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トッド・スキナー墜死
Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
2006年10月23日、トッド・スキナーがヨセミテで墜死した。信じられないことだけど、事実からは逃れられない。激しい山登りを続けていれば いつかはそうなる可能性が高いからさほど驚きはしないけど、ちょっと信じられない。リーニング・タワーで新ルート開拓中のできごとらしいが、まだまだ若い。享年47歳。ハーネスのビレイループが破損し、ビレイデバイスとカラビナだけが懸垂下降用ロープに残っていたというから余計に信じられない。しかし、彼と一緒に新ルートを開拓していた相棒のジム・ヒューイットはトッド・スキナーが身につけていたハーネスは古かったと報告している。
レスキューチームがトッド・スキナーを見つけたとき、彼は確かにその体にハーネスをつけていた。だから原因がビレイループの破損にあることは紛れもない事実である。シルベスター・スタローン主演の映画「クリフハンガー」を地で行くような出来事に登山というか登攀の奥深ささえ感じてしまう。トッド・スキナーにとっては新しいハーネスを注文していた矢先の出来事だったようである。クリフハンガーではバックルの破損という設定で現実味には乏しかったが、ビレイループの破損もちょっと受け入れがたいものである。彼はどんなハーネスを使っていたのだろうか。どんなハーネスであれ、つくりは同じであるから、古いハーネスを使う場合には気をつけねばならない。
彼はヨセミテの大岩壁エル・キャピタンサラテ壁のフリー化などはもとより、小さな岩場で行うフリークライミングというこじんまりした世界だけに留まらず、アルパインクライミングという大きな世界を闊歩し、トランゴやグリーンランド、アフリカ、カナダなど世界各地の辺境のビッグウォールに挑戦していただけにその死は惜しまれる。世界の人に影響を与え続けた人がまた一人亡くなった。謹んで追悼の意を捧げたい。
彼には本がある。「頂上の彼方へ トッド・スキナー NHK出版 2004年 」お薦めだ。
Explorer Spirit 木本哲
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