吐血

血を吐いた場合、喀血(肺や気管支からの出血)か、吐血(食道・胃・十二指腸など消化管からの出血)かを確かめなければなりません。鼻血がたくさん出て、それを飲み込んで血を吐き、吐血と間違われることもあります。基本的に吐血は吐いて出てきます。もし咳と一緒に出てきたときは吐血ではなく喀血かもしれません。特に血液に泡が混じっているときには喀血の可能性が高くなります。胃や十二指腸潰瘍からの出血の場合は、胃酸の影響で血が黒っぽく変色しています。食道からの出血の場合は、こうした影響を受けないため、真っ赤な血を吐きます。吐血がひどい場合は、血圧が下がってふらついたり、頻脈(脈が速くなる)が起こる場合がありますので、できるだけ安静を保ち、すぐに病院を受診してください。出血してから吐血までの時間が短いと吐物は鮮血色です。しかし、数十分から数時間が経過すると胃酸によって塩酸ヘマチンへ変化するために、出血した血液は黒色化していきます。
 吐血は生命の危険を伴うことがあり、できるだけ早く医師に診てもらい、検査や処置を受ける必要があります。医師は内視鏡検査で出血した場所や程度、さらに出血が持続しているかどうかを確かめて診断します。出血している場合はその場で内視鏡的に止血します。吐いた血液の量が少なくても、胃の中に出血がたまっている場合があります。
 吐血は基本的に上部消化管と呼ばれる食道・胃・十二指腸から出血した場合に起こります。下血は消化管の、どの部位で出血しても起こりえます。吐血の原因には、食道炎、食道がん、肝硬変に伴う胃・食道静脈瘤の破裂、出血性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどがあります。特に出血量が多いのは、食道静脈瘤の破裂、胃・十二指腸潰瘍、マロリー・ワイス症候群(大量の飲酒後、嘔吐に伴って胃と食道との境目が裂けて出血)などによる出血です。
 胃炎や胃・十二指腸潰瘍の症状は上腹部の痛みや不快感、胸やけ、膨満感、食欲不振、吐き気、嘔吐などで、胃壁や十二指腸壁からの出血が多い場合には吐血 や下血 をきたすこともあります。吐物のなかに血や凝血が混じっていたり、便の色が黒っぽい時は急いで精密検査を受けましょう。貧血が進んだり、胃壁穿孔や十二指腸壁穿孔、腹膜炎を起こすと生命に危険がおよびます。
●吐血の原因疾患
・食道がん   ・食道静脈瘤   ・マロリー・ワイス症候群   
・胃潰瘍    ・十二指腸潰瘍  ・急性胃粘膜病変   ・胃がん
吐血は、上部の消化管出血によって起こることが多く、原因としては、胃・十二指腸潰瘍や急性胃粘膜病変が多いです。吐血の性状は、胃酸にさらされる時間が長いほど、鮮血→黒褐色→コーヒー残渣様と変化します。鎮痛薬や頭痛薬は、胃の粘膜を荒らすため、薬も吐血の原因となることがあります。
 吐いた血がコーヒー残渣様の色をしているときは、急性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を疑い、新鮮な血が大量に出てくるようなら肝硬変などを原因とする胃・食道静脈瘤の破裂を疑います。
■養生法
 絶対安静が必要です。絶食にしますが、冷たい水を飲むとよいです。冷やすことにより血管が収縮して、出血がとまりやすくなります。また、みぞおちに氷嚢などを当てて冷やすとよいでしょう。内視鏡検査に備えて、できるだけからだの右側を下に横臥(おうが:からだを横にすること)します。いずれにしろ、緊急に入院して治療を受けることが必要です。