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• 海外の感染症　かからぬよう十分に注意を（8月3日付・読売社説）
  デング熱やチクングニヤ熱といった耳慣れない名前の感染症が、海外で広がっている。夏には海外渡航が増える。鳥インフルエンザは終息せず、肝炎やマラリアも減らない。十分に注意したい。デング熱、チクングニヤ熱はともに、蚊が媒介するウイルスが原因だ。どちらも高熱や激しい関節痛が起きる。ただ、デング熱の場合、口などから出血して死亡する例も少なくない。東南アジアを中心に近年、感染が広がっている。デング熱の場合は今年、マレーシアで1万5000人以上の感染が確認され、数十人が死んだ。日本でも帰国者に感染例が増え、昨年は100人を超えた。チクングニヤ熱はタイで１万人以上の患者が報告されている。日本でも、インドからの帰国者らに感染が見つかっている。どちらもワクチンはない。虫よけスプレーや蚊取り線香などで自らの身を守るしかない。最近のものを含めて、各種の感染症にどう注意すべきか、厚生労働省が、今夏、空港検疫所でチラシを配布したり、ネットで情報提供したりしている。旅行する国・地域の状況にもよるが、身を守るための鉄則としては3点ある。まず食べ物、飲み物は原則、熱処理済みを選ぶ。飲み物に入れる氷も避ける。これで食中毒やウイルス性肝炎などの感染を防ぐ。次に、虫に刺されない。3番目は、東南アジアの市場などで、食用として売られている生きた動物に近づいたり、触ったりしない。鳥インフルエンザのような病原体を体内に有している恐れがあるためだ。ただ、万全の対策はない。帰国時、帰国後に、発熱など感染症が疑われる症状が出たら、検疫所に相談したり、医療機関を受診したりしよう。家族などへの感染を食い止める一歩になる。旅行会社、航空会社も、注意点を、ツアー参加者、乗客に積極的に呼びかけるべきだ。気がかりは、アフリカで散発しているエボラ出血熱のような、重い感染症の患者が帰国した時の対策だ。診断、治療には強力な病原体を扱う専用の施設が要るが、設置済みの施設は、住民の反対で使えない。先進国で日本だけ、手薄な状態が続いている。新型インフルエンザのように感染症が国境を越えて容易に拡大する時代だ。政府は、こうした対応も、急がねばならない。

• 豪雨の元凶　低い積乱雲
  ──梅雨の終わりの集中豪雨が、毎年のように西日本各地を襲っている。どうしてこの時期なのか？　なぜ起きるのか？　被害を防ぐ方法はあるのか？──
  7月21日午前、山口県の下関市、美祢市、防府市にまたがる南北の幅約30キロ、東西の長さ200キロ弱の空を、いくつもの積乱雲が細い帯状になってびっしりと覆った。雲から洗面器をひっくり返したような土砂降りの雨が落ちてきた。気象庁の地域気象観測システム「アメダス」の記録によると、このときの美祢市での降水量は1時間に90・5ミリ。防府市でも同じく72・5ミリが降った。防府市では22日までの24時間の雨量は275ミリに達し、30年ぶりに国内記録を塗り替えた。この豪雨により土石流や山崩れが起き、死者は14人を数えた。
  　この日、山陰沖から東海地方に伸びる梅雨前線に向かって、南西の洋上から暖かく湿った空気が大量に流れ込んでいた（69ページの地図参照）。いつもなら太平洋高気圧が勢力を増し、梅雨前線を北へ押し上げる時期なのだが、今年は高気圧が弱く、梅雨前線はいつまでも日本列島にのさばっている。高気圧の縁にそって梅雨前線に雨の材料となる水蒸気が多量に供給されると、いくつもの積乱雲が次々に生まれていく。
  ■地上200ｍに「底」
  「夏の夕立を起こすのも、梅雨末期の集中豪雨を起こすのも、どちらも積乱雲なんです」そう解説するのは、気象庁気象研究所予報研究部の加藤輝之主任研究官。集中豪雨のメカニズム解明とコンピューター計算による予報の研究の第一人者である。積乱雲といえば、夏空にもくもくわき上がる「入道雲」がおなじみだ。一方、低く垂れ込める空いっぱいの雲に隠れて見えないが、集中豪雨が発生している地域の上空にもじつは積乱雲がある（左のチャート参照）。積乱雲は、地上付近と上空の空気の温度差などにより、水分を含んだ空気が上空にどんどん押し上げられて発生する。上空の気温は低いから、どこかで水分は凝結し水滴となって下へ落ちる。雨だ。こうなると上昇気流は断たれ、積乱雲は衰えてしまう。「一つの積乱雲の寿命は1時間程度。そのうち雨が降るのは30分ぐらいなので、一つの積乱雲が降らせる雨の量は20〜30ミリ程度」と加藤さんは言う。ただ、積乱雲の発生は一つで終わるわけではない。積乱雲が発生しているところに、暖かい湿った空気が吹き込んでくると、水分が補給されることになり、風上側につぎつぎと新しい積乱雲が発生する状態になる。「雲が場所をずらして出来ていくのに応じて、雨の降る地域も移動します。1カ所で降るのは1時間もないでしょう。これが夏の夕立ですね」真夏の積乱雲は、地上2キロくらいの高いところにできるのが特徴だ。ところが、梅雨の時期にはちょっと様子が違う。東シナ海などの方向から吹き込んでくる空気の水分がより多いうえ、真夏に比べると気温が低いため、水分が凝固して雲が出来はじめる「底」の位置は地上200〜300メートルとずっと低い。夕立を引き起こす入道雲と同様に、この「低い積乱雲」も次々と発生するが、雲の底が地表に近いせいで、発生場所はほとんど動かず同じだ。水分も供給され続けるので、何時間も土砂降りの雨が降り続けることになる。
  ■洋上のデータが不足
  その典型例が、昨年7月末の石川県の集中豪雨だった。富山との県境にそびえる医王山では計140ミリも降ったのに、20キロ離れた金沢市ではわずか20ミリ。いかに「集中」しているかがわかるだろう。こうした集中豪雨の発生は、予想できないのか。いま、気象庁はスーパーコンピューターを駆使して天気予報をしている。日々や週間の予報では地球全体の空気の流れを計算するが、防災などのためにはより局地的な天気を調べなければならない。そこで、日本とその周辺を縦横5キロメートルの格子に区切り、そこでの大気の動きを計算、一日8回、15〜33時間後の天気がどうなっているかを予測している。加藤さんらは、この「メソ数値予報モデル」とよばれる方法で、2004年7月の梅雨末期に起こった新潟・福島豪雨を再現できるかどうか計算した。「5キロ格子を使ったコンピューター計算では、積乱雲の連続形成状況をうまく再現できません。試しに格子の刻み目を1・5キロにしてみたら、やっと再現できました」11年から気象庁は刻み目を2キロにする予定だから、理論上は集中豪雨をほぼ予想できることになる。しかし、問題はそれだけではない。南西の洋上から暖かくて非常に湿った空気が入ってくるのが集中豪雨発生の大きな要因だから、コンピューター計算で予測するためには南西の洋上の空気の水分、温度、動きに関するデータが必要だ。しかし、洋上ではこれらを十分に観測する地点がなく、データはほとんど入手できない。だから、計算する方法はあっても、正しい初期データがないので、計算のしようがないのが実情なのだ。となると、現実の対応としては、ハザードマップや土砂災害危険区域図を製作して普段から危険性を把握し、いざというときは、より緻密なリアルタイムの観測結果から判断して、地元に警報を出すしかない。
  ■集中豪雨は増加傾向
  気象庁はこの7月から、全国20カ所で行っている気象レーダー観測の頻度をこれまでの10分間隔から5分間隔に縮めた。これで積乱雲の発達経過をいち早くとらえていこうという試みだ。ただ、今回の集中豪雨では「有線放送が雨音に遮られ聞こえなかった」などという状況も生じており、どう警報を伝えていくかはまだまだ工夫の余地がある。集中豪雨は年々増える傾向にある。気象庁のアメダスの1976年から32年分の観測結果を分析したデータによると、1時間降水量が80ミリを超えたのは、76年から87年までは1000地点あたり年平均10・3回、88年から97年までは同11・1回だったのに、98年から07年までは同18・5回と増えている（上のグラフ参照）。ただ、集中豪雨の起こり方は年によるばらつきも大きく、04年、06年はいずれも23回と多かったのに対し、05年は9回と少なかった。来年、集中豪雨が今年より増えるか減るかは、さっぱりわからないといっていいだろう。集中豪雨が増えている原因は何か。加藤さんはこう言う。「地球温暖化がどのくらい影響しているか……わからないですねぇ。二酸化炭素の増加が温暖化にどう影響しているかも、よくわからないのです。海面水温が上がれば、蒸発で空気中の水分が増えるから、こういう例は増えるかもしれませんが、まだまだわからないことだらけなんです」編集部　内村直之（８月10日号） AERA

• ７月の雨量、１０地点で記録更新　日照最短も１１地点、天候不順
  気象庁は３日、西日本中心に記録的に梅雨が長引くなど不順だった７月の天候まとめを発表。北日本（北海道、東北）や豪雨災害に見舞われた中国地方の計10地点で月間降水量が観測史上最多。日照時間は北日本を中心に、11地点で過去最短記録を更新した。北日本と西日本（近畿―九州）の日本海側の日照時間は、統計を開始した1946年以降で最短、北日本の太平洋側の降水量は最多となることが確定した。気象庁によると、前線や低気圧の影響で７月19〜26日に中国・九州北部豪雨が発生し山口、福岡両県などで計29人が死亡（総務省消防庁まとめ）。北日本は気圧の谷の影響を受けやすく、低気圧が発達しながら頻繁に通過したため、北海道で梅雨がないにもかかわらず雨量が多かった。７月の降水量が最多となったのは、北海道の根室336・5ミリ（平年の334％）、広島県の呉594・0ミリ（同288％）、山口758・0ミリ（同253％）など。共同　北海道には梅雨がないという思い込みが大雪山系の遭難を引き起こした面もあるのだろうな。天気図を見ていれば悪天は予想できるが、その前に今年の天気はなんか変だなということに気づく。何を言っても命は帰らないが、この遭難をこの先の登山に生かすことはできる。事故は皆そうだ。生かせなければまた起こる。

• 「脳の容量、脳の幅でわかる法則」　愛媛大院生が発見
  脳の幅がわかれば脳の大きさもわかる――。愛媛大の大学院生が、そんな「法則」を発見した。鳥類で当てはまる数式を見いだしたが、哺乳（ほにゅう）類など他の動物も同様の法則になりそうだという。脳の大きさは、進化を知る上で重要な指標の一つで、化石しか残っていない絶滅種などの研究に役立つと期待されている。法則を発見したのは、修士課程２年の河部壮一郎さん(23)。飛ぶ鳥と飛ばない動物で脳に違いがあるかを調べるため、鳥類25種とワニ、シカの死骸（しがい）の頭部をコンピューター断層撮影し、大脳の最大幅と脳の容量に関連性があることに気づいた。鳥類の脳容量（立方センチメートル）は「0.328×脳の最大幅（センチメートル）の2.879乗」という数式になった。他の動物でも数字は変わるが、式の構造は同じになりそうという。東大総合研究博物館の遠藤秀紀教授（比較形態学）は「化石はバラバラで見つかると、奥行きや高さは測れない場合が多いが、脳の幅は調べやすい。役立つ発見だ」と評価。そのうえで「誰も見向きもしなかった鳥の死体も河部さんにとっては『宝もの』。数多くの死体を計測した地道な努力の成果だ」と話す。国立科学博物館の真鍋真研究主幹は、この法則で恐竜から鳥類への進化について明らかにできる可能性があると指摘する。「始祖鳥はこの法則に当てはまらず、脳の形が恐竜的と推測できる。そこから今の鳥類の脳になったのをたどる手がかりになるかもしれない」と話す。松尾一郎 8/3朝日

トピックス＆スクラップ目次
21＞22＞23＞24＞25＞26＞27＞28＞29＞30＞31＞32＞33＞34＞35＞36＞37＞38＞39＞40
＞41＞42＞43＞44＞45＞46＞47＞48＞49＞50＞51＞52＞53＞54＞55＞56＞57＞58＞59＞
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