嘔吐

嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)。嘔吐は逆流とは異なり、逆流とは、腹部の強い収縮や吐き気がない状態で、胃の内容物を吐き戻すことです。例えば、アカラシアやツェンカー憩室の場合、吐き気を伴わずに未消化の食べものが逆流することがあります。嘔吐物の性状は通常、最後に食べた食品を反映しています。嘔吐物に食べもののかたまりが混じっていることもあります。血を吐いた場合(吐血)、通常は嘔吐物が赤色ですが、血液が部分的に消化されていると、嘔吐物がコーヒーかすのように見えます。胆汁が混じっている嘔吐物は苦味があり、黄緑色をしています。 一般的に、「吐き気がする、胸がむかむかする」などの症状がある場合は約7割が消化器の疾患が原因と考えられ、消化器疾患が原因なのか、消化器以外の疾患が原因なのかを判断する必要があります。消化器疾患には、急性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん、虫垂炎、腸閉塞などが考えられ、消化器疾患以外では、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、心疾患(心筋梗塞等)など緊急性を要する疾患や、他の薬の副作用、食中毒、ストレス(精神的嘔吐)などが考えられます。
その際下記の随伴症状がないかというのは重要なポイントになります。
①急な頭痛はないか、②腹痛や下痢があるかどうか、③熱があるかどうか、④胸痛、めまいや頭痛があるかどうか、⑤吐いた物に血は混ざっていないか、⑥薬の副作用ではないか、⑦妊娠初期にみられる悪阻(つわり)ではないか、などです。嘔吐では、不快感に加えて、以下の合併症を伴うことがあります。嘔吐物の吸入(誤嚥)、食道の裂傷(マロリー-ワイス症候群)、脱水と電解質異常、低栄養と体重減少などです。意識を失った場合やもうろうとした場合は、嘔吐物を肺に吸い込んでしまうことがあります。嘔吐物に含まれている酸により、肺が強く刺激されます。嘔吐すると食道内の圧力が著しく上昇し、激しい嘔吐では食道粘膜が裂けることがあります( 食道裂傷(マロリー-ワイス症候群))。裂傷が小さい場合は、痛みがあり、ときに出血しますが、裂傷が大きいと死に至ることもあります。嘔吐物で水分とミネラル(電解質)が失われるため、激しい嘔吐では、脱水と電解質異常が起こることがあります。これらの合併症には特に新生児や乳児がかかりやすくなっています。慢性的な嘔吐によって、低栄養、体重減少、代謝異常が生じることがあります。
 日常生活上の原因として食べ過ぎ・飲み過ぎ、ストレス、食中毒・食あたり、薬の副作用、妊娠中の悪阻(つわり)、異物が喉につまったなどがあります。また内耳の平衡器官(前庭器官)は嘔吐中枢とつながっています。このつながりがあるため、一部の人は乗り物酔い(船、車、飛行機の揺れ)や、内耳の特定の病気(内耳炎、頭位性めまいなど)によって吐き気を催します。