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富士山概要
標高3776メートル。言わずと知れた日本の最高峰である。富士山は、夏はガラガラの火山灰や火山弾などに覆われた山であるが、冬はテラテラの氷雪に覆われ、全斜面が巨大な滑り台のような山になる。冬はこれにどちらから吹いてくるか見当もつかない人も飛ばされるような突風が加わるから厳しさは並大抵ではない。夏の富士山はだれでも登れる山であるのに対し、冬は確かな技術と体力がないと登れない山になってしまうというのが最大の特徴かもしれない。夏も冬も多くの登山者を迎えているが、毎年のように死亡事故が起きているのも悲しいことだが現実である。夏は高度障害や落雷や落石事故が主原因であるのに対し、冬は滑落が主原因である。冬はひとたび滑れば標高差四、五百メートルを平気で滑り落ちていくからひとたまりもない。天気には十分な注意が必要である。
しかし、この山は僕が初めて冬季登山というものを学んだ山であるばかりか、冬季登山におけるビバークがどんなものであるか身を呈して学んだ場所でもあるから何となく愛着があり、無視できない山である。もちろん今までに何度も登っているくらいだから嫌いな山ではないのだが、富士山に登るたび、富士山は登る山ではなく、見る山なのではないかと思ってしまう。と言うのは、富士山は単調な登りと単調な下りからなる山であるだけに面白みがない山だなとの思いを抱くことも一度ではないからである。富士山は独立峰であるだけにさまざまな顔を見せてくれるし、さまざまな山からその姿を認めることができるから、ほかの山から富士山を眺めるのが楽しい。しかし、富士山を登っていていいなあと思う一瞬もある。それは日の出の景色、つまり御来光の瞬間である。富士山は海から登る日の出を高い位置から眺められる唯一の山であり、その荘厳さは筆舌に尽くしがたいものがある。御来光を語るなら百聞は一見に如かずである。一度は富士山に登ってその荘厳な景色を見てもらいたいものである。
一般登山者の富士山の登山シーズンは山小屋が開く7月と8月のわずか二ヶ月だが、この時期は人で溢れ、登山道は下から上まで数珠繋がりとなり、遠くから夜の富士山を見ると登山口から山頂まで光の帯が見える。この暗闇の中でがらがらの浮石だらけの斜面を登るのであるから落石死亡事故が起きても何ら不思議はない。実際毎年のように起きているので注意が必要だ。体力に乏しい一般の人にとってはこの時期がもっとも登りやすい時期であるが、体力があるなら何もこの時期に登らなくてもいいだろうと思ってしまうのも事実である。この時期を外すと登山者はめっきり減って落石に遭う危険はずっとすくなくなるし、歩きやすくもなる。むしろこの時期を外した方が静かでいいとさえ思う。ところが、これ以前では登山道に雪が残っていることが多いし、これ以後では気温が下がり、時には雪に見舞われることもある。山は厳しい気象条件にさらされるだけに、一般の人が富士山に登るならやはり、7月、8月がおすすめである。
11月下旬から6月初旬は積雪期のシーズンだが、真冬より3月下旬から5月くらいの方が登り易い。天気が悪くなると氷雪の斜面に風が舞い、初心者は風に翻弄され、歩行がかなり困難になる。快晴でも冬型の気圧配置が優勢で季節風の吹き出しが強いときは一見雲もなく快適そうに見えるが、登るにつれて風が強くなり、風に太刀打ちできなくなることもある。積雪期の富士山では滑落死亡事故が毎年のように起きているが、こんな日はその可能性が高く、初心者が出る幕ではない。富士山は日本最高峰であるだけに、荒天の訪れが早く、好天が一転して荒天になることがあるので注意が必要である。以前、運動靴で登って荒天に見舞われ、下山できなくなった若者たちが救助されたというニュースがあったが、実際にそんなことが起きるのが富士山である。
富士スバルラインは除雪され、道路が凍結していなければ、冬でも五合目目まで車で入ることができる。しかし、冬本番の期間はさすがに除雪が間に合わず富士スバルラインが閉鎖されるようになる。富士スバルラインが閉鎖されているときは旧来の登山口から歩くことになる。北面の富士吉田口から登るなら一般的には馬返しから歩くことになるが、積雪の状態によってはもっと下から歩くことになる。一般的には富士吉田口のほかに富士宮口や御殿場口が夏冬通した主要な登山道である。中でも御殿場口から富士山山頂へはかなり長い登山道であるが、登り甲斐があり、大きな目的を持って挑む人にはおすすめの登山道だ。
多少体力がある登山者であれば無雪期のシーズンなら朝出かけても頂上に立って下りてくることができるが、御来光を見るのが目的の一つならもちろん前日から入る必要がある。積雪期のシーズンは、目的が雪上訓練と登頂なら1泊2日の日程で可能である。一方、富士スバルラインが開いている時期に登頂だけを目的とするなら前夜発日帰りの日程で挑戦することが可能である。ただしこれはあくまでも富士スバルラインが開通していることが前提である。富士スバルラインが閉鎖している場合、一般登山者なら最低1泊2日の日程が必要になる。
富士山の主な登山道
富士山の山小屋
その他の登山道
白山岳に至る登山道
屏風尾根道
小御岳流し
雷岩に至る登山道
七太郎尾根
大沢右岸(7時間)
大沢左岸(9時間半)
剣ヶ峰付近へ至る登山道
執杖流し
お鉢巡り
富士山山頂には火口の周囲に八つのピークがある。それを尾根伝いに歩くのがお鉢巡りである。普通、富士吉田口登山道から頂上に達すると頂上直前の大きな鳥居をくぐって久須志神社西脇に出るが、久須志神社を挟んで右(西)に久須志岳(薬師ヶ岳3740m)、左(東)に朝日岳(大日岳3750m)のピークがある。久須志神社から時計周りに火口に沿って進むと、朝日岳の次に伊豆ヶ岳(阿弥陀岳3750m)、成就岳(勢至ヶ岳3733m)、駒ヶ岳(浅間岳3715m)、三島岳(文殊ヶ岳3740m)、剣ヶ峰(3775.6m)、白山岳(釈迦ヶ岳3756m)の順に進み、久須志岳に至る。白山岳の付近は火口外縁の幅が広く、お鉢めぐりは尾根通しの外院(4キロ、夏90分)と火口原を行く内院(3キロ、夏70分)のコースがある。
ちなみに各山頂の名は徳川幕府の尊仏姿勢に対して明治政府は廃仏毀釈の姿勢をとったので、この影響を受けて仏教色が薄められる形をとり、各ピークは仏教的な名前とともに仏教色が薄められた別の名前を持つようになった。また、久須志神社はもともと薬師神社だったが、仏教色の濃い名を廃し、こちらも久須志神社と名づけられたそうである。浅間神社奥宮には最初から仏教色はないので昔のままである。お鉢巡りは、夏は落石の危険などから稜線通しの通行が規制され、内院を通るようになっているが、冬のお鉢巡りは天気によりけりだが、できるだけ稜線通しに歩くのが楽しい。
朝日岳から剣ヶ峰までは御坂や道志、丹沢、箱根の山並みや相模湾の景色を見ながら歩くが、天気がよければ遠く房総半島や伊豆諸島も見える。剣ヶ峰から久須志岳の間は南に伊豆半島や駿河湾、西に3000メートル峰が居並ぶ南アルプスの山容や遠く八ヶ岳、北アルプスなどの山並みを見て歩く。特に雪を被った時期は南アルプスの大きな山容が際立ち、見ものである。北面では夕方になると影富士が延びてき、新鮮な面持ちになる。北面登山道は朝は御来光、夕方は影富士というふうに富士山独特の景観を楽しむことができる登山コースである。
富士山のトレッキング道
@青木ヶ原自然歩
道紅葉台から鳴沢風穴や富岳風穴をたどって精進湖へ。
A奥庭
富士山四合目あたりにある遊歩道。矮小化した樹木を見れば奥庭の厳しい自然環境が分かる。富士山もきれいだ。
Bお中道
富士山の標高2300mから2900mの間を取り巻く登山道で、一周約21キロで、12時間あまりを要する。とはいえ現在は大沢崩れが横断できない。お中道は森林限界あたりを緩やかに上下する富士山の自然に富むコースである。
富士宮口新五合目から大沢崩れまで往復約4時間。
スバルライン五合目から須走口はほぼ六合目のラインをたどる。さらに御殿場口へ六合目のラインをたどる。しかしこの間は薄っすらで不明瞭。御殿場口六合目からは宝永山へ向かう。さらに富士宮口六合目へ向かう。
スバルライン五合目から大沢崩れ往復。
大沢は幅500m深さ125mの侵食谷。
C宝永山
富士宮口新五合目から宝永山(2693m)の往復は遊歩道やお中道を利用して周回できる。
D双子山
昔道
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