ」販売期間終了！
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2020年 春
