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山岳研修
「大丈夫かいな。足が震えてるで。簡単なところでやったことをちょっと高いところでやってるだけなんだからもっと自信を持って大胆にやってみな。ただロープにぶら下がっているだけで死ぬわけじゃないんだから」
そう言っているところを写されたわけではないが、恐る恐るやっているところを見るとそう言いたくもなる。だけど怖さというものはなかなか消えるものではないのは確かだ。僕の記憶の中にも岩から落ちそうになったときの記憶や落ちたときの記憶、足を滑らせてバランスを崩し、危うく奔流に飲み込まれるところだったという切羽詰った状況になったときの子どものころの記憶が時おり鮮やかに思い浮かんでくることがあるからその気持ちは痛いほどよくわかる。
実際のところ、怖さを打ち消すのは難しいが、怖さを打ち消すいちばんいい方法は何かに熱中することである。カメラマンなら撮影に熱中することで怖さを忘れることができる。また、アルパインクライマーなら登攀に熱中することで怖さや辛さを忘れることができるはずである。どんなに努力しても怖さが心の中からまったく消え去ることは考えられないが、それらはやがて苦い思い出となって楽しさや勇気を与えてくれるだろう。そして、振り返ることができる現実の存在と経験を通して心に育んだ余裕が新たな飛躍を生む。
登山でも登攀でもそうだと思うが、ガイドが確保するロープによって安全が確保されているのなら、思いきった姿勢で挑戦してみるといい。そして、カメラマンなら自分自身が感じているその場の緊張感や遠くに見える背景の美しさ、穏やかさ、長閑さなどを伝えるといい。自然は常に相反したものを持っている。
写真=NHK総合午後2時からの「お元気ですか 日本列島」生中継のリハーサル風景 小川山屋根岩で(廻り目平キャンプ場)山岳研修は生中継も出す。キャンプも登山も登攀もすべては災害報道に備えるためのである。
生中継本番はカメラマンのセットが終わったのがテレビ中継開始一分ほど前だった。セットしている方には少しも焦りはないが、周りで見ていた経験の浅いカメラマンは生中継開始に間に合うかどうか気が気でなく、心臓がドキドキしていたらしい。
考えてみればビデオカメラをまったく触ったこともない人間がNHKという会社に入社してカメラマンという職業を選んだばかりに人を感動させる映像を撮るまでに成長するのだからすごい。こうした山岳研修で学んだ経験や実際に災害現場や事故現場に出向いて取材した経験を活かしながら自分の心の目で捉えた瞬間を意のままに切り取り、やがてナムチャバルワ登山やウォーカー・シタデル登攀などの長編ドキュメンタリー番組の映像を撮るようになっていく。
写真は彼がへたくそでしかめっ面をしているのではなく、太陽光線がまぶし過ぎてしかめっ面になっている。秋の穏やかな1日の出来事だ。
Explorer Spirit 木本哲
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