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甘く見ると死に至る怖ろしい病気

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丹沢の大倉尾根から表尾根を縦走するコースで歩荷訓練を行っていたとき、ある大学山岳部も同様に歩荷訓練を行っていた。その歩荷訓練の成り行きを見ながら、おそらく30キロはあるのであろうその重荷と長駆の歩荷に叱咤激励を受けてふらふらになって歩く登山者の姿に哀れを感じたが、山学同志会の歩荷訓練についてはついぞそうした感覚は生じなかった。そもそも山学同志会の荷登訓練は荷を背負って歩けなくなった段階でその人の講習は打ち切り終了し、それ以上荷を背負って歩かせることはない。歩荷訓練はあくまで自分自身の体力を自分自身が受け入れるために行うものであって、他人のために行うものではないからだ。

山学同志会の歩荷訓練の目的はあくまで講習会として設定されたコースを30キロの荷物を背負って歩き通すことであってそれ以上のものはない。もしその年に歩き通せなかったらまた次の年に挑戦して歩き通せばいいのであって、その年に必ず歩き通せなければならないものではない。歩荷訓練は山学同志会の正会員になる以上いつかはクリアしなければならない課題の一つではあるが、年数に制限があるわけではない。

歩荷訓練のときは、講習生に対して背負えなくなった段階で荷を捨てることができる物を持ってくるように指導しているが、必ずしもそのような素直な人間ばかりではなく、どういうわけか、必ずといっていいほど途中で荷を捨てられない物を持ってくる者がいた。こういった者たちの荷物は前年度までに課題をクリアしている者がその人間に代わって背負うことになる。だからすでに課題をクリアした者には始めから重量制限はない。そういった者たちはたいがい水をたくさん持ってきたり、水分が豊富なスイカを持ってきたりしていた。

こうした行動がいつから行われるようになったのかわからないが、登山としては理に適った方法だろう。というのも山学同志会の歩荷訓練は重荷に耐えつつかなりのスピードで歩くので、体温の上昇が避けられず、体力が弱い者はどうしても先に潰れていくことになる。最後まで歩き通そうと講習生は講習生なりに努力をするが、一度皆のスピードに遅れ始めると慢性的に休憩時間が少なくなり、どうしても疲労の回復が覚束なくなる。

梅雨時に行われるこの歩荷訓練は体力だけではなく、自分自身の体温の上昇とも闘わなければならない。山学同志会の決まりでは、水を除く荷物の重量が30キロという規定であるから途中で補給する水分や食料を考えると、荷物の総重量は30数キロになってしまう。湿度が高い梅雨時にそんな重荷を背負って歩くからには熱中症に気をつけなければならない。熱中症は熱に中ることが原因で起きる症状であるから、体にこもりがちな熱をどう逃がしてやるかという点に工夫が必要になる。

熱中症は暑い環境の下で起きる障害の総称で熱痙攣、熱失神、熱疲労、熱射病に分類される。症状の軽重は下記の通りである。

軽症;四肢や腹筋に痛みを伴う痙攣がある。腹痛を伴うことがある。数秒間の失神のほかに脈拍が速くしかも弱くなる、呼吸回数の増加、顔色の悪化、唇のしびれ、めまい、などの症状が重なることがある。
中程度の症状:めまい感、疲労感、虚脱感、頭が重い感じ、頭痛、失神、吐き気、嘔吐などのいくつかの症状が重なり合って起き、血圧の低下、頻脈、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状が見られる。
重篤な症状;中程度の症状に意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、ショック症状などが重なり合う。

軽症の場合、熱痙攣や熱失神が起こる。熱痙攣は多量の発汗がありながら、塩分などの電解質が入っていない水分のみを補給した場合に起こりやすいとされている。熱痙攣を防ぐには、水分だけではなく、不足する塩分などの補給も必要になる。熱失神は運動をやめた直後に起こることが多い。運動を急に止めると筋肉によるポンプの作用がなくなり、一時的に脳への血流が減ることや、暑い中での長時間の活動のために末梢血管が広がって相対的に全身の血流量が減少することによるとされている。

中程度の症状の場合は熱疲労が起こる。熱疲労は脱水と電解質の喪失によって、末梢の循環が悪くなり、極度に脱力状態となる。このまま放置したり、誤った判断を行なったりすると重症化し、非常に危険な状態になる。

重篤な症状の場合は熱射病である。熱射病は体温調節機能が破錠し、中枢神経系を含めた全身の多臓器障害が起こる。体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓など全身の臓器に障害が生じ、多臓器不全となって死に至る危険性が高くなる。登山の場合どんなに急いでも病院に搬送するまで多大の時間を必要とすることから、重篤な症状に落ちいる前に適切な判断と熱中症に即した手立てが必要になる。

上記の症状を見る限り、軽症のうちに何らかの手を打たないと手遅れになるのは明白だろう。昔は運動中に水を飲ませるなという誤った知識が流布していたので、歩荷訓練中の死亡事故は確かに多かった。こういった山の事故は大学山岳部の登山人口の減少と歩調を合わせるかのように少なくなった。しかし、平地で行うさまざまな部活動中に起こる熱中症の事故は相変わらず多い。熱中症は気温が割合低くても湿度が高いときには起こりやすくなるので、登山ではいっそうの注意が必要である。

普通、人間は暑いと皮膚に血液をたくさん送って冷却し、また、発汗によって体温を下げる。要するに人間の体そのものが打ち水と同じ仕組みを利用して体温を下げているのである。しかし、多量の発汗で脱水状態になると、打ち水に使う水がなくなってしまい、この働きが十分に機能しなくなり、熱が体内にこもり、ついには脳の中枢機能に異常が起こり、体温調節機能が破壊されてしまう。だからこの機能を維持するためにはどうしても失われた水分を補給する必要があるのだ。このとき、発汗によって水分だけではなく電解質も失われるので、電解質の補給も必要となる。

子どものころに熱中症にかかり、体温が40を越え、41度に近づいた経験がある。幸い夜中に体温が下がり始め、事なきを得たが、2日間40度あまりの熱が出た。熱射病にかかると、高熱で横紋筋が融解し、腎不全や肝不全などを起こし、終いに多臓器不全となって命を落とす。平地でさえ危険な病気であるから登山では何をかいわんやだろう。熱射病はそうそう簡単に考えることのできない病気なのである。トレーニングは大切だが、命を落とすまでやるような性質のものではない。リーダーや指導者は熱射病の怖さを理解し、早めの対応ができるよう注意を喚起しなければならない。熱中症になったとき、枕元で医者や家族が集まってざわざわしていた記憶が残っているが、実際、このとき僕は死ぬかも知れないと思われていたらしい。熱中症になって以来、暑さにずいぶん弱くなった気がするが、気のせいだろうか。

とにかく、熱中症になったら軽症のうちにすぐに応急処置を施すことが重要である。軽いめまいや吐き気であれば、涼しい場所に移して水分を補給すればいいが、重篤な症状の場合はすぐに全身を冷やして病院へ搬送することが大切である。熱射病が進行し、多臓器不全に陥ると、3時間あまりで死亡することがある。だからこそ、そうなる前に進行を食い止めなくてはならない。特に登山では搬送に時間がかかるので、重篤な症状に陥った場合はかなりの高率で死に到ると認識した方が確かである。それでも重篤な症状に陥ったら風を送るなどできるかぎり積極的に体温を下げる工夫をすることが必要である。

運動中は水を飲まないのではなく、運動中も運動前も水を飲むことが必要である。激しいスポーツでは1時間に500〜1000ミリリットルを飲むのが目安というから登山もそれに準じた量が必要になるのだろう。登山では発汗による塩分の喪失も激しいから塩分の補給も忘れてはならない。喉が渇いたと感じたときにはすでに脱水が起きている可能性が高いので、事前に水分をとることが必要である。不足している水分の補給には0.1〜0.2%程度の食塩と5%程度の糖分を含んだものが適当とされている。

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日射病は脱水が原因です、水と塩分を補給してください。熱射秒は体に熱がこもることが原因ですから一刻も早く体温を下げるようにします。

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自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
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