肺気腫

最近肺気腫の患者さんが多くなってきています。肺気腫とは呼吸細気管支と肺胞が拡張し破壊される病気です。肺胞とは酸素と二酸化炭素を交換する組織です。拡張、破壊により息を吸うときには肺に空気が入っていきますが、はき出すときにうまく空気が肺から出ていかなくなります。さらに進行するとブラという袋を形成してしまいます。ブラは呼吸循環が出来ません。単なる袋ということになってしまいます。また肺全体が膨張し、呼吸筋である横隔膜を押し下げたり心臓を圧迫したりし、肋骨と肋骨の間が開いてきます。
 肺気腫の原因は不明ですが肺気腫患者の8割が喫煙者であることが報告されています。またα1-トリプシンという酵素が先天的に欠損している場合に、環境因子が加わって発症する事も分かっています。喫煙が最大の要因と言われており、また副流煙も問題です。遺伝的因子がないとすればとにかく禁煙が大切といえます。たばこ以外には肺組織の老朽化、慢性の気管支炎、大気汚染などが関与していると思われます。
 多くの肺気腫患者の人はやせていることが多いのですが、そうでない場合もあります。息切れ、咳、痰が主な症状ですが初期の場合は症状が出ません。というのも症状が出るほどの運動をしない人が多いからです。また風邪などの感染症や肺高血圧を伴うと呼吸困難になったり咳が出たりします。
 診断は胸部レントゲンでもできますが、当院で行っている肺機能検査ですぐにわかります。さらにCT検査を行う場合もあります。肺気腫の治療の第一は禁煙です。禁煙しない限り、肺気腫は進行します。禁煙治療が保険で出来るようになっています。当院でも呼気ガス中一酸化炭素測定装置を備えており保険診療が可能となります。
 肥満の人は呼吸筋力を増強するために体重を落とすことも大切です。やせすぎの場合はタンパク質を多くとるようにすることが大切です。また軽度の運動も必要となります。初期の治療薬としては気管支の拡張剤や痰を出しやすくするために去痰剤を使用します。気管支拡張剤としてはテオフィリン製剤、β刺激剤などがあります。β刺激剤は錠剤、シロップ、吸入液、エアロゾル、貼布薬などがあります。時にはステロイドを使用することもあります。進行してきますと呼吸リハビリテーションが必要になります。
 さらに進行すると呼吸困難がひどくなり運動ばかりでなく、歩行など日常生活にも支障を来すようになりますので酸素療法を行うことがあります。呼吸困難の状態では心臓に負担が来るようになり心不全を来すことがあります。したがって進行した呼吸不全の場合は早期に酸素療法を導入して心臓への負担を軽減することも考慮されます。多くの人はギリギリまで酸素療法に抵抗があるようで、逆に酸素療法を導入してからの予後は平均生存期間は5年ほどと悪いのが一般的です。酸素療法に踏み切る頃にはかなり心不全が進行してしまっていることが多いのです。早期に治療、酸素療法を行って寿命を延ばすことが必要と考えられます。
 特に風邪や肺炎などの感染症があると呼吸困難が強くなりますので“"風邪気味”で済まさないで早期に治療を受けることが必要となります。
 時に外科治療を行うことがあります。これは多発する嚢胞を縮小させることで、生理的死腔を減少させて肺全体の容積も縮小させ横隔膜や肋間筋の運動制限を軽減して呼吸状態を改善させるものです。