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河口慧海・チベットへの道
Kawaguchi Ekai ・ A path to Tibet 3
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どこから手をつけていいものやら見当がつかなかったが、まずは基本文献を読み返し、この前提が根拠あることなのかどうか調べることから始めた。慧海が越境した峠を特定する手がかりは「チベット旅行記」の中に必ずあるはずである――。そう固く信じ、読書百篇意自ずから通ずの喩え通り、「チベット旅行記(講談社学術文庫版 高山龍三校訂)」の第1巻と第2巻を、一度きりというのではなく、二度でも三度でも四度でも、とにかく自分自身が納得行くまで何度でも読み返すことにした。口述筆記とはいえここには慧海の真意が述べられているはずなのだから。
河口慧海の行動を紐解くには、西ネパールと西チベットの国境付近の正確な地図が必要になる。しかし、この付近の地図は河口慧海のチベット潜入から百年を経た今でもなかなか手に入れることができない。これを読み解くのに必要な地図は、手製だが、衛星写真から起こしたロシアンマップなどの地図を基にした資料と、度重なる現地調査の結果を盛り込み、製作者の大西保自ら現地調査した情報を加え、改定に改定を重ねて作成した大西保手製の地図、とはいっても縮尺はかなり正確なもので、日本山岳会が発行している英語版の会報「JAC News」の折込付録として公開された「西ネパール・西チベット国境周辺地図」が役に立つ。
「河口慧海を考える」という活き活きとした原稿を書き上げるのに使った資料は、この原稿が載っている「チャンタンの蒼い空」の巻末やこのホームページの「河口慧海・チベットへの道4」にさまざまな資料を挙げてはいるが、実際に僕が河口慧海の行動を解析するために使ったのはここにあげた三点、河口慧海著「チベット旅行記」講談社学術文庫版の第一巻と第二巻の文庫本二冊と日本山岳会英語版会報JAC Newsの折込付録地図、それに自らが行った過去の国内外の登山経験だけである。読者に想像がつくかどうかわからないが、アマダブラムのベースキャンプから、パンボチェ、タンボチェ、シャンボチェを経てターメという村まで四千メートル強の高度に拓かれた道を歩いていくのだが、酒を飲みながらとはいえ3時間で歩いたことがある。実際、この距離は普通に歩いたらこの倍程の時間がかかるだろう。もちろんこれは両足の指を切断してから後の話である。実のところ、都会ではあまり歩けないのだが、山に入ればけっこうなスピードで歩くことができる。なにやら現金なものだが、慧海の足跡解明にはそんなつまらない些細な経験まで総動員した。
祭りに参加するために民族衣装で着飾ったチベットの三人娘
絵=橋尾歌子また、河口慧海がどんな行動をしたのか書き上げるためには、河口慧海がどこの峠を越えたのかという先達の主張を調べることも重要だったので、これまでに唱えられてきたさまざまな越境峠説を調査しなければならなかった。この調査については、静岡山岳会の桑畑茂が作成したホームページに収められている河口慧海の「越境峠説」一覧のページが参考になる。僕自身原稿を書く途中でこれまでの越境峠説を振り返る必要を感じたとき、これまでの動向が最もよくまとめられた資料としてこのホームページを探し当てたのだ。このホームページを開くと、誰がいつごろからどのように考えはじめたのか、どうしてそう思ったのかがよくわかる。
一方、河口慧海が越えたと思われる峠近辺の地形や状況を示す画像については、今回の登山隊隊長でもあり、長年行動を共にしている大西保が作成した大阪山の会のホームページに掲載されている数々の写真が参考になる。「チベット旅行記」に出てくる地名の全体的な位置関係については、大西保手製の前記日本山岳会英語版会報JAC Newsの折込付録地図のほか、日記発見を受けて掲載された「山と渓谷2005年3月号」の記事の中に収められている衛星写真の画像も、記入された位置や説明書きにいくらか間違いがあるものの、山と峠と村の位置関係を把握するのに参考になる。衛星写真はもっとはっきりしたものが欲しければもちろん自分で入手することもできる。
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