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雑感・冬 7
“Explorer Spirit” Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
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気象庁から三ヶ月予報予報が発表された。それによると1月は冬型気圧配置が強まり冷え込みが厳しくなるようであるが、2月からはまた高めに推移する予想になっている。
▽1月 日本海側は曇りや雪、雨の日が多く、太平洋側は晴れの日が多い。沖縄・奄美は曇りや雨の日が多い。
▽2月 冬型の気圧配置は長続きしない。北・東日本の日本海側は曇りや雪、雨の日が多く、北・東日本の太平洋側と西日本は平年より晴れる日が少ない。沖縄・奄美は曇りや雨の日が多い。
▽3月 天気は数日の周期で変わる。*
12月29日午後12時15分から放送されるNHKBS-2「あなたのアンコール2008」内で、NHKスペシャル「夫婦で挑んだ白夜の大岩壁」を再放送する。NHKスペシャル「熱投413球〜女子ソフト・金メダルへの軌跡〜」▽ひらけ!魔法の扉〜いっしょに歌おう夢のうた〜▽NHKスペシャル「夫婦で挑んだ白夜の大岩壁」▽わたしが子どもだったころ「プロ野球解説者 張本勲」▽ハイビジョン特集 セレクション「本田美奈子.最期のボイスレター 歌がつないだ“いのち”の対話」▽探検ロマン世界遺産「奇跡の美 街に宿る不屈の心〜チェコ・プラハ〜」などの内の一本でこの順番に放送されると2時くらいからなのかな? はっきりした放送開始時間は各自でお調べください。この中からどれか一つを選ぶなら本田美奈子の番組が見たいかな。
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希望する場所と日にちと天候の三つを考慮して登れる可能性が高い山に行くというプライベイトガイドだったせいか、当然のように天候を分析して登れそうな山に出かけた。ラッセルは最初からの目的であったし、雪が降り続いていたから新雪のラッセルは避けようがないが、どうせ出かけるならもちろん登頂したい。これにツエルトビバークを加えたが、どれもこれもうまくいった。ラッセルは新雪が大量に降った直後だったからいやというほど雪があったから申し分ない。尾根には雑木が生えてはいるがまばゆいばかりの雪の稜線だ。だが、歩けば僕たちの後ろに一筋の道ができる。風が強かったし、雪も降っていたからツエルトビバークは本腰を入れて準備しなければならなかった。うまい具合に適地を見つけ、快適なビバークになるようツエルトを構築する。ツエルトをたたきつける夜半の雪や風も何のその。ツエルトビバークがこんな快適にできるものとは知りませんでしたというのがクライアントの弁だ。ツエルトビバークって膝を抱えて寝るイメージだったんですけど違うんですね――。そうか、そんなイメージだったのか……。翌日は天候判断の予想が大当たりして晴れて無風の天気なった。日が差すと非常に暖かい。オーバージャケットも上着も脱いで深雪のラッセルに備える。標高差と雪深いラッセルを考えると目指すピークは遠い。だが、がむしゃらにラッセルしてとりあえず主稜線を目指す。すぐそこが主稜線と思いきや、期待はことごとく裏切られる。実際、細かいアップダウンがあってなかなか主稜線に抜けられない。主稜線に抜けると景色が広がった。東の山も、南の山も、西の山も真っ白だ。北には山はなく、見渡す限り日本海が広がっている。その日本海は、今日は波頭も穏やかで凪いでいるようだ。景色は春のように長閑だ。だが、どうやら目指す頂上には撤退の時刻までに着きそうにない。撤退時刻まではまだ少し時間があるとばかりにクライアントは頂上を目指して歩き出す。あきらめの悪い奴だなと思いつつも笑みが浮かぶ。しょうがない。もうちょっと頑張るとするか……。再び頂上を目指して歩きだす。クライアントは途中で撤退時刻ですというが、今更止められるわけがない。撤退時刻は大幅に過ぎるが頂上に立とう。おかげでもう一汗かかされたが、なんだか久しぶりに爽やかな登山だった。下山して相次ぐ遭難を目や耳にしたのが嘘のようだ。しかし、雪の降り方や質を考えれば想像できなくもない。山が違えば気象も違うのは当たり前である。また、山はそれがそびえる場所や高さでいろんな表情を見せる。この山がこんな具合だからこうだろうと想像をたくましくすることはできる。でも判断は現場いる人が行うものだ。僕たちの山にもラッセルがいっぱいあった。雪は降り積もったばかりで深く不安定だったけど、雪崩の心配まではいらないように思えた。少なくとも僕たちがたどったルートは。でも危険はどこにもある。その山の天候条件や地理的条件を考えながら登山をするのは案外知的な営為で面白いものである。どこまでやるかに前例など通用しない。どこまでやるかは一つ一つの山行ごとに決断しなければならない。その決断の責任は常に登山者本人が負うことになる。
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今夜から下り坂である。明日は季節風が強まりそうだ。この寒波先日ほど強いわけではないが、範囲が広いので悪天が長引きそうだ。悪天は年明けまで続く。低気圧の発生状況によっては強い冬型気圧配置が続くかもしれない。抜戸岳の捜索は打ち切りとなったが、今後積雪が増えることを考えると捜索は春先まで持ち越すことになるだろう。実際、捜索は中断されたが、高山署によると、26〜29日に新穂高登山指導センターへは97パーティーの265人が届けを出して岐阜県側から入山。30日は越年登山などで新たに33パーティーの57人が入ったそうだ。クリスマス前の暖気を考えると、抜戸岳のような雪崩遭難がほかの斜面でも起こらぬとも限らない。
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寒波の強さと事故の発生は比例するようだ。だとすれば年末から正月にかけては事故は少ないだろう。直前のクリスマス寒波による抜戸岳の雪崩遭難事故が注意を喚起するはずなので安全に対する相乗効果が期待できる。でも寒気は一流だから大きな遭難は起きなくても凍傷の類は増えるかもしれない。「感謝されない医者」の嘆く顔が思い浮かぶが、そうならないよう慎重な行動を心がけて欲しいものだ、と思う。
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「僕には数字が風景に見える(2007年講談社)」という本は人には優しく接しなければと思わせる、心温まる本だ。前半は小学校低学年のの子どもたちが普通に読めるようなつくりをすればきっといいものができるだろう、と思わせる内容である。子供はもちろん大人や子育てに悩む親、障害を持つ子を持つ親にも読んでみたらと勧めたい本だ。親子でこの本を読んで語り合うのもいいだろうとも思う。中にはゲイの話があるから抵抗を持つ人もいるかも知れない。でも前編にわたって愛に満ちた本だ。誰もみな一生懸命生きているのがよくわかる。尋常な展開の本ではないけど、なかなか内容が詰まった本である。この本の元にもなった映像はNHK教育テレビで放送されたそうだ。サヴァンとアスペルガー、二つの障害を持っているけど本人も家族も前向きなのがいいのだろう。
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Explorer Spirit 木本哲
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