便潜血

便に血が着いていたりすると非常に心配になると思います。単なる切れ痔でも起こりますが、大きな病気が隠れていることもありますので、きちんと検査を受けるようにしましょう。排便時の出血はよくある症状でもあります。人が食物を取る口から排せつする肛門までの器官を消化管と呼び、排便時の出血は、この消化管のどこかで起きています。出血部位が、胃や十二指腸だと上部消化管出血、大腸や肛門部だと下部消化管出血と呼ばれ、便の性状に違いがみられます。上部消化管出血は「下血」といい、コールタールのような黒い便(タール便といいます)が特徴です。しかし少量の出血では明らかな真っ黒にならないこともあります。少量の出血がじわじわと長時間続きいつの間にか貧血が進行しているということもあります。下部消化管出血は「血便」といい、赤暗い血液や真っ赤な鮮血が混じります。
 便潜血検査は以前は血の滴るステーキなどを食べると陽性になることもありましたが、現在の方法は人の血液にしか反応しませんので食事制限などが要らない検査となっています。便潜血検査には、「1回法」と「2回法」があり、検査時に毎回出血するとは限らないため、複数回受けた方が精度は高くなります。便潜血検査を受けるなら2回法がおすすめです。また上部消化管出血で出血量が少ない場合、出血した血液が変性しており、陽性とならないこともあります。便潜血の感度は90%前後と言われており、大腸がんなどの重篤な疾患が見逃される可能性は否定できませんので、より高い確率で大腸がんを早期発見したいということでしたら、大腸カメラ検査を受けられることをおすすめします。実際に検査をしてみると大腸癌が見つかることもありますが、大腸ポリープが最も多く見つかる病変です。大腸ポリープはがん化することがありますので、基本的には種類によっては切除することが望まれます。
 急性で下痢を伴う血便の原因としては、虚血性腸炎や感染性腸炎、抗生物質起因性腸炎などが考えられます。慢性的な場合は、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎もしくはクローン病)、アメーバ赤痢、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍などがあります。大量の血便を排出するようだと、憩室出血や血管性疾患、急性出血性直腸潰瘍、炎症性腸疾患などの可能性があります。
 緊急の大腸内視鏡検査が実施された症例は、頻度が高い順に大腸がん・ポリープ、炎症性腸疾患、虚血性腸炎、大腸憩室出血、感染性腸炎、急性出血性直腸潰瘍となっています。年齢によっても血便の原因となる疾患に特徴があり、若年層は炎症性腸疾患、中高年層は大腸がん・ポリープが最も多くみられます。虚血性腸炎は動脈硬化で大腸の虚血によって起こりますが、腹痛を伴うことが多いです。