浮腫

手足がむくんだり、顔がはれぼったくなるようなことを経験された人は、少なくないと思います。こういった「むくみ」のことを医学的には「浮腫(ふしゅ)」といいます。浮腫とは、皮下組織(皮膚の下部)に水がたまった状態で、例えば足やすねなどを指で圧迫する(押さえる)と、その痕(あと)がなかなかもどらないような状態の時は、身体に正常な時の体重の5~10%以上の水分の貯留があると言われています。すなわち、ふだんの体重が60kgの人がむくみを認めた場合、体重は63~66kg以上に増えているということになります。浮腫が下腿に認めやすいのは、水分が重力の関係で身体の下の方へたまりやすくなるからです。ですから、寝たきりの人であれば、浮腫は背中や顔に出やすくなります。また、身体にたまる水分が、まだ体重の5~10%に満たない時は、むくみは目では見えませんが、体重は増加してきます。このような場合を潜在性浮腫といいます。今までのことをおおまかに言うと、浮腫は何らかの原因で身体に水分がたまった状態と考えてよいと思います。また、人類が二足歩行を始めた瞬間から重力に逆らって足の血液を心臓にもどすのに大きな負担を強いられるようになり、足のむくみとは無関係でいられなくなりました。
 特に高齢者においてはしばしば通常でも下腿や足背に浮腫がみられます。高齢者は年齢による各臓器の機能低下があり、かつしばしば種々の疾患を患っています。また疾患治療のために様々な薬を服用しております。浮腫が加齢によるか、疾病に関連しているか、薬剤性かをまず検討し、限局性か全身性かの見極めが重要となります。主な原因として以下のものがあります
 全身性浮腫:全身対側性にみられますが、重力の影響でとくに下腿・足背にみられます。
1:(心臓病)心不全に伴う心臓性浮腫。うっ血性心不全、収縮性心膜炎、心タンポナーデなどの心臓病、肺高血圧症
2:(腎臓病)腎不全、腎炎、ネフローゼ症候群などに伴う腎性浮腫。
3:(肝臓病)肝硬変に伴うもので{肝性浮腫}、腹水を伴うことが多い。
4:(内分泌性浮腫)代表的なものに甲状腺機能低下症に伴う硬い浮腫があります。
5:(栄養障害性浮腫)食事が取れなくなり、血液中の蛋白質が低下した状態の時に起こります。
6:(薬剤性浮腫)まれに薬の副作用によることがあります。降圧剤(カルシウム拮抗薬)、ある種の糖尿病治療薬、向精神病薬、甘草を含む漢方薬など
7:(妊娠に伴う浮腫)
8:(特発性浮腫)上記のいずれの原因でもない原因不明の浮腫、中年女性に多いです。
 その他、上大静脈症候群という腫瘍などの圧迫により、頭・上肢から戻ってくる血液を受け入れる上大静脈が詰まってしまったものなどがあります。。
 限局性浮腫:通常、左右差があります。
1:(皮膚感染症)発赤・熱感・疼痛を伴えば、丹毒や蜂窩織炎です。足白癬(みずむし)からの二次感染(傷口からの細菌の侵入)によることが多くみられます。
2:(アレルギー性浮腫)蕁麻疹、クインケ浮腫など食物、薬物アレルギーや膠原病、ストレスが原因で発症します。
3:(静脈性浮腫)深部静脈血栓症、下肢静脈瘤など下肢の静脈に血液がうっ滞することで発症します。
4:(リンパ性浮腫)がん治療でリンパ節を切除した後、股関節や膝関節の術後や損傷などが原因で発症する場合と加齢によるリンパ管の機能不全で発症する場合があります。
5:(廃用性浮腫)脳卒中後遺症、変形性膝関節症、下肢の外傷や術後、関節リウマチあるいは単純に高齢のために下腿の筋力が低下するために発症します。実はこのタイプの浮腫が非常に多くみられます。
 病気以外の原因によるもの
①長時間同じ姿勢を取ること、特に立位、椅子での座位、②塩分・水分の摂りすぎ、③お酒の飲みすぎ、④加齢、⑤過労・ストレスなどがあります。