Explorer Spirit アルパインクライマー・木本哲 アルパインガイド・木本哲 木本哲の世界 Satoshi Kimoto's World
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Kimoto Satoshi Alpine Climbing School
アラスカ三山速攻(山と渓谷)
アルパインスタイルでハンター北バットレス、マッキンリー南壁、フォーレイカー南壁の3ルートを登ろうと計画したのですが、寒気が強すぎてハンターの登攀は5ピッチあまりで敗退し、楽しみは後回しにすることにして、次はマッキンリー南壁を登ることにしました。アラスカ三山の登攀計画はパートナーのクレバス転落・剥離骨折が響き、結局マッキンリー南壁の登攀のみで終わってしまったのですが、それにしてもこのときの寒気は尋常ではなかったようです。ハンターの取付でも、マッキンリーの取付でも登攀スタート時の気温はマイナス30℃でした。カシンリッジ冬季初登攀の記録を読むと、そのときの方がはるかに高い気温なのでびっくりしました。今、登攀中の写真を見ても蒼氷や油氷の連続で、柔らかい氷雪の登攀という事前調査のイメージはまったくありません。条件が悪く困難な登攀でしたが、楽しい登攀であったことは間違いありません。
このとき覚えた言葉に「スピンドリフト」という言葉があります。それはチリ雪崩を指すのですが、壁の表面に厚く張り付いた雪が日差しで融けて発生するチリ雪崩は、正に雪崩と呼ぶにふさわしい大きさと破壊力を持ってクーロワールを登る僕たちに襲いかかってきました。敗退した一番の理由は実はこの雪崩の破壊力にあったのですが、あれは雪崩というのではなく、チリ雪崩と言うのだと言われてもなかなか納得することができませんでした。これと似た話に中国の流雪というのがあります。これも結局はチリ雪崩を指しています。でもハンターのチリ雪崩の破壊力は本当に抜群でした。
感慨なき登頂 上・下(山と渓谷)
映画「植村物語」の撮影の進行とともに行ったハッチャーパスやマッキンリー、エベレストでの撮影とマッキンリー、エベレスト両峰の登山の記録です。もうかれこれ20年も前の山行になります。当時は詳しく書くことが憚られた部分もあったのですが、文章を全面的に見直そうと思っています。この映画に関係した登山家のうち、すでに6人もの人間が他界しています。一面的に見るとどうということがなくても、長い目で見るとやはり山登りは危険なものだと思わずにはいられません。100枚ぐらい書いたのだけど60枚くらいに減らして掲載しています。この話もいつかもっと詳しく書かなければならないと思っています。三回に分けてもよかったねと言われましたが、しっかり三回分書きました。でも書いていないことがたくさんあるのでまた書かなくては。
信仰と伝説の山 戸隠岳西岳P3尾根(山と渓谷)
冬の戸隠は何度行っても面白いと思います。西岳のP1、P3、P4、P5などの各尾根、そして本院岳ダイレクト尾根――。どれも発達したキノコ雪と雪庇の処理が重要な厳しいルートです。けっこう大変ですが満足いく雪稜・雪壁ルートです。この号は表紙の写真も僕が撮ったものです。真っ白な雪に自分たちだけの踏み跡をつけ、それを振り返るとき、登高の充実感に満たされます。自分たちの力だけで登る――。冬山はそんな充足感が得られる登山です。
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