書評 クライマーの山野井泰史は、カナダのバフィン島のビッグウォールや、ヒマラヤ八千メートル峰の未開拓ルートなど、無酸素、単独で……この処女峰には、チームの力を高めるためにクライマーの木本哲が加わることに。彼も凍傷で足の指全部をなくしている。…… http://www.worldtimes.co.jp/syohyou/bk080302-4.html-25k-関連ページ
上記文章を読んでいたら、文章自体は全然変ではないのだけど、なんだか間抜けな文章だなと思ってしまった。チームの力を高めるために同じような境遇の障害者に参加を求めるだろうか――。まともに考えたら、普通の人間ならそんなことは絶対にしないだろうなと思える。こう考えると何だか強い信頼関係がないと成り立ちそうにない話だから話の持って行き方としてはいいかもしれない。が、残念ながら僕には、もちろん山野井夫妻にもその心当たりはないだろう。だって今までアルパインルートを一緒に登ったことなどないからなあ。同じ登りにいくならよく知っている人と行きたかったろうな、と思ってしまう。でも、登攀の番組だから、この三人がクライミングチームとしてまとまった話がないと番組が成り立たない……。
*
平日とはいえ新緑の時期かつ週末を控えた時期にしてはやけに車が少ないなと思ったら、上高地公園線は下山する人は通すが、入山は認めないという具合で、落石死傷事故のために全面通行止めとなっていた。同じような日程で上高地に入ろうとしていた絵描きさんからその事実を沢渡で聞いて僕は面食らった。通行止めの原因は落石による事故で一人死亡、一人けがだと聞いたが、沢渡ではその事実を確認するのも難しい。が、よく見ると下山者にインタビューしている記者の姿があった。上高地公園線は落石への対策が整わないと全面開通は難しいだろうと思えるし、今朝方の話では落石対策を施すにも時間がかかるようだから、とりあえず今日の入山は難しいだろうということはすぐにわかった。天候が下り坂だからいつ開通するかわからないものをここで待って日を潰すわけにもいかない。今日入山できなければ週末は天気が悪いから登山成功の可能性はゼロになる。さてどうしたものだろう。とはいえ上高地への入山はもはや諦めるより仕方がないというのが実情だ。その代案として考えられる山は……。
結局、登ったことがある山に登ってもしようがないからあれこれ考えた挙句の果て錫杖岳を登りに行くことにする。行動は現地に行って残雪の状況を見て考えようということにする。幸いに雪は少ないが、岩を登るならクライミングシューズが必要だ。登山靴でも登れる僕には問題はないが、普通の人はクライミングシューズがなければにっちもさっちもいかない。が、幸いに僕のクライミングシューズが履けるようだから、これを使ってもらって僕は5.10(ファイブテン)のアプローチシューズを使って登ることにしよう。ということで、翌日は左方カンテを登ることにする。勝負はおそらく午前中だろう。午後は雨に違いない。
雪山の登攀とビバーク訓練はできなかったが、天気は予想通りで、岩は無事登ることができた。 岩を登るのが早いって? 昔からスピードクライマーだし、しゃきしゃきのアルパインクライマーだからなあ。山はまだショウジョウバカマの時期だったが、麓の新緑はとてもきれいだった。トチノキやカツラってこんなにきれいだったっけか。春はいいなあ。突然の落石事故で当初の計画は潰れたけど、なかなかいいリカバリー山行だったかもしれない。 上高地へのゲートは22日ごろに開くそうだ。
*
新型(豚)インフルエンザは予想外の広がりを見せていると考えるかもしれないが、やはり想像通りの広がりを見せているというべきなのだろう。新型インフルエンザと確定した国内感染者は130人を越えたそうだ。メキシコで発生した豚インフルエンザの患者の状態をメキシコ当局が分析したところ、このインフルエンザは他のインフルエンザとの相乗効果で重症化するという調査結果がでているので、新型インフルエンザは罹患しても軽症だと考えるのは過ちのようである。また老齢者より若年者の方がかかりやすいという報告もあるし、基礎疾患、慢性疾患がある人は重症化しやすいという報告もある。しかも、今はインフルエンザの時期ではないことを考えるとこのインフルエンザは感染力が強いと言えるようだ。注意するに越したことはないだろうが、来るべき冬のインフルエンザシーズンには本当に猛威を振るうかもしれない。このときに鳥インフルエンザも発生したとしたらそうとう厳しい状況になりそうだ。実際、そうならないとも限らない状況だから恐ろしいことだ。今後の拡大をどう抑えるか注目されるところだが、日本国内の新型インフルエンザの発生、および拡大のスピードはかなり早いように思える。このインフルエンザは発症して四、五日目に重症化する例が多いらしい。が、死者は感染者の0.4%あまりで少ない。
*
岳人6月号の山本一夫さんの備忘録はなかなかいい。もともと「遺言」なのだから、実際、言いたいことを言っておいた方がいいに決まっている。山本さんの言うように、安全と危険は紙一重だが、個人山行とガイド山行はまったく異なる。そのところをしっかり把握しておかねばならないのは確かなことだし、ガイドとガイドの間に大きな技術や経験の差があるのも確かなことだ。経験の差が事故に結びつくのは嘆かわしいことだなどといっている余裕などない。こればかりはすぐに是正しなければならないことだろう。カランカやカメットの登攀がピオレドールに輝いたようだが、世界最高峰エベレスト登頂が一番という趣が強い日本国内でその価値を認めさせるのは難しいだろう。だが、それはやらねばならないことだ。現代アルピニズムのプロファイルは相変わらず面白い。今月はデニス・ウルブコ著マカルー冬季初登頂だ。それまでの登山や登攀とあわせて考えるとやはり刺激的な 内容だ。こんな記事を読んでいると年甲斐もなく血湧き心躍るからいやになっちまう。
*
危険運転致死罪の適用で懲役20年(求刑は25年)の判決が言い渡された福岡高裁の判決は議論を巻き起こしているようだが、酒を飲む人間としてはこれは仕方ない判決だと思う。実際、酩酊状態なら車を運転するのが危険なことは誰だって分かるだろう。一瞬の判断が生死を決する状況で飲酒の影響があれば判断が遅れることは確かなことであるし、そんな状態で車を運転することがどんなに危険なことかも容易に想像できるからだ。この裁判は最高裁に上告されたので判決の決定は少し先延ばしになったが、将来ある子ども三人の命を思うと懲役20年が決して重い刑だとは思えない。飲んだら乗るな、飲むなら乗るな、は酒飲みの鉄則だ。
*
沖縄・奄美地方が入梅したそうだ。西から雨の季節に入っていく。5/18入梅。湿度が上がれば新型インフルエンザとはおさらばだと思うのだが、その前に関東に到来するだろうか。そう思っていたら、関西だけではなく東京近郊でも発症した。濃厚接触者が多数いるようだからことによると急激に広がりそうだ。それも日本各地に。
*
細かい筋肉を地道に鍛えるというのは大変なことで、実際のところこれがけっこう疲れる作業なんだよな。まあいいやと思って手を抜けばこれまただめだしな。傷んだ筋肉に多少変化が現れてきたのでちょっと無茶をやってみるかな? そんな気にさせるくらい実際元気になってきた。ちょっと無理できるようになるとこれまたどんどん強くなるのだが、これは肉体も精神も同じだ。ところで、伸展筋を鍛えるというのはいいが、ごっつう力が要るやんけ。これまた捕縄に疲れるリハビリかつトレーニングだ。こんなんで岩登りができるようになるんですか――。そんな質問を浴びせたくなるところだが、これがなるんだな。体がそう言っているのが分かるから面白いものだ。どうやら超回復しそうな気配だ。
*
竹内洋丘さんはローツェに登って これで8000メートル峰12座登頂。残りもやさしい山だから14座登頂は大丈夫だろう。でも、頑張っているよなあ。これから先、日本は雨が多くなるし、湿度も高くなる。汗をかくにはちょうどいい時期だから熱中症に注意しながら体重を絞るかな。体重を減らすのはクライミングにも膝にも大きな効果があるからなあ。室内トレーニングとあわせてちょっとやってみるか……。この際ついでに心肺機能も鍛えることにしよう。そんなこんなでだんだんリハビリからトレーニングへと変貌しそうな勢いだ。