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リハビリの基礎知識
Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
人体にはおよそ600もの筋肉があるそうだが、そのほとんどは手や足にある小さな筋肉だという。それを知ると手や足と言うのはとても精巧にできたものなのだろうと察しがつく。登山やだからこそ人間は細かい作業ができるのである。山登りはそんな精巧なつくりをした足を巧妙に使って登山をしたり、手足を使って岩壁や氷雪壁攀じ登る登攀をしたりするスポーツなのである。ところが、登山や登攀というのはコートやグラウンドで行うスポーツとは違って山の斜面や岩壁や氷雪壁の垂直あるいは垂直を超えた傾斜を持つ面で行われるスポーツのため、滑落や墜落の危険が常につきまとう。それに応じて事故が発生し、けがを負うことも多く、最悪の場合は死亡という悲惨な結果を甘んじなければならない非情なスポーツである。それらは最悪の状態を免れたとしても大小のけがは避けられず、複雑骨折や単純骨折はもちろん筋挫傷、靱帯の断裂などの大きなけがを負うことがある。そんな場合は傷が癒えるとともに負傷した部分をしっかりリハビリしなければ後に禍根を残すのが普通だ。僕は僕自身の体に負った凍傷や膝の筋肉の挫傷などによって大きな痛みを伴うけがを負い、二度にわたってリハビリをすることを余儀なくされたが、リハビリについてここでもう一度考えてみようと思う。まずはリハビリを行う上で必要な基本的な用語の知識から始めるのがいいだろう。
骨格=人間の骨格は206個の骨から成り立っている。骨格によって他の器官が保護されると同時に、骨格に付着する筋肉が人間の体に動きを与える。
動き=人間の動きを作り出しているのは関節と筋肉である。関節は二つあるいはそれ以上の骨が組み合わさってできており、動きは骨の構造や特徴によって決まる。動きの大きさ(可動域)は靱帯と筋肉によって制限され、個人差がある。靱帯や筋肉が強くても硬ければ可動域が狭くなる。強くて柔らかい筋肉を作ることがリハビリの目的となることはいうまでもないだろう。
関節=関節には三つの種類がある。不動関節、半関節、可動関節だ。半関節はさらに繊維結合の関節と軟骨結合の関節の二つに分類される。繊維結合は靱帯のような組織によって骨同士が強く結合している関節でほとんど動きがない。一方、軟骨結合の関節にはわずかな動きがある。可動関節は文字通り動かすことができる関節で、滑走関節、顆状関節、球関節、蝶番関節、鞍関節、車軸関節の六つに分類される。こうした関節の動きを元のようにスムーズに動かせるようにすることがリハビリの基本的な目的である。
筋肉=筋肉が収縮して力を出すことによって関節が動くが、筋肉はある骨から始まって他の骨に付着する。この付着部のうち近くにある関節の動きがより小さい方を起始という。また、体の中心部に近い方を起始と呼ぶこともある。筋肉のもう片方の付着部は停止という。筋肉の停止に近い関節は起始の側の関節より大きく動く。筋肉は大小あるが、それぞれが役割を担っている。リハビリはこの役割をよく理解したうえで行わないと無駄が大きい。
筋肉の収縮様式=アイソメトリック(等尺性)収縮とアイソトニック(等張性)収縮に分けられる。アイソメトリック収縮では筋肉は収縮して力を出すが、関節には動きがない。筋肉の長さも変化しない。筋肉は関節が動かないように固定するために大きな力を発揮する。一方、アイソトニック収縮では筋肉が短くなったり、逆に引き伸ばされたりしながら力を発揮するので、関節の角度が大きくなったり小さくなったりする。アイソトニック収縮はさらにコンセントリック(短縮性)収縮とエキセントリック(伸張性)収縮に分類される。コンセントリック収縮は筋肉が短くなりながら力を発揮するので、関節角度が小さくなる。この収縮は重力に抵抗したり、重量負荷に対して力を発揮する。筋肉の収縮様式からはリハビリを行う順番が窺える。
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