米国 黒人教授を「誤認」逮捕 自宅に裏口から入っただけ
【ニューヨーク小倉孝保】米国屈指の名門ハーバード大(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の有名黒人教授が、裏口から自宅に入ったところ、不法侵入と疑われ逮捕された。すぐに釈放されたが、黒人に対する偏見が逮捕の背景にあるとする教授の怒りは収まらない。ケンブリッジ市は21日、逮捕について遺憾の意を表明した。逮捕されたのはヘンリー・ルイス・ゲーツ教授(58)で、同大の「アフリカ人及びアフリカ系米国人研究所」所長を務めている。米国黒人研究の第一人者で、かつて米タイム誌の「最も影響力のある米国人25人」に選ばれたこともある。ゲーツ教授によると、教授は16日昼、北京から帰国し、空港から車で自宅に到着。正面玄関から入ろうとしたところ、ドアが壊れていたため裏口から入った。中から正面玄関を開け、運転手と2人で荷物を運んでいたところ、警官が入ってきたという。警察によると、近所から「黒人2人が無理やり建物に入ろうとしている」と通報があったという。警官が身分証明書の提示を求め、教授は大学の証明書と運転免許証を示した。教授によると、何度もここが自宅であることを説明し、警官に名前などを聞いたが拒否され、突然、手錠をされ逮捕されたという。一方、警察は、身分証明書の提示を求めたところ、教授が「人種差別だ」などと叫び、警官に怒鳴ったため身柄を拘束したと説明している。これについて、教授は「落ち着いていた」と主張している。ゲーツ教授は結局、4時間後に釈放されたが、「治安当局が黒人にこんな扱いをしたことに驚き、今でも憤慨している。多くの黒人が身柄を拘束されているが、私もその一人になった」として、逮捕は黒人に対する差別だと指摘している。有名黒人教授だけに、米メディアはここ数日、こぞって警察に偏見があったのかといった視点で報道している。オバマ米大統領は22日の記者会見で、ゲーツ教授の逮捕と黒人差別の関連について問われ、事実を正確に把握していないこととゲーツ教授が友人であることを断ったうえで、「(そのような状況にあったら)誰でも、かなり怒るだろう。自宅だという証拠を見せているのに逮捕した警察の行為はばかげている」とコメントした。 7/23 毎日
米大統領が仲裁役、誤認逮捕事件で黒人教授と警察をホワイトハウスに招待へ
【ワシントン=山本秀也】オバマ米大統領は24日、名門ハーバード大学(マサチューセッツ州)の黒人教授が自宅で空き巣狙いと間違われ、地元警察に逮捕された問題について、教授と警察官の双方を近くホワイトハウスに招き、和解を図る考えを表明した。警察の逮捕を「愚か」と批判した大統領自身の発言についても、「警察側を傷つける意図はなかった」と釈明し、発言を事実上撤回した。この騒ぎは、米国の黒人研究で権威とされる著名教授が誤認逮捕され、黒人差別に敏感なオバマ大統領が教授擁護の発言で介入したのに対し、警察側が激しく反発したことで、米国内で政治問題化する兆しが出ていた。オバマ大統領は同日、逮捕された黒人問題の権威、ゲイツ教授と、教授を逮捕したケンブリッジ市警本部のクラウリー巡査部長に電話をかけ、事態の収拾に理解を求めた。また、自らホワイトハウスの記者室に姿を現し、同巡査部長を「すばらしい警察官だ」と称えた上、22日の記者会見での警察批判について釈明。「声高な批判に替わって、関係者が事態の収拾に動くよう望みたい」と訴えた。ゲイツ教授は今月16日、故障したドアをこじ開けて自宅に入ったところ、空き巣狙いと誤認した目撃者の通報でパトカーが出動。教授は身分証明などを示して釈明したが、「私が黒人だからか」などと声を荒げたため、公共の秩序を乱したとして逮捕された。教授は不起訴処分となり、市警本部も21日になって教授に陳謝していた。しかし、オバマ大統領が警察批判に出たことで、巡査部長本人が謝罪を拒んだほか、警察関係者も「大統領発言は不適切だ」として反発していた。産経