気道の確保
Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
呼吸を司るのは口や鼻と肺につながる気管です。この気管が何かの拍子に詰まってしまうことがあります。そのために呼吸ができなくなってしまうのですが、呼吸ができない原因は大きく分けて二つあります。一つはのどにものが詰まってしまった場合です。これは空気の通り道である気管にものが詰まって起きます。お年寄りがよく詰まらせるもちや肉片、こどもがよく詰まらせるアメや異物などがこれに当てはまります。普通はむせって咳き込んで吐き出してしまうのですが、そんな力が弱くなったお年寄りやそんな力が弱い子供はよく詰まらせてしまいます。そんな場合は少々乱暴ですが、逆さづりにして背中をたたくのがどうやらいちばんの方法のようです。
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呼吸ができないもう一つの原因は「舌根沈下」と呼ばれるものです。舌根とは舌を動かす筋肉のことで、これは気管のすぐ前、のどにあります。この筋肉が意識を失ったときに緩み、のどを塞いでしまうのです。元気なときにはこんなことは決して起きませんが、溺れたり感電したり、脳卒中で倒れたりして意識をなくしたときは必ず起きます。
意識をなくす、つまり「失神」は、脳に十分な血流が保てなくなって起きるのが普通です。これは一時的に意識障害を起こした状態です。この場合は、すぐに意識があるかないか、十分な呼吸をしているかどうか、循環のサインがあるかどうかを確認します。呼吸は耳をすまして呼吸時の音を確認したり胸の動きを見て判断します。循環のサインは心音を聞いたり脈を見ます。脈を診るのは頚動脈がいいと思います。
意識を失った人が呼吸もしていなければ心臓も動いていないという場合は直ちに心肺蘇生を行います。
そのときまずやらねばならないのが気道の確保(気道の開放)、つまり呼吸ができるよう気道があるのどを塞いでいる舌根を取り除くことです。
舌根は舌を動かす筋肉のことで、この筋肉は下あごの骨にくっついています。そこで下あごを顔側へ引っ張り上げてやります。口に手の指を入れて下あごを顔の方へ持ち上げます。この簡単な作業が心肺蘇生の基本中の基本です。誰かが意識を失って突然倒れたときは、その人を仰向けにしてあごを持ち上げます。少々乱暴ですが急を要する作業ですからきれいごとを言っている場合ではありません。乱暴でも何でも助かれば御の字です。
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さて、気道を確保しただけでその人は自発呼吸を始めたでしょうか。つぎの段階ではその点が問題になります。その人が受けた衝撃の強さによっては気道を確保しただけでは呼吸が戻らないことがあります。呼吸が始まったかどうかはその人の胸の動きを見。耳を済ませていれば簡単にわかります。
下あごを持ち上げて10秒たっても呼吸が戻らない場合は、「口対口の人工呼吸」をします。やり方は簡単です。さっきと同じように気道を確保することが必要ですから、人差し指から薬指までの三本の指で下あごを顔の方へ押し上げます。自分の口は相手の口をすっぽりくわえ込みます。あいた手は鼻でつまんで大きく息を吹き込みます。吹き込む量は思い悩む必要はありません。相手が誰であっても相手の「胸を膨らます」のがポイントです。これはあくまで口対口であって、唇対唇ではありません。相手のほっぺたを膨らます暗いでは呼吸にはなりません。
まずは四回ゆっくり吹き込みましょう。
ここまでできたらこんどは心臓の動きを見ることが必要になります。心臓は動いているでしょうか。心臓が動いているかどうかは脈を診ます。脈は首筋で診ることができます。ここで少しでも脈が振れれば一安心です。頑張って人工呼吸を続けてください。
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さて、これまで慌てていて救急車を呼ぶことができなかった場合は一刻も早く連絡してください。
自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
木本哲プロフィール(「白夜の大岩壁・オルカ初登頂」のページから)……公開を取りやめています
僕のビッグ・ウォール・クライミング小史……公開を取りやめています。「目次」を参照してください
Satoshi Kimoto's World(木本哲の登攀と登山の世界)……海外の山もさまざまなところへ登りに出かけました
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと
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