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東京近郊の岩場

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秩父多摩甲斐国立公園に所属する奥多摩・奥秩父には数多くの岩場があります。地質的には第三期層が主となるのでチャートや石灰岩の岩場が多いという特徴がありますが、秩父多摩甲斐国立公園の西部地域には小川山や瑞牆山、金峰山など花崗岩の岩場があります。個人的にこれらの岩場でルートを開拓したり、ルート整備をしたりしている関係上、環境に与える影響が弱いものや公になっている岩場のうち、奥多摩周辺にあるいくつかの岩場をご紹介いたします。

公になっていないものは、少人数の使用には耐えうるのですが、大人数の使用が始まると、たいがい我が物顔で利用する人が増え、少なからず問題が起きてきますので、知ってはいても紹介はできません。よく岩場は(ルートは)誰のものかという論争が起きますが、基本的には岩場は地主のものに決まってますし、フリークライミングのルートでもエイドクライミングのルートでも、クライミングルートの良し悪しはやはり開拓者のセンスが大きいものです。開拓者も利用者もそういった点にまで考えを巡らせて岩場を利用すべきなのでしょうが、どうもそうはならないようです。一部の人のわがままな行為からルートの良さが破壊されることがありますし、使用禁止に追い込まれる岩場もあとをたちません。

個人的にルートを整備していて思うのは、終了点の残置カラビナの問題です。ルートが登り易いように終了点にカラビナをセットしておいても必ず誰かが持っていってしまいます。ルートを整備したことがある方なら誰もがそういう経験をしていると思います。カラビナを強く結節しているにもかかわらず持っていくのは何をかいわんやでしょう。このような行為は、フリークライマーや、フリークライミングで登ろうと努力する意識が高いアルパインクライマーはまず行わないので、カラビナを持っていくのはフリークライミングで登ろうと努力する意識のレベルが低い中途半端なアルパインクライマーということになるのでしょう。

マルチピッチのルートで、終了点に明らかに懸垂下降用とは違うカラビナが残置してあれば、あるいはロープの流れをよくするためにカラビナを捨てたのかもしれないと考えることはありますが、東京近郊の岩場のような、小さなシングルピッチの岩場で終了点にカラビナを捨てることはまずないでしょう。もしカラビナがかかっているとしたらそれはロアーダウンの支点にほかなりません。

フリークライマーはアルパインクライマーを登れない奴と馬鹿にすることがありますし、アルパインクライマーはフリークライマーを歩けない奴と馬鹿にすることがありますが、高レベルのフリークライミング技術があってこそ高レベルのアルパインクライミングができるのは疑いようのない事実です。80年代後半には6000メートル峰で5.12の後半のグレードが登られていますし、今や高所で5.13が登られる時代です。つまらないいがみあい、争いは止めて、真摯にフリークライミングを楽しみ、アルパインクライミングに活かせる登攀技術を研くようお勧めします。そのためには終了点の残置カラビナの類は欠かせないアイテムです。どうか持ち去らないようにしてください。

僕が好きなクライマーの1人であるドイツのアルパインクライマー、ヴォルフガング・ギュリッヒは、コンペにも出ているし、アクシオン・ディレクト(5.14d/9a 1991年)など未だ世界屈指の高難度グレードに収まっているフリークライミングを行っています。実は、彼が5.13を登ったのは1982年のことです。その一方で、彼はパキスタンのバルトロ氷河入り口に聳えるグレート・トランゴ・タワーやトランゴ・ネイムレス・タワーなどの6000メートル峰、あるいは嵐の大地パタゴニアのパイネの三つの塔などに足跡を残し、アルパインクライミングの世界でも5.12後半あるいは5.13のグレードを持つ新ルートを開拓しています。アクシオン・ディレクトは近年小山田大の再登によって話題になりましたが、このアクシオン・ディレクトを含めたこれらの登攀はいずれも今から15年以上も前に行われたものです。アルパインクライマーはフリークライミングができなければ決して一流のアルパインクライマーにはなれません。それはすでにトランゴで展開された歴史が明らかにしています。

 


奥多摩の岩場

 武蔵五日市線    天王岩 障子岩 神戸岩 天狗岩 つづら岩

 青梅線       日向和田 鏡岩 御岳ボルダー 越沢バットレス 氷川屏風岩 川乗

                  白妙橋 岳嶺岩 三ノ木戸 


奥武蔵・奥秩父の岩場

 西武秩父線     小岩井サンセットロック 川又 天覧山 日和田山 権現堂 東吾野 北川

           吉田 二子山 

 八高線       聖人岩 金比羅岩 女ガ岩 十石峠

※東吾野の岩場は地主の意向によって登攀禁止となっています。


関越道・信越道の岩場

 高崎・上越線    黒岩 硯岩 子持山 有笠山

 信越線       佐久志賀 坊抱岩


東北道の岩場

 東武・宇都宮線    藤坂ロックガーデン 古賀志山


常磐道の岩場

 常磐線       笠間ボルダー 青葉


中央道の岩場

 中央線       三つ峠 太刀岡山 甲府幕岩 不動沢 カサメリ沢 瑞牆山十一面岩 ヤスリ岩

           カンマンボロン

 小海線       小川山 湯川


東名道の岩場

 小田急線      広沢寺

 東海道線      湯河原幕岩 城ヶ崎 城山 鷲頭山 亀の甲岩

 京浜急行      鷹取


東関道の岩場

 内房線       鋸岳

自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
木本哲プロフィール(「白夜の大岩壁・オルカ初登頂」のページから)……公開を取りやめています
僕のビッグ・ウォール・クライミング小史……公開を取りやめています
「目次」を参照してください
Satoshi Kimoto's World(木本哲の登攀と登山の世界)……海外の山もさまざまなところへ登りに出かけました
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと

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