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Explorer Spirit   <カラコルムの大岩壁 グレート・トランゴ・タワー登攀>

 

 


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グレート・トランゴ・タワー北東ピラー第2登 北東ピラー新ルート開拓(5.12-、A4 標高差2200m)初登攀 1990年 木本哲、保科雅則、笹倉孝昭、小坂昌弘。この登攀は山岳雑誌「岩と雪」に保科の報告があるが、実際の登攀はこんなものではない。下部岩壁だけではなく、上部岩壁も新ルートを登りたかったのだが、保科にとっては初めての大きな登攀だったからかだいぶ参っていたようだ。おかげで上部壁の新ルートは諦めざるをえなかったけど、まあいいだろう。でも頂上には登りたかった。それだけは返す返すも残念だが、保科の精神状態を考えるといたし方ないだろう。僕たちの登攀以後、この岩の周辺にもいくつかのルートが追加されているが、まだまだ開拓の余地がある。標高差の大きな岩壁だったが、この岩壁の登攀経験があるせいかこのあと行く先々の岩壁が小さく見えてしようがなかった。

カラコルムの大岩壁に挑む=Great Trango Tower NE Pillar
グレート・トランゴ・タワー(6286m)北東ピラーカプセルスタイル バリエーション・ルート開拓初登攀(1990年)
北東ピラー通算第2登 写真:保科雅則撮影
 

グレート・トランゴ北東ピラー登攀関連記事・保科雅則著:HP⇒山岳ガイド保科雅則/岩と雪の記事/トランゴタワー

トランゴ登山隊に参加した経緯を聞き及んだ人からは、どうしてトランゴ隊に参加したんですか、と聞かれることが多い。

それは永遠の謎とか何とか言ってはぐらかしたいところだけど、

そんなんじゃなくて、単に登れるかどうか判断した結果決めたことなのである。

 

だから、 僕がグレート・トランゴ・タワーの登攀記を書いたら保科が書いたものとはだいぶ違ったものになるはずだ。
だけど、保科のの文章は保科の気持ちが現れていてなかなかいい。
でも僕の気持ちらしきものを表現している部分は間違っている。
そこにかいてあるようには思はなかったと僕は断言できる。

この山行、頂上に行くチャンスが多分にあったのに行かなかったのはかえすがえすももったいなかったな、と思う。
ネイムレス・タワーから見た頂上へのピッチは予想通りごくわずかだった。
行けばよかったなとこんな場所で言われても後の祭りだ。
この件一つをとっても経験というものが作り出す差は大きいものなのだと改めて思わされる。

報告書の類というのはどれもこれもきれいごとを書き連ねてしまうので嫌いだ。
1983年エベレスト登山隊時の小西政継のように「木本は使えなかった」と書いてもらうぐらいの方がいい。
 

登山というのは隊員一人ひとり思いは皆違うはずだ。
そこに達するまでの経験が違うのだから違っていて当たり前である。
そしてそれを前提として行った登山から得たものも一人ひとり違うはずである。
だから隊員一人ひとりが自分の思いに素直に書いてくれればいいのだが、と思う。
その登山で自分が何を得たかは誰もが書けるはずだ。
それぞれがそれぞれの立場から登攀記を書いてくれるとさまざまな見方を知ることができて嬉しいのだが。

 

普通これまでの経験を超える登攀をすれば誰にとっても凄絶なものだろう。
グレート・トランゴ・タワーの登攀ももちろん例外ではない。
経験を伝えるというのは真実を書かなければ意味がない。
そういう経験があるからこそ、命と引き換えになった初登攀者の登攀も相当凄絶なものだったろうと容易に想像できるのだ。
実際、グレート・トランゴ・タワーの登攀は保科の記事に表されているもの以上に凄絶なものであった。
 

それにしてもこの山行、
今にして思えば体がぼろぼろの状態でよくトランゴを登りに行こうという気持ちが起きたものだな、と思う。
しかも二つもだ。
それだけ僕は岩登りが好きなんだということなのだろうが、
果たしてそれだけだろうか――。

この山行、自分がやりたいことの半分くらいはできたのだろうか?
おそらく半分もできてないのだろう。
まあ、しようがない。

けれどもこれがすばらしい山行であることに変わりはない。
こういう山行ができただけでもよしとしよう。
また、よしとしなければならないだろう。
そんな気持ちだった。


ノルウェイ・ピラーとグランド・ヴォイッジは世界でもっとも難しいビッグ・ウォールだろう。
より小さいトランゴ・タワーは、したがってこのふたつより人気を保ち続けよう――。
(『ヒマラヤ アルパイン・スタイル』 アンディ・ファンショウ/スティーブン・ヴェナブルズ著  手塚勲/池田常道訳 山と渓谷社 1996年刊より)


ノルウェイ・ピラーとグランド・ヴォイッジ――。
これら二つのルートはグレート・トランゴ・タワー東壁の北東ピラーにあるルートを指しているのだが、
僕たちが登った1990年には、北東ピラーにはこの本でノルウェイ・ピラーと呼ばれているノルウェイ・ルートしかなかった。
だから、僕たちが攀じ登ったルートはノルウェイ・ピラーのバリエーション・ルートということになる。

そのバリエーション・ルートのグレードは5.12-、A3。
フリークライミングのパートはオリジナル・ルートより難しい。
だが、僕たちが作ったルートのエイドクライミングのパートは、彼らが作ったルートのエイドクライミングのパートより幾分かやさしい。
僕たちが作ったバリエーション・ルートを経由してノルウェイ・ピラーを登るのなら、
すなわち、僕たちがたどったラインを再登するのなら、全般的なルートグレードは5.12-、A4とすべきなのだろう。
下降支点をしっかり作っていることもあってすでに一パーティーが再登しているが、再登の数は少ないようである。

この岩壁の標高差は2200m。そのうちの1700mが岩登りだ。
写真は北東ピラー本体で、標高差1000mの岩壁の上に標高差500mの岩壁がある。
岩壁はもちろんこれだけではない。
そもそも北東ピラーに取り付くまでに標高差200mの岩壁と標高差500mの氷雪壁を登らなければ成らないのである。
もしこれらのパートが登れなければ北東ピラーに挑戦する機会さえ与えられないのだ。
まさにビッグ・ウォール・クライミングと呼ぶにふさわしい大岩壁である。

ちなみにノルウェイ・ピラー(Z級、A4)を初登攀したハンス・クリスチャン・ドーセスとフィン・デーリは、登攀後、ノルウェイ・ピラーを下降中に墜死した。
懸垂下降の失敗が原因と見られているが、詳しいことはわからない。
二人は壁を登ったが、下降中に行方不明になったのである。
いずれにしても彼らがビッグ・ウォール・クライミングについて十分な経験を備えた人間だったことは確かであり、
二人とも墜死していることから考えると、カムやナッツ、スリングなどで作った支点の崩壊の可能性がもっとも高いように思われる。
登山は、ことにビッグ・ウォール・クライングは、登攀はもとより下降も困難を伴うのが普通で、まさしく何が起こるかわからない世界のできごとなのである。

こういうルートを登っていると、すでに何度も再登されているルートを攀じ登ることがどんなに楽で安全なことかわかる。
『ヒマラヤ アルパインスタイル』の著者が言うとおりトランゴ・ネイムレス・タワーは今もなお人気を保ち続けているが、
登攀のほとんどがスロベニアルート(旧ユーゴスラビアルート)であることがどんな事実より雄弁に物語っている。

人気ルートというのは、登攀と下降が繰り返し行われているルートなので、
こういう山行においてはかなり安全性が高いルートだというのと同様の意味を持つ。
アルパインクライマーと呼ばれる人間が、未知と未踏というものに強い憧れと興味を抱くのは、
そういった要素をも排除した無垢の自然の中で山行を展開してみたいと思うからである。
 



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自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
木本哲プロフィール(「白夜の大岩壁・オルカ初登頂」のページから)……公開を取りやめています
僕のビッグ・ウォール・クライミング小史……公開を取りやめています
「目次」を参照してください
Satoshi Kimoto's World(木本哲の登攀と登山の世界)……海外の山もさまざまなところへ登りに出かけました
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと

 

 

 

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