2010年・秋のおはなし                     ヘンシンちぃちやん

「ふん、お父さんもお母さんも、大っキライ。」
おもちゃのあとかたづけを、しないことをしかられたことがいやで、ついカッとなって外へとび出してしまった、ちぃちゃん。

前も良く見ないで走っていたので、犬の親子にぶつかってしまいました。
あれっ、そのひょうしに、ちぃちゃんは犬になってしまいました。
犬の親子は、ちぃちゃんのことなんかおかまいなしに、さっさと通りすぎて行きます。

犬ちぃちゃんは今ぶつかった犬の親子のあとをついて行く事にしました。
すると子犬が言いました。
「おい、なんでぼくのあとをついてくるんだよ!ぼくのお母さんはぼくのなんだからね。」

ただちょっとだけ、あとからついていっただけなのに、つまんないなぁ…
ちぃちゃんはほっぺをふくらませて、くるりと向きをかえ、また走り出しました。

ムシャクシャした気持ちで走っていると、今度はネコの親子とぶつかってしまいました。
あれぇ、そのひょうしにちぃちゃんは、ネコになってしまいました。
ネコの親子は、ちぃちゃんのことなんかおかまいなしに、へいの上にとび上がりました。

ネコちぃちゃんもとび上がってみました。
すると子ネコが言いました。
「ねぇ、どうしてわたしのあとをついてくるのよ!わたしのお父さんはわたしのよ。」

ただちょっと、へいへのぼっただけなのに、つまんないゃ…
ちぃちゃんは、ちょっぴり悲しくなってくるりと向きをかえ、へいからとびおりました。

とびおりたところへ、ヒナ鳥の待つ巣へ帰ろうとしていた小鳥のお母さんとぶつかってしまいました。
あらら、そのひょうしに、ちぃちゃんはヒナ鳥になってしまいました。
ヒナ鳥ちぃちゃんはまだ空をとぶことができません。

ちぃちゃんが
「ピーピー、早くおうちに帰りたいよ!」
と鳴いてると、今ぶつかった小鳥のお母さんが言いました。
「早く帰らないと、お父さんもお母さんも心配してるよ。」

そう言われても、ちぃちゃんにはどうすることもできません。

ヨチヨチ歩いていると、青虫さんにつまづいて転んでしまいました。

あらま、そのひょうしにちぃちゃんは青虫になってしまいました。
青虫は葉っぱをものすごいいきおいで食べています。
青虫ちぃちゃんも葉っぱを食べてみました。
ちぃちゃんは青虫が、一人でいるのに気づいて聞きました。
「ねえ、アオムシ君、お父さんとお母さんは?」
青虫はこたえました。
「君はかわった子だね。お父さんもお母さんも、ぼくたちをうみ終わったら天国へ行くに決まってるだろ。」

そう、ちょうちょうの世界では、子どもでもたくましく生きていかなければなりません。
ちぃちゃんは、ますます悲しくなってなみだがポロポロ出てきました。

どこからかおいしそうなシチューのにおいがしてきました。ちぃちゃんのおなかはペコペコです。
あー、もう動けない、そう思ったとき、

「ごはんよ、早く食べにいらっしゃい〜」
とお母さんの声がしました。

まぁ、ビックリ、青虫だったちぃちゃんはもとのすがたにもどっているではありませんか。
ちぃちゃんはゆめを見ていたのでした。
お父さんもお母さんも、だ〜いすき。

「はーい」
ちぃちゃんは、とびっきり大きな声でへんじをしました。
                                                     おしまい


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──おはなし──

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