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登山には気象の知識が要る。これは、登山を安全に楽しむために必要不可欠な知識である。だが、人は痛い目に遭わなければそのことにはなかなか気がつかない。そのことに気がつくのはたいがい悪天に閉じ込められて身動きができず、心ならずも現在の状況を受け入れざるを得なくなったときか、どこかで想像もつかない大きな事故が発生したときである。普段気象の知識を学んでおけばよかったなと思うこと自体があまりないかもしれないが、必要だと思ったときが、気象の知識を学ぼうにも学べる状況ではなくなったときにならないようあらかじめ学んでおいた方がいい。
そんなことを言っても、一度でもそんな思いをすれば誰だって気象の知識に目を向けるに決まってるだろうと思うかもしれない。しかし、現実はそうでもない。のどもと過ぎれば熱さを忘れるという諺もあるし、人はたいがい大きな事故は人知を超えた予想のつかない自然災害なんだと判断してしまうことが多いからである。実は人知の予想を超えたときこそ気象の知識を振り返ってみるべきなのである。こんなときにこそ気象の知識に興味を持てばいろいろなことが見えてくる。
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気象の知識が必要だと感じるのはごく一部の人間だけかもしれない。それは山で生き抜くために必要な知識ではあるが、登山技術としては認識が低いように見受けられる。そもそも日帰りの尾根歩き登山で気象の知識が必要になることはほとんどない。きっと誰もがそう思っているはずだ。1泊2日以降登山日数が長くなるにつれ必要になってはくるが、登山は2泊3日や3泊4日くらいの日程が多い。実はその程度の日数なら個人でもさまざまな気象情報からかなり正確な天気の流れをつかむことができるのだが、これもまた必要性を感じにくい。しかし、実際のところ、気象の知識はほとんどの場合緊急事態に遭わないよう配慮することと対応しているのである。
僕の場合、登山が沢登りから始まったこともあって気象には敏感に反応する。さまざまな情報と登山経験を加味して気象を予想し、それが当たったときはけっこううれしい。その場所が雨かどうかの判定は普段から気をつけていると容易にわかることが多い。
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沢登りでは気象はかなり重要な知識である。沢では雨によって水かさが急激に増えることがある。水の圧力は水かさがちょっと増えただけでずいぶん変わる。雨が降るとたとえ小雨だと思っていても増水することもある。地形の影響が大きいのだが、沢では気象遭難を避けるために気象とともに地形を読む技術が重要になると身をもってわかる。だから沢登りをするなら気象について興味を持たざるを得ないのだ。
冬山では気象の知識を備えていることが重要である。実のところ、日帰り登山にしも宿泊登山にしても冬山登山は気象の影響を強く受ける。冬山で怖いのはホワイトアウトに風、気温の上昇などである。それが凍傷や滑落の危険を生むばかりか道迷いや行動日数の変更や雪崩などの自然災害とも密接に結びつく。
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山においては天気がいいかどうかより、人間が耐えられないような悪天が来ないかどうか判断することの方が重要だろう。登山は危険をたくさん含んでいる。それはとりわけ気象とかかわりが深い。だから経験を積み重ねれば積み重ねるほど自然に気象のことが気にかかるようになる。
一つ一つの事実は気象と深く関わっていることが多いのだが、それに気づくかどうかは、登山をどう考えているか、ひいては自分自身の命をどういうふうに考えているかという意識の差に行き着く気がする。理由がどんなであれ、気象の知識を身につけようとしない人間が自然の力に翻弄されるのはいたしかたないことのように思える。
ここでは気象についての話をしようと思います。まずは天気図の話です。
気象と遭難事故の関係について考えてみました。
気象の知識を得よう。
増水 疲労凍死 地上天気図と高層天気図 高層天気図 気象学の誕生 気象学の発展
しぶとい山ヤになるために=山岳雑誌「岳人」に好評連載中自己紹介(木本哲登山および登攀歴)
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