──おはなし──
ここでは未発表の作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。
「ゆきだるまくんのひみつ」販売期間終了!
管理人宅にて若干在庫有り!ご注文はメールで!
2005年・2006年・2007年・2008年・2009年・2010年・2011年・2012年・2013年・2014年・2015年・2016年・2017年・2019年・2020年・2021年・2022年
2018年・冬のおはなし 夢工場
定年を迎え、これから第2の人生を楽しもうとしていた私。
その思いは、はかなく破れ叶うことはなかった。
定年退職し、帰宅後眠りについたその翌朝、私は二度と目を覚ますことはなかった。
中途採用ながらも、私はこの会社で自分の居場所を見つけ、それなりに頑張ってきた。
仕事は私にとって楽しい物でもあったし、私は働くことが苦になることもなく、働きづめの一日だった。
不思議なことに、この会社に就職してからというもの、定年まで毎夜、夢の中でも私は仕事をしていた。
いわば、仕事の続きを夢の中でもしていたのである。
別にどこにも支障が出るわけでもなく、
私も気にすることもなく日常の仕事と夢の仕事を、25年間続けてきたわけだ。
私は自分がこの世から消えて、初めて気がついたのだ。
夢の中でも仕事を続けていた私は、日中も夜中も休むことなく本当に働いていたのだ。
私の体の老化は、みんなより2倍の速さで進んでいたのだった。
35歳て入社した私は、定年までの25年間、25年が過ぎたのではなく、
50年という月日が私の体の中で過ぎていたのだ。
だから60歳の私は、実年齢は85歳ということになるのだ。
夢工場という名の会社は、消費者に夢を与える仕事ではなく、
自分自身が夢の中でも働き自分自身が夢に支配される会社だったのだ
今も、なお働いている社員たちも、私と同じ道を歩むのか・・・
悔しいが、この世から消えてしまった私は、このことを残された社員に伝える術はない。
おしまい