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Explorer Spirit  <極北の大岩壁 ウォーカー・シタデル登攀>

 

 


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NHKスペシャル『極北の大岩壁』=カナダ北極圏バフィン島サムフォードフィヨルド/ウォーカーシタデル南東壁登攀(5.10+、A3 標高差1230m) 2003年 木本哲、江本悠慈の2人は最後まで登攀。熊田光治、ツヴェート・ボドロガルの2人は登攀半ばで帰国。あと一日の都合がつけば登れていたのだが、その一日が都合できなかった。広大なフィヨルドの海面全体が凍っているのだから寒いのは当たり前である。でも登攀をしている姿にはそんな厳しさが反映していないせいか見ている人はやさしい岩登りだと思うようだ。実際はグリーンランドで登ったオルカなど話にならないほど厳しい登攀だった。初登攀者が登ったのは7月のことだから僕たちと登攀条件がまったく異なることは言うまでもない。でも、彼らも死にそうになった。


極北の大岩壁に挑む=
Walker Citadel at Baffin Island with TV
カナダ北極圏バフィン島サムフォード・フィヨルド
ウォーカー・シタデル南東壁登攀(2003年)

This program is called
 
"VERTICAL  ASCENT" in USA
NHK総合NHKスペシャル 「極北の大岩壁」
NHKBShiハイビジョンスペシャル「極北の大岩壁

ABU(アジア太平洋放送連合)賞受賞
日本映画テレビ技術協会映像技術賞(受賞者一覧)
 



数枚の写真から目標の山域と目的の山を決め、一枚の写真からルートを考える。
どうせ登るなら、傾斜が強くて難しさが続く、手ごたえのある長いルートがいい。
だが、フィヨルドが厚い氷に覆われ、海が閉ざされているこの時期は、
岩壁へのアプローチは容易になるものの、まだ寒さが厳しく、極北の寒気にさらされたウォーカー・シタデルは時折激しい風雪の嵐に見舞われる。

*


写真を見ていると一見暖かそうな岩に見えるのだが、岩は日がかげると氷のように冷たい。
ちょっと風が吹けば、岩は“こんなの触ってられるかよ”とどなりたくなるほど冷たい。
日が差し込まないクラックの中はまるで冷蔵庫の中のように冷え切っている。
それどころか、中には冷凍庫と思しきものもある。
日陰は氷が張るほど、あるいは氷が解けないほど冷え切っているのだ。


攻撃的かつ厳しい寒気に耐えられるラインはどこか――。
この壁を登り切るために、二つの条件を同時に満たすルートを真剣に考えねばならない。

 

ハイビジョンスペシャル 極北の大岩壁 〜北極圏・1200メートルの壁に挑む〜
放送日 2003年9月15日 チャンネル デジタルBS Hi
垂直に切り立った岩壁が数百キロにわたって連なる北極圏・カナダのバフィン島。
世界で最も登はんが難しく危険だとされる高さ1200メートルの巨大岩壁に日本人登山家が挑んだ。
木本哲氏をリーダーとする4人が、地元イヌイットの助けを借りながら登はんを試みるようすを、カメラマンがともに登りながら至近距離からハイビジョンカメラで撮影する。
天候の条件が悪く頂上までは到達できなかったが、900メートル地点までの登はんに成功するクライマーたちの緊迫した挑戦の記録。
語り 武内陶子
※北米では「バーティカル・アセント」という題名で放送されたようです。
この作品は国際線の上映プログラムにも採用されていたらしいので視聴者はけっこう多かったのかもしれません。

 

何だかこの番組はとてもよかったな。
自分が出演しているからというわけではなく、第三者の立場と眼差しでこの番組を見ていて、とてもいい番組だなと思ったのだ。
クライマーが僕ではなく、どこの誰だか知らないおじさんが登っているようだと捉えて見ていてとてもいい番組に思えたのだ。
そういう意味で珍しくいい登攀の番組だったな、と思う。

この番組、何度見ても最後まで引き込まれてしまう。
僕が制作に参加した作品の中ではもっとも秀逸な作品だなと思う。
放送文化基金賞本章をもらった『白夜の大岩壁』よりはるかにこちらの『極北の大岩壁』の方がいい作品だと思う。
このあと彼らはどうしたのだろう。
この続編が見てみたい――。
そう思わせるようなできばえの作品でもあった。
 

岩壁の標高差と登攀時の感覚から言えば実質500メートルくらいの岩壁登攀は手ごろなクライミングである。
実質700メートルくらいあれば案外登り甲斐がある。
標高差が1000メートルあればけっこうでかい壁だと思う。

標高差が1200メートルあればかなりでかい壁だ。
標高差が1500メートルあるとなかなか終わらない感じがするくらいばかでかく感じる。


しかし、 どんなに標高差があっても岩壁の傾斜が緩ければ難しさはあまり感じない。
登攀の難しさは岩壁の傾斜と連動している.

結局傾斜の強い部分が何メートルあるか――。
その点が大きい。


グリーンランドで登った岩壁とバフィン島で登った岩壁は、同じく北極圏、同じくらいの緯度、同じくらいの標高差だったけど、
難しさはバフィン島の登攀とは比べ物にならないほどグリーランドの登攀の方がやさしかった。

 

クライミングの難しさを演出するのは岩壁の標高差だけではなく、気象条件も大きい。
程よく暖かければ難しさはそう感じない。
ホールドをしっかりつかんでいられる分だけやさしいのだ.
こんな条件ではクライミングのスピードが違う。
暖かければさっさかさっさか登ってしまうのである。

 

一方、岩をつかんでいられないくらい冷たく、雪が降りそうな寒い条件下では、クライミングのスピードが上がらずなかなか進まない。
そんな条件下だと苛立ってくるけど、暖かい岩を登るのとはまた違った難しさが発生する。
冷気やクラックの中の氷と対峙しなければならない――。
それだけで登攀はすごく難しくなる。


いろんな条件下で岩壁を登ってみると、難しさっていったい何だろうって思う。

こうしたクライミングに比べれば氷雪壁を登るアルパインクライミングの方がはるかにやさしいと感じてしまう。
何事も経験だ。
経験が作り出す差というのはかなり大きい。

 

実は今回のメンバーは全員アルパインガイドだから余裕で登れるだろうと思っていたのだ。
だが、現実はそういうわけにはいかなかった。
登攀は予想外のことが起きて面白い。
それもこれも寒気と困難と恐怖がなせる業だ。


とはいえ、アルパインガイドだからどこでも登れるというわけではないんだな、と痛感させられた。
しかし、最後には「二人でも十分に登れる壁だったね」と言ってくれた江本悠慈の言葉には救われた気がした。
あと一日が融通できたら何とか頂上まで登っていただろう。
だが、その一日がどうにもならなかった。


この登攀に関して巷ではいろんなことが言われているようだが、僕にとってはとても面白い登攀だった。
なかなかいい岩壁、いい登攀ルートであったのはもちろんだが、この登攀からさまざまなことを学ぶことができた。
登れても登れなくても得るものがたくさんある山行だった。

久しぶりに充実した登攀ができたが、頂上に立てなかったことはとても残念だ。

 


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自己紹介(木本哲登山および登攀歴)……山学同志会在籍一年目に培った技術を基礎として実行した初登攀〜第3登を中心にまとめた
木本哲プロフィール(「白夜の大岩壁・オルカ初登頂」のページから)……公開を取りやめています
僕のビッグ・ウォール・クライミング小史……公開を取りやめています
「目次」を参照してください
Satoshi Kimoto's World(木本哲の登攀と登山の世界)……海外の山もさまざまなところへ登りに出かけました
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中……登山開始から山学同志会在籍一年目までの山行で学んだこと感じたこと

 

 

 

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※このページには、これまでに僕が行ってきた岩登りを中心とした海外登山、いわゆるビッグ・ウォール・クライミングを集めて掲載しました。
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