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1980年 日英岩登り交流会・日本代表
Japan-England Rock Climbing Exchange ** Free Climbing in England
第一回日英岩登り交流会を提唱し、僕たちを受け入れてくれたBMC側のホスト役はダウラギリ東壁の登攀ですばらしい動きを見せたばかりのアレックス・マッキンタイアであった。彼との邂逅はイギリスのクライミング事情を知るうえでとても役立ったし、ヒマラヤの登攀を考えるうえでももちろん大きな刺激を受けた。今回の岩登り交流会ではE4、5b,6a(=5.11a、5.11c/このデシマルグレードは後年行われたイギリスとアメリカとの岩登り交流会の結果を受けて発表されたルートとグレード一覧の中に自分が登ったルートがあったのでそれを参照した)のルートまで登ったが、アレックス・マッキンタイア自身は当然のように5.11を登る実力を備えていた。世界のアルパインクライマーの登攀レベルは、ラインホルト・メスナーが著した若き日の登攀の模様を綴った『第7級』どころの話ではなく、もっともっと先を行っていたのである。
この事実に驚き、以後はフリークライミングにももっと真剣に取り組み始めた。ジョー・タスカーの家で開かれたフェアエルパーティーでは、ここぞとばかりにチャンガバン西壁初登攀時のスライドを見せてくれとせがんだ。このイギリスのフリークライミング行で出合ったアラン・ラウスやラブ・キャリントンらも含めて、彼らのような登山を行うこと、つまり、ヒマラヤの高所にある岩壁や氷雪壁、ミックス壁をアルパインスタイルで登ることが僕の夢であり、目標でもあったのだ。
日英岩登り交流会終了後、檜谷清とミルストーンやブリストル近郊の岩場を登り歩いた。ヒッチハイクで車二台を乗り継いでミルストーンの岩場に行ったのも楽しい思い出だ。現地の人は皆親切だった。パブがクライミングの情報発信の起点になっているところがいかにもイギリスらしくていい。ホスト役はダウラギリ東壁やシシャパンマ南西壁をアルパインスタイルで登ったアレックス・マッキンタイアだ。フリークライミングのルートそのものの難しさにも驚かされたが、ヒマラヤの大きな壁を登った面々がフリークライミングに長けているのにも驚かされた。ヒマラヤのアルパインスタイルはフリークライミングの習得から始まることは間違いないと確信した。これが今から25年も前のイギリス登山界の姿である。トランゴ・ネイムレスタワーを初登攀したジョー・ブラウン(ヨーロッパアルプスでブレチエール西壁を登ったときに驚いたワイドクラックのブラウン・クラックはジョー・ブラウンのブラウンである。Yとされるこのクラックのフリークライミングはけっこう難しく、本当に驚かされた。こういったルートが初見で登ることができるというところにアルプスに出かける大きな価値がある。このルートは1954年に彼がドン・ウィランスと組んで初登攀したものである)一行を始め、クリス・ボニントン、ダグ・スコット、アレックス・マッキンタイアなどイギリスのヒマラヤニストは皆岩と、すなわちフリークライミングと深いかかわりを持っていた。山学同志会が頻繁に行っていた海外登山は確かに世界のトップレベルに肉薄するすごいものだろう。だが、ヒマラヤで展開する世界のアルパインクライミングはそれ以上にすばらしい内容だった。僕が、日本人のヒマラヤ登山より外国人のヒマラヤクライミングに 強い憧れを抱くのは当然の成り行きだった。
イギリスでのクライミングの面白さ、難しさはランナウトに尽きるかもしれない。ナチュラルプロテクションをセットしながらオーバーハングしたフェースをフリークライミングで越えていくなんて発想はイギリスでは当たり前のことだった。たまにピトンが打ってあるルートもあったが、どのルートに行っても決して必要以上にはなく、ランナウトは当たり前だった。このような登り方ならソロに移行するのもたやすいだろう。こういう登り方を見ているとイギリスのグレードがどうして二つのシステムから成り立っているのかも容易に理解できる。つまり、ランナウトが激しいイギリスの岩場を安全に登るにはプロテクションの取り難さを表すグレードと純粋に技術的な難しさを表すグレードがどうしても必要になってくるのである。イギリスの岩場で登っていればダグ・スコットのクライミング倫理は容易に理解することができるだろう。
Explorer Spirit 木本哲
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