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雑感・冬 15

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今年は春の訪れが早いと思ったのは1月に湯河原幕岩に岩登りに行ったときだった。あれから二週間ばかりが経つが、再び訪れた湯河原幕岩の梅の花はもはや半ばを過ぎた様相だった。梅祭り終了まで花が持つのかなと心配になってしまうが、そんな心配を僕がしてもしようがない。湯河原より寒い青梅でも咲いているのだから何をかいわんやである。でも今回は前回より気温が低く、寒さは早春を思わせた。前回は気温が高すぎて、半そでで登れたが今回はそうは行かなかった。まだ2月だからこれが普通なのだろうが、前回は春本番を通り越して初夏の気温だと思った。いったんそんな暖かさを経験したせいか今回はずいぶん寒く感じた。フリーをやるには暖かい方がいいが、アイスクライミングをやるには寒い方がいい。湯河原では河津桜が満開でピンクの花や若草色の葉が目についたが、中にはソメイヨシノらしきサクラも咲いていて驚いた。あれっと思ったが、気をつけてよく見ると所々で河津桜ではないもっと白い花をつけるサクラがほころんでいたから間違いない。日当たりのいいところでは最早サクラの花芽が膨らんでいるから場所によって花がほころんでいても不思議はないが、今年はサクラの開花もかなり早まるのだろう。これまで最も早かったのは2002年の3月16日の開花だったそうだ。今年はきっとそれより早まるだろう。

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越沢バットレスでアイゼントレーニングをしたらさすがに難しいなと思った。こんなに難しかったかなあと思ったくらいだが、そうだったのだろう。どうも久しぶりだったせいか今回は気持ちが負けていた。顔を見るとクライアントも思わずマジモードになっていたが、意識しなくてもそうなるだろう。難しさが八ヶ岳とは違うもの。でも、それでいいのだ。アイゼン手袋でのリードをやめてトップロープをかけてアイゼン手袋で登ってみたらさすがに安心できるが、X−程度を落ちずに登るのがやっとのような気がした。滑りやすい手袋で負荷をかけていたということもあるが、こんなルートも難なくリードして登っていたんだよな――。そんなことを思うと、勘所を戻すにはアイゼントレーニングはアイゼントレーニングでちゃんとやらんとだめだなと思わさせられる。X+が難なくリードできるようにしなければだめだよな、と思う。アルパインクライミングは精神面も必要だから、練習しないと登れない。1メートルおきにピンがあるようなフリークライミングルートばかりを登っていたんじゃアルパインの力は落ちてしまう。アルパインクライミングは落ちれば大怪我をすること間違いなしだから墜落の恐怖に耐えに耐えなくてはならない。それを思うと今日は本当に気持ちの上で負けていた。時期のせいもあるだろうか。どうせ練習するのならやはり秋口がいいな、とも思った。秋口にアイゼントレーニングをして冬の初めに谷川岳一ノ倉沢の中央稜か南稜を登れば気持ちの上でも実践的にもバッチリだ。それを経験していれば冬でも問題なくリードして登ることができるだろう。フリークライミングとアルパインクライミングとアイゼントレーニングはぜんぜん違う岩登りだ――。満足に登れなかった感がありありだっただけにそんな気が強くした一日だった。それにしても八ヶ岳の岩壁登攀ルートより越沢バットレスの岩壁登攀ルートの方がやっぱりはるかに難しい。久々に越沢バットレスをアイゼン手袋でリードしたら本当に泣きが入ってしまったのが何よりの証拠だ。アイゼン手袋をつけてリードをしていく岩登りはとても怖く、とても面白い。フリークライミングの難しさだけが岩登りの難しさだと思ったら大間違いである。アイゼン手袋で登ったときの難しさはそれを凌駕する。筋肉の使い方、バランスの取り方も異なるからやはりこれはこれで練習した方がいい。そんなこんなで結局は岩登りにはいろんな楽しみ方があるということである。

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今年のアイスクライミングの状況は厳しいものがある。だけど自然のルートを登るアイスクライミングは面白い。そこには予想外の悪さもあるからだが、だからこそそう感じてしまう。そうした悪さを排除して楽しむのが人工アイス、フリークライミングでいうジムクライミングである。それに少し危険を加味したのがゲレンデクライミングかな。さらに危険を加えたのがルートクライミングなのだろう。僕はどちらかといえば自然の中で楽しむクライミングが好きだ。それはあらゆる危険を含んでいる。だからこそ危険に対する知識と対応も学ばねばならない。そう思う。でも氷雪の登攀は冬の岩登りに比べるとはるかに取り付きやすい。

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先日ある山岳会の面々に山のふもとのスーパーで会った。別の場所でも会い、そのとき、その中のメンバーの一人を有望な若手だと言って紹介された。その若手に「氷雪テクニック」を読んでいます、今も読んでますと言われ、うれしいやら恥ずかしいやらという気持ちであった。この本は十数年前に書いたものだ。僕も時々読むことがあるが、攻撃的な内容の、冬壁を登ろうという意識にあふれた本だと思った。僕自身、そこにあふれた気持ちを忘れずに山を登り続けられたらいいのだけど……。そんなふうに思うことしきりだ。こんな人との出会いが、昔の気持ちを思い出させてくれる。

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岩でも氷でも山でも初めてそのルートを登るときのあの緊張感はたまらない。オンサイトが楽しいと思うのもそれがあるからに違いない。自然と真正面から付き合うというのは楽しいものだ。でもそうするには力が要る。その力をどうつけていくかが思案のしどころだ。でもこれは諦めなければ必ずついてくる。つい最近も劇的に変化する姿を見た。習得するまでの時間はまちまちだがつき始めるとどんどんついてくる。面白いものだ。

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新ルート開拓はアルパインのルートならオンサイトが基本だ。クラッグのボルトルートなら試登を重ねるのが基本だから、オンサイトのような楽しみはない。むしろ新ルートの開拓者でない方がオンサイトを楽しめる。

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ときどき山野井通信を見る。僕と同じ悩み、僕とは違った悩みを持って岩に挑戦していることが分かる。元気に登っているらしい姿を見て安心する。筋肉の損傷は回復に時間がかかる。のんびり、あわてず、努力していくしかない。そう書きつつ自分自身にも言い聞かせている。心と体の乖離ほどやっかいなものはない。

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本年7月からNHKオンデマンドで「極北の大岩壁」も見られるようになるそうだ。「極北の大岩壁」が好みか、あるいは「白夜の大岩壁」が好みか、見比べてみるといい。両方にかかわった僕としてはどちらも見て欲しいが、番組のできやストーリーなどを考えると、やはり内容は放送文化基金本賞という国内の賞をもらった「白夜の大岩壁」よりABU賞という国際的な賞をもらった「極北の大岩壁」の方がいい感じがする……。

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先日書類整理をしていたら谷川岳一ノ倉沢中央カンテを登攀して一の倉岳から蓬峠を経由して白毛門から下山した時のコースタイムを記録したメモがでてきた。詳しい時間の推移は忘れたが、それによると中央カンテ取り付きから終了点までは二時間足らずであった。そこから一ノ倉岳まではもちろん一時間もかからない。下山コースはぐるっと回って白毛門。途中雨にも降られたが3時ころ土合駅に下山した。一ノ倉沢で岩を登って馬蹄形縦走をするというものだが、そんな行動をしてみるのも楽しいものだ。

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