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雪盲

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雪盲は文字通り雪の眩しさが原因となって起こる眼の炎症である。実際、雪盲になると、目が痛み、光に対して過敏になるとともに、普通の光さえ眩し過ぎて目を開けていることさえできず、その結果、一時的に視力を失ってしまうのと同じ効果が生じてしまう。登山経験がある者なら登山中に視力を失うことがどういう結果をもたらすかは火を見るより明らかだろう。

また、雪盲は、日が沈み、日差しがなくなれば治まるというものではなく、症状が重いものは、いったん発症すると目の乾き感や目の痛みがなくなるまで数日間かかってしまう。しかも雪盲はすぐに症状が現れるわけではなく、たいがい何時間も行動したあとに現れる。最悪の場合1日の行動が終わるころまたは終わってからようやく症状が現れる。このような場合は、雪盲の発症に気づいたときにはすでに行動の自由が奪われてい、手遅れということが起こりうる。だからこそ雪盲は簡単に見逃すことができない厄介な炎症なのである。

雪盲の原因は天から降り注ぐ紫外線である。雪は雪盲の最大の誘発原因であるが、それは雪による紫外線の反射率が高いことが理由となっている。実際のところ、地上における紫外線の反射率は、草や土は1〜5%、水面は3〜13%なのに対し、新雪では88%以上にもなるのだという。実は、雪盲は雪面の反射光による強い紫外線に長時間晒された結果、目に急性の角膜障害が起きた状態なのである。雪盲の主な症状は異物感や眼痛、流涙、結膜充血などであるが、角膜上皮の再生に伴って、通常は2〜3日で自然治癒する。

日本付近に降り注ぐ紫外線の量は夏至のころが最も多く、冬至のころが最も少ない。だから冬の方が雪盲になりにくいはずである。しかし、冬場の方が雪盲になりやすいのは新雪の紫外線反射率の高さが影響しているのである。当然ながら冬至から夏至に向かっては紫外線量が増加するため、春山や夏山の残雪歩行時は雪盲にかかりやすくなる。日焼けの原因の一つであるUVBと呼ばれる紫外線の量は山の標高が上がると増加する。したがって、高い山に行けば行くほど雪盲にかかりやすくなる条件が整っていくことになり、注意が必要になる。

いったん雪盲になると目は乾燥してごろごろ感があり、激しく痛む。また、光に対して過剰に反応し、ちょっとした光でも眩しすぎて目を開けていられなくなる。こんな症状がもし山上で眼に出たらただではすまないことは誰の目にも明らかだだ。目を開けていられないということは視力を失うということであり、下山できなくなるということである。山上で視力を失えば登山者一人では何もできないどころか、もし、無理して行動しようとすれば、滑落や転落などの危険を抱えることになり、登山者には通常以上に死の危険が高まる。雪盲は登山者にとっては死が身近に忍び寄っている状態といっても過言ではないのである。

だが、雪盲を予防するのは難しいことではない。ただ単に紫外線を遮断する効果があるサングラスやゴーグルなどを使用して目に入る紫外線の量を調節してやればよいのである。したがって、雪山に行くのにサングラスやゴーグルを持たないということはそれだけで雪盲の危険を抱えることになるという認識が必要になる。雪盲はなってからではどうしようもないので、雪盲にならないよう予防することが大切である。

万が一雪盲になった場合は目の痛みを癒すため、体はできるだけ冷暗所に横たえ、眼部を冷やすのが効果的だ。副腎皮質ホルモン(ステロイド)入りの点眼剤を1〜2時間おきに指すと治癒を早めることができる。もし事故を誘発することなく無事下山できた場合は病院に直行するのが一番だ。

山行の途中でサングラスを紛失したり壊したりした場合は色つきのビニール袋を利用したり、厚紙や薄い板などにスリットを刻んでサングラスの代用にするしかないだろう。基本的に山は天に近く、われわれが行動をする場所は紫外線の量が多い場所である。だから雪がある時期に山に行く場合は常に雪盲に注意することが必要になる。特に新雪は紫外線の反射率が高いので注意が必要になる。

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