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明星山 1188.5m

かつてクライアントだった彼は、社会人山岳会に入り、着々と腕を研き、今やバリバリのクライマーとなっている。明星山P6南壁左岩稜で、先頭を切っ明星山P6南壁・左岩稜て登る僕たちのパーティーに後続してきたパーティーが、彼のパーティーだと気づくのに時間はかからなかった。久々に出会った彼のパーティーに追い立てられるように先を急ぐ。予想通り、午後から天気が若干崩れたが、天気の崩れより僕たちの登攀スピードの方が勝り、崩れる前に無事下山した。この週末、総じて天気はよくなかったが、雨ニモマケズ、僕たちは三日間とも登りほうけた。 2005年11月。

(左)明星山P6南壁左岩稜をリードして登る後続パーティーのトップを勤める久田さん。奥さんと一緒に登りにきていた。彼らも雨が降る前に下山した。登山に必要なのはスピードと安全の両立だ。確実に素早く登ること、それが大切だ。2007年からはリーダー会側の立場になるらしい、と城山で彼が所属する山岳会の人から聞いた。技術を研き、経験を積んで教える側に立つのは喜ばしい。事故を起こさない山好きの人間を養成してもらいたい。

ルート上のプロテクションがしっかりしたFixのボルトに打ち変えられていたのに驚いた。以前より登攀の安全性は高まったが、当然ながら精神的な難しさは減った。前傾壁以外は快適なフリークラインミングだ。

岩登りをすれば歩き方が上手になる。岩登りをやって、だんだん自分が登れるグレードを上げていき、やがて5.9、A1というフリークライミングとエイドクライミングのグレードを確実に登りこなせることができるようになれば、アルパインクライミングの世界はかなり広がる。さらにA2というグレードを登ることができるようになれば、アルパインクライミングの世界はもっと広がる。

 

富士山 3775.6m

アイゼンをつけるのが始めてという人をつれ、富士山に挑んだ。日本最高峰・富士山・五合目・4月の富士・冬富士・春山・冬山家で練習をしてきたというだけあって、アイゼンの装着は滑らかだった。今回の計画は、初日の雪上訓練を経たのち、翌日は頂上を視野に入れ、登れるところまで登ってみようという計画だった。生憎、開催日が近づくにつれ空模様が怪しくなり、家を出る直前の天気予報は二日目の天気が一段と悪くなっていた。日々の天気図チェックから、駅で集合後、急遽逆の設定にし、今日と明日の食料を買出ししたのち、初日に登れるところまで登ってみることにした。低気圧の進み方が遅く、天気の変化がゆっくりだったので、幸い登山日和の一日となったが、生憎、頂上には立てなかった。最高到達点は富士吉田口登山道の八合五勺の先、標高3500メートルを30メートルほど越えたあたりだった。

(右)五合目の林道で。
左、三輪さん、右、大久保さん。

初日、天気は下り坂で、日差しは登るにつれて閉ざされた。最後には雪も舞ったが、富士山にしては風がない、比較的登りやすい、穏やかな一日だった。登山条件には恵まれたが、体力的にも時間的にも限界が見えた段階で、残りあとわずかではあったが、下山を決めた。これ以上は無理という段階まで皆精一杯頑張って下山したので、満足感は大きいだろう。富士吉田口登山道・八合五勺〜九合目・ピッケル・アイゼン

(左)三輪さんと西崎さん。バックの小屋は富士吉田口登山道最後の山小屋。アイゼン歩行が初めてにしては、よく頑張ったと思うし、雪山初心者ながら三人ともよく頑張って歩いたと思う。

夜半から、予想通り、天気が悪化し、大荒れとなった。五合目周辺の天気は、雪に、あられに、みぞれに、雨にと、めまぐるしく変化する。テントを押しつぶすような強風、はたまたテントを持ち上げるような強風にも見舞われ、この二日間で富士山が持つ二つの顔、穏やかな顔と荒々しく凶暴に振舞う顔を見、実際に身を持って体験し、富士山の怖さを知ることができたはずだ。これこそ一石二鳥の山行だったのかもしれない。五合目の山小屋が休業のため、テント泊の山行となったのだが、初体験のテント泊も加えると、貴重な経験になったことは言うまでもないだろう。

二兎追えたらそれに越したことはないが、次に繋がる登山ができればそれで十分だ。何も天気の悪いときに無理して登ることはない。またいつの日にか富士山に挑戦すればいいのだ。挑戦する気持ちがあれば、山は逃げない。そんな気持ちを持ち続けることができれば、ガイドとして、いくらでも手助けをすることができるし、手助けすることにやぶさかではない。

雪山初心者と自認する面々を引きつれ、歩きながら、講習を交えて登った初日の本番と、悪天候の中で氷雪テクニックを伝授した二日目の雪上講習で、アイゼンやピッケルの使い方がだいぶわかったというが、いったいどこまで氷雪テクニックを理解させることができたのだろうかと思うと、少々不安になる。二日目は雨や雪模様の中の講習だったが、楽しい登山であったことは間違いない。 2006年4月

山登りは歩かないことには始まらない。夏道でも冬道でもたくさん歩けば歩くほど歩き方がうまくなる。

ここに取り上げた山行の彼ら、彼女らがどんなふうに成長していくのか楽しみです。

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