2017年・春のおはなし 「怖い日の友引」
これは、私の友人、C子が今から30年位前に、本当に体験した実話です。
お彼岸に無くなった友人のおばあちゃんは、友引の日に通夜をしました。
まだ暑さが残るこの年、家族は葬儀屋さんに全てを任せたのでした。
生前、彼女のおばあちゃんはこう言ってました。
「三途の河が本当にあったら、チャイムを鳴らして知らせるよ」
おばあちゃんの言った言葉も、彼女は記憶の遠いところに行ってしまい、すっかり忘れていました。
無事、通夜がすみ家族や親せきは葬式場に泊まることになりました。
もちろん、C子もそのはずでした。
しかし、彼女は礼服にビールをこぼしてしまい、家もここからそう遠くないし着替えを取りに帰ることにしたのです。
家に戻り、タンスを開けてもう一枚ある礼服を取り出し、着替えていると・・・
「ピンポーン」
チャイムの音がしました。時間は夜中の1時半。
こんな夜中に誰だろう? と思いつつもしかしたら近所の方かも知れないと思い彼女は玄関のドアを開けました。
不思議です、はっきりとチャイムの鳴る音が聞えたのに誰もいないのです。
外へ出てみましたが人の姿なんてありません。その時です。誰かがC子の方をたたいたのです。
振り返ると見たこともない人が立っていました。そしてその人はこう言って彼女の手を握ったのです。
「今日は友引。一緒に渡ってあげる人を連れに来たのです。
さあ、一緒に行きましょう。」
彼女は、ふらふらとその人について行ってしまったのです。
偶然彼女とすれ違った、お向かいの学生が彼女の異変に気が付き声をかけたのです。
「おい、下着姿でどこへ行くんだ?」
そうです。彼女は着替えている最中だったんですから、下着のままだったのです。
呼びとめられて、我に返ったC子はつないでいたその手を思いっきり振りほどき、声を掛けてくれた彼のところへ走って行きました。
そのとき彼とC子ははっきりと地獄からの使者の声を聞いたのです。
「おのれぇ、邪魔した奴共々にまた、迎えに来るからなぁ〜」
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あれから不思議な現象もなく、その後二人は別々の道を歩んでいます。
友引の時はお葬式を避けた方がいいと、言い伝えで私も聞いたことがあります。
友引の日に、どうしてもお葬式をする時、人形と一緒に葬るという話も聞いたことがあります。
この世に未練が残ることのないように・・・今をしっかりと生きなければ・・・と思います。
おしまい
──おはなし──
ここでは未発表の作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。
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