2006年・夏のおはなし            小さな声       

とてもとても、あつい夏の日のふしぎな出来事でした。
一人でおるすばんをしていた女の子が絵本を読んでいると、
「おねがい、たすけて」
と、いう声が聞こえてきました。

今は女の子ひとりしかいないはずです。
「おねがい、たすけて」
小さな声だけど、確かに聞こえてきます。

女の子は声のするほうへ歩き出しました。
「わたしに話しかけているのはだぁ〜れ?」
と、聞いても返事は返ってきません。
な〜んだ、空耳だったのか・・・と、思い部屋にもどろうとしたときです。

「おねがい、たすけて」
やっぱり聞こえてきます。

今度はもっとはっきり聞こえてきました。
窓の外から風がいきおいよく入ってきました。
窓に目をやると・・・大きな木の下で、小さな花が大きな落ち葉のしたじきになっていました。

女の子は、窓からじっと外をながめました。
小さなお花が小さくゆれていました。なんども、なんども。

女の子は、急いで外へ走っていきました。小さなお花にかぶさっている大きな葉っぱを、とってあげました。
小さなお花は動かなくなりました。

女の子はしばらくの間、小さなお花と一緒にいました。


                                                         おしまい  

──おはなし──

ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。

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