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仔犬殺しの滝

アイスクライミングというのは傾斜が緩くてもルートが長いというだけでけっこう面白い。仔犬殺しの滝や犬殺しの滝はどちらかといえば登攀距離のある長い滝である。

仔犬殺しの滝は犬殺しの滝に比べればいくらか傾斜が緩い。しかし、部分的に傾斜が強いパートがあるので1日登っていても楽しめる。今年は暖冬の影響で氷の発達がもう一つだ。

いつかは隣の犬殺しの滝を登りたいと思うなら、そんな希望を託して仔犬殺しの滝に挑めば、アイスクライミングもうまくなるというものである。このような滝をどうせ登るなら最初からリーシュレスクライミングで挑戦をした方がいい。クライミングは難しくなればなるほど面白いものだが、それはアイスクライミングにも言えることである。アイスクライミングは、ロッククライミングに比べればかなり自由に手足のホールドが選べるのだから、少々難しい滝でもフォローで登る限りはリーシュレスで挑戦したいものだ。登攀条件を厳しくすれば上達するのも早い。

三つ目の8000メートル峰マナスルを登った彼女に野口隊には8000メートル峰の覇者がたくさんいたのにどうして1人しか登れなかったのかと訪ねたら、シェルパがこう言っていたという至極当然な予想通りの答えが返ってきた。彼らをまったく知らないわけではないからまあそんなもんだろうなと思ってしまう。もはや8000メート峰のノーマルルートの登山をTV取材に行く時代は終わったのだろうな。そんな時代の中で頑張ったのが2人の女性だったのかもしれない。彼女は僕のアドバイスが役に立ったとは言っているが、本当に役立ったがどうかはわからない。でもそうやって自分で情報を集め、計画を立て、実行する姿勢がマナスル登頂成功の鍵になっていることは間違いないだろう。しかし、そのマナスル登山もすでに遠い話だ。何せもう次の8000メートル峰のことを考えているのだから。その情熱はすごい。逆に考えればそういった情熱は2人にしかなかったということだろう。

 

犬殺しの滝

もう一方の犬殺しの滝は最初と最後に傾斜が強い部分がある。こっちの滝を登るにはほんの少しばかり根性がいる。でも、犬殺しの滝を登るならもちろんいつでもガイドをする。写真では犬殺しの滝の方が小さく見えるかもしれないが、もちろんこちらの滝の方が大きいし、難しいことは言うまでもない。だが、難しさは知れている。傾斜の強い部分は短い。しかし、氷は年によって、日によって、時間によって質が変わるから注意が必要だ。登れれば登れるほど、経験を積めば積むほど、難しいエリアの氷壁を登りに行くことができる。ここで上手になったらもっと大きな大谷不動や米子不動の氷壁を登りに行ってみようよ、と言っておこう。上を見れば見たで限りなく難しい課題を創ることができるのが山登りなのである。歩くこと、岩・沢・氷雪やこれらがミックスした壁を攀じ登ること、独立したフリークライミングはもちろんのこと、そのすべてが一つにつながっているのがアルパインクライミングなのである。

リーシュレスクライミング

初めてアイスクライミングをする人にもリーシュレスクライミングをすすめるけれど、それで登れなかったことはまずない。最近のアイスクライミング用具はリーシュレスクライミングを念頭に作られているものが多いのだからその機能を試さない手はないだろう。新しい技術があるのに古い技術のまま登っているというのはもったいないことである。そんな姿勢ではいつまでたっても新しい発想はできない。

アイスクライミングに初挑戦の彼には大きな夢がある。でも仔犬殺しの滝をリーシュレスですいすい登る力があるくらいだからその夢は必ず叶うだろう。もちろんその大胆さがあれば、犬殺しの滝を登るのもそう遠くはないだろう。

今こうしてガイドをしている僕だって、山登りが、岩登りが、アイスクライミングが始めから上手だったわけではない。そこには長い努力と研鑽の歴史がある――。そう書けば格好いいのだけれど、成長段階はけっこう無鉄砲だった気がする。しかし、それだからこそ、一人ひとりにこうしてみたらというアドバイスができる。クライアントに目的の山や登攀ルートを登る力があるかどうか判断するのはガイドである僕の責任だが、それは動きを見ればすぐにわかる。その責任を基に登るエリアやルートを決めることもできれば実力より一段高い登山や登攀に連れて行くこともできる。そうやって 知らず知らずのうちに力を伸ばすこともできるのだ。ガイドとクライアントの関係は阿弥陀如来と孫悟空との関係のようなものかもしれない。登山にはある程度無鉄砲さが必要だ。だけどそれを締める箍もいる。そういった制約の中で最大限に技術が伸ばせればこれほどいいことはない。だが、ガイドがそうした判断を責任を持って下せなければそれは単なる危険行為に過ぎない。ガイドの世界も意外に面白い。

僕はリーシュレスタイプのアックスでは最も古いペッツル・シャルレのクォークを発売前からずっと使っているのだけれど、いまだにこれを使っている。実際クォークは氷壁登攀のみならずアルパインクライミングにも使える道具である。これはアイスクライミングギアの名品だと思う。ほかにも使ってみたいやつはあるのだけれど価格が高いから使えないということもあるけれど、クォークが名品であることは決して間違いではない。この道具のおかげでとっつきやすいアイスクラインミングはいっそう身近になった。

 

初めてだから……

初めてだから登ることができないということはない。それはエリアに対しても人間に対しても言えることである。登ることができるかどうかという問題の本質は登山ルートや登攀ルートに見合う実力があるかないかであって、そこを登った経験があるかないかではない。登攀ルートに見合う技術と体力があればたとえ初めてだろうと誰でもそこを登ることができる。

もちろんそれはリードの世界の話ではなく、フォローの世界の話である。リードの世界とは違ってフォローの世界はそれほど難しい世界ではない。リードする人間の技術が確実なものならフォローする人間は安心して登ることができるし、フォローが確実ならリードの世界に入っていくのもそれほど遠い世界の話ではない。だが、フォローにしてもリードにしても決して落ちてはならない。リードの危険は誰でもすぐに理解できるだろうがフォローの危険はすぐには理解できないかもしれない。実は、フォローにはロープの伸びという危険があって、一見ロープに繋がれていて安全そうに見えてもまったく安全ではない部分があるのである。だから、たとえフォローであっても決して落ちない――。そんな気持ちが大切である。アルパインクライミングを志す人間にはそれはとても大切な意識である。

登攀に際してはまったく無理をする必要はないが、自然に対しては常に素直な気持ちが必要だ。それはまたガイドに対してもいえることである。初めてのルートだから、そこをまだ登ったことがないから登れないガイドなんてたいしたガイドではない。そんなところであっても情報を集めれば予想がつくし、写真を見れば登れるかどうかたいがい判断できる。もちろん、現場に行けばもっと確実な判断を下すことができる。そこが登れるか登れないか、つまりそこをリードして登ることができるかどうかはっきり判断できる人間であること――。これはガイドにとっていちばん必要な資質である。

そういう判断ができる人間であればそうそう事故は起こさない。でもそうやって登ることができる範囲には自ずと限界がある。ガイド本人はそこのところをわきまえてはいるが、ガイドがクライアントに自分の実力、つまり自分が登ることができる範囲を自ら示すことはめったにないだろう。だから、クライアントが、彼は山岳ガイドだからどこでも絶対に登れるはずだ、という過信を抱くことは危険である。そこには経験という大きな壁がある。その壁は有名どころの登山ルートを登ったところで話にならないほど高いし、国内や海外の有名どころの登攀ルートを一つ二つ登ったぐらいでは打破できないほど厚い。厳しい登山や登攀の経験は数が多ければ多いほど限りない知恵を生み出す。高く厚い壁を壊すにはそんな真摯な登山や登攀経験が必要である。 2007年2月。

自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
木本哲プロフィール(「白夜の大岩壁・オルカ初登頂」のページから)……公開を取りやめています
僕のビッグ・ウォール・クライミング小史……公開を取りやめています
「目次」を参照してください
Satoshi Kimoto's World(木本哲の登攀と登山の世界)……海外の山も 低山から高山までさまざまなところへ登りに出かけました
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中
……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと

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