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富士山山頂剣ヶ峰付近から南アルプス南部赤石岳・荒川岳・悪沢岳の稜線を眺めると、やはりこの三山は山塊がでかいと認識せざるをえない。南アルプスはもともと海だったところが隆起してできたものである。今もなお年にいくらか高さを増している。マグマの力を借りて高さを増した北アルプスや中央アルプスとは異なったつくりになっている。この山が歳を経て大地が削られれば、北アルプス以上に険しい山になるのだろう。南アルプスは何度行っても一つ一つの山がでかいなと思うが、この山塊は北岳・間ノ岳・農鳥岳と同じくらいの規模がありそうだ。よく北が好きか南が好きかなんていう質問を受けることがあるが、実際のところ僕はどちらでもいい。北はどこに行ってもたいがい入山が楽だから登りやすい。一方、南はどこに行っても入山が大変である。北が好きだという人の理由には、実は北アルプスの峰々への入山のやさしさが言外に含まれているに違いない。南は芦安から北岳の登山基地広河原に入るのが以前より大変になり、昔より行きにくくなった、それに引き換え、北アルプスは阿房トンネルの開通で南アルプス以上に輪をかけて行きやすくなった。南が北ほど入山しやすい環境が整えばまた印象も変わることだろう。南アルプスは北アルプスに比べて事故が少ない。それは南は山が大きいから入山者がそれなりの準備と覚悟をしてくるからだという。確かにその通りだろう。それこそ南の入山のしにくさを表している言葉以外の何ものでもないだろう。
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<山岳遭難>赤石岳に登山の28歳男性戻らず…南アルプス 5月8日20時16分配信 毎日新聞
南アルプスへ登山に入った神奈川県厚木市戸室2、公務員、江藤耕平さん(28)が、予定になっても下山しないと、椹島(さわらじま)(静岡市)の山小屋から静岡県警地域課に7日夕、通報があった。静岡中央署山岳遭難救助隊が8日、捜索を開始した。同署の調べでは、江藤さんは2日、乗用車で静岡市に向かい、3〜6日の予定で南アルプス赤石岳(標高3120メートル)に入った。入山口近くの駐車場には江藤さんの車が止まったままになっていた。9日は午前8時半から県警ヘリと救助隊6人で捜索する。江藤さんは携帯電話を持っていたが、通じないという。【平林由梨】最終更新:5月8日20時16分南アルプス南部は東海パルプの社有地で、その中心的な登山基地である椹島への入山者は東海フォレストが運営する送迎バスで入るのが普通だが、バスに乗るには東海フォレストが経営する宿に泊まることが原則になっている。だからある意味南アルプス南部に入る登山者の動向が分かる。その結果迅速な遭難救助体勢をとることがができるというわけである。実際、車が何日も放置されていると遭難を疑うようである。
南アルプス遭難:不明の男性が下山
南アルプスに登山に入り、下山予定日を過ぎても戻らなかった神奈川県厚木市戸室2、公務員、江藤耕平さん(28)が9日午前11時ごろ、静岡市葵区の南アルプス、二軒小屋から約3キロ西の沢で見つかり、無事下山した。静岡中央署によると江藤さんは3日に単独で南アルプスに入山、予定の6日に下山せず、県警などが捜索していた。降雨の悪天候で道に迷ったという。【平林由梨】*
「自分の山に登ってみたい」と思った大倉喜八郎翁は「輿で担ぎ上げられ」て登ったそうだ。実際、88という御歳を考えるとそうなのだろう。彼は「お豆腐好きで、毎日の入浴を欠かさない」人だったらしい。彼はこの登山の間も「同行した職人のつくる豆腐を毎日召し上がっ」ていたそうだ。もちろん風呂にも入っていたのだろう。実際、当時の映像には風呂桶が担がれている場面もあるそうなのだ。風呂に入って豆腐で一杯なのかな? それにしても赤石岳東尾根を輿に乗って登るにしたって怖いだろうになあ。よほど赤石岳に登りたかったのだろう。赤石岳の魅力は何だったのだろう。
ちなみに僕たちも豆腐を持って上がったが、初日だけだったし、自分たちで豆腐とネギと醤油を担いで上げたのだ。豆腐好きの僕は職人を同行させて作ったというその豆腐を食べて見たいと思う。それにしてもすごい大名登山だな。今では考えられない登山だ。ネパールで風呂に入ると言ったってホットシャワー止まりだけどなあ……。この大倉喜八郎翁が買った私有地は今や東海パルプの社有地で、この社有地は25000haの面積があるという。それは山手線の内側の四倍だという。東海の人には浜名湖の四倍だと説明しているのだという。世界一の落差がある滝、落差979mのエンジェル・フォールがあるアウヤン・テピュイというテーブル台地が確か山手線の内側くらいの面積だったはずだ。この社有地はそれらと同じくらいの広さがあるのだ。この山、当時の金額で五万円だったそうだ。これを現地を見ずにぽんと買い、山の木々を活用するために東海パルプという会社を作ったのだ。大井川の谷を囲む山々すべてが社有地なのだからすごいことだ。しかし、この山登りに行くには交通不便な場所だ。それだけ南アルプスが大きな山脈だということなのだが……。
南アルプスの本来の名は赤石山脈である。僕自身南アルプスという言葉より赤石山脈という言葉の方が馴染み深い。大倉喜八郎翁が触発されたのはもしか赤石山脈という名のもとになった盟主の山ということからなのだろうか? ふとそんな思いが浮かんだ。
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富士山周辺の天気は前日まで雨模様だった。でもどう見ても週末はよくなりそうである。この雨は富士山山頂付近では雪だろう。実際、富士山に近づいていくとところどころ雨雲が切れ、雨空の先に富士山が垣間見えた。予想通り明日は天気がよくなるだろう。富士山の斜面には新たな雪がつき白がまばゆい。前回見たときより真っ白だからこの天気でだいぶ雪がついたようだ。
懸念していた天気はどんどんよくなり、翌朝はすっかりいい天気になった。スバルラインから富士吉田口登山道をたどる。久しぶりの富士登山は長くもなく、短くもなくという感じだった。膝への力のかけ方に注意しならが登ったが、案外膝が痛まずに登ることができた。登山は登りだけではないし、下りの方が力を使うから注意がいるが、僕よりずっと若い子の方がばてばてだ。それでも好天に恵まれ、また新雪にも恵まれいい登山ができた。ちょっと運動不足でこの富士登山でパンパンになったという足は下山後風呂に入ってゆっくり伸ばすといいだろう。
各地で今年初の真夏日――。富士山登頂二度目の二日目は天気予報が前日より暑くなると報じていたが、実際、富士山を取り巻く空気は前日よりさらに生暖かいものだった。初日はいい感じで焼けたのだが、二日目は気温が高すぎたせいもあるのだろうか、紫外線が強く焼けすぎた。それにしても二日間連続で富士山に登ったおかげでこんがりどころが、顔が焼けすぎてひりひりだ。こんなに焼けたのは久しぶりだ。こんなことなら日焼け止めクリームを塗っておくのだったなと思うが後の祭りだ。最悪だ……。とりあえずほてりをとりたいと思う。
二日目は富士山登頂は富士吉田口から山頂の一角に立ち、富士山の火口をさすお鉢を大回りで一巡りし、最高点の剣ヶ峰に立った。頂上稜線は時おり強い風が吹いたが、風には冬と違って温かさがある。地上は相当暑いのだろうと思っていたら確かにその通りだった。各地で夏日で、青梅も30度を越えていた。
それにしてもロシアの人は富士山頂にほんの少しだったけど酒を持ってきていた。それもタリスカーのような強いウイスキーだったようだ。ちょびっとどうだと言われて味見をしてみたがプハーッって感じの強さだった。前日二人のうちの一人である若者は飲まなくて付き合いの悪いやつだというようなことを言っていたのだが、どうやら飲まないというのはビールの話でウォッカとかウィスキーは違うようだ。彼は登頂祝いの酒の強さに顔をしかめつつも飲んでいたもの。本当に飲んだらロシア人はやはり強いのだろう。でも、そんなことしていないで早く下りようよという感じだった。
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二日間の富士山登山はそれなりに疲れもし、楽しかったが、明るい材料もある。懸念していた膝がだいぶよくなってきた気がするからだ。いよいよ5月も半ばだ。ずっと我慢していたフリークライミングを再開することにしよう。膝のリハビリは時間をかけて一歩ずつだが、確実に前進してきた。こんなに登れるのにどこがリハビリじゃってか? 実際、登るのはいくらでも登れる。現に骨折してたって5.10でも5.11でも登るくらいやし、このけがを悪化させることになったグリーンランドでも実際に登ってきたし、荷物だって老体にムチ打って持つし、適当にごまかしてればけっこうな重量を持てるから実のところ山に登るだけならどうにでもなるがなという感じだ。なんといっても、年季は入っているけどしゃきしゃきのアルパインクライマーだでな。でも、そうは言ってもやっぱりどこか違うねん。違ってたねん。皆と違って障害者だからしようがないと思うところもあるけんど、体はやはり大事にしないとな。そういえばそろそろ病院にも行ってこないといかんなあ。来週にでも行ってこよう。世間話をしに、じゃなくて足の具合を見てもらうのとリハビリの方法を聞きに――。でも、本当にすごくよくなった気がする。ついにリハビリからトレーニングに移行するじきに達した感じじゃな。ここでまたやりすぎんようにせんとな……。
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アルパインクライミングを突き詰めれば死に至ることに疑問を挟む余地はないだろう。富士山から下山して聞いた話はそんな思いに至らせる内容だった。現時点ではまだ行方不明の段階だが、高所であることを思えば二人の前途は限りなく暗い。すでに閉ざされていることを覚悟しなくてはならないだろう。
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