胸痛

胸の痛み(胸痛)が生じる原因として、胸部には、肺、胸膜、心臓、骨、神経、筋肉、一部の消化器臓器が存在し、様々な原因が考えらます。一般的に心臓や肺の病気は胸痛を伴う頻度が高いです。中でも緊張性気胸、急性冠症候群、大動脈解離、肺塞栓症、食道破裂などの病気は緊急性を有します。診断には心電図や胸部エックス線検査、場合により内視鏡検査(胃カメラ)、CTやMRI検査が必要になることもあります。しかし症状からおおよその診断がつくこともあります。それには胸痛という症状の性状がどのようなものかによります。①どのような痛みか(刺すような痛み/鈍い痛み/圧迫されるような痛み/締め付けられるような痛み)、②どこが痛いか左胸部/前胸部/背部/首や肩に放散する/局所的)、③どのくらい持続するか(瞬間的/数分間/数時間かそれ以上)、④どのようまるな時に痛むか動いた時/安静時/体位を変えた時/呼吸との関係/食事との関係)、⑤その他の症状があるか呼吸困難/発熱/冷汗/吐き気/嘔吐など)、といったことが非常に参考になります。具体的な疾患の痛みの性状は下記の通りです。
狭心症(・労作時、胸部中央から左側にかけて締め付けられるような痛みや圧迫感、・数分で消失、・時に首や肩などにも広がるような痛み(放散痛)や上腹部の痛みなどの症状が生じる)
循環器疾患
急性心筋梗塞(・急な胸部の激痛(30分~数時間続く)、・血圧低下、顔面蒼白、吐き気、冷や汗、呼吸困難などの症状が現れる)
大動脈解離(・急な胸部の激痛(引き裂かれるような激しい痛み)、・背中から腰にかけた痛み、・けいれん、足の痛み、腹痛、失神や意識障害などの症状が現れる)
肺や胸膜の病気
気胸(・やせ型の若い男性に多く発症、・突然の胸痛と息苦しさを自覚、・深呼吸により痛みは増強し、継続する)
肺炎(・炎症が肺を包む胸膜にまで及ぶと、強い胸の痛みを感じるようになる、・体力が落ちている人や、免疫力の弱いお年寄りに二次感染症として多くみられる)
急性肺血栓塞栓症(・長時間同じ姿勢で座っていたりして、足や骨盤内の静脈に血栓(血液の塊)ができて、肺の血管を塞ぐことによって起こる、・症状として、急激な呼吸困難、胸痛、咳、血たんなどが現れる、・血圧低下によるショック状態になり、突然死することもある
胸膜炎(・細菌などの感染症が原因で発症し、発熱や悪寒を伴う、・鈍い痛みで、呼吸によって症状の変動があることが多い)
神経・筋肉・骨の病気
肋骨骨折(・安静時には鈍い痛みを認め、体位変換、深呼吸や咳、押した時に痛みが増強する)
帯状疱疹(・激しい痛みをともなう小さな水ぶくれが体の片側の胸部の肋間神経に沿って現れる(水ぶくれは3週間ほどで治まります)、・お年寄りや疲れが溜まっている人など、体の免疫力が落ちてきたときに発症しやすい)
肋間神経痛(・肋間神経(肋骨に沿って走行する神経)が何らかの原因で障害されて生じる突発的な痛みのこと、・痛みは片側性で強く、深呼吸や咳や体位の変化でも増強することがある)
消化器の病気
逆流性食道炎(・胸骨付近に生じる胸痛で、嚥下困難や胸やけなどの症状を伴う)、食道炎や食道癌でも同様の症状が出現することがあります。
心因性の病気
心臓神経症(・検査で何も異常を認めないが、精神的負荷がかかった時に胸痛、動悸、息切れなど認められる)