大雪山の遭難事故、企画会社「登山実施はガイドの判断」
こうしたツアーは最近の登山ブームもあって中高年に人気が高く、遭難した登山客の大半は50歳〜60歳代で占められていた。パンフレットには、旅行日程は天候などにより大幅に変更されることがあると記載されているが、「登山を実施するか否かはすべてガイドの判断」という。今回のツアーには同社と契約を結ぶ32〜61歳の3人の男性ガイドが同行。うち2人は名古屋と広島のガイドで、現地ガイドは1人だった。7/17 産経 一言=ガイドに冬山も含めた厳しい登山経験が豊富にあれば正しい判断ができたと思うけど、どんな経験、どんなガイドだったんだろうね。大雪山系遭難:前例ない10人死亡 夏の大雪山系で惨事 /北海道
◇日程やガイドなど慎重に捜査――道警
大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で10人が亡くなった山岳遭難事故は、夏山では前例のない惨事となった。過去の山岳遭難を巡っては、ガイドが業務上過失致死罪に問われて有罪になったケースもあり、道警はツアーの日程が過密でなかったか、ガイドのツアー客引率が適切だったか――など慎重に調べる。登山ツアーの遭難事故でガイドの刑事責任が問われた初のケースは、99年9月の羊蹄山(1898メートル、後志管内倶知安町など)遭難事故。男性ガイドが関西の登山ツアー客の女性2人を凍死させたとして業務上過失致死罪で起訴された。裁判ではガイドに注意義務違反があったか否か、凍死は予見可能だったか――が主な争点になった。札幌地裁は04年3月、「2人が集団から離れたことに気づいたが、遅れて来ると考えて登山を続け、道に迷わせ凍死させた」として、ガイドに禁固2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。また、トムラウシ山で02年7月、台風が接近して風雨が強かったにもかかわらず、男性ガイドが福岡県の女性ツアー客に増水した川を渡らせ、客が凍死した事故も刑事裁判になった。札幌地裁は04年10月、ガイドに禁固8月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。今回のトムラウシ山の遭難事故では、悪天候にもかかわらずガイドは予定通りに出発し、ツアー客の一人は「無謀だと思った」と話した。美瑛岳でもガイドが同様の判断をしていた。現時点では当時の詳しい状況は不明だが、北海道山岳ガイド協会幹部は「検証は必要」と指摘する。 一言=どう見ても有罪になりそうだ。
◇本州の登山者は「軽装」 気温急変に対応できず
遭難者はいずれも本州からの登山ツアー客だった。本州ではある程度の登山経験があったとみられるが、北海道は夏でも気温が氷点下になる。専門家は本州と北海道の夏山に対する認識の違いが遭難につながった可能性もあるとみている。札幌市内で登山用品小売業を営む栃内(とちない)譲さんは「道内の登山者ならば、普段の生活で『夏でも寒くなる』ことを知っているので、夏山にもフリースを持っていく。しかし、本州のツアー客の認識は異なる」と指摘。道内の夏山は本州からの登山ツアー客が目立つが、栃内さんは「軽装で出かける人が多いような気もする」という。また、北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長は「中高年の趣味として手軽という登山の一面が裏目に出た」と話す。警察庁によると、08年の山岳遭難は1631件(前年比147件増)、遭難者は1933人(同125人増)。年代別にみると、中高年の登山ブームを反映して、60代が576人で最も多く、50代が370人、70代が340人――と続く。40歳以上の中高年は1567人に達し、全体の81.1%を占めている。川越会長は「中高年は『自分はまだ若い』という気持ちを捨てきれない。晴れている時はよいが、天候が崩れると、やはり、体力がなく、低体温症に陥りやすい。中高年の登山は体力的に無理のない計画と十分な事前準備に配慮する必要がある」と警鐘を鳴らす。
◇ツアー業者に安全対策求める――高橋知事
高橋はるみ知事は17日、「道内の山は夏でも気象の変化が激しく、十分な装備と経験、体力を必要としている。このことを周知していく必要がある」と述べ、登山ツアー業者に安全対策を徹底するよう通知する考えを明らかにした。
一言=こんなことはちゃんとした登山経験があれば北海道出身者でなくても分かることだ。低体温症は夏でも起こるものなのだから。しかもオホーツク海高気圧から湿った冷たい風が吹き込んでいるのだから。そんなことも知らないでガイドをしたりツアーを企画したりする方がはるかにまずいことなのではないか。
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◇遭難・救出ドキュメント
(一言=彼らは13日に北海道入りし、14日に旭岳温泉を出発、雨の中を白雲岳避難小屋まで歩く。15日は曇り。白雲岳避難小屋からヒサゴ沼避難小屋へ向う。そして16日はトムラウシに登って下山をする日だった。事故はその道中で起きたのだ)
■トムラウシ山
▽16日
午前5時半ごろ 18人のパーティーが大雪山ヒサゴ沼の避難小屋を出発。トムラウシ山山頂を目指す
同11時ごろ トムラウシ山頂付近で女性が体温低下で動かなくなる。男性ガイド1人が付き添い、残る16人は下山
正午ごろ 山頂付近で別の女性も体温低下で意識不明。この女性を含む女性3人と男性2人の計5人でビバークを始める
午後3時55分 男性ガイド1人と2人が5合目まで下山。110番で救助を要請
同4時45分 ビバーク中のガイドからツアー会社に「下山できない。救助要請します」とメールが届く
同5時15分 同じガイドからツアー会社に「4人ぐらいダメかもしれないです」とメール
同11時45分 道が自衛隊に災害派遣要請
同11時50分 広島市のツアー客の男女2人が登山口付近に自力で下山
同11時59分 先に下山していた2人が登山口に到着し道警救助隊員と接触
▽17日
午前0時55分 仙台市の女性と山口県岩国市の男性が登山口に自力で下山
同3時55分 道警山岳救助隊や自衛隊鹿追駐屯地などの約40人がトムラウシ山の捜索を開始。道警と自衛隊のヘリコプターも出動
同4時35分 トムラウシ山の中腹で倒れている女性を発見。ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同4時45分 愛知県清須市の男性が自力で下山
同5時ごろ 中腹で別の女性を発見、ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同5時10分 下山中の浜松市の女性を発見し、ヘリコプターで救出
同5時35分 頂上付近で意識不明の男性を発見、収容。後に死亡確認
同5時45分 頂上付近でビバークのためテントを張り、手を振る登山者を発見
同6時半ごろ 頂上付近で女性1人を救助。意識なし
同6時50分 頂上付近で男性3人、女性4人を救助。このうち、男性1人、女性3人が意識なし。後に死亡確認
同9時半ごろ 自衛隊が頂上付近で、単独で登山していた茨城県笠間市の男性の遺体を発見
同10時45分 中腹の残雪地帯で、最後の行方不明者となっていた男性ガイドが倒れているのを別の登山客が発見。命に別条はなし
同11時20分 死者5人と生存者5人のヘリ搬出完了
正午 捜索活動を終了
■美瑛岳
▽16日
午後5時50分 茨城県つくば市の登山ツアー会社から道警に「美瑛岳にいるパーティー6人のうち、女性客1人が低体温症で動けなくなったようだ」と連絡
同6時 消防防災ヘリ要請
同8時26分 美瑛町役場関係者、消防、警察の計9人の救助隊が登山開始
同9時20分 道警山岳救助隊などが美瑛富士の登山口から美瑛岳へ向かう
▽17日
午前0時40分 美瑛富士の避難小屋で、救助隊が美瑛岳で遭難した6人のうち3人を保護。その後、同所から約2キロの地点でビバーク中の3人も発見。避難小屋で兵庫県姫路市の女性の死亡を確認。他の5人は命に別条なし
同3時 救助隊2次隊6人が出発
同5時04分 ビバークしていた男女2人が消防防災ヘリで救出される
同6時33分 避難小屋の女性の遺体をヘリで搬送
同7時10分 残る3人が救助隊とともに下山開始
同9時50分 美瑛富士登山口に無事、到着
7/18毎日 朝刊 一言=一対一でも知識と経験に乏しければ危ない。でも、これって一対一だけどテント一つで同じ行動しているというだけのことなんだろうな。そのメリットは荷物を持ちますとかいうだけのことで状況に応じては別々に行動しますと言うことではないんだろうな。一対一のメリットが本当にあればこうはならないだろうから。
大雪山系遭難、中高年ツアー客ら10人死亡
北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)と美瑛岳(2052メートル)で16日、悪天候のため登山客ら計2組24人が下山できなくなった遭難事故で、道警は17日未明から救助活動を開始した。トムラウシ山では18人のパーティーのうち8人が死亡したほか、1人で入山していた別の男性登山客が山頂付近で死亡しているのが、新たに見つかった。南西約15キロにある美瑛岳では、救助要請していた6人のパーティーのうち女性登山客が死亡。大雪山系での死者は10人となり、いずれも50〜60歳代だった。トムラウシ山では、夜明け前の17日午前4時前から、道警山岳救助隊や消防隊員ら約40人や、道警と自衛隊のヘリコプター計4機が順次、捜索を開始。山頂近くの北沼付近で男女計7人が見つかったが、4人は意識不明の状態だった。別の登山客は山の中腹の岩場などで動けなくなっているのが見つかり、それぞれヘリが登山口まで移送。救急車で病院に搬送された。また、美瑛岳で遭難した6人のパーティーのうち、死亡した兵庫県姫路市、尾上敦子さん(64)以外の5人は無事が確認された。16日は標高1500メートル付近で風雨が非常に強く、登頂を断念して引き返す登山客もいたという。帯広測候所の観測では、山系周辺は当時、推定風速20メートル以上の西風が吹いており、ふもと付近でも気温は10度前後まで冷え込んでいたため、道警は死因はいずれも低体温症とみられるとしている。トムラウシ山の18人のパーティーは、東京都内の旅行会社のツアー。愛知、広島、静岡、宮城などの50〜60歳代の男女15人が参加、13〜17日の日程で大雪山系を縦走する計画で、ガイド3人が同行。美瑛岳のツアーは茨城県つくば市の旅行会社が企画し、兵庫、埼玉の女性3人が参加。ガイド3人が同行していた。 7/18読売
悪条件重なり「低体温」…大雪山系遭難(上)
北海道大雪山系で10人の死亡者が出た遭難事故。高山植物が咲き誇り、登山者が集中するこの季節に、中高年登山者を襲ったのは、風速20メートルを超す強風と冷たい雨だった。死因は低体温症と凍死とみられている。厳冬時とは異なり、夏の登山は中高年でも比較的気軽に楽しめるイメージがあるが、今回の事故は、時に夏山が登山者に牙をむくという現実を改めて突き付けた。(北海道支社 井沢宏明、野依英治)
「ひと夏に2、3回あるかないかのひどい暴風雨だった」首都圏のツアー客を連れてトムラウシ山(2141メートル)を目指した山岳ガイドの宮下岳夫さん(52)は16日の天気をこう振り返る。宮下さんはその前日、登頂を断念し、途中で引き返した。9人が亡くなったトムラウシ山は、登山口から山頂までが遠く、縦走するには距離が長いことで有名だ。遭難当日、18人のパーティーが目指したのは8時間以上かかるルートだった。途中、山小屋は一つもなく、広い尾根では風雨にさらされっぱなしになる。札幌管区気象台によると、16日の札幌上空1500メートルの気温は11.4度で、平年より2.1度低かった。帯広測候所の観測では、風速20〜25メートルを記録し、降雨も確認されている。これらの観測データから、同気象台は「トムラウシの山頂付近は10度以下の気温だったとみられ、20メートルを超す暴風が吹き荒れていたのではないか」と推測する。長野県警の山岳救助隊を30年以上にわたり指導してきた同県山岳遭難防止対策協会講師の丸山晴弘さん(68)は「強風による体感温度の低下を考慮せず、夏山で低体温症に陥った典型例ではないか」とみる。登山と低体温症に詳しい苫小牧東病院の船木上総副院長によると、気温がそれほど低くなくても、強風や、体に付着した水滴が蒸発する際の気化熱が体温を奪うという。「強風の影響で、遭難した登山者の体感温度は氷点下5度より低かったはず」と船木副院長。風が強く降雨もあった今回は、低体温症を引き起こす条件が重なっていたとみられる。亡くなった10人の年齢は59〜69歳。中高年だったことも被害を大きくしたようだ。日本登山医学会理事の増山茂・了徳寺大学学長は、「中高年の人は、体熱を作る能力や体内の異変を察知する感受性が若い時より衰えている。自分の体温が下がっていることに気づかず、手遅れになってしまう場合も多い」と話す。
◆低体温症=低い外気温などで体温が下がり、身体の機能が不全に陥る疾病。重症になると、錯乱を起こしたり、歩行が困難になったりする。体温が25度以下になると死亡する場合が多い。(2009年7月18日03時03分 読売新聞) 一言=ちゃんと気圧配置を確かめてみた方がいいと思うよ。遭難は悪条件が重なって起きるのが普通だ。
技量に差、意思疎通不足も…大雪山系遭難(下)
旅行会社「アミューズトラベル」(東京)が主催したツアーの参加者らが遭難したトムラウシ山。最近は、こうした「公募パーティー」で登山を楽しむ中高年の愛好家が増えている。手軽さの陰に事故の要因が潜んでいると指摘する声もある。「公募で集まったメンバーは、ほとんどが初対面。コミュニケーション不足が危険を招きかねない」。こう語るのは、中高年のパーティーを国内外の高峰に案内してきた日本勤労者山岳連盟理事の石原裕一郎さん(46)。何度か公募パーティーに参加した経験がある女性(70)も、「参加者の体力や技術に差があったため、隊列が長くなって、はぐれそうになったことがある」と証言する。悪天候に見舞われ、先に進むか引き返すかでパーティーの意見が真っ二つに割れるという事態も、この女性は経験したという。今回のアミューズトラベルのツアーに参加した15人は、広島、中部、仙台の各空港から新千歳空港に到着する便を利用して集まった即席パーティーだった。登山家の田部井淳子さん(69)は公募パーティーについて、「1人では難しい山にも気軽に登れるなど魅力がたくさんある」としながらも、「見知らぬ人ばかりのため『きつくて歩けない』と言い出しにくい雰囲気になる」と問題点を強調。さらに「帰りの飛行機の時間が決まっており、天気が急変しても、日程を変更しにくい面がある」と話し、「予備日を設けているなど、余裕のある日程の組まれたツアーを選んだ方がよい」と参加者にアドバイスする。(後藤将洋) (終わり)(2009年7月18日02時55分 読売新聞)
一言=荒天時の森林限界以上の高度での行動がどんなに大変か経験があればこの遭難は簡単に想像できる。 技量の差をカバーするのがガイドの仕事じゃないの? ガイドは道案内するだけじゃない。それなら道を知っていれば誰でもなれる。ガイドもクライアントも皆ガイドという仕事を勘違いしているんじゃない?
「経験豊富だったのに…」大雪山系遭難
「登山を楽しみにしていた」「信じられない」――。北海道・大雪山系で登山客やガイド計10人の命が奪われた遭難事故。犠牲者の人となりを知る人々は17日、一様に肩を落とした。亡くなった人々が安置された現地の施設には遺族約20人が集まり、深い悲しみに包まれた。一方、登山ツアーを企画したツアー会社の社長は、同行ガイド3人のうち、2人は今回のコース案内が初めてだったことを明らかにしたうえで、日程を中止しなかったガイドの判断が不適切だった可能性があるとの考えを示した。
トムラウシ山で亡くなった岡山県倉敷市の岡恵子さん(64)は、夫(73)、次男(40)との3人暮らし。十数年前に近所の人の勧めで登山を始め、各地の山に180回以上登ったという。次男は「母は今回の登山をすごく楽しみにしていた。今にも帰ってきそうです」と肩を落とした。岡さんが入っていた「岡山ハイキングクラブ」の高見宜伸会長(74)によると、初心者に登山の基本を優しく指導していたといい、「知識、体力ともに十分だった。(遭難は)信じられない」と話した。愛知県弥富市神戸の竹内多美子さん(69)の夫、豊さん(70)は「月曜に出て17日に帰ってくる予定だった。妻は20年近い登山歴があり、これまで槍ヶ岳や北岳、エベレストにもトレッキングに行くなど、経験が豊富だったので、出発の際も特に注意はしなかった。信じられない」と声を詰まらせた。
一方、ガイドの吉川寛さん(61)は、アミューズトラベル広島営業所(広島市中区)と8年前から契約。同社によると、トムラウシ山には何度も登り、縦走コースなどを熟知していた。同社の冊子では、吉川さんは日本山岳ガイド協会認定ガイドと紹介され、「色彩豊かな山々の魅力を皆様と語り合うのを、いつも楽しみにしております」などと言葉を寄せていた。吉川さんは広島県廿日市で夫婦で喫茶店を経営。近所の男性は「店には山好きが集い、みんなで楽しく話していた。冥福を祈りたい」と話した。
◆すべて現場で判断◆
ツアー会社「アミューズトラベル」(東京)の松下政市社長は17日、北海道帯広市内で記者会見し、参加者のうちガイドを含む8人が死亡した遭難事故について、「すべて現場で(ガイドが)判断する。(悪天候の中で出発したのは)このパーティーの力量なら大丈夫と思ったのではないか」と説明。そのうえで、「結果として多くの方が亡くなっている。歩くのか歩かないのか、現場でもっとしっかりと判断できたのではないか」と述べた。また、松下社長は、同行ガイド3人について、2人は今回のコースを案内するのは初めてだったことを明らかにした。しかし、3人にはガイドの経験が3〜9年あり、ガイドの人選は問題ないとの認識を示した。
◇
死亡が確認された方は次の通り(道警、会社の発表より)
【トムラウシ山】吉川寛さん(61)(広島県廿日市市)、市川ひさ子さん(59)(浜松市浜北区)、川角夏江さん(68)(名古屋市緑区)、味田久子さん(62)(同市守山区)、木村隆さん(66)(同市中川区)、竹内多美子さん(69)(愛知県弥富市)、植原鈴子さん(62)(広島市佐伯区)、岡恵子さん(64)(岡山県倉敷市)、竹内栄さん(64)(茨城県)
【美瑛岳】尾上あつ子さん(64)(兵庫県姫路市)7/18 08:46 読売
一言=ガイドの対応が遅れていることを考えるとガイドに危機感が欠如していたのは避けられない事実だろう。結果的に見ると会社側の人選が正しかったと言う言葉には疑問符をつけざるをえない 。どんなガイドだったんだろう。
大雪山系遭難 「出発、無謀だった」…生存者証言
北海道大雪山系トムラウシ山と美瑛岳の遭難は2パーティー、1個人の計10人の死亡が確認され夏山としては過去に例がない大規模遭難となった。夏でも水が凍るといわれる大雪山系で、助かった男性は「寒くて死にそうだった」と振り返る。悪天候の中で予定を強行した判断に疑問を呈する声も上がる中、大雪山をよく知る地元の山岳関係者ですら「これほどの事故は記憶にない」とうめいた。
◇下山中ちりぢりに
「午前4時36分、道警ヘリが男女2人を発見」「ヘリに収容、女性は心肺停止、男性は意識不明」−−。遭難の一報から12時間余りが経過した17日午前4時40分。前日の暴風雨が静まったトムラウシ山登山口(新得町)の現地対策本部では、無線から切迫した声が次々と流れた。「これはダメかもしれない」。救助隊を指揮する西十勝消防組合の幹部がつぶやいた。約10分後、無線で伝えられた男女2人のうち、女性を収容したヘリが登山口の空き地に着陸。ヤッケを着て、フードを頭からスッポリとかぶった女性が道警の機動隊員に抱きかかえられて降ろされ、待機していた救急車へ。両足はダラリと垂れ下がり、目は閉じたまま。顔は血の気がなく、真っ白だった。続いて別のヘリが、登山道で救助した女性を乗せて着陸。女性は報道陣のカメラの放列を避けるように小走りで道警が用意したワゴン車に乗り込んだ。大雪山系は標高2000メートル級が続く。1500メートルを超えると大きな木は生えないため、強風が吹くと遮るものがない。今回のツアー客も強い風雨にさらされ、体感温度が一気に低下したとみられる。救助に出動した新得山岳会の小西則幸事務局長は「大雪山系では夏でも水が凍るほど気温が下がり、しっかりとした装備が必要。テントを持たず、山小屋を利用する縦走では小屋の設置場所が限られているため、どうしても行程に無理が生じる。こうしたことに悪天候が重なり、事故を招いてしまったのではないか」と推測する。悪天候の中で登山に踏み切ったガイドの判断ミスを指摘する声も上がった。午前4時半ごろに下山したツアー客の戸田新介さん(65)=愛知県清須市=はヒサゴ沼避難小屋を出発する時、風が強いと感じたといい、「ガイドは出発すると判断したが、無謀だと思った」と話す。遭難時の様子については、「ガイド1人が付き添って下山を始めたが、ペースが速すぎてちりぢりになってしまった」という。一方、美瑛岳では午前6時半、1人の遺体がヘリで収容された。その後、下山した女性は「とにかく寒かった」とぽつり。「後はガイドに聞いてください」と言うと無言だった。
◇遺体安置所で悲しみの対面
トムラウシ山で死亡した9人の遺体が安置された北海道新得町の町民体育館では17日、遺族が続々と訪れ、変わり果てた身内の姿に対面した。午後7時過ぎには、死亡した3人の遺族7人を乗せたバスが到着。登山ツアーを企画したアミューズトラベルの松下政市社長が「かかる事態を引き起こし誠に申し訳ありません」と陳謝したが、遺族はみんな無言のまま、悲しみをこらえていた様子だったという。【金子淳】
◇亡くなった方々
《トムラウシ山》川角夏江さん(68)=名古屋市▽味田久子さん(62)=同▽木村隆さん(66)=同▽竹内多美子さん(69)=愛知県弥富市▽岡恵子さん(64)=岡山県倉敷市▽市川ひさ子さん(59)=浜松市▽植原鈴子さん(62)=広島市(以上ツアー客)▽吉川寛さん(61)=広島県廿日市市(ガイド)
《美瑛岳》尾上あつ子さん(64)=兵庫県姫路市(ツアー客)
◇下山した方々
《トムラウシ山》長田良子(おさだりょうこ)さん(68)=仙台市▽真鍋記余子(まなべきよこ)さん(55)=浜松市▽戸田新介さん(65)=愛知県清須市▽野首(のくび)功さん(69)=岐阜市▽亀田通行さん(64)=広島市▽前田和子さん(64)=同▽石原大子(もとこ)さん(61)=同▽斐品(ひしな)真次さん(61)=山口県岩国市(以上ツアー客)▽多田学央(たかお)さん(32)=札幌市北区▽松本仁さん(38)=愛知県一宮市(以上ガイド)
《美瑛岳》浦野ひろ子さん(62)=埼玉県草加市▽大西倫子(のりこ)さん(55)=兵庫県姫路市(以上ツアー客)▽小市匠さん(34)=茨城県つくば市▽小坂吏(こさかし)亮さん(32)=北海道▽白石淳也さん(27)=札幌市(以上ガイド)
一言=この遭難は3年ほど前の白馬岳の遭難を彷彿させる。強風下でばたばた倒れていく構図はまったく同じだ。そのときも今回も風が強くまともに歩けない状況だった。歴史は繰り返される。こと遭難に関して言えば好ましくない言葉だ。下山中散り散りになったらたとえガイドが三人いたとしても三人のガイドですべての人を見ることはできない。それは誰が考えても同じだろう。7/17 21:48 毎日
北海道・大雪山系遭難:強風の中ガイド「出発」/夏山、中高年に落とし穴(その1)
◇「無謀と思った」 ツアー客、判断ミス指摘も
北海道大雪山系トムラウシ山と美瑛岳の遭難は2パーティー、1個人の計10人の死亡が確認され、夏山としては過去に例がない大規模遭難となった。夏でも水が凍るといわれる大雪山系で、助かった男性は「寒くて死にそうだった」と振り返る。悪天候の中で予定を強行した判断に疑問を呈する声も上がる中、大雪山をよく知る地元の山岳関係者ですら「これほどの事故は記憶にない」とうめいた。「午前4時36分、道警ヘリが男女2人を発見」「ヘリに収容、女性は心肺停止、男性は意識不明」―−。遭難の一報から12時間余りが経過した17日午前4時40分。前日の暴風雨が静まったトムラウシ山登山口(新得町)の現地対策本部では、無線から切迫した声が流れた。「ダメかもしれない」。救助隊を指揮する西十勝消防組合の幹部がつぶやいた。約10分後、無線で伝えられた男女2人のうち、女性を収容したヘリが登山口の空き地に着陸。ヤッケを着て、フードを頭からかぶった女性が道警の機動隊員に抱きかかえられて降ろされ、待機していた救急車へ。両足は垂れ下がり、目は閉じたまま。顔は血の気がなく、真っ白だった。続いて別のヘリが登山道で救助した女性を乗せて着陸。女性は報道陣のカメラを避けるように顔を手で覆い、道警が用意したワゴン車に乗り込んだ。トムラウシでの死者は、パーティーの8人、個人1人の9人に達した。大雪山系は標高2000メートル級が続く。1500メートルを超えると大きな木は生えないため、強風が吹くと遮るものがない。今回のツアー客も強い風雨にさらされ、体感温度が一気に低下したとみられる。救助に出動した新得山岳会の小西則幸事務局長は「大雪山系では夏でも水が凍るほど気温が下がり、しっかりとした装備が必要。テントを持たず、山小屋を利用する縦走では小屋の設置場所が限られているため、どうしても行程に無理が生じる。こうしたことに悪天候が重なり、事故を招いてしまったのではないか」と推測する。悪天候の中で登山に踏み切ったガイドの判断ミスを指摘する声も上がった。午前4時半ごろに下山したツアー客の戸田新介さん(65)=愛知県清須市=は15日の晩に泊まったヒサゴ沼避難小屋を出発する時、風が強いと感じたといい、「ガイドは出発すると判断したが、無謀だと思った」と話す。遭難時の様子については、「寒くて死にそうだった。ガイド1人が付き添って下山を始めたが、ペースが速すぎてちりぢりになってしまった」という。こうした判断について北海道山岳ガイド協会の幹部は「ガイドはツアー客を目的地まで安全に連れていくことが務め」と前置きした上で、「本州からのツアー客を案内する場合、旅程が詰まっており、帰りの航空便の時間にプレッシャーを感じる。16日朝、避難小屋を出発する時に悪天候の空を見上げて、難しい判断を迫られたはず。現段階で判断の良い悪いを問えないが今後の検証は必要だ」と指摘した。
◇「ボランティア熱心な人だった」――亡くなった姫路・尾上さん
亡くなった尾上あつ子さんの夫彰さんは17日朝、姫路市古二階町で経営する家具店を出て現地に向かった。店は通常通り営業しているが、従業員らはあつ子さんの悲報に言葉少なだった。テレビニュースを見て店にお悔やみに行った近所の男性(67)は「あつ子さんは明るく、熱心にボランティア活動をする人だった。彰さんは気丈に涙をこらえていたが、落胆している様子だった」と話した。【山川淳平】
◇自力下山ホッと――広島・亀田さん妻
16日夜に自力下山した亀田通行さん(64)の妻(59)=広島市東区=は「17日午前1時30分ごろ、下山したとツアー会社から連絡があった。その前、救出までテントで過ごすと伝えられていたので、安心はしていた」と話した。遭難したグループは二手に分かれ、通行さんはすでに自力下山したグループに入っていたと説明されたという。通行さんは登山歴約10年。【星大樹】
◇雨で体温低下
トムラウシ山のツアーを企画した「アミューズトラベル」(東京都千代田区)によると、一行は14日に旭岳温泉を出発、雨の中を白雲岳避難小屋まで歩いた。15日は曇りで、同小屋からヒサゴ沼避難小屋へ。16日朝、次のツアーを待つ男性ガイド(60)を避難小屋に残し、18人がトムラウシ山頂を経由してふもとのトムラウシ温泉を目指すコースへ出発した。気温は10〜15度で、山頂までの間に強風にさらされ、一部の客は体温低下。体調が良好だった客6人とガイド2人が下山したという。
◇なぜ突っ込んだ――アルピニストの野口健さんの話
アミューズトラベルは山岳ツアーを本格的にやっている旅行会社。報道を見る限り、ツアー客が不安に思うほど風が強い中で、なぜ突っ込んでいったのか。特に中高年の場合は体が冷えるため、ツアーでは天気が良いことが絶対条件。私も8月下旬に大雪山を縦走したことがあるが、避難小屋の中でテントを張って火をたいて体を温めた。本州とはまったく違う。7/17 毎日中部夕刊 一言=前項の記事と同じだが発行する地方が違う。それに応じて記事の扱い方も多少違う。
北海道・大雪山系遭難:「収容者、意識なし」/本州の客、目立つ軽装(その2止)
◇ガイド判断に疑問も
トムラウシ山、美瑛岳の遭難者はいずれも本州からのツアー客だった。本州ではそれなりの経験があったとみられるが、北海道は夏でも気温が氷点下になることがある。専門家は本州と北海道の夏山に対する認識の違いが悲劇につながった可能性もあるとみている。札幌市内で登山用品小売業を営む栃内(とちない)譲さんは「道内の登山者ならば、『夏でも寒くなる』と知っているので、夏山にもフリースを持っていく。しかし、本州のツアー客の認識は異なる」と指摘。道内の夏山は本州からの登山ツアー客が目立つが、栃内さんは「軽装で出かける人が多いような気もする」という。一方、今回の遭難について、北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長は「中高年の趣味として手軽という登山の一面が裏目に出た」と話す。警察庁によると、08年の山岳遭難は1631件(前年比147件増)、遭難者は1933人(同125人増)。年代別にみると、60代が576人で最も多く、50代が370人、70代が340人――と続く。50歳以上の中高年は1567人に達し、全体の81.1%を占める。川越会長は「中高年は『自分はまだ若い』という気持ちを捨てきれない。晴れているときはよいが、天候が崩れると、やはり、体力がなく、低体温症に陥りやすい。中高年の登山は、体力的に無理のない計画と十分な事前準備に配慮する必要がある」と警鐘を鳴らす。【水戸健一】
◇8月でも氷点下に――トムラウシ山に10回以上の登山経験がある北海道山岳連盟の神山健・常任理事の話
山頂付近は8月でも気温が氷点下になることがあり、樹木がないため強風が吹くと隠れる場所がない厳しい環境だ。寒さが体力を奪ったのではないか。最近、北海道では雨が続いており、悪天候は予想できたはず。ツアー客はいざとなった時の力量が分からないので、ガイドは慎重を期すべきだった。
◇天候予測どの程度――日本山岳協会遭難対策委副委員長の青山千彰・関西大教授(危機情報論)の話
状況からは気象遭難が考えられる。この時期の低気圧は太平洋高気圧の影響で停滞しがちになり、動きが読みにくく、さらに山頂の気象は厳しい。ツアーガイドがどの程度悪天候を予測してパーティーを誘導したのかが、今後の再発防止に向けても大事な情報だ。7/17毎日中部夕刊 気象遭難は当然だけど、そこにいたるまでの判断にミスがある。
北海道遭難 雄大な自然にひそむ危険
日本百名山のひとつ、トムラウシ山は一年で最も美しい季節を迎えていた。その夏山で、なぜ初心者ではない大勢の中高年が遭難したのか。「トムラウシは低気圧が近づくと強風が吹きつけ、危険だ」北海道山岳連盟常任理事の荒堀英雄さん(62)は説明する。中高年を中心に毎年約2500人が山登りを楽しむ山だが、気候の変化が激しいという。8人が死亡したツアーが16日朝に出発したヒサゴ沼避難小屋は比較的風が弱い場所だった。「しかし、山の稜線(りようせん)に出た途端、強風が吹き付けてくる。ガイドはその風の強さで小屋に戻るか判断するはずだが、ツアーだと日程が決まっているから戻る決断をためらってしまう可能性がある」と話す。16日午前9時ごろの山頂付近の推定気温は7〜8度で風速は20〜25メートル。体感温度は風速が1メートル強くなるごとに1度下がるとされる。さらに雨も降った。専門家によると、雨に濡れた状態で風が吹くと体温が急激に下がり低体温症になるケースがあるという。「風、雨と悪条件が重なった。ガイドは安全なところに案内したかっただろうが…」と残念がるのは北海道山岳ガイド協会会長の川越昭夫さん(72)。気象などの厳しさから、北海道の2千メートル級の山は、本州の3千メートル級の難易度があるとされる。さらに事故現場は尾根が広く、風雨を避ける場所が少なかった。川越さんは「周辺にある岩のすき間に潜りこむにも、荒れ狂う天候では場所を探すのも難しい。今年は残雪も雪渓も多く、ルートから外れるのも怖かったのだろう」と推測する。札幌管区気象台によると、トムラウシ周辺はこのツアー初日の14日こそ晴天だったが、15日は北海道北部を低気圧が発達しながら通過。16日も低気圧の影響下にあり山岳部は雨が降っていた。さらに、「北海道の山は本州に比べ、登山者のための設備が乏しい」と川越さんは指摘。北海道によると、ヒサゴ沼避難小屋を出るとトムラウシ山を下りるまで避難小屋はなく、逃げ場がないという。避難小屋はただ単に避難するだけではなく、今回のツアーのように宿泊場所として使われることも多い。「雨が降れば風雨をしのげる避難小屋にみんな逃げ込む。そうすると、小屋内は一杯で立錐(りつすい)の余地がなくなり、ろくに眠れず体力をそがれることもある」。川越さんは「行政は避難小屋の増設など、登山者のための施設充実も考えてほしい」と訴えた。 一言=ガイド自身が斃れるような判断しか下せていないということだ。ガイドの未熟さが原因の一つであることはもちろん、ツアー会社の危機管理のあり方も問われるだろうし、知りたいものだな。自分自身のために。ちなみに植生というのはその場所の気象条件を反映する。そんなことをガイドを職業にしている人間が知らないわけはないと思うけどな。
社説:大雪山系遭難 ツアーの安全徹底を
北海道大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で登山者の遭難が相次ぎ、10人が死亡した。山岳史上に残る記録的な惨事である。遭難時の山系周辺の天気は大荒れで、冷え込んだ上に強風が吹いていたという。犠牲者は雨にぬれて体温を奪われ、低体温症などに陥ったとみられる。遭難したのは計25人。このうち単独行の死者以外は、別々の観光会社が募集した2組のツアー登山者のパーティーだった。道警も関係者の事情聴取を始めたばかりで、具体的な登山計画や遭難時の状況などについてははっきりしていないが、荒天下で避難小屋から出て遭難したとの証言もあり、同行していたガイドの判断や計画にミスや無理がなかったかどうか、今後の教訓とするためにも、慎重に見極める必要がある。ツアー登山は、最近の登山ブームを背景に人気を呼んでいる。複数の観光会社が競い合うように企画、募集しており、インターネット上には広告があふれている。登山口の最寄りの空港や駅前などで即席のパーティーを組み、ガイドが引率する。下山後は温泉に泊まる企画も目立つ。同行者を見つけにくい登山ファンには便利で、仲間を見つける楽しみもあるという。旅行会社側は参加者の登山経験や体力に応じたコースを設けたり、装備や服装などについても事前に指導している様子だが、気心が知れず、体力差もある参加者が寄り集まったパーティーならではのハンディは否めない。慣れぬ仲間と同行すれば、余分な体力も消耗する。ツアー参加費を徴収し、下山後の宿舎まで予約している場合、ガイドらが天候の急変などに即応して計画を変更できるかどうかにも疑問なしとしない。同種のツアーを運営する旅行会社には、安全を徹底する義務と責任がある。企画の総点検を求めたい。警察庁によると、昨年中の山岳遭難は1631件、1933人で記録が残る1961年以降の最悪となり、死者・行方不明者も281人を数えて最多となった。遭難者の8割以上を40歳以上の中高年が占めているだけに、今回の遭難を機に中高年の登山の危険性を指摘する声が高まる可能性もあるが、だからと言って、中高年がことさら萎縮(いしゅく)する必要はあるまい。登山には危険が伴う。若者だって遭難する。最近の遭難者に中高年が目立つのは若者層のファンがめっきり減っているせいだ。ただし、山を愛するならば、これまで以上に慎重に計画し、入念に準備し、体力も見極めてから山に向かいたい。登山の喜びを多くの若い世代に伝えるためにも、中高年の登山者には率先して事故のない楽しい登山を心掛けてもらわねば困る。7/18 00:02毎日 一言=普通の人は歩ければ登れると思っているからね。登るにはそれなりの経験と準備が必要だし、いざと言うときに生き抜くには悪い経験をたくさんしていないとだめだよね。
余録:大雪山系のツアー遭難
「美瑛富士の頂上から北をみると、尾根の長いオプタテシケの彼方(かなた)に、ひときわ高く、荒々しい岩峰を牛の角のようにもたげたダイナミックな山がある……それは私を強く捕らえた。あれに登らねばならぬ。私はそう決心した」▲深田久弥は「日本百名山」でトムラウシ山をこう書き起こしている。百名山選定にあたっては山の品格、その歴史、独自の個性を基準にしたという。トムラウシ山の場合は、どうやら「毅然(きぜん)として独立を主張する」個性に魅せられたようだ▲「登って行くと、あたり一面、白、赤、黄、紫の高山植物の褥(しとね)であった。あちこちに雪の溶けた池があり、その原が果てしなく拡(ひろ)がっている。この雄大、この開豁(かいかつ)」。この百名山の記述に胸を躍らせてツアーに参加した方もいたに違いない▲だが上空からの映像ではまだ池になる前の残雪が目立った北海道大雪山系のトムラウシ山だ。そこで本州からの登山ツアー客が遭難、8人が亡くなる惨事となった。この山系は2日前から荒天と寒気に見舞われ、他に2人が遭難死している▲亡くなったツアー客は59歳から69歳までの山歩き愛好家だ。中高年の登山ブームのなか同様のツアーの盛況が伝えられる。一方で昨年の山岳遭難事故集計では、死者・不明者は過去最高の281人、うち9割以上が40歳以上の中高年という▲「カムイミンタラ」とはアイヌ語で「神々の遊ぶ庭」、大雪山系はそう呼ばれていたという。神々と楽しみを共にする山行であっても、いったん荒天となれば容赦なく人の体温を奪う北の高山だ。今は亡くなった方々の魂に手を合わせつつ、同じ悲劇を防ぐため山の神々の忠告に耳をすましたい。7/18 00:02毎日
大雪山系遭難:無理な行程が引き金…中高年ら寒さ感知遅れ
一度に10人が命を落とした大雪山系の遭難事故。夏山でなぜこれだけの死者が出たのか。登山や救助関係者からは、ガイドの判断ミスとともに、装備の不十分さや、中高年にとっては無理な日程が犠牲を拡大させたとの指摘が出ている。遭難した16日に何が起きていたのか――。トムラウシ山で遭難した18人が避難小屋を出発したのは、16日午前5時半ごろ。当時、避難小屋にいた静岡県の男性(66)は「雨と風で体感気温は相当低く、リュックカバーが風で吹き飛ばされ、岩にしがみついて四つんばいで歩くような状態だった」と過酷な気象状況を振り返る。18人の中には出発を不安視する人もおり、午前11時ごろ、その不安が現実となる。山頂付近で女性客が動けなくなった。女性客はガイドとともに現場に残り、16人は下山を続けたが、約1時間後、別の女性客も意識不明に。その後も、ガイドのペースについていけず、脱落する人が相次いだという。10人の死因は、強風や雨で急速に体温が低下する低体温症による凍死とみられる。帯広測候所によると、トムラウシ山頂では当時、雲がかかり、雨が降っていたとみられる。日中の気温は8〜10度とされ、風速は20〜25メートルと台風並みだったとみられる。札幌医科大の山蔭道明医師は「真冬日の雨風の中を歩くようなものだったろう」と指摘する。高齢者にとって低体温症は危険だ。若い人よりも寒さや暑さへの感度が鈍いため、今回のように「寒い」と気づいた時には手遅れで、動けない状態に陥ってしまうことがある。体温が35度以下になると、低体温症となり、震えが始まる。33〜32度になると動けなくなり、30度以下で意識がなくなるとされる。山蔭医師は「雨風のなかを強行せず、体温・体力を回復させてから先へ進む必要があったのではないか」と指摘する。一方、ヘリで遭難者の救助にあたった陸上自衛隊の2等陸尉(32)によると、死亡した人の中には、薄い雨ガッパに長袖シャツ、スラックス姿や、持ってきた予備の服を体に巻き付けたまま倒れている人もいたという。救助活動にも参加した地元の「新得山岳会」の小西則幸事務局長は「軽装のほか、無理な行程が事故を招いたのではないか」と疑問を投げかける。パーティーは4泊5日の日程。小西事務局長は「事故のあったコースはベテランでも体力的にきつく、できればもう1拍追加することが望ましい」と指摘する。アミューズトラベルの松下政市社長によると、各ツアーには内容ごとに体力度・技術度での参加基準を設置。今回の体力度は、6段階で上から2番目の「四つ星(やや健脚)」、技術度5段階中は3番目の「二つ星(やや難しい)」だった。防寒具や登山靴、レインウエアなどのリストを手渡し、各自でそろえてもらうのが登山ツアーの参加条件という。だが、軽装の参加者がいたことについて、松下社長は「ガイドが装備品のチェックをしたかどうか今はわからない」と言葉を濁した。【吉井理記、和田浩幸、山田泰雄】7/18 00:26 毎日 一言=天気が荒れれば好天時以上の体力を必要とする。参加基準の体力って好天時を基準にしたものだろう? 荒天時の基準は?
大雪山遭難 ガイドの行動は適切だったか(7月18日付・読売社説)
雪渓や豊富な高山植物がみられ、中高年に人気の登山コースである北海道・大雪山系が、遭難事故の舞台に一変した。10人の死者が出た大量遭難である。東京都内の旅行会社のツアーなどに参加した59歳から69歳の男女のほか、ガイド1人が犠牲になった。大雪山系では推定で風速20メートル以上の雨交じりの風が吹き、気温も10度前後まで下がっていた。死因は低体温症とみられている。8人が死亡したパーティーから生還した人が話した遭難状況によると、同行していた旅行会社のガイドの行動は納得しがたい。3人のガイドが引率して、一行は強風と雨の中、山小屋を出発した。途中で倒れ込む人がいたにもかかわらず、体力の残っているメンバーだけで進んだ。その後、散り散りになっていったという。全員の装備や疲労度などを見て最善の行動を選択するのが、ガイドの役目だろう。生還者の証言通りとすれば、ガイドが参加者を死に追いやったようなものだ。北海道警には遭難に至った経緯を徹底的に調べてほしい。3人のガイドの経験や能力は、十分だったのか。なぜ、誰も途中で無謀な行動を制止しなかったのか。登山客を死亡させたとして、ガイドや添乗員が業務上過失致死罪に問われたこともある。山岳遭難でも刑事責任の有無を追及するのは当然だろう。旅行会社では「日程に無理はなく、不運が重なったとしか考えられない」と説明するが、「不運」では済まされない。利益優先で、ツアー客の安全は二の次になっていなかったか。現地のガイドに決行や撤収の判断を任せきっていたのか。道警にはこの点も調べてもらいたい。中高年の間では登山ブームである。それに伴い遭難事故も増えている。昨年の山岳遭難の死者と行方不明者は281人で、統計のある1961年以降で最悪を記録したが、その9割は40歳以上だ。山の天候は急変する。道に迷ったり落石や落雷、滑落の恐れもある。周到な準備もないまま入山するのは、あまりに危険だ。集団登山の場合でも、天候や体力に不安を感じたら山小屋にとどまったり、下山する別グループと行動を共にしたりするなど、それぞれの判断も必要だろう。山岳ガイドには日本山岳ガイド協会の認定制度があるが、統一的な資格制度はない。信頼できるガイドをいかに選ぶか。その重要さも今回の遭難は教えている。2009年7月18日01時39分 読売新聞
一言=穂高岳、剱岳、トムラウシ――。今年になって社団法人日本山岳ガイド協会認定ガイドのガイド中のクライアントの死亡事故が多発している現状を考えるとこの通りだと思わざるを得ない。しかし、久しぶりに突っ込んだ意見を書いた文章を見た気がする。実際ガイドだって万能じゃない。天候やガイドに不安があればどんどんぶつけた方がいい。そうすることによってガイドもより正しい判断が下せるようになるんじゃない?
登山一行ちりぢり ガイド、8人を見失う 大雪山系遭難
北海道大雪山系で起きた遭難事故をめぐり、トムラウシ山(2141メートル)で遭難したパーティーは、途中で歩行困難者が出る中で少なくとも八つに分裂していたことが北海道警への取材でわかった。道警は、同行ガイドや主催したアミューズトラベル社(東京)が安全確保を怠った結果、一行がバラバラとなり、8人の死者を出す事態に至った可能性があるとみて、業務上過失致死の疑いで社長らから事情を聴いている。近く同社を家宅捜索する方針だ。道警などによると、パーティーは50〜60代の客15人(男性5、女性10)と男性ガイド4人の計19人だったが、ガイド1人が事故前夜に泊まったヒサゴ沼避難小屋に残ったため、遭難時は客15人に対し、ガイド3人となっていた。18人は16日午前5時半ごろ避難小屋を出発。昼前にはトムラウシ山頂に近い北沼付近で女性1人が低体温症で歩行困難となり、ガイド1人が付き添うことになった。残る16人でしばらく進んだが、さらに男女4人が体調を崩すなどして進めなくなり、ここにもガイド1人が残ることになった。5人はテントを張って野営した。この段階で、本隊はツアー客10人に対し、ガイド1人の11人。一行は下山を試みたが、ガイドが午後3時54分に5合目の「前トム平」から110番通報した内容は「ガイド1人、客2人の計3人がいます」というもので、ツアー客8人の行方を把握できなくなっていたという。その後、16日深夜から17日未明にかけ、3グループに分かれた計5人が自力で下山。17日の捜索では、山頂付近から登山道に沿う形で、「北沼」に7人、「山頂付近」に1人、「南沼キャンプ指定地」に1人、「前トム平」に3人、「コマドリ沢分岐」に1人と、登山客は5カ所に分かれて見つかった。自力で下山した男性は「ガイドのペースが速すぎて脱落して1人になった」「山中で野営し、17日午前3時半に再び歩き始めたところで車が来て拾われた」と話した。同社によると、ガイド3人のうち、今回のコースの経験者は1人だったという。17日、帯広市内で記者会見したアミューズトラベルの松下政市社長は「出発時点では、ガイド3人は『(参加者の)脚力やこの天気なら問題ない』と確認して出発したのではないかと推測される。ただ、途中で引き返すという判断も、選択肢の一つとしてあっても良かった」と話した。7/18朝日 一言=事情が分かれば分かるほどひどい行動だと思ってしまう。あなた方にとって安全とはいったいどんなものなのかと尋ねてみたいし、僕たち自身も考えねばならないだろう。社団法人日本山岳ガイド協会にはガイド1人に対して何人のクライアントが適正かというガイドレシオというのがあるが、これでは有名無実だし、実際遭難時はいつもまったく機能していない気がする。だいたい八つに分かれたクライアントを見るにはガイドの人数が絶対的に足りない。しかし遭難時というのはたいがいばらばらになる。ガイドのペースが速すぎると言うのがクライアントをばらばらにした 一因だけど、ここまで状況が逼迫していると何も見えなくなってしまうものなんだろうね。だからこそ早めは山の判断が必要になるのだけど。
【北海道遭難】自力下山のツアー客男性「ガイドの説明なかった」
高年登山客ら10人が死亡した北海道・大雪山系の遭難事故で、自力で下山したトムラウシ山へのツアー客の男性は「ガイドから、状況の説明が全然なかった」などと対応を疑問視した。男性によると、事故があった16日は山小屋を出発した朝、雨や風が強かった。その上で「普通は行かないと思うけど出発した。天候がどうなるのか説明はなかった」と振り返った。正午ごろ、頂上を過ぎたあたりでガイドが「体調が悪い人が出た」と待機を指示。約1時間半待たされたが、状況についての説明はなく「寒い、寒い」と奇声を発する人も出た。その後、ツアー客10人とガイドが先に下り、残った7人でビバークすることを決定。しかし、出発した後は、ガイドは遅れた人を気遣う様子もなく「何も説明しないで、走るように先に下りていってしまった」という。7/19産経 一言=この待機というのがすごいよね。雨風の中暴風対策もなしに待機させればそりゃあ低体温症にもなるわさ。ならないと考える方がおかしい。
ガイドの通報、異変4時間後=防寒対策も不十分か―道警
北海道大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)でツアー客ら8人が死亡した遭難事故で、ツアー客らが歩けなくなりビバークした山頂付近で、携帯電話が通じていたにもかかわらず、同行したガイドが110番したのは異変から約4時間後だったことが19日、道警への取材で分かった。また、道警は遺族から衣類の任意提出を受け、防寒対策にも問題がなかったか調べている。道警によると、パーティーが遭難した16日午前、ツアー客15人のうち女性1人が低体温症になり、ガイド1人が付き添った。正午前には、別の男女4人が歩けなくなったため、別のガイド1人が付き、計7人が山頂近くの北沼付近にビバークすることになった。残るガイド1人は客10人とともに下山し始めたが、携帯電話で110番したのは、グループがちりぢりになった後の同日午後3時55分ごろ。ガイドのそばには男女計2人しかいなかったという。道警はその後、ビバーク中のガイドと携帯電話で何度かやりとりをしたが、通信状態が不安定で、同8時以降は連絡が取れなくなったとされる。7/19 15:43時事 一言=想像するだにすごい状況だ。本当に白馬岳の遭難事故と同じような状況だ。ガイドは登山道を知っているだけでいいのか……。そんなガイドじゃそりゃあクライアントは死ぬだろうよ。
<大雪山系遭難>「寒さ、想像超えていた」 ツアー社長会見
北海道大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で登山ツアー客らが死亡した遭難事故で、アミューズトラベルの松下政市社長は19日、北海道新得町の町民体育館で記者会見し、「この時期にこれほどの寒さが来るというのは、想像を超えていた。そこまで危ない山だという認識はなかった」と述べ、夏のトムラウシ山登山の危険性を十分把握していなかったことを認めた。ただ、パーティーの防寒対策が不十分だった可能性があることについては、「装備リストに必要なものを書いてある。防寒具は通常、参加者が基本的に責任を持って持参していただく」と強調し、会社の責任を否定した。新得町の町民体育館から自宅に向かった。遺族は疲れきった様子で無言のまま。松下社長や道警の捜査員らは雨の中、じっと手を合わせて遺体を乗せた車を見送った。遺族は同日午後、新千歳空港からそれぞれ帰路についた。【金子淳、田中裕之】7/19 19:23 毎日 一言=「この時期にこれほどの寒さが来るとは」と言うが、実はこの日の気温は帯広測候所の発表では平年並の8度だという。この日が特別寒かったわけではないというのである。一方、風速は20〜25mだというから普通の人がこれに抗って歩くのはまず無理である。増して技術や体力や経験に乏しい中高年となれば何をかいわんやである。この気温にこの風で草原のような場所どころか足元が不安定な岩石地帯を何時間もかけて行動するなんてのは無理に決まってるじゃないか。しかも疲労が増す山行3日目だ。そんな判断はどういう経験を重ねたらつくのか知りたいものだ。いずれにしてもすごく基本的なところで誤っている気がしてならない。こんなところで死ななくても済んだ遭難だったと思っているのは僕だけではないだろう。
大雪山系遭難:「午後から晴れる」 ガイド判断誤る?
北海道大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で旅行会社「アミューズトラベル」(東京都千代田区)が企画した登山ツアー客ら8人が遭難死した事故で、ツアーの男性ガイドが16日早朝の出発直前、「午後から晴れるから大丈夫」と話していたことが分かった。ガイドと同じ避難小屋にいた別のパーティーの男性が証言した。道警は、暴風雨にもかかわらず、ガイドが判断を誤ってツアーを継続した可能性があるとみてガイドから事情を聴いている。ツアーの18人と15日夜にトムラウシ山北側の避難小屋で一緒に泊まった静岡県の男性(66)によると、16日午前3時半ごろに起きたところ、外は雨が降り、風も強く、出発を見合わせていたという。その後、ツアーのガイドが「午後から晴れるから大丈夫だ」と話し、同日午前5時半ごろに18人が出発。間もなく男性らも小屋を出た。しかし、風雨はますます強くなり、岩にしがみつきながら進むような状況だったという。釧路地方気象台によると、16日午前5時の十勝地方の天気予報は「曇り、昼過ぎから晴れ」。ガイドはこの天気予報で「午後から晴れる」と判断したとみられる。しかし、十勝地方は同日昼にかけて風が強くなり、同日午前10時半ごろには、ツアーの女性客1人が寒さによる低体温症で動けなくなった。午前11時25分には強風注意報が出た。北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長によると、ガイドは山の気候が少し遅れて変わることを念頭に自ら天候を予測するという。【和田浩幸、水戸健一】7/19 22:00 毎日 一言=山の天気は変わりやすいというが、それは事実だ。だからこそ気象庁の天気予報は参考にはできるが当てにはならないとも言える。いままでそんな経験を何度してきたことか。それに天気予報って人が住んでいる場所、高さの予報で山の上の天気の予報じゃないからね。だからこそガイドには豊富な知識や登山経験が必要なんだ。それはそういった経験を通して普遍的な知識や技術をつけていくために必要な経験だ。そんなしっかりした登山経験があればこんな日に行動することはなかったろう。
ガイド、山頂付近で救助求めず 遭難事故、携帯は通話可
北海道大雪山系トムラウシ山(2141メートル)の遭難事故をめぐり、パーティーのツアー客5人が悪天候や疲労で歩行困難となった山頂付近では同行したガイドらの携帯電話が通じる状態だったにもかかわらず、救助要請がないままツアーが続行されていたことが北海道警への取材でわかった。ツアーでは予備日は設定されていなかったといい、道警は、ガイドらが行程の遂行を優先して安全配慮を怠っていなかったか、危険性の認識があったか、旅行社側の指導や管理に問題がなかったかについて慎重に調べる方針だ。主催したアミューズトラベルによると、遭難したツアーはトムラウシ山や旭岳などを2泊3日で縦走する「やや健脚コース」。道警などによると、パーティーは遭難時、50〜60代の客15人とガイド3人という構成だった。ガイドのうち2人は今回のコースは初めてだったという。一行は16日午前5時半ごろ、宿泊していた避難小屋を出発した。昼前には山頂に近い北沼付近で女性1人が低体温症で歩行困難となり、ガイド1人が付き添うことに。さらに男女4人も進めなくなり、別のガイド1人が付き添った。このため、北沼付近には客5人、ガイド2人の計7人が野営することになったという。7人が残った場所では携帯電話は通話可能だったというが、この時点では救助要請をせず、ガイド1人と客10人の計11人がツアーを続行。11人はその後分裂し、5合目の「前トム平」ではガイドのそばに客は2人だけになったという。このガイドが携帯電話から110番通報したのは、北沼付近を離れてから約4時間後の午後3時54分だった。一方、北沼付近に残ったガイドも、野営を始めて約5時間後の午後5時前後になって、同社の札幌営業所に社長あてで「すみません。7人下山できません。救助要請します」「4人くらいダメかもしれないです」と切迫したメールを送信してきた。さらに、このガイドは午後8時すぎ、道警に直接電話をかけ、ツアー客の状況などを説明したという。道警などの捜索は17日午前4時すぎに始まり、北沼付近で野営した7人が見つかったのは午前7時前。このうち4人は死亡した。7/19 03:00朝日 一言=野営の状態は下記の記事にある。
ガイド「天候、昼には回復」、実際は悪化…大雪山系遭難
北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で縦走ツアーの参加者ら18人が遭難、8人が死亡した事故で、道警は18日午後、ツアーを企画した旅行会社「アミューズトラベル」の札幌営業所に続き、東京都千代田区の本社を業務上過失致死容疑で捜索し、ガイドの研修資料などを押収した。パーティーを引率したガイドは遭難当日の16日早朝、出発前のツアー客に対して「天候は昼前には良くなるだろう」と説明していたことが新たに判明。実際には天候が悪化して5人しか自力下山できておらず、道警はガイドの判断が適切だったかどうかについて調べる。旅行会社などによると、ツアーは13〜17日のうちの3日間で、旭岳からトムラウシ山の計45キロの行程を縦走する計画。一行は16日午前5時半頃、宿泊した避難小屋を出発し、遭難した。15日夜に同じ避難小屋に泊まった別のグループによると、両グループは16日午前5時に小屋を出る予定だったが、風雨が強いため、出発せずに様子を見た。この時、遭難したパーティーの同行ガイドがツアー客に対し、「午前中は前線の影響で天気が悪いが、その後は良くなるだろう」と説明し、予定より約30分遅れて出発したという。別のグループは、その約5分後に出発した。釧路地方気象台帯広測候所によると、16日午前6時の十勝地方の天気は「晴れ」だったが、その後に風が強まり、午前11時55分には強風注意報が発令されていた。別のグループの一人で静岡県函南町の男性(66)によると、遭難したパーティーは歩みが遅く、午前9時頃には山頂の手前約1キロの地点で追い抜いた。この時すでに天候は悪化しており、強風で岩にしがみつく人もいたという。遭難したパーティーは連日8〜10時間縦走する日程で、15日には雨の中を約10時間行動していた。一方、別のグループは1日の徒歩時間が4〜10時間で、15日は4時間程度しか歩かなかったという。別のグループは16日夜、全員が無事下山しており、男性は「遭難したパーティーは相当疲れているように見えた。我々は日程に余裕があり、さほど疲れていなかったので下山できたと思う」と話している。7/19読売 一言=ガイド山行のグループと一般登山者のグループとの行動や判断の違いが鮮明だ。これではガイドが叩かれてもいたしかたない。一般登山者が判断できることをなぜガイドができなかったのか。ここを掘り下げないとどうしようもない。
トムラウシ遭難 全員凍死 防寒具不備か ツアー会社本社も道警捜索
大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で、中高年のツアー客ら8人が死亡した遭難事故で、道警は18日午後、業務上過失致死の疑いで行っていたツアー企画会社「アミューズトラベル」(東京)に対する家宅捜索を終え、関係書類などを押収した。事故当時、現場は雨と強風が吹いており、道警は参加者の装備など、防寒装備を含め、同社の安全対策に問題がなかったか捜査している。また、司法解剖の結果、8人の死因はいずれも低体温症による凍死と判明。トムラウシ山を単独登山中に死亡した茨城県の男性、美瑛岳(2052メートル)で死亡した女性を含め、今回、同山系で遭難、亡くなった10人全員が凍死だった。家宅捜索されたのは、東京都千代田区内の同社東京本社と、札幌市北区内の同社札幌営業所。道警などによると、死亡した59〜69歳のツアー客7人と、同社ガイド(61)の計8人の死亡推定時刻は、遭難翌日の17日未明だった。救助活動を行った自衛隊員は、ツアー客の服装について「夏用の長袖シャツを着ている人もいた」と指摘。ある参加者は「防寒具などのチェックはなかった」と証言しており、防寒対策に不備があった可能性が浮上している。道警は、家宅捜索で、押収した悪天候など緊急時のマニュアルや、同社がガイドを対象に行っている研修内容なども調べ、客に対する装備の指示やツアー実施前のチェックなども調べる方針だ。同社札幌営業所の家宅捜索は18日午後4時ごろに終了。同社東京本社では、同日午後2時すぎから捜査員8人がオフィスビル4階の同社を捜索、関係書類など段ボール8箱分を押収した。7/19北海道 一言=よほどのことがない限り低山でも防寒対策はしていくけどな。特に雨が降りそうなときは。だいたい寒いの嫌いだもの。
極限下の介抱 大雪山系遭難生還者が証言 初対面の山仲間 次々脱落…支え歩き手足温め
夏山では過去最悪の10人もの犠牲者を出した北海道大雪山系での遭難事故。トムラウシ山から生還した野首功さん(69)=岐阜市=が18日、入院先の北海道清水町の病院で、当時の状況を語った。ツアーで初めて会った人ばかりだったが、皆、山を愛した同志。野首さんは風雨で体力を奪われながらも、次々と倒れた同じツアー仲間を必死で介抱した様子を振り返った。野首さんは、事故を報じる新聞を見て、初めて亡くなった人のことを知った。「この男の人、とってもきちょうめん」「話題豊富でようしゃべるんだわ、このおばちゃん」。名前も住所も、職業もほとんど知らない。でも、大好きな山の話になると、みんな夢中になった。野首さんにとっても、トムラウシ山は初めてだった。遭難当日の十六日、野首さんは宿泊したヒサゴ沼避難小屋から出発した十八人の隊列の後ろから三番目にいた。出発時から雨。半袖に長袖、その上にフリースと雨がっぱを羽織ったり、登山服にかっぱ姿だったり、服装はそれぞれだった。異変は風雨がいっそう激しくなった午前十時半ごろという。後ろを歩いていた女性と男性ガイドの姿がないのに気付いた。岩陰でガイドが女性の背中をさすっていた。野首さんは持参した簡易テントを渡し、先を急いだ。さらに、しばらく行くと別の女性一人が座り込んでいるのが見え、右手をつかませて引き上げるようにして歩いたというが、さらに別の女性二人も動けなくなった。野首さんは先頭の第一ガイドと一緒に、女性三人をテントに運び入れた。「頑張れ」。体温が下がらないようこんろで火をたき、手や足をさすった。気づくと、一人が息をしておらず、いびきをかき始めたもう一人には心臓マッサージも施したが、息を吹き返すことはなかった。遺体にシュラフをかぶせ、テントの中で救助を待った。「(遭難した現場で)ガイドらは一生懸命だった。ただ、どうしてこんな事態になったのか、原因をきちんと明らかにして、二度と繰り返さないようにしなくてはならない」
◆ツアー8人は凍死
北海道・大雪山系の遭難事故で、道警は十八日、八人の死者を出したトムラウシ山でのツアーを主催した「アミューズトラベル」(東京都千代田区)の安全管理に問題があったとみて、業務上過失致死の疑いで本社などを家宅捜索した。八人は旭川医大で司法解剖した結果、全員が低体温症による凍死だったと判明。救助にかかわった自衛隊員は「彼らは夏用のシャツで特別な防寒具は持っていなかったようだ」と証言。事故当時、現場では雨と強風が吹いていたことから、防寒対策の不備が死につながった可能性も指摘される。同社は十七日の記者会見で「(防寒具を)持参しない人は登ってもらわない」「当日、ガイドがチェックしたか分からない」と説明。しかし、ある参加者は「当日、防寒具などの荷物チェックはなかった」と話した。同社によると、ガイド三人のうち、二人は同社のガイドとしては初行程だった。参加者が体調不良を訴えるなどしたため、最終的に三人は別々に行動していた。7/19東京 一言=初めてのところだから正しい判断ができなかった――。そんな姿勢、そんなことではガイドなどできるわけはない。そんな力でガイドをしようと言う方が無謀だろう。登山技術や登山知識と言ったものは普遍的なもの。登山知識や登山技術を自らの経験を通して応用できるからこそのガイド力だろ う。ちなみに低体温症の場合は深部体温を上げないと回復しない。低体温症で心臓が止まるのは血液が冷え切っているからだからマッサージを施してもほとんど効果はない。そこまで冷えたら病院で適切な治療をしないと治らない。
登山客、ガイドに業煮やし「救援要請を」 大雪山系遭難
遭難だと認めて救援を要請しろ」。北海道大雪山系トムラウシ山の遭難事故で、なかなか救援要請をしないガイドに業を煮やし、こう求めたと、旅行会社アミューズトラベルのツアーに参加し、自力下山した愛知県清須市の戸田新介さん(65)が証言した。山頂付近で動けなくなった人が出始めて約1時間半たってからのことだ。戸田さんは「ガイドの判断は場当たり的だった」と憤る。戸田さんによると、16日午前10時半ごろ、山頂に近い北沼付近で女性が動けなくなり、ガイドが1人付きそった。戸田さんら他のメンバーは「何をしているのか」と、少し先で待っていたが、ガイドは一向に戻ってこない。風雨が強まり、「寒い。わーわー」と奇声を発し始める女性も出た。1時間半が過ぎた。戸田さんはその場にいた別のガイドに「どうするんだ。様子を見てきてくれ」と頼んだ。しかし、さらに10分が過ぎても何の反応もない。我慢出来なくなった戸田さんは大声で叫んだ。「この事態をどうするんだ。遭難だと認めて救援を要請しろ」すると、北沼付近にいたガイドが戻って来た。「歩ける人は、先に下りてもらえますか」。救援要請は聞き入れられず、違うガイドが先導して先を進むことになった。1時間半も風雨の中で立ち止まっていたため、体が思うように動かないメンバーが多い。ペースが速いガイドにはついていけなかった。戸田さんは最後尾に回り、遅れている女性を励ました。女性は、すでに体に力が入らない状態。「前トム平」辺りの雪渓では女性につえを握らせ、「しりもちスキー」で引っ張るなど、助け合った。だが、やがて散り散りになっていった。戸田さん自身も体力の限界が近づいた。何とか助かったのは、山頂に近づいた時に雨がっぱの下にフリースをもう1枚、着たからだという。着替えるために雨がっぱを脱ぐと雨にぬれるが、「このままでは寒さでやられる」と思い切った。戸田さんは指摘する。「重ね着をさせるなど、ガイドが指示を出すべきだったのではないか」。戸田さんのほかに防寒対策をする人はほとんど見られなかったという。今回のコースは岩場も途中にあり、風雨が加われば難コースになる。雨でぬれた岩場で足を滑らせたり、風で波立つ小川の前で立ちすくんだりする人もいた。16日、朝の風雨を見て、出発を取りやめるべきだったと今も思う。「ツアーだとこちらから中止を言いにくい。ガイドが参加者全体のことを考えて判断を下さないと。リーダーシップをとれる人がいなかった」と悔しがった。(渡辺周)7/20 04:00 朝日 一言=一時間半も何もせずに立ち止まっていたら体が冷えてしまう。奇声を発し始めた女性と言うのはこのあと低体温症で動けなくなったんじゃないの? こんな状況になってしまったらどんどん悪くなるばかりだろう。歩き始めてからの判断は遅いし、悪すぎる。危険に適切に対応するには早め早めの判断が必要だし、先を見通す力が必要だ。
複数客、出発前にガイドに「中止を」 大雪山系遭難
北海道大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で8人が死亡した遭難事故で、パーティーが前泊した避難小屋を出発する前に、悪天候や沢の増水、疲労の蓄積などを不安に思った複数のツアー客が「中止した方がいい」とガイドに申し出ていたことが北海道警への取材でわかった。出発後も「引き返した方がいい」「救助要請を」と訴えたツアー客がいたという。道警は、ツアー客が悪天候で身の危険を感じつつ、ガイドの判断を信じた可能性があるとみており、関係者からさらに事情を聴く方針だ。ツアーは旅行会社アミューズトラベル(東京)の主催で、14日に旭岳温泉を出発し、2泊3日で四十数キロを縦走するコース。予備日は設けられていなかった。遭難時は55〜69歳の15人と男性ガイド3人という構成だった。捜査幹部によると、一行はひんぱんに風雨に打たれ、15日はヒサゴ沼避難小屋で眠ったが、16日早朝はかなり疲れが残っている客がいたという。さらに小屋の外は激しい風雨で、当初午前5時ごろの出発を約30分間遅らせた。この際、複数のツアー客が、ガイドに「今日は中止した方がいいのではないか」と申し出たという。しかし、ガイドは午後から天候は回復すると判断し、午前5時30分ごろ出発したという。出発してしばらくすると、「体調が非常に悪い」と訴える人が出て、それを聞いた他の客が「引き返した方がいいのではないか」「救助を求めた方がいいのではないか」とガイドに訴えたというが、ツアーは続行。昼前には山頂に近い北沼付近で女性1人が低体温症で歩行困難となり、さらに男女4人も進めなくなった。この北沼付近には客5人、ガイド2人の計7人が野営することになったが、このうち4人が凍死した。アミューズトラベルの松下政市社長は19日記者会見し、16日の出発時のツアー客の体調について、ガイドから聞き取った話として「みなさん問題ない。歩き始めるときに、体力的に今日は疲れたから歩けないとか、そういう方はいませんでした」と話した。7/20 04:00 朝日 一言=こんなに大勢では客はガイドの言うことを聞くしかないという状況が生まれやすい。もちろん客は取り残されたくないし、ガイドは取り残したくないからお互いに無理をしやすい。しかし、ひとたび事故が起きるとガイド1人で大勢を見なければならないという状況が生じる。だからツアー登山ではひとたび事故が起きればパーティーが破綻しやすいという性格がある。一般的に寄せ集めのメンバーで個人差が大きければ何か起こった場合は対応が難しくなる。こんな状況下で低体温症になったら、ガイドはその人に付きっ切りにならざるをえない。そうなれば悪循環が始まりやすい。いったん低体温症になった者を山中で回復させるのは難しいから、今回の遭難は自然な展開だ。こんな状況下では当然ガイド1人が客1人を見るのがせい一杯だろうからバタバタ斃れていくのはもちろん自然な成り行きだろう。
700hPa、800hPa高層天気図
事故原因を探るにはいろんな方向からアプローチした方がよい。
ツアー会社社長 『防寒着は本人の責任』 大雪山系遭難
北海道大雪山系トムラウシ山(二、一四一メートル)で愛知県内の客やガイド八人の犠牲者を出したツアーを主催したアミューズトラベル(東京)の松下政市社長(50)は十九日、北海道新得町民体育館で会見し、「寒さが想像を超えていた」と予想外の天候が遭難の原因との認識を示した上で、防寒対策が事実上、本人任せになっていたことを明らかにした。八人の死因は全員凍死。助かった参加者によると、防寒着が十分でない人もいた。同社は事前に送った書類で防寒着のフリースかインナーダウンの持参を指示していたが、現場では通常、口頭で確認するだけで、チェックはしていないという。松下社長は「基本的に本人が責任を持って持参することになっている」と説明。「夏山の危険は滑落や沢の増水と考えていた」と述べ、夏山の寒さを危険として十分に認識していなかったことを示唆した。日程に予備日がなかったことには「冬場の本格的な登山以外は設けていない」と説明。予定日に下山できなければ、航空便をキャンセルして翌日の便を取って対応しているとして、日程をこなすためにツアーを決行し、遭難につながったとの見方を否定した。同社長は「亡くなった方のご冥福を祈るとともに、大切な家族を亡くしたご家族に心からおわびします」とあらためて謝罪した。
◇
遭難死した登山ツアー客八人の遺体は十九日午前、安置されていた北海道新得町の町民体育館から遺族とともに新千歳空港から自宅へ向かった。体育館では、松下政市社長ら関係者が手を合わせて見送った。死亡した人のうち、愛知県弥富市の竹内多美子さん(69)の遺体は午後七時三十分ごろ、夫の豊さん(70)らと一緒に自宅に戻ってきた。豊さんは「安らかな顔で、まだ実感がわかない。『起きてちょう』という感じ」と静かに話した。名古屋市緑区の川角夏江さん(68)のひつぎは息子二人に抱きかかえられながら、自宅に到着した。帰宅を待った兄(73)は「本人が楽しみにしていた旅行で、このようなことがあって本当に残念。二度とないよう対策を取ってほしい」と話した。 7/20 東京 一言=基本的なことだけど、実は防寒着は持っていてもそれを着る時間を作ってあげないとなかなか着られない。歩き出せば暑くなるということがあるから普通は薄着で歩き始める。状況を把握し、先を予想し、ちゃんと時間をとって防寒着を着る支持を出し、また、そのための時間を作ったのだろうか。人間というのは強いけど脆い。ある線を超えると一気に崩壊するのが普通だ。この登山で死者がたくさん出たのはその一線をはるかに越えてしまったからだ。この登山はツアー登山の問題がたくさん噴出した山行に思える。その問題は今に始まったことではないが、ツアー登山本位の考え方がこの事故を助長したのかもしれない。防寒着はチェックしてあげないと。それかガイドが貸せる状況をつくるか。忘れてきても登山が始まる前に分かればまだなんとかなるかもしれなかったし、ガイドはそれ相応の対応をすることができる。
北海道・大雪山系遭難:「悪天候で無謀」 生存者、ガイドに怒り
大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で旅行会社「アミューズトラベル」(東京都千代田区)が企画した登山ツアー客ら8人が遭難死した事故で、ツアーに参加し、自力で下山した愛知県清須市土器野、戸田新介さん(65)が19日、毎日新聞の取材に応じ、遭難時の様子について証言した。「悪天候の中の出発は『見切り発車』で、無謀だった」とガイドの対応に怒りをにじませた。【福島祥】
遭難当日の16日朝は雨が降っていた。出発予定(午前5時)直前にガイドがツアー客に言った。「5時に予定していたが、あと30分様子を見ます」。出発することは既に決まっていた。ガイドら3人と客15人が歩みを進める中、天候は悪化。北沼手前で小川を渡り振り返ると、流れが激しさを増し、波を打った。戸田さんは「帰れんな」と直感したという。午前10時半ごろ、北沼の辺りで女性1人が動けなくなった。女性にガイドが付き添った。他の客は別のガイドの指示で、約1時間半、近くの吹きさらしの場所にしゃがんで待機したという。じっととどまる時間が体力を奪っていったという。戸田さんはガイドに声を荒らげた。「何をやっとんだ。これは遭難だ。救援を依頼しろ。指示を出せ。じっとしとってはいかん」。ガイドは「先に行ける人は出発します」と先を目指した。
ところが出発後すぐに別の客も動けなくなった。その後、ガイド1人と客10人が一団となって下山することになったが、出発後にばらばらになった。途中、戸田さんは別の客と協力し、歩けなくなった女性客を支えながら歩いた。「女性は転んだら自分では起きあがれない状態になっていた」という。女性を何度も抱き起こしながら声を掛けた。「こんなところで死にたくないだろ」。女性はうなずいていたが、生還することはできなかった。
戸田さんは約35年の登山歴。戸田さんは「自分が見たことを知らせる義務がある」と取材に応じた。「遭難当日、私たちは『こういう危険があるけど行きますか?』と、判断する機会を与えられなかったのはおかしいと思う。なぜこんなことが起きたのか、何があったのかを知りたい」と語気を強めた。 一言=この一文を読んだら立て続けに事故が起きたのは当然だと思う。だって秋口や冬に一時間半も行動せずに休んでいたら確実に寒くなるだろう。そんな経験は誰もがしていることと思う。ところがこのときは風が舞い、冷たい雨が降っていたのだ。この間に体温はどんどん奪われていくのは確実だ。これはクライアントに遭難してくださいと言っているようなものだ。
◇「寒さは想像超えていた」――ツアー社長
アミューズトラベルの松下政市社長は19日、北海道新得町の町民体育館で記者会見し、「この時期にこれほどの寒さが来るというのは、想像を超えていた。そこまで危ない山だという認識はなかった」と述べ、夏のトムラウシ山登山の危険性を十分把握していなかったことを認めた。【金子淳】 一言=これについては別の項で書いたが、雨の山を登ったことがある人ならこんな状況下の危険性はすぐに分かることだ。
◇「午後晴れ、大丈夫」 ガイド、出発前に話す
ツアーの男性ガイドが16日早朝の出発直前、「午後から晴れるから大丈夫」と話していたことが分かった。ガイドと同じ避難小屋にいた別のパーティーの男性が証言した。北海道警は、暴風雨にもかかわらず、ガイドが判断を誤ってツアーを継続した可能性があるとみてガイドから事情を聴いている。ツアーの18人と15日夜にトムラウシ山北側の避難小屋で一緒に泊まった静岡県の男性(66)によると、16日午前3時半ごろに起きたところ、外は雨が降り、風も強く、出発を見合わせていたという。その後、ツアーのガイドが「午後から晴れるから大丈夫だ」と話し、同日午前5時半ごろに18人が出発。間もなく男性らも小屋を出た。しかし、風雨はますます強くなり、岩にしがみつきながら進むような状況だったという。
釧路地方気象台によると、16日午前5時の十勝地方の天気予報は「曇り、昼過ぎから晴れ」。ガイドは「午後から晴れる」と判断したとみられる。しかし、十勝地方は同日昼にかけて風が強くなり、同日午前10時半ごろには、ツアーの女性客1人が寒さによる低体温症で動けなくなった。午前11時25分には強風注意報が出た。北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長によると、ガイドは登山の際、天気予報をラジオなどで確認し、山の気候が平地より少し遅れて変わることを念頭に自ら天候を予測するという。川越会長も16日朝、大雪山系の旭岳を登山する予定だったが、「雲の動きを見て天気の回復は遅れる」と判断し、登山を取りやめていた。【和田浩幸、水戸健一】 一言=天気が回復することを前提に行動しているけど、現場はひどい嵐だったのだ。半日後の予想より現状の把握の方がはるかに大切なことは言うまでもないだろう。
◇遺族の元へ無言の帰宅
5人の遺体を乗せた旅客機が19日午後5時すぎ、新千歳空港から愛知県常滑市の中部国際空港に到着した。遺族たちは、亡きがらに付き添って自宅などに向かった。このうち、川角夏江さん(68)の遺体は午後8時半すぎ、親類らが集まった名古屋市緑区の自宅に着き、雨が降る中、家族の手で家の中に運ばれた。川角さんの兄の大海豊さん(73)によると、川角さんは定年退職後、登山のほかにもフラメンコ、マジック、オカリナなど多くの趣味を楽しんでいた。数年前に、がんを患い肺の一部を切除したが、リハビリを兼ねて1人で岐阜市の金華山などに登ってトレーニングを続けた。大海さんは「アミューズトラベル」に「安全対策をおろそかにしたのでは。二度と同じような事故が起きないようしっかり調査して」と訴えた。川角さんは登山前、フラメンコのドレスを注文していた。自宅に安置されたひつぎに、その衣装が供えられるという。【飯田和樹】7/20 毎日中部朝刊 一言=一時間半も吹きさらしの嵐の中でしゃがんでいたらそりゃ動けなくなる人が続出するわ。しても不思議ではない。こうした状況からは何もかもが大量遭難に向かって突き進んでる感じだ。ラジオのニュースで第一報を聞いたときそうなるだろうなと思ったけど、こんな切迫した状況だったんだな。
大雪山系遭難:「午後から晴れ大丈夫」 ガイド、出発直前話す
大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で旅行会社「アミューズトラベル」(東京都千代田区)が企画した登山ツアー客ら8人が遭難死した事故で、ツアーの男性ガイドが16日早朝の出発直前、「午後から晴れるから大丈夫」と話していたことが分かった。ガイドと同じ避難小屋にいた別のパーティーの男性が証言した。道警は、暴風雨にもかかわらず、ガイドが判断を誤ってツアーを継続した可能性があるとみてガイドから事情を聴いている。ツアー客18人と15日夜にトムラウシ山北側の避難小屋で一緒に泊まった静岡県の男性(66)によると、16日午前3時半ごろに起きると、外は雨が降り、風も強く、出発を見合わせていたという。その後、ツアーのガイドが「午後から晴れるから大丈夫だ」と話し、同日午前5時半ごろに18人が出発。間もなく男性らも小屋を出た。しかし、風雨はますます強くなり、岩にしがみつきながら進むような状況だったという。
釧路地方気象台によると、16日午前5時の十勝地方の天気予報は「曇り、昼過ぎから晴れ」。ガイドはこの天気予報で「午後から晴れる」と判断したとみられる。しかし、十勝地方は同日昼にかけて風が強くなり、同日午前10時半ごろには、ツアーの女性客1人が寒さによる低体温症で動けなくなった。午前11時25分には強風注意報が出た。北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長によると、ガイドは登山の際、天気予報をラジオなどで確認し、山の気候が平地より少し遅れて変わることを念頭に自ら天候を予測するという。川越会長も16日朝、トムラウシ山から約20キロ離れた大雪山系の旭岳を登山する予定だったが、「天気予報が午後から回復だったものの、雲の動きを見て天気の回復は遅れる」と判断し、登山を取りやめていた。【和田浩幸、水戸健一】 一言=天気図から見ると午後は寒気が入って悪そう。
◇「寒さ、想像超えた」ツアー会社社長、危険性把握せず
アミューズトラベルの松下政市社長は19日、十勝管内新得町の町民体育館で記者会見し、「この時期にこれほどの寒さが来るというのは、想像を超えていた。そこまで危ない山だという認識はなかった」と述べ、夏のトムラウシ山登山の危険性を十分把握していなかったことを認めた。遭難当時、トムラウシ山頂付近の日中の気温は8〜10度、風速は20〜25メートルと台風並みで、体感気温は氷点下だった可能性がある。しかし、松下社長は「私たちが思う危険というのは滑落する、もしくは増水するようなところ」と述べ、悪天候による気温の低下は念頭になかったという。ただ、パーティーの防寒対策が不十分だった可能性があることについては、「装備リストに必要なものを書いてある。防寒具は通常、参加者が基本的に責任を持って持参していただく」と強調し、会社の責任を否定した。また、松下社長は、18日に、事故後初めて札幌市のガイド(32)から遭難の様子を聞いたことを明らかにし、「ツアー客の体調は(16日の避難小屋からの)出発時は問題なかった。歩き始めたときも『疲れてもう歩けない』という人はいなかった」と述べた。ツアー客が下山途中にちりぢりになったことについて、ガイドは「覚えていません」と答えたという。
◇ ◇ ◇
死亡したツアー登山客8人の遺体は19日朝、遺体安置所の十勝管内新得町の町民体育館から自宅に向かった。遺族は疲れきった様子で無言のまま。松下社長や道警の捜査員らは雨の中、じっと手を合わせて遺体を乗せた車を見送った。遺族は同日午後、新千歳空港からそれぞれ帰路についた。【金子淳、田中裕之】7/20 01:57毎日
◇「見切り発車、無謀」参加者、ガイドの対応に怒り 「判断する機会与えられなかった」
ツアーに参加し、自力で下山した愛知県清須市土器野、戸田新介さん(65)が19日、毎日新聞の取材に応じ、遭難時の様子について証言した。「悪天候の中の出発は『見切り発車』で、無謀だった」とガイドの対応に怒りをにじませた。遭難当日の16日朝は雨が降っていた。出発予定(午前5時)直前にガイドがツアー客に言った。「5時に予定していたが、あと30分様子を見ます」。出発することは既に決まっていた。ガイドら3人と客15人が歩みを進める中、天候は悪化。北沼手前で小川を渡り振り返ると、流れが激しさを増し、波を打った。戸田さんは「帰れんな」と直感したという。午前10時半ごろ、北沼の辺りで女性1人が動けなくなった。女性にガイドが付き添った。他の客は別のガイドの指示で、約1時間半、近くの吹きさらしの場所にしゃがんで待機したという。じっととどまる時間が体力を奪っていったという。戸田さんはガイドに声を荒らげた。「何をやっとんだ。これは遭難だ。救援を依頼しろ。指示を出せ。じっとしとってはいかん」。ガイドは「先に行ける人は出発します」と先を目指した。ところが出発後すぐに別の客も動けなくなった。その後、ガイド1人と客10人が一団となって下山することになったが、出発後にばらばらになった。途中、戸田さんは別の客と協力し、歩けなくなった女性客を支えながら歩いた。「女性は転んだら自分では起きあがれない状態になっていた」という。女性を何度も抱き起こしながら声を掛けた。「こんなところで死にたくないだろ」。女性はうなずいていたが、生還することはできなかった。戸田さんは約35年の登山歴。戸田さんは「自分が見たことを知らせる義務がある」と取材に応じた。「遭難当日、私たちは『こういう危険があるけど行きますか?』と、判断する機会を与えられなかったのはおかしいと思う。なぜこんなことが起きたのか、何があったのかを知りたい」と語気を強めた。【福島祥】7/20 +毎日北海道朝刊
遭難 強い風の中で待たされた
北海道・大雪山系のトムラウシ山で8人が死亡した遭難事故で、複数の登山者が警察の事情聴取に対し「ガイドから指示がないまま強い風の中で1時間ほど待たされて体力を消耗した」などと話していることがわかりました。警察はガイドからも話を聴くなど、遭難に至った状況をさらに調べることにしています。今回の遭難事故では、東京の旅行会社「アミューズトラベル」の登山ツアーに参加したガイド3人を含む18人のうち、59歳から69歳の8人が凍死しました。このツアーに参加して自力で下山した広島市の亀田通行さんは当時の状況について、16日の早朝に全員が避難小屋を出発してから数時間たったあと、吹きさらしの中で待たされたと証言しました。この中で、亀田さんは「ガイドからの指示がないので、少なくとも小1時間ぐらい耐えていた。そこで震えが始まり、体温低下が始まった」と話しています。また、ほかの複数の登山者も警察の事情聴取に対し「1時間ぐらい待たされ、体力を消耗した。いっしょにいたガイドが何も言わなかったため、みずから下山を促した」と説明しているということです。警察は、当時現場で何があったのか、ガイドからも話を聴くなど遭難に至った詳しい状況をさらに調べることにしています。7/20NHK 一言=ただでさえ産熱しにくい年代だからツエルトを被るなどの防寒対策なしに立ち止まっていれば体は冷えていくばかりで、冷え切ってしまえば危険域に入る。このときって何してたんだ? 天候待ちなんかじゃないだろう? 天候待ちなの? どうだったっけ?
大雨と洪水および雷に関する北海道地方気象情報 第5号
平成21年7月15日16時10分 札幌管区気象台発表
(見出し)
大雨の峠はこえましたが、これまでに降った雨により地盤が緩んでいます。太平洋側西部では15日夕方まで土砂災害に警戒して下さい。日本海側南部では16日明け方まで土砂災害や河川の増水に注意して下さい。
(本文)
<防災事項>
警戒を要する地域、災害、期間
太平洋側西部
土砂災害 引き続き15日夕方まで
注意を要する地域、災害、期間
太平洋側西部
低い土地の浸水 引き続き15日夕方まで
落雷、突風 引き続き15日夜のはじめ頃まで
河川の増水 引き続き16日明け方まで
日本海側南部
土砂災害、河川の増水 引き続き16日明け方まで
<雨の実況>
降り始め(14日18時)から15日15時までの雨量
アメダスによる速報値
胆振地方 登別市札内町 111.5ミリ
登別市カルルス 104.5ミリ
白老町高砂町 80.5ミリ
白老町森野 80.0ミリ
日高地方 浦河町中杵臼 101.0ミリ
渡島地方 福島町千軒 82.5ミリ
長万部 79.0ミリ
檜山地方 八雲町熊石 69.0ミリ
北海道による観測
渡島地方 八雲町鉛川 150.0ミリ
<雨の予想>
太平洋側西部
15日夕方まで 1時間雨量の最大値 30ミリ
<概況>
発達した低気圧が15日夜遅くには、宗谷海峡付近に進む見込みです。寒冷前線がこれから15日夜のはじめ頃にかけ、北海道を通過するでしょう。今後、地元気象台や測候所の発表する気象情報に留意して下さい。 北海道地方気象情報は、これで終了します。
大雨と強風および高波に関する十勝地方気象情報 第6号
平成21年7月16日05時25分 帯広測候所発表
(見出し)
十勝中部・南部の海上では、引き続き16日朝まで西の風が強く、海は波が高いでしょう。突風、高波に注意して下さい。
(本文)
この情報は十勝中部・南部が対象です。十勝中部・南部の「大雨注意報」は解除しました。
<防災事項>
注意を要する地域 災害 期間
十勝中部・南部 突風、高波 引き続き16日朝まで
十勝地方 濃い霧による交通障害 引き続き16日朝まで
<風と波の予想>
十勝中部・南部 西の風 最大風速海上15メートル
十勝中部・南部 波高 3メートル
<雨の実況>(アメダスによる速報値)
降り始め(15日1時)から16日5時までの雨量
広尾 46.0ミリ
上士幌町東4線 43.0ミリ
鹿追町緑町 40.5ミリ
音更町駒場 39.5ミリ
本別町押帯 37.5ミリ
帯広市東4条 29.0ミリ
<概況>
宗谷海峡付近に低気圧があり東へ移動しており、16日夜には千島近海に達する見込みです。「十勝地方気象情報」は、これで終了します
一言=悪天後の山行だから晴れるという期待があったのだろう。そのあとまた悪天が予想されるから余計無理をする結果になったのかもしれない。
大雨に関する上川・留萌地方気象情報 第2号
平成21年7月16日05時20分 旭川地方気象台発表
(見出し)
上川南部と留萌中部・南部の大雨注意報を解除しました。留萌地方では、引き続き16日朝まで西の風が海上で強く、海は波が高いでしょう。突風や高波に注意して下さい。
(本文)
この情報は、上川南部と留萌地方が対象です。
<防災事項>
注意を要する地域、災害、期間
留萌地方 突風、高波 引き続き16日朝まで
<雨の実況>
(アメダスによる速報値)
降り始め(15日0時)から16日5時までの雨量
占冠(上川南部) 46.0ミリ
南富良野町金山(上川南部) 43.5ミリ
初山別(留萌中部) 33.5ミリ
<風の予想>
西の風、最大風速は留萌地方 海上15メートル 陸上13メートル
<波の予想>
留萌地方 波の高さ 3メートル
<概況>
宗谷海峡付近に低気圧があって東に進んでいます。
上川・留萌地方気象情報は、これで終了します。
大雨と強風および高波に関する石狩・空知・後志地方気象情報 第8号
平成21年7月16日00時31分 札幌管区気象台発表
(見出し)
石狩中部・南部、空知地方、後志西部では、引き続き16日明け方まで土砂災害に注意して下さい。また、石狩・後志地方の海上では、引き続き16日朝まで突風や高波に注意して下さい。
(本文)
この情報は、石狩・空知地方、後志北部・西部が対象です。
<防災事項>
注意を要する地域、災害、期間
石狩中部、中空知 土砂災害
これから16日明け方まで
石狩南部、北・南空知、後志西部 土砂災害
引き続き16日明け方まで
石狩北部、後志北部・西部の海上 突風や高波
引き続き16日朝まで
<雨の実況>(アメダスによる速報値)
降り始め(14日21時)から16日00時までの総雨量
後志西部 寿都 63.5ミリ
後志北部 積丹町美国 55.5ミリ
後志西部 神恵内 54.5ミリ
南空知 夕張市鹿島 48.0ミリ
<風の予想>
最大風速
石狩北部、後志北部・西部の海上 南西のち西の風 15メートル
<波の予想>
石狩北部、後志北部・西部 波の高さ 3メートル
<概況>
日本海北部にある低気圧が、16日朝にかけてオホーツク海に進む見込みです。
この情報は、「大雨と洪水に関する石狩・空知・後志地方気象情報」を引き継ぐものです。
次の石狩・空知・後志地方気象情報は、16日05時30分頃に発表する予定です。
大雨と雷および強風に関する宗谷地方気象情報 第5号
平成21年7月16日05時52分 稚内地方気象台発表
(見出し)
宗谷北部と利尻・礼文の大雨、雷注意報を解除しました。宗谷地方では、これから16日昼前まで西の風が海上で強いでしょう。突風、宗谷北部と利尻・礼文では、高波にも注意して下さい。
(本文)
この情報は、宗谷地方全域が対象です。
<防災事項>
注意を要する地域、災害、期間
宗谷地方 突風 これから16日昼前まで
宗谷北部、利尻・礼文 高波 引き続き16日昼前まで
宗谷地方 濃い霧による交通障害 引き続き17日朝まで
<風の予想>
西の風
宗谷地方 最大風速 海上15メートル
陸上13メートル
<波の予想>
宗谷北部、利尻・礼文 波の高さ 3メートル
<見通しの予想>
宗谷地方 陸上200メートル以下
海上500メートル以下
<雨の実況>
(アメダスによる速報値)
降り始め(15日03時)から16日05時までの総雨量
礼文町香深 42.5ミリ
<概況>
宗谷海峡付近に低気圧があり東に移動しています。16日夜には、千島近海に達する見込みです。
これで「宗谷地方気象情報」を終了します。
一言=気象情報からは西風のことしか分からないけど、天気図を見ていくと北の高気圧から冷たい風が吹き込んだろうと分かる。僕たちがいちばん注目しなければならないのはこの点なのだろう。その動向はここに掲げた文章の中にも現れていた。