ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。

「ゆきだるまくんのひみつ」販売期間終了!
管理人宅にて若干在庫有り!ご注文はメールで!

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──おはなし──

2009年・春のおはなし                    ダダダダン

小さな国の、小さな町に、小さなおうちがありました。
その家からはいつも決まってこんな音がします。
「ダダダダン。ダダダダン」
朝、早くから 夜、おそくまで、おばあさんがぬいぐるみを一生けんめい作っています。

今朝はとても冷えました。
今日も一日がんばらなくっちゃ、とおばあさんが窓を開けると、外は一面、銀世界です。
ふと、窓の横においてあったクマのぬいぐるみに目をやると、クマの頭と手足に
ほんのりと雪がついていました。

「いやぁ、昨日はたしかに窓を閉めたはず・・・だからこうやって、今、あけたんだよねぇ?」

このクマは、今日、作るうさぎのぬいぐるみといっしょに、
となり町のお店『スモール』まで届けるはずだったんですが・・・
クマの頭と手足は雪でぬれています。
「仕方がない。うさきさんができるまで、ここでかわかしましょう。」
クマをストーブの前においておばあさんは仕事を始めました。

ダダダダン ダダダダン。ミシンの音がリズムに乗って
ダダダダン ダダダダン

そのとき
「リーン。リーン。リーン。」
電話が鳴りました。
「もしもし、こちら『スモール』ですが、昨日の朝持って来てくれた子犬のぬいぐるみなんですけど・・・
 3匹とも口と手足にドロがいっぱいついてるんですよ。悪いんですけどもう一度作り直してもらえますか?」

おばあさんはうさぎを作るのをやめて、急いで子犬づくりにとりかかりました。
夕方、ようやくでき上がった子犬3匹と、ストーブでかわかしたクマのぬいぐるみを、きれいなふくろにつめて
おばあさんは『スモール』へと急ぎました。

お店に着いて、おばあさんはビックリしました。本当に3匹とも口と手足がドロだらけです。
お店の人もおばあさんも、どうしてこうなったのか、わけが分かりません。
おばあさんは、このよごれた子犬たちを連れて帰りました。
次の日、おばあさんは子犬たちを洗濯しました。
洗濯が終わって、ふと、作りかけの昨日のうさぎのぬいぐるみに、目をやると・・・
なんと、うさぎの手に葉っぱがいっぱいくっついてるではありませんか。

「もしかしたら、本当にこの子たち、外へ出かけているのかもしれないねぇ。」
おばあさんは、『スモール』へとどける日を、一日のばしてもらいました。

「きっと、あなたたちだって、外へ出てみたいのよね。」
おばあさんはそう言うと、大急ぎでぬいぐるみたちの洋服とクツづくりにとりかかりました。
よくじつ、おばあさんは服を着たぬいぐるみたちを『スモール』へとどけました。

数日後。
「もしもし、今度のぬいぐるみはとてもひょうばんがよくてね、また同じ物をお願いします。」
と、 『スモール』から電話がありました。

おばあさんは今日も
ダダダダン ダダダダン。リズムに合わせて
ダダダダン ダダダダン。       
                                                               おしまい


2009年