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始祖鳥は羽ばたくのではなく滑空していたそうだが、始祖鳥の脳の容積は鳥というより恐竜的、爬虫類的なものらしい。恐竜がどこから鳥になったのか興味があるが、そんな違いを探る脳の容積を求める数式が発見されたと言う。姿かたちは違って見えてもどこかに一般化できる法則があるようだ。遭難しやすい人間の数式が生み出されたら面白いかも。人間は考える葦というくらいだからちゃんと考えて行動しさえすればそれほど遭難しないような気がするが……。遭難は相変わらず多いが、この天候不順で入山者が少なく遭難発生件数は抑えられているそうだ。

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膝の靱帯を断裂したフィギュアスケートの高橋大輔は手術後復帰に七ヶ月を要したそうだが、リハビリに股関節と足首の柔軟性を取り入れるようにしたのだという。結果片足立ちのバランスがよくなって、ゆったりした滑りをしてもバランスを崩さなくなり、以前よりずっと上手に滑ることができるようになったという。そういえば医者からバランスを保つ訓練もいいと言われていたことを思い出す。股関節や足首を柔らかくするというのは登山者にとっては大切なことだと思う。特に中高年には必要だろう。早速取り入れようと思う。明日あさって天王岩で岩登りをするのは無理だろうか? 天気は悪い方に振れた。今年の天気の悪さを象徴しているようだ。沢登りという手もあるがはてさてどうしたものか。雨はどのくらい降るのだろう。

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そんな不安をよそに今日もというか、今回もしっかり登った。5.9から510へ――。グレードをあげるのは大変だが、移行は順調だ。どうすれば今ある力で登れるのか。それを解決できる可能性があるのがムーブの獲得である。しかしムーブを手に入れるには力強さと柔らかさがいる。だから進歩するにはどうしても力をつける必要がある。力強さも柔らかさも自ら努力しなければ手に入れることができないが、それらを無理なく手に入れようと言うのが朝トレの発想であり、リハビリの発想である。彼らの技術の進歩、自分の体力の進展はいかに。

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岩場の閉鎖、使用禁止の問題は、昔は、駐車問題や糞尿の処理、焚き火などのマナーの悪さがきっかけになることが多かったが、最近は死亡事故が俎上に上がることが多い。昔は死亡事故がなかったわけではない。実際日和田山ではそれが、事故の多さが閉鎖問題の発端になったのだ。谷川岳の登山条例制定の発端ももちろん死亡事故の多さが、遭難事故の多さが問題になっている。剱岳とてそうだろう。関電トンネルの冬季通行禁止は剱岳の冬山遭難事故の多発を受けてのものであるのは間違いない。登山者にとっては山で死んで「本望」かもしれないが、周りの一般の人は誰もそうは思わない。事故が起こり救助することになれば救助する者もそれ相当のリスク、すなわち死ぬかもしれないというリスクを背負わねばならない。好きで死ぬかもしれないところに行った人間を自分自身が死ぬかもしれないという思いを抱きながら救助することがどんなに大変なことかは考えればすぐにわかるだろう。そのいちばん簡単な解決方法が岩場の閉鎖であり、入山禁止の措置をとることである。こうすれば確実に事故はなくなる。迷惑をかける人はいなくなる。城ヶ崎の死亡事故はフリークライミングでの事故だけに決して身につけた登攀技術とかけ離れたものではないだろう。城ヶ崎は昔からの岩場だからプロテクションの位置が遠い。それは事故の起こりやすさを意味する。シーサイドでは岩場で疲労困憊した体でシーサイドで入り口の岩場を登り返さなければならないから最後に事故を起こしやすい。自然の岩場は自分で登り方を考えねばならないのだが、インドアと同じ感覚で自然の岩場に挑めば登り方を考えない、あるいは登り方が思いつかないという状況が発生することだろう。岩登りには落ちていいところと落ちてはならないところがある。落ちてはならないところで落ちれば大きな事故に繋がるのは当たり前だ。実際アウトドアでは登攀中に判断すべきことはインドアよりはるかに多く、その分危険も大きい。

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マムート製の新しい確保器(スマート)を使ってみた。ヨーヨーのようなタイプのシングルロープ用の確保器である。この確保器、案外使いやすい。墜落と同時に自動的にロープがロックされるが、ロックと解除が簡単だ。この確保器はセカンドの確保にも使えるそうだ。グリグリより使いやすいし、軽い。グリグリ同様ロープを手から離してはならない。ロック機構を過信するなと言うのは同じだ。今のところ、ダブルロープで確保をするならルベルソキューブ、シングルロープで確保をするならスマートを使うのがおすすめというところだ。

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美瑛岳の遭難も社団法人日本山岳ガイド協会の認定ガイドが関与するものだったが、構成はガイド一人とボッカ二人、クライアント三人である。鋸岳、穂高岳、剱岳、トムラウシ山、美瑛岳とこの冬からずっと事故続きだった。事故は無くしたいものだな。特に死亡事故は。鋸岳以外はすべて死亡事故だ。

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天王岩で二日続けて岩登りをするのは久しぶりのことだ。岩登りとリハビリ&ウェイトトレーニングと岩登り――。案外疲れるもんだな。こんなだったかな。でも、この疲れは岩登りが原因ではなくリハビリ&ウェイトトレーニングのせいなんだよな。疲れすぎているんだよな。体が。でも今からウェイトトレーニングをして、ストレッチをしよう。ところで、城ヶ崎が岩登り全面禁止の一歩手前だというのは知っていたのだけど、現時点ではシーサイド以外は全面禁止くらいの勢いになっているらしい。それもこれもフリークライマーの死亡事故が続いたせいなのだが、昔のフリークライマーは案外無茶もしたけど、一歩一歩階段を登っていくようにステップを刻みながらうまくなっていたものだけど、今はインドアからいきなりアウトドアに出かけて自分が身につけている以上の高グレードを登ってしまう。実際、そんな技術で登れるわけはないだろうという人が、明らかに自身が考えているよりはるかに高いグレードに挑んでいる姿をたくさん見る。予想通り登れはしないのだが、彼らはそれで満足しているし、それがさも普通のように振舞っている。それもこれもレッドポイントやヌンチャクをプリクリップするための竿のせいだと思うが、インドアクライミングそのものがそういうスタイルだからかもしれない。インドア育ちは力があるからけっこう無理ができるけど、城ヶ崎なんてフリークライミングが始まったころのルートだからインドアと違って案外ピンは遠いし、ホールドが悪いから落ちれば、特に一本目二本目辺りで落ちればグラウンドフォールをする。自分の実力よりはるかに高グレードに突っ込んだ結果、破綻をきたせば死んでしまう。昔はマスタースタイルで登るのが普通だったから、案外段階を踏んで登って行かざるをえなかった。それとは違うインドア育ちが死亡事故をたくさん起こすのは分かる気がする。力はあるけど怖さを知らない。だから実際のところは昔のクライマーより無謀――。実際に彼らの登り方を見ているとそう思う。彼らにはフリークライミングは安全という意識があるのかもしれないけど、落ちれば死ぬ可能性があるのはフリークライミングもアルパインクライミングも変わりはない。自分が登れるグレードをはるかに越えて挑む場合は常に死の危険が付きまとう。基本的にクライミングは危険なスポーツなのである。しかし、城ヶ崎が全面登攀禁止になったら痛いよな。

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左肩も驚異の回復を見せているようだ。疲れはあるが、肩の痛みは薄らいできた。細かな筋肉を鍛えるリハビリトレーニングやウェイトトレーニング、温浴、ストレッチが期待以上の効果をもたらしているせいだろう。少しやりすぎの感はあるが、なかなかいいバランスで展開している。肩に痛みがあるくらいだから肩の可動域がおかしいんじゃないのかという疑問があったが、それは普通の人以上に広い可動域があり何の問題もなかった。肩の痛みの原因がどこから来ているのかよく分からないけど、リハビリトレーニングとともにどんどん薄らいでいく。今は以前の痛みが嘘のようだ。間もなく痛みは消えるだろう。しかし、片手懸垂ができるというのはすごい力なんだな。まだまだそこまで行かないけど、その当時はよくタオルを絞っていて破いたし、ネジも締めすぎて捩じ切ってしまったものだが、今はまだ全然タオルを絞り破ることができないもの。

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久しぶりに名取冬男さんにあった。もう78歳だ。だいぶ老人めいてきたが、とても元気だ。一年ぶりくらいかもしれないなあ。何しろ昨年今年と天王岩には行かなかったからなあ。確か自分一人で登りに行ったのは三回くらいだが、登っていても5.11になると膝が痛くてどうしようもなく、あまり真剣に登る気になれず、登りにいっても登らずに帰ったこともあったくらいだからなあ。まあしようがない。体調が悪いときに登っても患部をことさら傷めるだけだ。でもようやく体が変わってきた。これからはどんどん行こう。けがを治すのに完璧二年以上もかかってしまった。無理して登りに行って損をしたって感じだな。

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青梅市新町に開店したクライミングジム(ボルダー)は徳永さんと言う人が経営している。天王岩で会い、話しを聞いたところお父さんが岩登りをしていた世代で、岩登り二世だという。フリークライミングが始まって30年だからまあそうだよなと思う。そのころ生まれた人はすでに30歳になるのだ。うちはどこそこだといううと、それじゃあジムに行くより岩場に行った方が近いですねと言っていたが、まさにその通りなのである。でも、今度ジムに行ってみるか。雨の日のすいている時間帯にでも。しかし、実はうちから天然岩のボルダーまでは五分〜十五分くらいで行けるんだが……。天王岩には彼の奥さんや仲間が登りにきていてすごく賑やかだったのだが、午後、「八月革命は登れますかね」と聞かれ、「濡れてるから止めといた方がいいよ。たぶん上までずっと濡れていると思うよ」と言ったら「ヘルメットを持っているから大丈夫です」と言って登っていた。「三本目のクリップはけっこう悪いよ。まあ落ちなければいいんだけどね」と忠告したが、何とか三本目までロープが延びた。「どう?」と聞くと、彼は「濡れています」と答えた。「そうでしょ」と言ったところでやめる気配はないし、登りたそうだったけど、ちょうど帰り際だったので「その次が核心だから」と言って分かれたが、果たして彼は最後まで登ったろうか。昨日は湿度が高く、風もなく、まったく乾きが悪かった。台風の影響で湿度の高い雲がかかっていたからなあ。ときおり日差しが漏れたけどそのたびに異様に湿度があがった。こんなんじゃ岩が乾きやしない。実際、左半分はまったく乾かなかった。

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