C型肝炎

2015年9月1日、抗ウイルス薬レジパスビル/ソホスブビル(商品名ハーボニー配合錠)が発売されました。適応は「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」で、1日1回1錠を12週間経口投与するものです。日本は、C型肝炎ウイルス(HCV)を主原因とする肝臓癌の発生率が最も高い国の一つと言われており、日本におけるHCVの推定持続感染者数は190万~230万人で、うちジェノタイプ1は約7割を占めると報告されています。C型慢性肝炎の治療としては、これまでインターフェロン製剤とリバビリン(商品名コペガス、レベトール他)の併用療法などが実施されていましたが、近年、持続的ウイルス陰性化(SVR)率を向上させたテラプレビル(商品名テラビック)やシメプレビル(商品名ソブリアード)などの直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が登場し、使用されています。2015年5月には、インターフェロン製剤を使用せずリバビリンと併用した経口製剤のみで治療が可能となった日本初のDAAsであるソホスブビル(商品名ソバルディ)が発売されました。ソホスブビルは、ヌクレオチドプロドラッグとして肝細胞内で活性代謝物に変換されます。その活性代謝物のウリジン3リン酸型は、HCVの複製に関わる非構造タンパク質5B (NS5B)RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、HCVの増殖を抑制します。今回発売されたハーボニーは、1錠中にソホスブビル400mgとレジパスビル90mgを含有した、HCV RNA合成を阻害するDAAsの配合製剤です。インターフェロン製剤やリバビリンとの併用を必要としない特徴を有しています。レジパスビルは、HCVの複製およびHCV粒子の形成に必須の、非構造タンパク質5A(NS5A)を標的とする薬剤です。レジパスビルと同じNS5Aを標的とするDAAsとしては、2014年9月よりNS5A複製複合体阻害薬ダクラタスビル(商品名ダクルインザ)が臨床使用されています。In vitroでソホスブビルとレジパスビルとの併用は、HCVに対して相加的な抗ウイルス作用を示し、交差耐性も認められなかったことが確認されました。このことを踏まえて、配合剤であるハーボニーの国内外第3相臨床試験が実施された結果、SVR12率(投与終了から12週間後のHCV RNAが定量下限値未満の割合)100%を達成しています。海外では、2015年7月現在、欧米をはじめとする40カ国で承認されています。国内第3相臨床試験から、副作用が21.7%認められており、主な副作用は、そう痒感(3.2%)、悪心・口内炎(各2.5%)などでした。なお、ハーボニーの薬価は1錠8万171.30円。新薬は通常14日分を限度とする投薬期間の制限がありますが、本薬はソホスブビルと同様、例外措置として28日分の処方が認められており、保険適用、医療費助成制度が適用できます。
 経口新薬ハーボニー(ソフォスブビル+レディパスビル合剤)は、 著効率は95~100%と極めて高く、期待の新薬です。なお、適用にあたっては、腎臓病や不整脈などの持病をお持ちの方は、留意が必要です。また併用禁忌薬や要注意薬もありますので、留意が必要です。アッヴィ 社の「ヴキラックス」(バリタブレビル/リトナビル+オムビタスビル)が、2015年12月26日に発売になりましたので、腎臓病の方には、「ハーボニー」よりも、「ヴィキラックス」を選択することが適切かもしれません。
C型肝炎ジェノタイプ1型患者の場合、「インターフェロン3剤併用治療か?」、「経口新薬ダクルインザ・スンベプラ(ダクラ・アスナ)か?」、「今年承認された経口新薬ハーボニー(ソフォスブ・レディパス)か? 更にはヴィキラックス(バリタブレビル/リトナビル+オムビタスビル)か?」が問題になります。まずインターフェロン治療が可能な患者の場合は、シメプレビル・インターフェロン3剤治療法、又はバニプレビル・インターフェロン3剤治療法は選択肢の一つです。初回治療の患者及び前回ペグ・リバ治療で再燃の患者にはシメプレビル又はバニプレビル3剤治療の著効率は約90%です。ペグ・リバ治療より著効率は高いですが、副作用はペグ・リバ治療と同等です。副作用が忍容できそうであれば、この療法は適用できます(血球、ヘモグロビン、血小板などの忍容性は医師により、自覚症状については耐えられるかどうかは患者個人の判断で決めることになります)。過去の治療で無効であった患者には、著効率が低いので、専門医と相談して以下治療法の中から適切な治療法を選択してください。飲み薬のみの経口新薬ダクラ・アスナは2014年 9月から一般に治療が実施されています。医療費助成制度も適用できます。過去の治療歴、インターフェロン治療の前歴にかかわらず2015年3月20日より適用可能となりました。著効率は80%~90%が期待されていますが、特定の遺伝子変異のあるウイルスでは、著効率が30~40%程度に留まると言われており、著効に至らなかった患者は、その後の治療薬の選択が難しくなる可能性が指摘されています。副作用としてALTが上昇することがあります(ALTの上昇程度によっては、専門医の特別対応が必要です)。患者個人の詳細な遺伝子検査を受け、専門医の診断により、シメプレビル3剤治療か、経口2剤新薬・ダクラタスビル+アスナプレビルのどちらかを選択すべきでしょう。(前回インターフェロン治療無効者は、シメプレビル3剤治療の著効率は40~50%程度で、他に比べ高いとは云えません。しかし、この経口2剤治療の場合は、ウイルス遺伝子検査で、効きやすいのであれば、80~85%の著効率ですが、特定のウイルス遺伝子変異があり、効きにくい患者は30~40%程度になると云われています。経口新薬ハーボニー(ソフォスブビル+レディパスビル合剤)は、前述のように、2015年8月31日から保険適用、医療費助成制度で適用できます。著効率は95~100%と極めて高く、期待の新薬です。今までの治療の選択が難しかった患者には、朗報です。適用にあたっては、腎臓病や不整脈などの持病をお持ちの方は、留意が必要ですので、よくご相談ください。又、併用禁忌薬や要注意薬もありますので、留意が必要です。腎臓病の方には、ハーボニーよりも、ヴィキラックスを選択することが適切かもしれません。非代償性肝硬変、併発疾患などの事情で、上記の治療法がすべて選択できない場合は、当面、少量長期インターフェロン治療や肝庇護療法(強力ミノファーゲンC注射・ウルソ服用・瀉血等)で肝炎を抑えながら次の新薬を待つこととなります。今後、 非代償性肝硬変への適用を検討する治験が行われると言われています。
新薬の出現でガイドラインが新たに作られました。従来の治療は低ウイルス量の場合、ペグインターフェロン単独24~48週(又は、インターフェロン単独24週)の投与をおこなうことでした。この療法の著効率は90%といわれています。高ウイルス量の場合は、ペグインターフェロン+リバビリン併用療法24週(又は、インターフェロンβ+リバビリン併用療法24週)行う場合があります。リバビリンが使えない人には、ペグインターフェロン単独24週~48週治療も行われます。この療法で著効率は80%以上といわれています。上記の治療でも、再燃した方には、テラプレビル+ペグインターフェロン+リバビリンも選択できますが、湿疹などの副作用が厳しいので、飲み薬のみの新薬ソバルディ+リバビリンを選択することをお勧めします。ソバルディ(ソフォスブビル)+リバビリンの経口新薬が2015年5月25日に発売になりました。著効率は、治験では96%です。ジェノタイプ2型の方も、保険でインターフェロンフリーの経口新薬が使えるようになり、医療費助成も適用可能となりました。