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シロクマ
Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
シロクマはまるで縫いぐみのようで、動物園で見ていても愛らしい。その姿からはとても凶暴さは窺えない。シロクマの赤ちゃんとなるとなおさらだ。だが、現実的にアルパイン・クライマーがシロクマに襲われる事件が起きている。また、アメリカの冒険学校に滞在中、ハドソン湾に抜ける川下りをしようと計画していたときにもシロクマ対策にライフルを持っていくかどうかが話題に上がったくらいだからその凶暴さが窺えよう。
シロクマは正式にはホッキョクグマという。ウィキペディアというインターネット上の百科事典でシロクマという項目を調べると、『ホッキョクグマUrsus maritimus(北極熊、英名:Polar Bear)は、ネコ目(食肉目)クマ科に属する哺乳類である。全身が白い(正確には内部が空洞になった透明な)体毛に覆われているため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。ヒグマと並び、クマ科では最大のサイズを誇る。また、分岐分類学的には、ホッキョクグマはヒグマに極めて近い位置にある。種小名のmaritimusはラテン語で「海にすむ」という意味である。』と説明されている。生息域は北極周辺のアラスカ、カナダ、グリーンランド、シベリアなどである。
アラスカのアンカレッジ空港にシロクマが立ち上がった状態の剥製が展示されていたが、その大きさには驚かされる。こんなのに襲われたらひとたまりもないだろうし、適切な道具がなければ襲われた人を助けようなどという気持ちが起こりそうにないこともすぐに理解できる。
一般的にはオスの成獣で頭胴長200〜250センチ、体重は350キロ程度というが、800キロを超えた例もあるというから驚きだ。動物園で見るシロクマは標準的なシロクマにほかならない。人間と比べればその差は一目瞭然だ。もしシロクマに襲われたとしたら銃やそれに代わる物を持っていない限り敵対する術はないだろう。実際にクライマーが襲われたという記録がある。なす術もなくただ見ているしかなかったというのは悲しいことだが、残されたクライマーを責めることなどできない。
シロクマはもちろん陸上に棲むが、主な生活圏は氷上である。北極圏の氷海が彼らの棲みかなのである。当然ながら彼らは泳ぎがうまく、時速6.5キロほどのスピードで泳ぐそうである。彼らの主食はアザラシやセイウチなど海獣だが、どのクマにも共通するように雑食である。シロクマは嗅覚に優れ、氷の下にいるアザラシの匂いを嗅ぎ分けるという。見慣れてくれば氷上にアザラシがいるのはすぐにわかるが、アザラシは異変に気づくとすぐ海の中に逃げてしまうのでそんな場所で餌をとるのはたいへんだ。白一色の広い氷の世界で生きていくうえには氷の下に隠れている動物の匂いをかぎ分けるそんな能力が欠かせないのだろう。
プラネット・アースだったろうか、それとも動物番組だったろうか、何かの番組の中で2、3頭のベルーガとシロクマの生存競争を描いていた場面があったが、極北の生活は人間にとっても動物にとっても決して楽ではない。氷の世界で餌が取れなければ空腹のまま何日も耐えなければならないのは容易に理解できるが、それが何日も続けば夏は越せても来るべき冬を越すことができないのは明らかである。成獣は飢餓にも強いが、子どもはさすがにそんなわけにはいかず死亡率は高いようである。子どもは普通2〜3年に1回2頭を生む。
そんなシロクマも地球温暖化には勝てないようで、生息数は減少しているようである。減少の原因は地球温暖化により生活圏の海氷が縮小していることが大きいのは明らかである。これを受けてアメリカの内務省はシロクマを絶滅危惧種保存法の対象種に指定する方針を打ち出したが、1年間かけて生息状況などを精密に調査したうえで指定を正式に決めるらしい。
この法律は、絶滅危惧対象種の保全策を講じるよう連邦政府機関に義務づけているそうだが、会見ではケンプソーン内務長官は「同法で保全するのは種とその生息域。気候変動は法の枠外」と強調したという。絶滅危惧種への指定が温室効果ガスの排出抑制には直結しないとの姿勢を強調しているので、有効な保全策をめぐって今後、さまざまな論議が巻き起こるかもしれない。
アメリカは地球温暖化ガスの排出規制を求めた京都議定書を批准する姿勢をまったく見せていないので、苦しいところだろう。だが、手をこまねいていてはいくら過酷な条件に強いシロクマでも絶滅を余儀なくされる。シロクマが棲みよい環境は人間にとっても住みよい環境なのだと認識して行動する必要があることは間違いないだろう。
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